家庭や業務のエネルギー消費量が、増え続けている日本

自然災害が多い日本。豪雨、時期外れの台風、急な竜巻など、自然災害は、年を追うごとにわたしたちの生活を脅かすようになってきた。海外に目を向ければ、干ばつや海面水位の上昇など、気候の変動による被害は様々な形で世界中に広がっている。

2015年にパリで行われた「COP21」という温室効果ガス排出削減策などを協議する会議で、2020年以降の温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を正式に採択した。この結果を受け、日本国内では、2030年度までに温室効果ガスの削減目標を-26%に設定(2030年度比)。

このように書くと、何やら難しそうに聞こえるが、要は「地球温暖化を防ぐために、日本国内におけるエネルギーの消費量を減らしましょう」ということ。

日本のエネルギー消費量の推移を「産業」「民生」「運輸」(※)の各部門に分けて見ていくと、1990年代以降、産業・運輸部門のエネルギー消費量は減少しているのに対し、民生部門だけ年々上昇している。しかも民生部門は、今では日本全体のエネルギー消費量の1/3を占めるまでになった(資源エネルギー庁「平成25年度エネルギー需給実績(速報)」より)。このままではマズいと、民生部門のうちの家庭や業務における消費エネルギーを2030年度に向けて40%減らそうと動き始めた。そこで提示された、政府の考えとは?


「産業」:製造業、農林水産業、鉱業、建設業などの工事・事業所内で消費されたエネルギーのこと
「民生」:民生部門のエネルギーは、家庭部門と業務部門の2つから構成され、家庭部門は、冷房・暖房・給湯・厨房・動力・照明など(家電機器の使用など)の5用途に分類した家庭内の消費エネルギーのこと。業務部門は、事務所やビル・デパート・卸小売業・学校・病院・飲食店・ホテル(旅館)・娯楽場・福祉施設などで使われた同じく消費エネルギーのこと
「運輸」:企業・家計が、住宅や工場・事業所の外部で、人やモノの輸送や運搬に費やしたエネルギーのこと

赤色の部分(民生部門)に注目。東日本大震災以降、建築物部門のエネルギー消費量は著しく増加している赤色の部分(民生部門)に注目。東日本大震災以降、建築物部門のエネルギー消費量は著しく増加している

住宅も省エネ時代に突入

今回は「建築物省エネ法」の「概要説明会」だったが、今年10月から2017年2月にかけては建築物省エネ法の「詳細説明会」を全国11か所17回開催予定
今回は「建築物省エネ法」の「概要説明会」だったが、今年10月から2017年2月にかけては建築物省エネ法の「詳細説明会」を全国11か所17回開催予定

「2030年度に向けて、家庭・業務における消費エネルギーを40%減らす」を目標に、動きだした日本。最近では、「ゼロエネルギーハウス」や「ゼロエネルギービル」も注目をされている。ゼロエネルギーの建物とは、ビルや住宅の中でつくったエネルギー量の方が年間の消費エネルギーよりも大きい、もしくはプラマイゼロになる建築物のこと。この建築物は、1次エネルギー消費量(エアコンや照明、換気、給湯など、生活をするのに必要なエネルギーのこと)に対応する省エネ設備と、高断熱サッシや太陽光発電システムなどを組み合わせてつくっている。各地にある住宅展示場には、このゼロエネルギー住宅(ZEH)のモデルハウスを展示しているところもある。

国が掲げた目標を達成するためにも、今後、ゼロエネルギーの住宅やビルを普及させること。建物をリフォームするなら、省エネに適応したリフォームを行なうこと。そして2020年までに、新築住宅・建物において、規制の必要性や程度、バランスを十分に配慮しながら段階的に省エネ基準の適合を義務化すること。

それが、2015年7月に制定された「建築物省エネ法」だ。

前置きが長くなったが、先日、建築物省エネ法に関する概要説明会に参加してきたので、その内容を簡単にご紹介したい。

「建築物省エネ法」とは

「建築物省エネ法」は、「誘導措置(任意)」と「規制措置(義務)」の2つで構成されている。まず、今年4月にスタートしたのが「誘導措置」だ(「規制措置」は2017年4月スタート予定)。対象は、既存や新築、改修も含めたすべての建物。建築物の所有者は、所管行政庁から「この建物は、省エネ基準に適合しています」と認定を受けると、「省エネ基準適合認定マーク(eマーク)」というマークを、建築物や広告などに表示できるようになった。
また、新築や改築の計画が誘導基準に適合し、所管行政庁から認定を受けると、通常の建築物の床面積を超える部分を不算入とする「容積率の特例」が認められるなど、内容そのものが新しく導入された。

