ご近所づきあいやPTAの仲間が始めた活動

理事の長福洋子さんと事務局スタッフの秀衡靖代さん理事の長福洋子さんと事務局スタッフの秀衡靖代さん

核家族化が進み、近所づきがいが廃れるなか、世代を越えて地域交流できる場が求められている。大阪には地域サロンも増えており、「サロンマップ」ができるほど多数のサロンがある区もあるという。大阪市下で唯一、盆と正月以外毎日開業しているのは、阿倍野区にある「エフ・エーさろん」。そこで、理事の長福洋子さんと事務局スタッフの秀衡靖代さんに、サロンを始めた背景や、運営状況などについてお話を聞いてきた。

「エフ・エー」の前身となった「ふれあい・あべの」は、PTAやご近所づきあいの仲間で始めたボランティア団体だ。親を介護中のメンバーが、テレビで有償のボランティア活動を知り、マニュアルを取り寄せたのが結成のきっかけだという。いろいろな人がマニュアルを閲覧するなか、メディカルソーシャルワーカーのキャリアをもち、福祉の知識もある長福さんは、勉強会を始めないかと提案。勉強会は一年に及び、スタッフも集まった。当時はまだ介護保険制度が施行されておらず、「助け合い活動」が主だった。活動内容は、高齢者の買い物代理や見守り、子守りなど。内容いかんにかかわらず、拘束時間30分で300円と決めていた。ボランティアは常駐ではなく、あらかじめどんな作業ができるかを登録し、利用者からリクエストがあれば、コーディネイターがマッチングするシステム。
当初はメンバー関係者の店舗2階を間借りするところから始めたが、ちょうどそのころ、阪神大震災がおきてボランティアに関心が高まり、会員数も増えた。そこで運営を安定させるためにNPO法人化、NPO法人エフ・エーとして活動を引き継いだのだ。
さらに介護保険制度が施行されると、「はなまる介護サービス」を開始し、運営は順調だったという。

地域の高齢者が集まるエフ・エーさろん

エフ・エーさろんは、商店街の空き店舗を利用したならではの利点もあるエフ・エーさろんは、商店街の空き店舗を利用したならではの利点もある

会員が増えたため、現在は支援者から融資を受け取得した、王子商店街の中にある空き店舗を改装し、2階を事務局とした。1階はエフ・エーさろんとして開放しているため、買い物に来た地域外の人が、ふらりと立ち寄ることもある。
「スーパーだと一言も声を発さず買い物ができてしまうし、近所にも知り合いもいないから、ここ一週間しゃべってなかったの」と、地域の利用者と楽しそうに会話をしていることも多いそうだ。

このように地域外の人との交流も実現しつつあるが、エフ・エーさろんの当初の目的は、地域づくり。介護は個人対個人だから、地域づくりを考えるならサロンが良いのではないかとアイデアが出たのだ。
「町会が違うと、顔は知っていても話をしたことはない人が多いです。サロンで顔なじみになれば、『あの人最近みないね』と家を訪問するなど、サロンを越えての交流が生まれるのではないかと期待しました」と、秀衡さん。
サロンを利用するのは高齢者が多く、特に一人暮らしの利用者からは、「ここに来れば誰かがいる。本当にサロンができてよかった」と喜ばれている。

サロンに常駐しているのは、秀衡さんらスタッフと、交代で詰めているボランティア。常に誰かがいて、利用者の話し相手になったり、様子を見守ったりしている。デイサービスではないので、基本的にお世話はしていないが、「今日はなんの予定もないけれど、サロンがある」と思ってもらえる存在になれればと考えているのだとか。

うたごえ喫茶や映画会などのイベントも

サロンは誰でも利用できるうえ、無料。お茶やコーヒーを1杯100円で提供しており、運営費にあてている。
イベントは、「映画会」のほか、賭けない・お酒を飲まない・たばこを吸わないを原則とした「健康麻雀」、利用者がワイワイ一緒に食事をする「お昼ごはん」、ハーモニカの伴奏で童謡などを歌う「うたごえ喫茶」、椅子に座ったままで誰にでもできる体操「体を動かしましょー」、絵本読みきかせや指あそびを楽しむ「お話し会」など、もりだくさん。特に「うたごえ喫茶」は人気だとか。
「映画会」は長時間座りっぱなしがつらい利用者もいるため、懐かしい俳優が出演していて、上映時間90分程度の映画を探して上映している。参加者は10名から20名程度。高齢者の行動範囲は狭く、近隣に映画館がないので、「久しぶりに映画を観た」と喜ばれることも多いという。
「うたごえ喫茶もそうですが、若いころの記憶を引っ張り出せば、若返り効果があるそうですよ」と、秀衡さんはイベントの効果に期待する。

また、「お話し会」は子供向けのイベントだが、高齢者も横でお茶を飲みながら参加し、世代を越えた会話を楽しんでいる。
「子連れのお母さんが訪れたとき、高齢者たちがお子さんたちと楽しそうに会話をする様子も見かけます。また、若いお母さんが、ゆかたの肩上げ・腰上げができないと困っていたとき、高齢者のみなさんが針などの道具を持ち寄って、手伝ったこともあります」と、交流はさまざまな形で行われているようだ。

「体を動かしましょー」は椅子に座ったままで誰にでもできる体操で、利用者たちは熱心に体を動かしていた「体を動かしましょー」は椅子に座ったままで誰にでもできる体操で、利用者たちは熱心に体を動かしていた

人手不足に悩みつつ、安定経営のために工夫を続ける日々

理想をいえば、もっと子供たちを集め、世代間交流を活発にしたいという思いがある。
「子供も、いろいろな人からかわいいねと言われて育ったら、素直に育つんじゃないかと思いますし、反抗期で非行に走りそうになったとしても、近所のおっちゃんやおばちゃん、おじいちゃんおばあちゃんの視線があれば、ブレーキになるのではないでしょうか。でも、スタッフ不足で、これ以上活動の幅を広げられないのが現状なんです」

バブルがはじけたあとの不況で、男女を問わず若い世代は働きに出るのが当然といった風潮になると、ボランティアの担い手は大幅に減り、現在は実質4~5名しかいない。
また、主な収入源となってきた「はなまる介護サービス」も、介護報酬の引き下げや人材不足により運営が難しくなってきた。
以前は、子供たちを集めてお料理をしたり、工作をしたり、お点前を体験する「寺子屋」も開催していたが、スタッフが不足したため中止してしまった。
子供食堂をしたいという希望はあるが、スタッフ自身親も孫もいるので、ボランティアにこれ以上手を割くのは難しい。スタッフの給料も決して十分ではないため、後継者を見つけるのも大変。そんな状況のなか、なんとか運営を軌道に乗せようと、日々アイデアを出し合っている。

現在、スタッフたちは、集まる高齢者が、「また明日ね」と言って帰っていくのを励みにしている。
「いつでもここで待ってますよ。今日もサロンは空いていますよ」と一日でも長く存続していけるよう、工夫を続けていくそうだ。

2017年 07月01日 11時00分