「すまい くらし相談室」とは

前回、高蔵寺ニュータウン再生活動に取り組む、NPO法人高蔵寺ニュータウン市民再生会議(通称「どんぐりs」)について紹介した。そして今回は、どんぐりsの具体的な活動内容について取り上げる。さまざまな活動があるなかで2016年度に力を入れて取り組んでいるのが、無料の「すまい くらし相談室」だ。

「すまい くらし相談室」とは、どんぐりsが立ち上げた住民による住民のための困りごと相談窓口。相談員は高蔵寺ニュータウンに住む各分野の専門家が務め、たとえばくらし相談員であれば、心理カウンセラーや民生委員・介護相談員など、すまい相談員であれば、改修工事や設計監理といった得意分野を持つ一級建築士が登録している。

相談方法は電話相談と面接相談があり、どちらもまずは専用の電話に連絡する(受付時間は9時~16時)。面接相談を希望する場合は最初の連絡の際に日時を調整し、電話相談を希望する場合でも内容によっては直接話を聞くという柔軟な対応をしている。

相談場所は、春日井市が管理する市民活動拠点施設「東部ほっとステーション」または、高蔵寺ニュータウンの民家「いつだっていま」という活動拠点の2カ所。

始まって間もない取り組みなため、相談件数はまだ10数件ほどだそうだが「潜在している需要はあると思う」と、くらし相談室の相談員で社会福祉士・精神保健福祉士の浪川さんはいう。

高蔵寺ニュータウン内のショッピングセンター・サンマルシェに設けられている「東部ほっとステーション」高蔵寺ニュータウン内のショッピングセンター・サンマルシェに設けられている「東部ほっとステーション」

生活の困りごとに対応する「くらし相談室」

「相談室は昨年から始まったばかりで、どんぐりsがこういう活動をしているという広報があまりできていないこともあり、くらし相談室の利用はまだ3件ほどです。こういう窓口があるので相談に来ませんかと呼びかけても、プライベートなことを初対面の相談員に話すというのは抵抗があるでしょう。ですから、ある程度の信頼関係ができたところで相談を受けるのがいいと思いますが、なかなかそこまでたどり着けないケースが多いですね。でも、潜在している需要はけっこうあると思うんです。ですから、今後は相談に来られるのを待つのではなく、こちらから積極的に訪問して、悩んでいる人や困っている人の掘り起こしをしようかと考えています」(浪川さん)

「くらしの相談員を担当している私たちは、さまざまなところに足を運び、くらしのサポートについて勉強しています。先日は、医療チームとケアチームが組みになって被災地に出向き、困りごと相談に乗るという活動を行っている団体に話を伺いにいったところ、『ケアに関する相談は気軽にはしづらいためほとんどない』とおっしゃっていました。ですから私たちも、たとえば『夜はよく眠れていますか』といった世間話から困りごとを引き出していくなど、待っている姿勢ではなく、こちらから働きかけていく方法を模索しているところです」(藤城さん)

生活支援事業を立ち上げるための前段階で、すまいとくらしの勉強会を重ねてきたという生活支援事業を立ち上げるための前段階で、すまいとくらしの勉強会を重ねてきたという

住宅の困りごとに対応する「すまい相談室」

一方、すまい相談室のほうは、これまでに10数件ほどの相談があったそうだが、世間の“住宅に関する無料相談”に対するあるイメージに頭を悩ませていると相談員の寺島さんはいう。

「世の中全般、すまいの無料相談なるものは怪しげなんです。表面はたしかに無料なんですが、いざ相談に行くと、専門の業者に相談したほうがいいというようなことを言われ、結局は本来必要のない改修工事などを勧められて莫大な費用を取られてしまう、ということが実際にあるんです。私どもの場合、どこの業者にも属していないNPO法人が行う無償の相談ですから、そういう怪しげなものではないんですが、やはり世間一般のイメージでどうしても信用されない部分がありまして、それを払しょくするのが難しいですね」

では、寺島さんがいうNPO法人が行う無償の相談とは、どういうものなのか。

「すまいの相談というのは小さなものから大きなものまであり、実は私たちの相談窓口で解決できることは少ないんです。ですから対応としては、オフィシャルな機関へつなげるということになります。たとえば、春日井市では空き家バンクというニュータウンに特化した制度ができたので、そういったところとタイアップしてバトンタッチするなどです。私どもに対応できるのは無料でできる範囲ですから、信頼性と公平性を保つためにはその一線を超えないことを強く意識しています。そのほかに私どもの重要な役割として、セカンドオピニオン的な活動というものもあります。たとえばどこかの業者に改修工事の見積もりを取った場合、私どもがその内容を確認して適切かどうかを判断するということもしています」

すまい相談室では「業者が訪ねてきて外部の不具合など修理を勧めてくるけど、どうしたらいいの?」<br />「我が家は地震に大丈夫かしら。耐震診断や耐震補強にいくらかかるの?」といった相談を受け付けているすまい相談室では「業者が訪ねてきて外部の不具合など修理を勧めてくるけど、どうしたらいいの?」
「我が家は地震に大丈夫かしら。耐震診断や耐震補強にいくらかかるの?」といった相談を受け付けている

“高森台県有地の活用を提案する市民の会”の桃源郷プロジェクト

そうしたどんぐりsの取り組みのほかに、どんぐりsから派生したといえる“高森台県有地の活用を提案する市民の会”という団体の活動が面白いと思ったので、そちらも紹介しよう。

高森台というのは、高蔵寺ニュータウンの東北部に位置する7万9千平米もの広さがある県有地で、高蔵寺ニュータウンの創成記の頃から何の利用もされていなかった。その高森台県有地の有効活用しようと立ち上がったのが同会で、代表を務めているのは、どんぐりs副理事長の寺島さんである。

2014年には広大な敷地の一画に高齢者福祉施設「どんぐりの森」が開設され、現在、寺島さんがそこで“桃源郷プロジェクト”という市民参加型の活動をスタートさせている。筆者が取材で訪ねた6月には“花咲か作戦”を実施中とのことだった。
「私たちの目標は高森台県有地を花桃でいっぱいにして『桃源郷』にすること。もちろんコミュニティガーデンの機能も備えます。現在は、その第一歩としてヒマワリの苗を里親に育ててもらう“花咲か作戦”を行っています。3週間ほどご自宅で育てていただいた苗を、どんぐりの森に定植するという活動です。この夏は、住民の手で育てられた200本のヒマワリが『どんぐりの森』の入り口で多くの方々を楽しませてくれることでしょう」(寺島さん)

今回、どんぐりsや、高森台県有地の活用を提案する市民の会の取り組みについて話してくださった方々は、実年齢は失礼ながら一般に高齢者といわれる年代の方ばかり。ところが、実際に活動を行う様子や、未来の高蔵寺ニュータウンの理想像を語る姿は、まるで30代、40代の働き盛り世代のようにイキイキとしていてとてもカッコ良かった。

若い世代の方々も、ぜひどんぐりsの活動に参加して高蔵寺ニュータウンの再生に向けて力を発揮してほしいと思う。活動を通して皆さんの姿を目の当たりにすることで、学ぶことや吸収できることがたくさんあるはずだから。

【取材協力】
高蔵寺どんぐりs(NPO法人 高蔵寺ニュータウン再生市民会議)



高森台県有地の活用を提案する市民の会



【関連リンク】

春日井市

「花咲か作戦」の様子。参加者が力を合わせて植え付け場所作成、堆肥置き場作成、定植などを実施「花咲か作戦」の様子。参加者が力を合わせて植え付け場所作成、堆肥置き場作成、定植などを実施

2016年 07月14日 11時05分