願いは「在宅で暮らしたい」

築50年以上を経過した「烏山住宅」を建て替え「サービス付高齢者向け住宅」に築50年以上を経過した「烏山住宅」を建て替え「サービス付高齢者向け住宅」に

2025年には、65歳以上の人口が3,657万人、75歳以上が2,178万人を超え(国立社会保障・人口問題研究 2013年3月推計)、超高齢化を迎える日本。その中で高齢者向けの住居が求められているが、これまで主流となっていた「特別養護老人ホーム」や「グループホーム」などはあくまでも“施設”にすぎない。

2011年度に東京都福祉保健局が行った「高齢者の生活実態 東京都福祉保健基礎調査」によれば、高齢期の住まいについて「在宅で暮らしたい」と回答する人が持ち家では約8割、借家では6割強にのぼるというが、そうしたニーズの受け皿となる、高齢者向けの“住まい”が少ないのが現状だ。

そこで、最近話題となっているのが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の存在だ。食事や清掃から医療・介護サービスまで一貫して提供する「施設」型に比べ、サ高住はあくまでも“住まい”の提供であり、「安否確認・生活相談」を基本に介護や医療サービスなどを外部のサービス事業者から選択できる。つまり要介護認定を受けても在宅で生活できる環境を備える住まいだ。

サ高住では、施設とは異なりどのような生活ができるのだろうか? 東京・千歳烏山に多世代共生型の「サービス付き高齢者向け住宅」が登場したというので、現地を訪ねてみた。

50年団地が多世代共生型“サ高住”にリニューアル

入居者だけでなく、地域にも開かれたコミュニティカフェなどを併設入居者だけでなく、地域にも開かれたコミュニティカフェなどを併設

京王線千歳烏山駅から徒歩5分の場所にある「サービス付き高齢者向け住宅コーシャハイム千歳烏山」。ここは、1956年竣工の東京都住宅供給公社(JKK東京)が管理する「烏山住宅」(21棟・584戸)の建て替えプロジェクトの一環として整備されたもの。多世代共生をコンセプトに、9号棟~12号棟の94戸が2014年2月までに竣工し、一般賃貸住宅8戸と高齢者向け住宅86戸が共存する。

敷地内には、多世代共生を目指し、認証保育所やレストラン、コミュニティカフェを併設するほか、居宅介護支援などを行う高齢者施設、クリニックなどを備えている。

事業のスキームとしては、建物の所有者であるJKK東京から「東京建物不動産販売」が借り受け管理運営を行い、「やさしい手」が在宅介護サービスを提供、医療法人社団「はなまる会」が医療サービスを提供する。

入居者の反応は良く、既に行われた一期募集では満室、今後5月をめどに第二期募集(30戸程度)を行う予定だ。

JKK東京の狩野信夫少子高齢対策部長は、コーシャハイム千歳烏山でのサ高住の意味合いを次のように説明する。
「在宅で暮らし続けたいと願う都民が多いにも関わらず、夫婦どちらかに介護が必要になると特別養護老人ホームへの入所を希望せざるをえない。高齢者が住み慣れた地域で安心して住める住宅が必要でした。また、単に高齢者が生活する環境だけでなく、多世代が交流できる自然な住環境を目指すことが重要。医療・介護のサービスは入居者だけではなく周辺地域に開放されるものを念頭においています」

コンシェルジュカウンターに、広めの居室が人気

夫婦入居を想定した10号棟の1LDK(46.13m2)モデルルーム。キッチンからの動線などにこだわったほか、ウォークインクローゼットなども完備夫婦入居を想定した10号棟の1LDK(46.13m2)モデルルーム。キッチンからの動線などにこだわったほか、ウォークインクローゼットなども完備

今回、リニューアルされた9~12号棟の4棟の位置づけとしては、9号棟と10号棟が全戸高齢者向けとなる。どちらも入口にはコンシェルジュカウンターがあり、基本、介護福祉士の資格をもった担当者が日中常駐し、緊急連絡を受けるほか、クリーニングや宅配便の受け取りやタクシーの手配といったサポートも行う。