一方「規制措置」は、従来の「省エネ法」から一部が変更されている。変更になった箇所は、2000m2以上の大規模な非住宅建築物と300m2以上の小規模建築物だ。まず、「2000m2以上の大規模な非住宅建築物」を新築・増改築する際、現在の「省エネ法」では「届出義務」を採用していたが、新しい法律が施行されると「建築物省エネ法」に適合しているかどうかチェック義務が必要となる。

また、住宅を含めた「300m2以上の小規模建築物」を新築・増改築する場合、届出義務が必要なことは従来通り変わらないが、「建築物省エネ法」の基準に適合しない場合は、所管行政庁は計画の変更、指示、命令などができるようになるなど、規制を一部強化することとなった。

また、ハウスメーカーや工務店など建築戸建住宅を販売する事業主に対して、1次エネルギー消費量を抑えた家づくりを推進する「トップランナー制度」は、引き続き実施される。

上記表にある「建築物省エネ法」の規制措置は、公布から2年以内の4月を実施予定としている(現在のところ2017年4月予定)上記表にある「建築物省エネ法」の規制措置は、公布から2年以内の4月を実施予定としている(現在のところ2017年4月予定)

これからのトレンドは、“エネルギーの消費量が見える住宅”!?

建物を断熱するメリットは、省エネだけではなく室内が改善することで、居住者の健康の維持や増進、執務環境の向上にも寄与する建物を断熱するメリットは、省エネだけではなく室内が改善することで、居住者の健康の維持や増進、執務環境の向上にも寄与する

さて、ここからは“住宅に絞って”考えていきたい。では、住宅の省エネ性能を評価する際の基準とはどんなものだろうか。

住宅の場合は、下記2つの基準を用いて省エネ性能の評価を行なうこととなった。
①外皮性能を評価する基準
②1次エネルギー消費量

①の「外皮」とは、屋根や天井、外壁、床、窓など建物の外側の部分のこと。これらの部分に省エネ対応のものを使えば、冬の室内においては熱の損失を防ぐことで暖房エネルギー消費の削減になり、暑い時期は窓からの室温上昇を防ぎ、冷房エネルギー消費の削減につながる。

②に関しては、エアコンや照明、換気、給湯など暮らしに必要な電化製品などを省エネ対応にすることで、1次エネルギー消費量の削減を目指す。

基準値は地域ごとに定められており、その基準値以下を目指すことが必要となる。

そして、新築時に国が定める基準レベルよりも良い数値を出すと、優れた省エネ性能の証である「BELS(ベルス)」という表示を使うことができる(第三者機関による評価を受け、省エネ性能に応じて5段階で★表示)。

マークは他に、「省エネ基準適合認定マーク(eマーク)」(第3パラグラフ参照)もあるが、いずれにせよ“エネルギー消費性能の見える化”によって性能が優れ、かつ、居心地の良い建築物を消費者が選択できるようになってきたということが言えると思う。

“日本の家”が、これからますます進化していく!

今まで住宅は、高断熱化することでエネルギーを削減し、電気代などが減る「エナジー・ベネフィット」という考え方に注目をしてきた。しかし近年では、ヒートショックや、結露によるカビやダニの発生など、健康への悪影響が広く認識され、エネルギーや光熱費削減以外のメリット「ノンエナジー・ベネフィット」に着目。居住者の健康面や快適性に関心が集まるようになってきた。

今年3月に閣議決定した「住生活基本計画」では、省エネに関連する項目として、断熱や省エネに優れた新築住宅の供給や、省エネリフォームによる省エネ性の向上と、ヒートショックの防止など、健康増進を促進していくことになっている。

さらに省エネ基準を満たした住宅ストックの割合を、2013年の6%から2025年には20%に引き上げることを目標に掲げている。今後は、既存ストックの省エネ改修も含めて、ますます省エネ化を推進する必要があるが、国の施策というより、まずは自分たちがいつまでも健康で心地よい暮らしをするために、そして高齢の方たちがいつまでも元気で幸せに暮らしていくために、この新たな取り組みが建築業に従事していない一般の人たちにも広く知れ渡りますように。

2016年 10月10日 11時00分