宿泊者の9割が海外からの訪日客。SNSの口コミで埋まるゲストハウス「コステル美野島」

1階はフロント兼カフェ&バー。シャッターを開けるお店の音や、商店街を走る自転車の音など、まちの息遣いを感じることができる1階はフロント兼カフェ&バー。シャッターを開けるお店の音や、商店街を走る自転車の音など、まちの息遣いを感じることができる

福岡市一の繁華街・天神と、JR博多駅のほぼ中央に位置する「美野島」。美野島は、都心部にありながら中心部から少し外れているため、正直、あまり目立つエリアではない。福岡市内の人でも知らない人が多い。そんな美野島には、昔ながらの雰囲気で活気づいている商店街がある。その商店街の入口にあるのが、ゲストハウス「コステル美野島」だ。

2013年7月に開業して以来、SNSや口コミでその存在が広がり、地元タウン誌やメディアから取材を受けたり、様々な人から情報発信されてコステル美野島の存在は、いつの間にか日本を超えて海外まで広がった。2016年4月現在、宿泊者の9割が海外の人だという。

「外国人客を想定はしていたが、こればっかりは予想外だったんですけどね」と貞國さんは笑う。しかし、外国人の視点から見る日本の面白さを知る貞國さんには、美野島が何故外国人の人たちにとって面白いのかよくわかるという。「先日もイタリアからSNSを通して『予約できますか?』と連絡をいただいたのですが、外国人の人は日本の人がどんな暮らしをしているのか、旅行を通して日本人の日常(ライフスタイル)を見たいのだと思います。日本の昔ながらの人情豊かな商店街の中にあるコステル美野島は、まさに打ってつけの場所。美野島にはまだ日本人の人が気付いていない面白いポテンシャルが残っていると思います」。

「コステル美野島」は、人口減少、成熟社会の中での新しい「家」のカタチの社会実験

さて、一見関係ないような話に聞こえるが、ここでこれからの「家」について考えたい。

年齢とともに収入は上がり、不動産価値が上がることが前提だった日本社会も今は昔。2016年の現在、雇用は不安定になり、東京オリンピックが控えているとはいえ、少子高齢化によって人口は減っていき、住む人がいなくなれば、当然、全国的に見ても地価は未来へ向けて下がっていくと予想される。右肩上がりだった「家」を建てても住宅ローンを想定通りに返済できた。でも、これからの右肩下がりの時代は? ――

そんなこれからの右肩下がりの時代に対応した新しいカタチの「家」こそがコステル美野島だという。コステル美野島は、ゲストハウスとはいえ、大きさは「2階建ての一軒家」サイズ。“子どもが独立をし、空いた部屋をシェアハウスやゲストハウスとして運営できたら、夫婦は収入を確保できるためそのまちに留まり、かつ周辺の空家も展開できたらまちが活性化するのではないか?”を前提に始めた新しい「家」のカタチのプロジェクトなのだ。当初は建売りをする予定で始めたのだが、「ゲストハウスになるゴールの姿と、家がまちが活性化するという姿を誰もイメージできなかったので僕が社会実験をしているのです。いままでの家は購入することにより返済に縛られるためずっと働き続けないといけなかった。右肩上がりの時代はそれでも良かったがこれからの右肩下がりの時代には変化に対応できる家こそが必要とされるのではないか」と話す。

各部屋におふろ、シャワー、トイレ、バルコニーが付いている「コステル美野島」。料金は1泊7500円~各部屋におふろ、シャワー、トイレ、バルコニーが付いている「コステル美野島」。料金は1泊7500円~

なぜ、美野島商店街を選んだのか?

15年にわたる不動産会社勤務を経て、まちづくり&空き家ディレクターとして活動する貞國さん15年にわたる不動産会社勤務を経て、まちづくり&空き家ディレクターとして活動する貞國さん

貞國さんの話を聞くにつれ、「なぜ、美野島商店街という立地を選んだのだろう?」と疑問に思った。元気な商店街が良いなら、美野島商店街よりも活気づいているところは他にもある。そう伝えると、美野島には他の商店街にはないポテンシャルがあると教えてくれた。
それは、人情あふれる日本の昔ながらの雰囲気が残っておりアクセスも良く、フランチャイズの店がなくて自然(川)があり、かつ、高齢化により空き店舗が増えているということという理由だった。旅の楽しみのひとつに宿泊があるが、“旅先でのまち歩きを楽しめる宿泊”を提案したいという。

昔から外国旅行が好きで、いろんな都市や村に出かけたという貞國さん。好奇心旺盛な貞國さんは、ベルリンやNYで不動産屋に行き、物件を見たときのことを話してくれた。
「日本と違って海外では不動産屋が案内しないのが一般的でしょう。そのときは、一人でアパートを観に行ったんです。到着をすると、ちょうど住人同士がBBQをしているときで、彼らはお酒を飲みながら部屋へ案内してくれました。彼らと接していると。住人を楽しませることこそ長く住んでもらえるきっかけになると気づいたんです」
楽しい場づくりに、コミュニケーションは欠かせない。貞國さんが手掛けているスタジオアパートメントKICHIやコステル美野島などは一貫してホストマネージメントを展開している。

「僕は北九州の木造市場で育ちました。1階が市場で、2階が居住スペース。隣近所みんなが家族のようで、楽しい少年時代を過ごしました。核家族の時代を経て、今はシェアが見直されていますが、人は本来、集まって生活する方が楽しいのではないかと思います。震災が起きたとき、一人では人間は無力。これからの不動産屋がしないといけないことは「箱」の産業ではなく「場」の産業を展開しないといけない」と話す。

「コステル美野島」を人気物件に仕上げて、エリアブランドの価値を高める。貞國さんが描く、美野島商店街の未来のカタチ

これからのまちづくりは街とは関係ない不動産屋に任せるのではなく、商店街が主体となって僕のようなまちの不動産屋と組んで空き店舗の募集や空家の管理、運営を行い、利益をシェアして新しい収入源をつくりエリアマネージメントをしていく。「引っ越してくるまでは、どんなテナントが入るのかわからないという状態よりも、自分たちの街に根付く店は、自分たちで選ぶ方がずっと魅力的だと思う」と話す貞國さんは、地域の人たちと力を合わせて、商店街を再編集したいと今後の展望を語る。

「あの店舗、欲しいよね」と思ったら、自分たちで誘致をする。物件を売りたいときは、窓口となる商店街を通して売却してもらう。天ぷら屋さんや豆腐屋さんなど、高齢化により技術を継承する人がいなければ、跡を継いで仕事をしたい人を外から募り、未来へとつなげていく。これらの発想の根底を支えるのは、まちを再想像するセンスと雑多で面白みのある匂い。商店街周辺にある空き部屋を宿泊施設にできれば「コステル美野島」はフロントとしての役割を果たすこともできそうだ。

「立地の良さを活かして再編集すれば、美野島は台湾の夜市のようになれるポテンシャルがあると考えているんです。エリアの魅力を高めるために、これからも不動産の新しい取り組みをしたい」と貞國さん。商店街というファクターを使った貞國さんの取り組みに、今後も注目をしたい。

取材協力_コステル美野島&貞國 秀幸さん
https://ja-jp.facebook.com/COSTELMINOSHIMA

商店街の中には、大正時代から続く食堂や、八百屋、パン屋など店が軒を連ね、今も賑わっている商店街の中には、大正時代から続く食堂や、八百屋、パン屋など店が軒を連ね、今も賑わっている

2016年 05月06日 11時04分