「東京都子育て支援住宅認定制度」取得

<画像上>「コーシャハイム千歳烏山」の12号棟施設外観<br>
<画像下>1号棟、一般賃貸住宅。居住者が事前予約のうえ利用できる貸しスペース、集会室がある。備蓄品を保管する防災倉庫の役割も<画像上>「コーシャハイム千歳烏山」の12号棟施設外観
<画像下>1号棟、一般賃貸住宅。居住者が事前予約のうえ利用できる貸しスペース、集会室がある。備蓄品を保管する防災倉庫の役割も

千歳烏山駅から徒歩約4分、広大な敷地に12棟600戸からなる大規模団地が広がる。敷地内に公園や保育所、クリニックなど施設も充実した「コーシャハイム千歳烏山」だ。

「コーシャハイム千歳烏山」は、1956年~1957年にかけて建設された「烏山住宅」の建替えにより生まれた。当時、烏山住宅は建設から50年以上が経過し、建物の老朽化、居住者のニーズに合致した間取りや設備が提供できないなど、さまざまな課題を抱えていた。東京都住宅供給公社は、ただ建替えるだけでなく、少子高齢化の進行を見据え、サービス付き高齢者向け住宅や高齢者生活支援施設などを整備。また、一般賃貸住宅は子育てに配慮した住居として「東京都子育て支援住宅認定制度」を取得(認定されたのは5号棟、8号棟)。12号棟はコミュニティカフェや保育所、クリニックなどからなる複合施設となっている。

以前、LIFULL HOME'S PRESSでは「コーシャハイム千歳烏山」の高齢者向け住まいについて取材した(高齢者も住まい選びを!多世代共生型サ高住が誕生~コーシャハイム千歳烏山)。今回は、「コーシャハイム千歳烏山」の子育て支援の特徴に着目したい。

イベントで賑わう地域に開かれたコミュニティカフェ

団地の中心にあるのが、12号棟だ。団地の住民だけでなく、近隣地域の人が自由に利用できるコミュニティカフェ「ななつのこ」が1階にあり、イベントやワークショップが開催されている。取材時はちょうどこあがりの間仕切りスペースで親子が集う「こあがりカフェ」が開催されており、子どもたちとお母さんたちが楽しそうに食事をしながらおしゃべりをしていた。一方、カフェスペースでは高齢者の方たちが食事をするなど、多世代が集まる空間になっている。東京都住宅供給公社から建物賃貸の条件として東京建物シニアライフサポートが実施する多世代地域交流事業で、NPO法人ツナグバヅクリが受託運営している。ツナグバヅクリ代表理事の鎌田菜穂子さんは、20年にわたって地域の人たちの交流の場づくりを手がけてきた。時代が変わっても、母親の抱える不安や疑問は変わらないと話す。

「私が20年ほど前に郊外のニュータウンで暮らしていたとき、気になるのは病院や幼稚園などのまちのこと、子育てのこと。新しいまちに移り住んできた人が多くて、人と繋がりたい、友達がほしいと感じていました。いまはインターネットが普及していて前より情報が得やすくなっていても、お母さんたちの気持ちは大きくは変わりません。気軽に話ができる場をつくる、まちのおせっかいおばさんをずっとやっています。」

多くの人で賑わうカフェだが、始まった当初はイベントの開催も今ほど活発ではなかった。地道な声がけと定期的なイベント開催により、今ではツナグバヅクリの主催だけでなく、地域住民がレンタルスペースを活用して行うイベントも増えた。イベントの開催率は営業日のうち8割ほどと、ほぼ連日なにかしらが開催されている。カフェを訪れる人は毎月1,500人くらい、大きなイベントの際は2,000人を超すという。

カフェでは、子育て世帯向けのイベントだけでなく、歌声喫茶など高齢者向けイベントも開催されている。同日に高齢者向け、子育て世帯向けのイベントをそれぞれ別の空間で行うと、運営側が促さなくとも、自然と世代間の交流が生まれるという。編み物をしたいけどやり方が分からないと話すお母さんに、隣で聞いていたおばあさんが教えてあげるようになったりと、気軽に過ごせる場を作ることで自然な交流が生まれているようだ。

12号棟には、コミュニティカフェ、認証保育所、病児・病後児保育施設、小児科、クリニック、薬局がある。<br>
<画像左上>コミュニティカフェななつのこの一角。シェアライブラリーの本は、ライブラリー会員になると借りることができる。壁面はギャラリーになっている<br>
<画像右上>個人が制作した雑貨などを販売できるてしごとショップスペース<br>
<画像右下>コミュニティカフェななつのこを運営する方たち。中央が代表理事の鎌田菜穂子さん<br>
<画像左下>カフェのレンタルスペースではこあがりカフェが開催されていた12号棟には、コミュニティカフェ、認証保育所、病児・病後児保育施設、小児科、クリニック、薬局がある。
<画像左上>コミュニティカフェななつのこの一角。シェアライブラリーの本は、ライブラリー会員になると借りることができる。壁面はギャラリーになっている
<画像右上>個人が制作した雑貨などを販売できるてしごとショップスペース
<画像右下>コミュニティカフェななつのこを運営する方たち。中央が代表理事の鎌田菜穂子さん
<画像左下>カフェのレンタルスペースではこあがりカフェが開催されていた

