「サービス付き高齢者向け住宅」は7年半で全国7,335棟、約24万戸に

国土交通省住宅局が最も多くの予算を割いて進める「スマートウェルネス住宅等推進事業」。「高齢者、障がい者、子育て世帯等の多様な世帯が安心し健康に暮らすことができる住環境(スマートウェルネス住宅)」の実現を目指すものだ。

3本柱は①「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」、②「セーフティネット住宅改修事業」、③「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」。
その内容と現状について、2019年2〜3月に全国で開催された国土交通省説明会の公表資料などを基に紹介する。今回は、高齢者向けの賃貸住宅について。

2011年10月に「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」の登録制度ができてから7年半が経つ。その後、サ高住の普及は進んでいるのか、どんな住宅がサ高住に登録されているのだろうか。

「サ高住」とは、60歳以上、あるいは要支援・要介護に認定された人のために、バリアフリーや生活支援サービスなどの基準を満たした住宅で、都道府県・政令市・中核市が登録し、指導・監督を行う。登録された住宅は、専用サイトで料金やサービス内容、入居状況などの情報を公開する。
国土交通省はサ高住の供給を促すため、整備費に対する補助金を用意しているほか、固定資産税や不動産取得税の軽減措置を設けている。税の軽減は時限措置だが、2018年度末を予定していた期限が2年間延長された。

2018年度末(2019年3月末)時点で、登録されたサ高住は全国7,335棟、24万4054戸。国土交通省は「短期間で一定程度の普及」を果たしたと評価しているようだ。

制度創設から2019年3月末までのサービス付き高齢者向け住宅の登録数の推移(資料:一般社団法人高齢者住宅協会)制度創設から2019年3月末までのサービス付き高齢者向け住宅の登録数の推移(資料:一般社団法人高齢者住宅協会)

大半は専用部が狭く、キッチンや浴室は共用。平均月額入居費は10万円

では、普及が進むサ高住は、実際にはどんな住まいなのだろうか。

サ高住のハード面の登録基準は、
  ○専用部分の面積が原則25m2以上
  ○各専用部分に、キッチン、トイレ、収納、洗面、浴室を備えていること
  ○バリアフリー構造であること(廊下幅の確保、段差解消、手すり設置)
となっている。

ただし、共用のリビングやダイニング、キッチン、収納、浴室などを設ければ、専用のキッチン・収納・浴室はなくてもいいし、専用部分の面積も、18m2まで小さくできる。また、自治体が定める「高齢者居住安定確保計画」によってさらに基準が緩和されることもある。
高齢者住宅協会の「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」(2018年8月末時点)によれば、サ高住の専用部分の平均床面積は22.1m2で、住戸の77.9%が原則基準の25m2に届いていない。専用部の設備も、キッチン、トイレ、収納、洗面、浴室の5点が揃っているのは20.5%にすぎない(※1)。

一方、サ高住が必ず提供しなければならないサービスは
  ○状況把握サービス
  ○生活相談サービス
で、ケアの専門家が少なくとも日中は建物に常駐することになっている。

実際には、これらの必須サービスに加えて、96%のサ高住が「食事」を提供している。さらに61.6%が「健康の維持増進」、51.8%が「調理等の家事」、48.3%が「入浴等の介護」を行う。その一方で、介護保険サービスも提供する「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたサ高住は7.5%に留まっている(※1)。

入居費用は全国平均で月額約10.0万円。
三大都市圏は11.9万円、地方圏は8.6万円で、平均に3万円以上の開きがある。

立地では、徒歩圏(1,000m以内)に医療機関(病院・診療所)があるサ高住が94.2%に上る一方で、駅が徒歩圏(750m以内)にあるものは32.3%に留まる。300m以内にバス停があるものを含めても82.2%で、17.8%が駅、バス停ともに遠い立地だ。市街化区域外に立地するものも3割を超える。生活拠点としての利便性は必ずしも高くない。

サービス付き高齢者向け住宅の入居費用(資料:国土交通省)サービス付き高齢者向け住宅の入居費用(資料:国土交通省)

空き家活用は進まず、サ高住への改修補助金の上限引き上げ

国土交通省は、空き家などの既存ストックの改修活用を促したい構えだが、現状では、改修によるサ高住の供給はわずか6.7%にすぎない(2011〜13年の補助事業による供給数)。

そこで、2018年度から国土交通省は、改修によるサ高住整備に対する補助金(改修費の3分1)の上限を1戸あたり150万円から180万円に引き上げた。同時に、改修のための調査設計計画費用も補助対象に追加している(いずれも改修内容に要件あり)。

また、新築のサ高住については、床面積に応じて補助金(建設費の10分の1)の上限が決められている。2018年度の制度変更によって、原則基準の25m2に満たない住戸については、110万円から90万円に引き下げられた。ちなみに、床面積30m2以上で一定の設備を完備していれば1戸あたり135万円(戸数制限あり)、25m2以上は120万円だ。

60歳以上であれば入居可能なサ高住だが、現実の入居者は要介護認定を受けた人が7割を超え、自立高齢者は8.3%に留まる。サ高住は「介護施設」ではなく「住宅」だが、専用部の狭さや設備を考えても、「施設」に近いものが多いのが実態のようだ。

サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム https://www.satsuki-jutaku.jp/index.php

※1:一般社団法人高齢者住宅協会「サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析」平成30年8月末時点
※1以外は国土交通省の資料による

普及が進まない「死ぬまで住み続けられる賃貸契約」。2018年に条件緩和

「サ高住」より前に設けられた高齢者向けの制度に「終身建物賃貸借事業」がある。60歳以上の高齢者が死ぬまで住み続けられる賃貸契約の制度だ。住む人にとっては、礼金や更新料が必要なく、前払い金の保全措置がとられるメリットがある。一代限りの賃借権で相続されないので(ただし、亡くなった高齢者の同居人は継続居住可)、家主にとってはむやみに借家契約が長引く心配がない。

家主から解約を申し入れられるのは住宅の老朽化などに限定される。一方、借家人からの解約は療養・老人ホームへの入所・親族との同居が理由なら申し入れの1ヶ月後、ほかの理由でも6ヶ月後に契約を終了できる。借家人が希望すれば、終身契約を結ぶ前に、定期借家契約による1年以内の「お試し入居」が可能だ。

2011年度にできた制度だが、サ高住並みのバリアフリー基準が課されるうえ、知事の認可が必要で、手続きも煩雑だったため、認可数は7年で9,733戸に留まった(2016年度末時点)。しかも、そのほとんどがサ高住だ。

国交省はこの制度を「セーフティネット住宅」(次回記事で詳述)にも拡げ、活用を進めたいとして、2018年9月に制度を改正した。認可申請の手続きに必要な書類を簡素化し、改修活用の場合のバリアフリー基準を緩和。それまでは床面積25m以上(共同利用の場合は18m以上)が条件だったのを「セーフティネット住宅」と同様に9m2以上のシェアハウス型住宅も認可対象とした。できるだけ「セーフティネット住宅」の登録申請様式と統一することで、2つの制度の同時申請を狙う。

2019年 05月28日 11時00分