3階建てのビルを改装したDIYシェアハウス

一般社団法人 日本シェアハウス協会の全国理事も務める伊藤正樹社長一般社団法人 日本シェアハウス協会の全国理事も務める伊藤正樹社長

1つの住居を複数の人と共有して暮らすシェアハウス。最近では地方でも物件数が増え、認知度も人気も広がりを見せている。物件にテーマ性を持たせたコンセプトシェアハウスも増えている中、今回はDIYをコンセプトに掲げた「DIY SHARE180°藤が丘」について取り上げてみたいと思う。

名古屋市内のメイン路線ともいえる地下鉄東山線の終点、藤が丘駅から徒歩10分ほどの場所に建つ住宅街の3階建てビルを改装したこのシェアハウス。リビングとキッチン、トイレなどの共用部分に5つの個室を備えており、現在は満室。入居待ちも出る人気物件となっている。その魅力とは、どこにあるのだろう。

管理・運営をする『株式会社シェア180(ワンエイティ)』代表取締役社長・伊藤正樹氏にお話を伺った。

DIYに必要な工作機械や工具、専門書も揃う「専用アトリエ」付き

写真上:オープン前に行われた黒板ボード制作の様子。現在は、入居者がイベントの日程や買い出しリストを書き込んで活用している。<br>下:共有部分である洗面台にタイルを張ってリメイク。デザインも入居者全員で考えて2日かかりで完成させたという写真上:オープン前に行われた黒板ボード制作の様子。現在は、入居者がイベントの日程や買い出しリストを書き込んで活用している。
下:共有部分である洗面台にタイルを張ってリメイク。デザインも入居者全員で考えて2日かかりで完成させたという

2016年の10月にオープンした「DIY SHARE180°藤が丘」。入居者募集から2ヶ月ほどで満室となったという。

「通常の賃貸でDIY可能という物件はありますが、シェアハウスでは東海地区初だと思います。これまでもたくさんのシェアハウスを手掛けてきたなかで、実はDIYをやりたいという声はあまり聞かなかったのです。でもあったら面白いだろうなと思って作ってみたら、予想外の人気でした」と伊藤氏。

魅力となったのは、「専用アトリエ付き」という点。ハウス内にはDIYができる専用スペースが設けられていて、電動のこぎりなどの工作機械や工具、専門書などが揃っている。入居者はこれらを自由に使うことができ、ときには専門家を招いての講習なども行っているという。
オープン前には入居希望者を集め、同物件のリノベーションを手掛けたプロを講師に、黒板ボードを制作。入居後には、共有スペースである洗面台にタイルを張るワークショップを開催し、入居者とスタッフが参加するなど、DIYをテーマにした物件らしいイベントで幕を開けた。

共通の趣味をもつハウスメイトと刺激を受け合う場所

現在の入居者は、男性3人女性2人の5人で、全員20代。施工会社に勤めている人やハンドメイド作家など、モノ作りに興味がある人たちが集まって暮らしている。

「DIY SHARE180°藤が丘」の立ち上げに関わったスタッフの工藤鈴華さんの元に、入居者が作った作品の写真が送られてくることも。
「入居者同士もDIYという共通の趣味があるので、打ち解けるのが早いですし、今ではLINEのグループメールでお互いの制作に関して意見を出し合ったり、作品に関してアドバイスを求めたりといったコミュニケーションも生まれています」(工藤さん)

同じ趣味をもつ仲間が集まることで刺激を受け合っているようだ。
DIYに興味はあるが工具を持っていなかったり、場所がなかったりという人にとっては「専用アトリエ付き」かつ専門家や気軽に聞ける仲間ができることは願ったり叶ったりの好条件だろう。

シェアハウスの玄関付近につくられたアトリエは入居者なら自由に利用できる。DIYで使うだいたいの道具は揃っているから、材料を自分で用意すればすぐに作業に取り掛かれる。写真左下は入居者が作ったお手製の椅子シェアハウスの玄関付近につくられたアトリエは入居者なら自由に利用できる。DIYで使うだいたいの道具は揃っているから、材料を自分で用意すればすぐに作業に取り掛かれる。写真左下は入居者が作ったお手製の椅子

住む+学ぶ。人生を180°変えるきっかけ作りを目指す

海外留学中にドミトリー(相部屋スタイルの居室)や寮住まいで、人と暮らす楽しさを学んだという伊藤氏は、日本にもこうした部屋を作りたいと、シェアハウスの運営方法を探ってきたという。

「人が変わる要素として『場所』『人』『仕事』の3つが挙げられると思います。その中でうちが提供できるのが場所と人。ただそこに住むだけではなく、住んで変わってほしいという願いを込めて社名にも物件名にも『180°』という名前をつけています。そこに住んで、かつ学べるようなコンテンツが存在することで、人は変われる。そのきっかけを与えられたらいいなと思っています」。