9号棟は比較的要介護度が高い入居者を想定し、1階に「やさしい手」の介護事業所、デイサービスの「ゆめふる千歳烏山」が入っているため安心度も高い。コンシェルジュがカウンター業務を終えた夜間も24時間×365日この介護事業所でサービス付き住戸すべての緊急コールに即時対応するほか、定期巡回、訪問入浴サービス、デイサービスを提供する。またレストランも併設されており、入居者に暖かい家庭料理を提供するほか、地域の方にも開放するためコミュニケーションの場としても想定されている。

サービス付き居室は、25m2~67m2とゆとりをもった専有面積。もちろんバリアフリーを実現し、緊急呼び出しボタンを備えるほか、天井には人感センサーを設置。10時間、人の動きが感知できない場合にはすぐさま異常が事業所などへ知らせられる。

10号棟では、比較的要介護度の低い入居者を想定し、面積も40m2を超える1LDK~2LDKの居室が充実している。これは、夫婦での入居を想定しているためで、キッチンで調理した料理を要介護者のベッドまで運ぶときの動線を意識するなど工夫が凝らされている。なかなか高齢者向けの住宅ではこうした広めの居室が少なく、ここも好評を得ているポイントだという。

医療と介護の連携する「安心」体制

9号棟と10号棟には、コンシェルジュカウンターが。この奥には介護事業所があり、夜間でも24時間×365日のサポートをする。9号棟と10号棟には、コンシェルジュカウンターが。この奥には介護事業所があり、夜間でも24時間×365日のサポートをする。

11号棟は、一般住宅との共生を目指した多世代交流型住居だ。一般賃貸住宅が8戸と、高齢者向け15戸からなる。従前の躯体を活用した住戸改善棟であり、入居者の交流の場として菜園や共有リビングが設けられている。一般住戸の入居者はJKK東京が公募するもので、多世代共生に共感し、防災活動にも理解を示せる子育て世帯を中心に入居を進めたいとしている。高齢者と子供が一緒になって菜園作りを楽しむといった光景が見られる日が楽しみだ。

一方、12号棟が目指すのは、地域の暮らしの交流ステーションだ。ここには居室はなく、はなまる会の「烏山はなクリニック」、保育所、薬局、コミュニティカフェなどが集う。「烏山はなクリニック」では、在宅介護の「やさしい手」と連携を取りながら、訪問介護・診療・往診などを実施する。医療と介護の連携が確立されているのも入居者の「安心」を確かなものにする。
また、はなまる会では近隣の千歳台に有床診療所を開業しており、レントゲン・3次元CTなど高度な検査機器があるため、入居者の転倒など緊急時にも迅速な検査対応が行えるという。

このほか12号棟に入るコミュニティカフェ「ななつのこ」では、コミュニティコンシェルジュが常駐し、入居者に限らず地域の情報収集・発信、イベント・セミナーの企画や運営もサポートする。

一時金は不要、一般賃貸物件並みの室料

入居者が利用できる菜園。管理はコミュニティ運営会社が行うという入居者が利用できる菜園。管理はコミュニティ運営会社が行うという

コーシャハイム千歳烏山の賃料は、専用面は約25~67m2で67,800~184,600円。管理費は29,800円。サービス料は1人入居が33,000円、2人入居が48,000円。オプションの食事代は60,000円となっている。もちろん施設と異なり一時金は必要ない。価格面でも「一般の賃貸物件の相場にあわせている」という。

経済的負担が少ないほか、施設とは異なり、サービス選択や家族と過ごせる自由度が嬉しい“サ高住”。さらに多世代交流にも期待できるとなれば利用価値は高い。高齢者のみの世帯が増える日本の現状で、こうした「在宅介護」のニーズをくみ取れる住宅が増えることは、高齢者にとっての“施設”ではなく“住まい”を考える上でとても重要だと思う。

2014年 04月18日 10時35分