名古屋の駅前に、タワーマンションが増えている

完成イメージ(模型)。外観はクラシカルなイメージに、1階の共用部や上層の3フロアはホテルのようなゆったりとしたつくりにしている完成イメージ(模型)。外観はクラシカルなイメージに、1階の共用部や上層の3フロアはホテルのようなゆったりとしたつくりにしている

地震大国日本において、以前より懸念されているのが南海トラフ地震だ。駿河湾から静岡県内陸部を震源域とする、マグニチュード8クラスの巨大地震が想定されている。そのため、静岡や愛知といった想定震源域周辺の地域では地震への警戒感が強く、防災訓練や被災時の体制作りなどに取り組んでいる。

地震への対策に注目が集まる中、名古屋の都心にタワーマンションの建築が進んでいる。どのような防災対策がされているのだろうか。2020年12月下旬竣工予定の近鉄不動産「ローレルタワー名古屋栄」ショールームで、建設の背景や最新マンションの防災対策を伺った。

車社会の名古屋でなぜ?都心回帰の動きが活発化

名古屋の方は、南向きであることと、広いリビングを求めることが多いそう。この物件でもリビングを広くとった間取りが人気だ名古屋の方は、南向きであることと、広いリビングを求めることが多いそう。この物件でもリビングを広くとった間取りが人気だ

「当物件に興味を持ってくださるお客様は、まずこの立地に魅力を感じているようです」と話すのは、販売を担当する住友不動産販売株式会社の橋爪英樹さん。「ローレルタワー名古屋栄」は、名古屋駅から約1km圏内という好立地のタワーマンションだ。繁華街の栄エリアまでも同じくらいの距離で、利便性が高い。
エリアとしては御園座という劇場に近く、文化的なイメージがあるため、街灯や歩道がレトロなデザインになっている。それに合わせ、マンションの外観もクラシカルなデザインにして、近代的な他のタワーマンションとの差別化を図っている。
間取りは16プラン用意され、床面積も40m2から123m2までと幅広い。1人暮らしやファミリー層はもちろん、セカンドハウスや投資用に購入を検討している人もいるそうだ。

名古屋都心でタワーマンションが建てられ始めたのはここ10年ほど。それまでは車での移動を想定し、郊外の一戸建てに住む人が多く、大規模な集合住宅の場合も郊外に建てられることが多かったそうだ。

「最近は急速に都心回帰が進んでいますね。リニア新幹線の影響や、名古屋駅周辺の再開発が進んできたことにより、名古屋駅周辺エリアの価値が上がってきたためかもしれません」と近鉄不動産株式会社の岡田基司さん。
他にも、昨今の建築費の高騰により、郊外で家をつくるにもそれなりの費用がかかるようになってきたことや、名古屋でも若者を中心に、車を持たない層が増えてきたという変化もあるそうだ。そのため、都心に住み、車を必要としない生活を送りたい層が増えてきたのではないかとも予想している。

名古屋の購入検討者の特徴として、物件購入にかなり慎重な人が多いという。ショールームを数回訪問してから購入を決める人が多いため、成約までに時間がかかる傾向があるそうだ。また、他エリアに比べ、本人が気に入っても、親や親族の許可を得てから最終決定する人が多いのも特徴的だ。そこで、物件購入の決め手になりうるのが防災対策である。

タワーマンションに多い免震構造。耐震構造との違いとは

角型 鉛プラグ・積層ゴム一体型免震装置の1/2モデル。意外に小さいと感じるが、これが16ヶ所のうち10ヶ所に設置され、効果を発揮する角型 鉛プラグ・積層ゴム一体型免震装置の1/2モデル。意外に小さいと感じるが、これが16ヶ所のうち10ヶ所に設置され、効果を発揮する

南海トラフ地震のような巨大地震が起きると、揺れの周期が長い地震動、いわゆる「長周期地震動」が起こる可能性があると言われている。建物にはそれぞれ揺れやすい周期があり、タワーマンションのような高い建物は揺れの周期が長いため、長周期地震動と周期が一致すると「共振」が起こり、長時間にわたって大きく揺れる。さらに、低層階よりも高層階の方が揺れが大きくなる傾向がある。
一般的にタワーマンションは、眺望などの面から上層階の方が人気だが、その分地震による被害が大きくなることが懸念されるということだ。

地震に備える建物の構造として、耐震・免震といった言葉がよく聞かれる。
耐震構造とは、建物の強度を上げることで揺れに抵抗するもの。一方免震構造は、建物の下に免震装置を入れ、地面の揺れが建物に伝わりにくくすることにより、建物自体の揺れを抑えるものだ。この構造だと、地震との「共振」を防ぐことができる。そのため、最近では多くのタワーマンションが耐震構造に加え「免震構造」になっているという。