実際に、シェアハウスで英語を学んで留学や転職をした人もいるという。
単に家をシェアするだけでなく、その中で何が学べるのかを明確に示すコンセプトシェアハウス。同社ではほかにも、外国人と住む「東海地区初・英語向上型シェアハウス」、女性専用シェアハウス、プロ管理栄養士が考案する食事と共同ライブラリーのあるシェアハウスなど、明確なコンセプトをもつシェアハウスを展開し、どれもほぼ満室に近い状況だとか。特に外国人と住む、をコンセプトにしたシェアハウスは人気が高く、第二弾も満室だという。

特別なイベントなどがなくてもたまたま居合わせた入居者同士が一緒にご飯を食べたり、映画を見たりという楽しみがあるのがシェアハウスのだいご味。外国人が入居するシェアハウスでは生活の中で生の英語にふれられるから、外国語を学びたい人には人気が高い特別なイベントなどがなくてもたまたま居合わせた入居者同士が一緒にご飯を食べたり、映画を見たりという楽しみがあるのがシェアハウスのだいご味。外国人が入居するシェアハウスでは生活の中で生の英語にふれられるから、外国語を学びたい人には人気が高い

社長もスタッフもシェアハウス暮らし。管理人としてハウスメイトとして心強い存在に

年に一度行われる田植えイベント。収穫時期には自分らで育てたお米を食べるのもイベントの楽しみのひとつ年に一度行われる田植えイベント。収穫時期には自分らで育てたお米を食べるのもイベントの楽しみのひとつ

国土交通省発表の「貸しルーム入居者の実態調査の集計結果について」(平成25年度)によると、一般的な賃貸物件と比べ、シェアハウスは回転率が高く、入居期間が一年未満の人が45%に上る。また、シェアハウスの入居動機について「家賃が安い」「立地が良い」「初期費用が安い」という順に多くなっている。

確かにシェアハウスは、リビングやキッチンなどの共用部分には必要な家電が揃っているから初期費用は安くて済む。しかし、スタッフの工藤さんは
「家電などのモノが付いているから、家賃が安いから、という理由ではシェアハウスに住めない」と話す。共同生活をする上ではコミュニケーションが欠かせないからだ。

「シェア180の入居者に限っていうと、長く住む人が増えています。2014年のスタート時から3年間住み続けている人もいます」(工藤さん)。居心地のいいハウス作りができているということなのだろう。その秘密は、同社のスタッフが伊藤氏を含め全員、シェアハウスで暮らしているという点にあるかもしれない。

「シェアハウスの楽しさや、問題はないかなど、入居者さんと同じ目線で感じられます。スタッフが住み込んでいないハウスへは、最低でも月に一度は巡回し、入居者との距離を保つようにしています」
と、工藤さん。
完全な一人暮らしの前段階としてシェアハウスを選ぶ人も多い中で、管理人としてハウスメイトとして、入居者と同世代のスタッフが身近にいるというのは安心感にもつながるだろう。

全シェアハウスの入居者を集めてのイベントも多いという。クリスマス、ハロウィンパーティなどのほか、田植えも行っているとか。毎年5月に伊藤氏の実家の田んぼに行き田植えをする。これは、外国人の入居者にも人気で、年々参加する人数が増えているそうだ。こうしたイベントで入居者同士が仲良くなり、住み続けたくなる人が増えているのかもしれない。

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"いい大人だけど遊んじゃおう"
伊藤氏の名刺に書かれた同社の理念。

伊藤氏をはじめスタッフが楽しいことを追求していった結果生まれたのが、ピンポイントで人を惹きつけるコンセプトシェアハウスなのだろう。
「仕事にするつもりは全然なくて、『友達同士で住めたら楽しいだろうな、こんなハウスがあったら面白いだろうな』と思ってやってみたら、いつの間にか増えてしまって」と、にこやかに話す伊藤氏は現在30歳という若き社長。

立ち上げから3年で20棟400室のシェアハウスを手掛け、さらに今後は、カルチャーセンターや防音ルーム、武道場、シェアオフィスを完備した60室のシェアハウスなど、大型物件も完成予定。
室内に雲梯(うんてい)とボルダリング用の壁を設置したアウトドアシェアハウスが2018年2月にオープン、猫とワイン好きが集まる猫付きシェアハウスなど、個性的なコンセプトの物件も秋ごろオープンする予定だという。

若き社長の遊び心溢れるコンセプトは、シェアハウス選びを楽しくさせてくれそうだ。

株式会社シェア180
http://www.sharehouse180.net/

2017年 07月19日 11時05分