京都御所近く旧出版社ビルをリノベーションしたホテル

京都丸太町の京都御所近くにできた「RAKURO 京都」京都丸太町の京都御所近くにできた「RAKURO 京都」

ここ数年、観光インバウンドの需要もあり、一般の旅館やホテルだけでなくゲストハウスや民泊など宿泊施設のバリエーションも増えつつある。国土交通省観光庁から2018年3月3日に発表された「宿泊旅行統計調査 平成28年・年間値(速報値)」によると外国人延べ宿泊者数は、7,088万人泊(前年比+8.0%)となり、調査開始以来の最高値であったという。客室稼働率は全体で60.0%と、こちらも平成22年の調査対象の拡充(※1:調査対象を従業者数9人以下の宿泊施設にも拡充)以降の最高値となっている。

特に稼働率が高い都道府県は、1位が大阪府(84.1%)、2位が東京都(79.4%)、3位が京都府(70.9%)とビジネス・観光に足回りの良い地域が上位に並んでいる。特に観光客の多い京都府は、宿泊施設全タイプでも70.9%と高いが、シティホテルでは87.6%、ビジネスホテルでは84.6%とより高い稼働率。特に京都市内では、主要ホテルの客室稼働率は88.8%とより高い水準となっている。

その京都に新しいホテルがオープンした。京都丸太町の京都御所近くの某出版社が本社ビルとして利用していた築31年の物件。このビルを用途変更も行い変更した『RAKURO 京都』である。2018年4月20日に一般の宿泊の前に行われたプレス向けのお披露目と発表会に参加してきた。

マーケットターゲットは少人数グループの、女子旅や外国人旅行者

株式会社リビタが展開する旅の拠点、「THE SHARE HOTELS」は今回で5軒目。
「THE SHARE HOTELS」の目的は"Co-Creation Platform=新しい価値を生みだすプラットフォーム"とし、地域における活動の起点・架け橋、地域の価値が向上するための場づくりと、活動が継続的に行われていくための仕組みづくりをミッションとしている。今までに金沢の「HATCHi 金沢」「KUMU 金沢」、東京清澄白河の「LYURO 東京清澄白河」、北海道函館の「HakoBA 函館」に引き続き、今回新たに京都丸太町に「RAKURO 京都」が加わった。

先に述べたように宿泊稼働率の高い京都市内であるが、今回の「RAKURO 京都」のターゲットは、ビジネスホテルやシティホテル、高級旅館とはターゲットを異とする。ターゲットとして設定したのは、3~4名のグループ旅行、特に女子グループや少人数グループの外国人旅行客などだ。

各部屋にはそのターゲットを意識した設計とデザインが施されている。特にソファーのあるリビングスペース以外に小上がりの畳スペースを備えたジャパニーズスタイルの部屋が印象的だ。その他にも標準的なベッドスタイルの客室も備える。日本的要素に北欧的要素を掛け合わせた“ここちよさ”を追求したという。

小上がりに畳を配したジャパニーズスタイルのお部屋。元事務所だったとは思えないほど開放的な窓が印象的小上がりに畳を配したジャパニーズスタイルのお部屋。元事務所だったとは思えないほど開放的な窓が印象的

ホテルに用途変更。京都ならではの旅館業法をクリアするために工夫をした部屋も

とはいえ、元は出版社の事務所として使っていたビル。宿泊施設にコンバージョンするには、数々の工夫があったという。
事務所時代、丸太町通りに面している元の建物にL字型に増築された建物が内部廊下で繋がっていた。「RAKURO 京都」では、この事務所の特色の奥まった建物や内部廊下も長屋(町家)の形として表現している。また、パブリックエリアと客室の関係も長屋の特徴である通り土間(通り庭)でつながる「おもて」(パブリックエリア)と「おく」(客室)として表現した。

客室のデザインだけでなく、用途変更後の京都の旅館業法に対応するための工夫もしている。京都市の旅館業法には「 採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その客室の床面積に対して、8分の1以上とすること」とある。事務所として使用していた奥まった客室は、客室を広々と取るために、水周りを別の部屋として扉を設けクリアしていた。
「客室の広さを確保するための設計でしたが、シャワーや洗面所・トイレの音が聞こえずグループ宿泊客にはプライバシーが保てるのでは、と思っています」とリビタホテル事業部の松村さん。

各部屋を見学させてもらったが、元の事務所フロアの天井は高く、大きな窓からはたっぷりの採光がとれている。最初からホテルとしてのビルを新築で設計していれば、この解放感は生まれなかったかもしれない。

『RAKURO 京都』=洛+路 に現わされた旅の記憶を創り出すしかけ

『RAKURO 京都』のネーミングは、都を示す洛(らく)と路(みち)をあわせて付けられた。“生活にあたりまえのようにある道(路)のように、地域の人と宿泊者が行き交い交流が生まれる場所”を意味するという。そのストーリーを創り出すしかけを今回のホテルでは意識しているようだ。

目に見える部分では、レセプションの壁に貼られた伝統工芸士の清水焼のタイル、中庭に敷かれた平安時代の技法を用いた京瓦、エントランスの外と中庭に可愛らしく置かれたトランクを携える鍾馗(しょうき)。いずれも旅をしている人の記憶に残り、ストーリーを感じさせるデザインとなっている。

ハード面だけではなく、「京都の新しい魅力を発見する場所となる」しかけとして、レンタサイクルのKCTP、旅行会社のらくたびと連携したサイクリング&街歩きマップも作成。3つのウォーキングコースと6つのサイクリングコースでオリジナルな京都の楽しみ方も提案している。

ホテルのカフェキッチンバー「ツナグ」は、地元の人が普段使いできる居ごこちと旅人が楽しめる京都らしさを考え、朝は地元の食材と新鮮な卵を使った卵かけごはんなどの朝ご飯を用意し、夜は地元ワーカーが立ち寄れるパブとして名物のフライドチキンとハイボールを提供する。

新しく京都にオープンした「THE SHARE HOTELS」の『RAKURO 京都』。他の「THE SHARE HOTELS」とともに地元ごとの活性化に寄与し、その旅のホテルという点をつなぎ面にして、より旅の楽しみを増幅できるのか。今後も期待したい。

写真左上:レセプションの壁に貼られた伝統工芸士の清水焼のタイル 写真右上:ホテル内に用意されている街歩きマップ</br>写真左下:カフェキッチンバー「ツナグ」の朝食メニュー、卵かけごはん</br>写真右下:京瓦の職人がつくったトランクを携える鍾馗(しょうき)写真左上:レセプションの壁に貼られた伝統工芸士の清水焼のタイル 写真右上:ホテル内に用意されている街歩きマップ
写真左下:カフェキッチンバー「ツナグ」の朝食メニュー、卵かけごはん
写真右下:京瓦の職人がつくったトランクを携える鍾馗(しょうき)

2018年 06月07日 11時05分