地上21階建ての「ローレルタワー名古屋栄」でも、免震構造を取り入れている。免震装置として、大きな揺れを減衰させる「角型 鉛プラグ・積層ゴム一体型免震装置」、揺れを抑制する「滑り天然積層ゴム型免震装置」、建物が地震の揺れと共振することを防ぐ「直動転がり支承」の3種類を16ヶ所に配置し、揺れを建物に伝えないように工夫されているのだ。

「VR免震体験」で地震の恐ろしさと耐震性を実感

耐震性というものは、いくらパンフレットなどで伝えても、どうしても実感しづらい。そこでこのショールームでは、起震車のように地震を起こす装置とVR(バーチャル・リアリティ)を組み合わせて、耐震性を体感できるコーナーを作っている。

早速VRを体験させてもらった。
2つの椅子が並んでおり、左側で耐震構造のみの場合、右側で免震構造の場合の体験ができる。VRゴーグルをかけて椅子に座ると、目の前にはモデルルームが広がった。
まず耐震構造の方から体験。椅子が乗った台が動いて、震度5の揺れから徐々に強くなり、最終的には震度7の揺れが再現される。
「しっかり手すりを握ってくださいね」と言われたとおり、きちんと手すりを握っていないと投げ出されてしまいそうなほど、激しい横揺れだった。目の前のダイニングは、家具や食器が倒れてきてめちゃくちゃになってしまった。
続いて免震構造を体験した。こちらも同じく、震度5から震度7までを体験したのだが、こちらは揺れをほとんど感じない。震度7になってようやく少し感じるという程度だった。耐震構造の方ではすぐに倒れてしまったテーブルの上のワイングラスも、免震構造では倒れていない。

もちろん、耐震構造が悪いというわけではない。しかし揺れが大きくなりやすいタワーマンションの高層階では、それだけでは足りない。体感することによって、高層階における免震構造の必要性を再認識することができた。

地震を起こす装置はそんなに大きいものではないが、震度7の揺れはかなりのものだった地震を起こす装置はそんなに大きいものではないが、震度7の揺れはかなりのものだった

震災発生後の72時間を乗り切る設備

各戸分用意されている防災備品はライトや軍手、ロープのほか、水や保存食、歯ブラシなど。iPhoneやmicroUSBケーブルもあり、急場をしのぐことはできそうだ。2階の備蓄倉庫にはマンション全体で使用する担架やマンホールトイレ、ガソリンなどが保存される各戸分用意されている防災備品はライトや軍手、ロープのほか、水や保存食、歯ブラシなど。iPhoneやmicroUSBケーブルもあり、急場をしのぐことはできそうだ。2階の備蓄倉庫にはマンション全体で使用する担架やマンホールトイレ、ガソリンなどが保存される

地震などの自然災害発生後、国や自治体の支援体制が整うまでには最低でも72時間がかかると言われている。そのため自宅での防災対策は、その72時間をいかに乗り切るかを考える必要がある。

「ローレルタワー名古屋栄」の屋上には、3日間分の電力をまかなえる発電機が設置される。停電時にも非常用エレベーターは止まらないようになっているため、高齢者や子どもがいる家庭でも、高層階から階段を使って避難するようなことにはならなそうだ。住居内には、停電時に使える非常用コンセントや照明があり、スマホの充電などにも困ることはない。さらに屋上にはヘリコプターのホバリングスペースがあり、救援活動や消火活動を円滑に行えるようになっている。
停電や救助の遅れなど、被災時に起こり得る懸念点に考慮されていることは、入居を考える人にとっての安心材料になるだろう。

また、各住戸には最低限の防災備品が割り当てられ、フロアごとの倉庫に備蓄される。大規模な集合住宅で防災倉庫が1ヶ所では、備蓄品の配布だけで時間がかかってしまうため、家庭で必要な備品がフロアごとに保管されるというのは安心だ。また、2階には家庭で準備するのが難しい発電機や災害用浄水器などの機材や、救助活動に必要となるスコップや担架などが保管されるそうだ。

「広い郊外の家ではなく、利便性が高い都心のマンションに住む」という選択をする人が増えてきた名古屋。都心回帰が進み、これからさらにタワーマンションが増えてくるとすれば、免震構造や防災対策がしっかりと施されているかどうかが物件選びの大きなポイントになってくるのかもしれない。

2019年 10月19日 11時00分