時間の蓄積を次世代の価値に昇華させる…共用部まですべて“一棟まるごとリノベーション”マンション
2013年6月、一戸建て木造住宅のリノベーションも手がけてきた住友林業株式会社が、リノベーション事業のキーワードを『伝え、育む家』とするリリースを行った。
前年4月にはリノベーション営業部も新設し、既存住宅の有効的活用にも力を注いでいる同社だが、“古い物を壊さずに将来に伝える” との想いを表現した『伝え、育む家』の思想をマンションに取り入れた物件が名古屋にある。それが名古屋市守山区で分譲中の【フォレストヘイヴン瓢箪山】だ。
『緑の丘と、はぐくみの家』をコンセプトとした同マンションは、築23年となる某大手企業の社宅を、専有部だけでなく共用部まですべてリノベーションする“一棟まるごとリノベーション”が特長で、本格的な大規模リノベーション物件としては住友林業初となる。
2回にわたり、子育て真っ最中の筆者も感銘した同マンションに注目してみようと思う。
マンションコミュニティを円滑に、子どもに優しく。戸建住宅で培った独自の設計思想に基づく『ハグくみの庭』

4階建ての2棟間に駐車場がある堅実的な社宅をリノベーションするにあたり、同社が大いにこだわったのは、一戸建て住宅で提案してきた『ハグくみの庭』。
これは、特に乳幼児期の“五感とからだ”を発達させる仕掛けを庭に設け、自宅の庭で遊び・学び・笑い・駆けることで子どもの成長の基礎を作るという独自の設計提案。同マンションでは、これまで駐車場だったスペースを『ハグくみの庭』に変え、その中庭を2棟が包みこんでいる。全邸のバルコニーが中庭側に設置されているため、どの住戸からも“住人共有の広い中庭”を望めるようになっているのが特長だ。
そんな『ハグくみの庭』には、芝生のじゅうたんが広がり、豊かな樹木・こんもりとなだらかな丘・水遊びができるシンク・ベンチやデッキもあって子ども達のワクワクを刺激する設計。敷地内のいわゆるセキュリティライン内に住む人が集い、子どもが存分に遊べる庭では、実のなる果樹の収穫体験もできるようになっている。自然と触れあい、育み、恵みをいただくことも自宅で学べるという点もとても興味深い。
住友林業×ブルースタジオ のコラボレーションによる時間をかけて住みこなし、“自分らしさ”を編集する住空間
このリノベーションマンションを誕生させるにあたり、住友林業がタッグを組んだのは、2000年から首都圏を中心に数々のリノベーションを手掛けてきた建築設計事務所【ブルースタジオ】。
企画・設計監修を担う同社では、『暮らし方・住まいの使い方をデザインする』のが一つのコンセプトだと言う。
「問題を解決する」リフォームとは異なり、リノベーションは「敢えて中古物件を選んで住みこなす」もの。
改修することを前提に中古物件を取得するゆえに、もっと積極的に「自分らしく楽しく住みこなそう!!」という想いで住まいと向き合うと良いのではないだろうか。
実際、同マンションの内装は至ってベーシック。
最上階にはグルニエ(屋根裏部屋)・1階には専用庭があるものの、基本は全て同じ間取り。水まわりを快適にし、便利な住設備を標準装備し、セキュリティを強固にするなどイマドキ仕様に修繕はしつつ、その他は「自分達で住まいを染める・育てる」ようになっている。
作り手から与えられる「整った真新しい家」ではなく、住み手が「自分達で手を加え、住みこなしていく家」

そんな“自由さ”を楽しむには、素材の良さは大切。
例えば、フローリングにはカバザクラの無垢材を用い、本物の質感でどんなインテリアをも引き立てられるように。また、壁には「オガファーザー」というおがくずを練りこんだ自然素材の壁紙を採用。調湿性に優れた風合いたっぷりのこの壁紙は、実は下地材。だからこそペンキや漆喰も塗りやすくなっているのだ。
面積の大きい壁ゆえに色や質感が変われば、部屋の印象も大きく変わるもの。それを自由に・気軽に・何度でもできるのは魅力的。しかも、素人が塗る完璧でない塗り方が、良き味となるのも楽しいものだ。
自分達で手を加え、カスタマイズしながら、大らかに住めるのもリノベーション物件の醍醐味。
美しく整った新築物件とはまた違う、“自分達で足していく”住まいは、「手を掛けてナンボ」なところが子育てにも似ている気がする。
惜しみなく手をかけ、情を注ぎ、愛着をどんどん深めながら、時間をかけて家育てを楽しむのも面白い。
■フォレストヘイヴン瓢箪山 公式HP
http://sfc.jp/renovation/forest-haven/
2013年 10月31日 11時07分