後継者不足などで減少傾向の銭湯。そんな銭湯の魅力を探る

東京都足立区の大黒湯。趣のあるつくりを見るのも銭湯を訪れる魅力といえるだろう東京都足立区の大黒湯。趣のあるつくりを見るのも銭湯を訪れる魅力といえるだろう

江戸時代に大繁盛したという銭湯も、最近は減少の一途をたどっている。例えは東京都の場合、昭和29年に約2,200軒あった銭湯が、現在では560軒ほどに。内風呂の増加や重労働による後継者不足などが減少の原因として挙げられている。

減り続けている銭湯だが、もちろん根強いファンもいる。また「風呂に入る」という銭湯の一番の役割以外にも、「地域住民とのコミュニケーションの場」「災害時の避難場所」「高齢者の見守り」などにも役に立っているのをご存知だろうか。
(過去記事で紹介/「無くなりゆく銭湯が果たす社会的な役割。東京都浴場組合に聞いたこれからの銭湯とは」

そんな銭湯の魅力を、幼少の頃から銭湯に親しみ、銭湯の魅力を発信する「東京銭湯」のライターとして3年前の立ち上げから関わり、たくさんの銭湯を訪れている銭湯愛好家、鹿島奈津子さんにお聞きした。

銭湯は子ども連れでも問題なし!見るだけで楽しい外観や内観、露天風呂がある銭湯も

小さな頃から銭湯に親しんできた鹿島さん。同じ銭湯愛好家でも「お遍路型」と「定点型」に分かれると教えてくれた。
「『東京銭湯お遍路マップ』などを見ながら各地の銭湯巡りを楽しむ人もいれば、お気に入りの銭湯に通い続ける人もいます。私はどちらかというと定点型で、昔より回数は減りましたが、現在も2週間に1度ほど子どもを連れて近所の銭湯に通っています」

銭湯の楽しみについて、独身時代と結婚してからで少し変わったそうだ。
「独身の時は、ただリラックスするために通っていました。特に誰かと話をするわけでもなく、知らない人達と一緒に裸で過ごす時間そのものを楽しんでいたように思います。

結婚後、子どもができてからは、子育ての忙しさからわずかな時間開放される、一息つけるニュートラルな空間として楽しんでいます。『お子さんを見ていてあげるから頭洗いなよ』『お子さん何歳なの』などと、子どもを見てくださる大人がいることにも助けられています。子どもを連れて行くだけで、その場の空気が和むことも多いですね。子どもが泣いていても皆さん優しいですし、子連れのママとはママトークも弾みます。子どもに『銭湯の中で走ってはダメ』『体を流してから浴槽に入ること』など、みんなのお風呂であるというマナーを教えられるという利点もあります。あと、意外と知らない人が多いようですが、スーパー銭湯は『オムツの外れない子どもはNG』のことが多いものの、銭湯は赤ちゃんを連れて行っても大丈夫なんですよ」

定点型の鹿島さんだが、もちろん銭湯愛好家として「遠征」も行う。
「露天風呂のある銭湯は気持ちいいですね。上野駅そばの寿湯さんや、中目黒駅近くの光明泉(露天風呂は週により男女で交代)さんはお薦めです。蔵前駅から行ける三筋湯さんは重厚な外観や梁が見える高い天井など、建物自体にも魅力があります。『趣のあるきれいさ』とでもいうのでしょうか、古くてもきれいで味わいのある銭湯が多いように思います」

上2点が寿湯、右下が光明泉、左下が三筋湯。露天風呂のある銭湯にも行ってみては上2点が寿湯、右下が光明泉、左下が三筋湯。露天風呂のある銭湯にも行ってみては

「風呂なし物件+銭湯」で内見をするツアーも。家賃を抑えながら住みたい場所に住めるのも風呂なし物件の魅力

上写真が大黒湯(東京都足立区)、下写真がタカラ湯(東京都足立区)。重厚な外観を見るだけでも楽しい上写真が大黒湯(東京都足立区)、下写真がタカラ湯(東京都足立区)。重厚な外観を見るだけでも楽しい

東京銭湯では、およそ2年前から「風呂なし物件ツアー」を開催。風呂なし物件の魅力を発信している。その根底にあるのが、どうすれば銭湯が生き残れるか、という想い。風呂なし物件と銭湯をセットで見学し、「このお家のお風呂はここです」と銭湯を紹介。家のお風呂の代わりに銭湯があるという、ある意味贅沢な暮らしを提案している。