子育て世帯を支援する住環境も整備

東京都子育て支援住宅認定制度を取得した住宅も見学した。一般賃貸住宅のうち、認定を受けているのは5号棟、8号棟(計117戸のうち、50m2以上の住戸100戸が対象)。5号棟の1階には、5号棟に居住している人専用のコミュニティスペース、「マルチルーム」が設けられている。広々とした空間に、デスクとチェア、インターネット設備もあり、自習や読書、パソコン作業などもできそうである。放課後になると、いつも子どもたちで賑わっているという。8号棟にはコミュニティルームがあり、居住者が中心となり、地域の人も参加できるサークル活動などが実施されている。

見学した住戸は2LDK52m2。お風呂は親子で入浴できる広さを確保、トイレも広めのつくりになっている。子どものベランダからの転落を防止するため、エアコンの室外機は柵から離し、手すりの高さなどにも配慮。段差の解消、シックハウス対策など安全面での対応もなされている。子どものコンセント事故を防ぐため、シャッター付コンセントの設置、けが防止の出隅の面取り加工、家具の転倒防止など、細かな配慮もされていた。

コーシャハイム千歳烏山5号棟。ベランダ、コンセントなど、安全性に配慮された設計コーシャハイム千歳烏山5号棟。ベランダ、コンセントなど、安全性に配慮された設計

子育て世帯のコミュニティを求める声に応えたい

2016年、東京都都市整備局は東京都子育て支援住宅認定制度を創設。それ以前の2010年度から2014年度にかけて、「東京都子育て世帯向け優良賃貸住宅供給助成事業(モデル事業)」を実施してきた。その背景には、少子化や今後の人口減少などへの危機感があるという。

「都内の合計特殊出生率は2015年で1.24と全国で最も低く、また2025年をピークに人口減少も予測されています。東京都の子育て世帯向け居住面積は全国平均と比較して狭いこと、乳幼児の不慮の事故死のうち家庭内事故が過半数を占めることから、安心して子どもを育てることのできる環境整備は重要なことだと思っています。また、モデル事業を進める中で、『気軽に相談できる人が近くにいると心強い』や、『同じ住宅内に知り合いがいると安心』など、コミュニティを求める声が多くあがりました。2016年の制度創設の際は、子育て支援施設などの提供を認定基準に含め、ソフト面でも子育てをバックアップできる環境を促進しています。」と、東京都都市整備局の山口大助氏。

現在、認定制度を取得している住戸は440戸。デベロッパーなどの供給事業者へは制度が浸透してきたようで、問合せも徐々に増えてきているとのこと。今後は一般入居者向けにもPRをしていきたいと話す。

<画像上・画像左下>5号棟1階のマルチルーム<br>
<画像右下>子育て支援住宅認定マーク<画像上・画像左下>5号棟1階のマルチルーム
<画像右下>子育て支援住宅認定マーク

少子高齢化に対応した住まいの供給

<画像上>コミュニティカフェななつのこの情報ステーション。地域情報やイベント告知が掲示。絵本の読み聞かせ会や、世田谷区地域子育て支援コーディネーターに相談できる出張ぷちぶりっじなどさまざまなイベントが開催されている<br>
<画像下>ななつのこカフェスペース<画像上>コミュニティカフェななつのこの情報ステーション。地域情報やイベント告知が掲示。絵本の読み聞かせ会や、世田谷区地域子育て支援コーディネーターに相談できる出張ぷちぶりっじなどさまざまなイベントが開催されている
<画像下>ななつのこカフェスペース

東京都住宅供給公社は、「コーシャハイム千歳烏山」だけでなく、築年数が経過し老朽化した団地については、1991年度以降、順次建替えを進めている。建替え後は、高齢者向け住戸や、子育て世帯向け住戸の整備。また、建替えにより創出された空間には高齢者向け施設や子育て世帯向けに保育所の誘致など、現在のニーズに合わせた価値の提供をしている。

「建替えの場合、元々居住していた高齢者世帯と、新しく入ってきた若い世代との交流が生まれにくいという課題がありますが、多世代が集まれる場をつくることで世代間の緩やかな繋がりが生まれやすくなると感じます。子育て中のお母さんから、他の住まいで地域デビューに苦労したけれど、『コーシャハイム千歳烏山』に引越して満足しているという声も聞いています。コミュニティカフェのようなソフト面での支援が住宅についていることで、子育てのストレスが軽減されるのではないかと思っています」と、東京都住宅供給公社 少子高齢対策部担当者は話す。

賃貸マンション「コーシャハイム向原」も、昭和30年代に建設された「向原住宅」の建替えによるものだ。カフェ&レストランや、シアターリビング、キッズスペースなど、住民だけでなく地域の人たちとも交流を育む共用施設を設置している。前述のコミュニティカフェななつのこには、周辺にこういう場所がないから…と、2つ隣の駅から通っているママもいるそうだ。そこに住んでいる人だけでなく、周辺の子育て世帯にとってもコミュニティの場は必要とされているようだ。


東京都住宅供給公社
http://www.to-kousya.or.jp/

コミュニティカフェななつのこ
http://nanatsunoko.com/

東京都の取組み 子育てに配慮した住宅の供給促進
子育てに配慮した住宅のガイドライン
東京都子育て支援住宅認定制度
子育て世帯向け優良賃貸住宅のご案内

2018年 09月15日 11時00分