「風呂なし物件に住む一番のメリットは、やはり家賃の安さでしょう。都内では、お風呂がある物件よりも1万5,000円~2万円ほどは安いと思います。例えば人気の自由が丘でも1Kで3万円ほどで探すことが可能です。東京都の銭湯代は460円。回数券(10枚で4,300円)を買えば毎日銭湯に通っても430円×31日で13,330円。家賃と合わせても4万3,000円ほどで、自由が丘で暮らすことができます」

また、入浴を自宅ではなく銭湯で行うメリットも紹介するそうだ。
「光熱費が下がること、大きな浴槽で足を伸ばしてゆったりと湯に入れること、また面倒な風呂掃除をしないで済むというメリットもあります。髪の毛やカビの除去など、面倒な掃除をせずに460円で気持ちのよいお風呂に入ることができるのです。そのような話をすると『そういう暮らし方もありですね』『風呂なしの銭湯生活も楽しそう』などという反応をいただくことが多いですね」

銭湯が地域の盛り上げに一役。様々なイベントを開催する銭湯も

地域を盛り上げている銭湯の一例として、鹿島さんが教えてくれたのが埼玉県・川口市にある「喜楽湯」。1950年代から運営されている喜楽湯は現在「東京銭湯」が経営。「お風呂がない人たちのための銭湯」であるだけでなく、「地域のみんなが集まる場」「裸で対等に付き合える場」としての、新しい銭湯の形を提案しているという。

喜楽湯では、映画の上映や落語の開催、フリーマッケートやビアガーデン、花火大会など、お風呂を通じて地域を盛り上げつなげる場として、また銭湯を利用しない人に銭湯を知ってもらうための様々なイベントを開催している。銭湯を通じて地域の人が集まり、地域を盛り上げる役割を果たしているといえるだろう。

「エンターテインメントを求めるなら、銭湯はスーパー銭湯には及ばないと思います。レジャーに近いのがスーパー銭湯なら、生活レベルに近いのが銭湯です。生活や暮らしの中にある非日常感、エンターテインメント過ぎない空間を求めるなら、銭湯はとてもポテンシャルが高いと思います」

喜楽湯で行われているイベントの様子。地域を盛り上げる銭湯のひとつだ喜楽湯で行われているイベントの様子。地域を盛り上げる銭湯のひとつだ

「暮らしに銭湯があるだけで気持ちがフラットになれた」

リノベーションデザイン会社に勤務しながら、東京銭湯のライターとして銭湯の魅力を発信し続けている鹿島奈津子さん。「暮らしの一部に銭湯を加えたら楽しいと思いますよ」リノベーションデザイン会社に勤務しながら、東京銭湯のライターとして銭湯の魅力を発信し続けている鹿島奈津子さん。「暮らしの一部に銭湯を加えたら楽しいと思いますよ」

「体が疲れている時、人間関係などに悩んでいる時、仕事で心身ともに疲弊している時など、ぜひ銭湯に足を運んでみてはどうでしょうか」と鹿島さん。ご自身も育児に追われている時に銭湯に足を運んだ際、「お休み」と一声かけられただけで「今日は大人と話せた」と心が和んだと話す。
「銭湯は体だけでなく、心のリフレッシュにもつながるので、大人だけでなく子どもにもよいと思います。お子さんも、『疲れた』『学校が楽しくない』などと悩んでいる時に銭湯に行って色々な人と触れ合うことで、『色々な人がいていいんだ』などと気持ちが軽くなるのではないでしょうか」

銭湯では「癒し」のほか、「コミュニケーション」を求めている若い人が多いようにも感じるという。
「地域コミュニティが昔に比べて希薄になった分、地域の人との交流などを求める若い人が多いようにも感じますね。地域の人とのコミュニケーションの場としても、銭湯はとてもよい場所だと思います」

最近は、若い世代にも注目されつつあるという銭湯。日々のリラックスに、地域の人との交流に、また風呂なし物件の心強いパートナーとしても見逃せない日本の伝統文化でもある銭湯に、改めて注目してみてはどうだろうか。

■東京銭湯
http://tokyosento.com/

■東京銭湯ふ動産
http://tokyosento.life/
(「住」の中心に銭湯を提案する、新しい暮らしを創出する不動産サイト。鹿島さんも不動産会社の一員として協力している)

2018年 07月30日 11時05分