自然に囲まれた浜松市に誕生した、アウドドアがコンセプトのシェアハウス

静岡県西部に位置し、約80万人が暮らす政令指定都市・浜松市。楽器やバイクの生産が盛んで、ウナギや餃子などのグルメで知られる同市は、アウトドアのメッカとしても人気を博している。海、川、山、湖に囲まれた自然豊かなロケーションにあり、市街地から少し車を走らせれば、サーフィンや釣り、トレッキング、キャンプなどのスポットが点在。アウトドアを楽しみたい人にはまさにうってつけの街だ。
そんな同市に2015年7月、総戸数50戸のゲスト交流型シェアハウス「365BASE outdoor life apartment hamamatsu」(※以下「365BASE」)が誕生した。コンセプトは「アウトドア好きの秘密基地」。自然豊かな浜松を最大限に堪能できる空間づくりが特徴で、浜松での暮らしをアクティブに楽しみたいという人たちを惹きつけている。

アウドドアをテーマにしたシェアハウス「365BASE」のリビングの様子アウドドアをテーマにしたシェアハウス「365BASE」のリビングの様子

リビングは西海岸をイメージ。中庭には本格仕様のボルタリング壁も

365BASEの1階にあるのが、共用スペースとなる42帖の開放的なリビングだ。南面はすべてガラス張りで、「アメリカ西海岸アウトドア」をテーマにコーディネート。ワイン樽のようなデザインの円柱に渡された梁には、浜松市天竜区春野町の松が使われ、ハンモックが吊されている。部屋の一角にはアウトドアグッズが並べられており、「スノーピーク」や「SOTO」のキャンプ用品のほか、3人乗りのカヌーなどもレンタルが可能だ。
中庭にはボルタリング壁を設置。高さ3m、幅9mの大きさがあり、プロに依頼してホールドを配置した本格仕様だ。そのほかにも、共用スペースとして、調理器具などを一式揃えたダイニングエリア、ジェットバスを備えたバスルームなどが用意されている。
また、「365BASE」では、入居者以外も参加できるイベントを年2回実施。「2016年10月にはサーファーによるトークのほか、アウトドア料理やボルタリングのイベントなどを行いました。多い時には100人ほどご来場いただいていますね」と、「365BASE」を手掛ける365LIFE(株式会社スズヒロ)の代表取締役・古橋啓稔さんは話す。

契約スタイルは、シェア住宅として長く暮らしたい人のための「長期滞在レジデンス」、旅行者や出張者が1週間から利用できる「ショートステイ」、事務所として使える「SOHO」の3タイプ。長く暮らす住人とショーステイの滞在者、SOHOの事業者が人との交流を楽しめる、ゲスト交流型のシェア住居複合施設となっている。

(写真左上)室内と外がつながるようにできたテーブル。テラスではお花見やバーベキューなどを気軽に楽しめる<BR />
(写真右上)リビングの一角にはアウトドア雑誌なども並んでいる<BR />
(写真下)中庭に設けられたボルタリング壁。毎日のトレーニングにもちょうどいい(写真左上)室内と外がつながるようにできたテーブル。テラスではお花見やバーベキューなどを気軽に楽しめる
(写真右上)リビングの一角にはアウトドア雑誌なども並んでいる
(写真下)中庭に設けられたボルタリング壁。毎日のトレーニングにもちょうどいい

かつての社員寮を「実家暮らしの若者」をターゲットにリノベーション

(写真上)廊下の床材には天竜杉を使用。10年後にはこれを古材として使い、家具などを作るプロジェクトも進行中だ<BR />
(写真下)女子寮を改築して作られたシェアハウスも2016年に「365BASE」へコンセプトを統一。地中海アウトドアをテーマにリビングをリニューアルした(写真上)廊下の床材には天竜杉を使用。10年後にはこれを古材として使い、家具などを作るプロジェクトも進行中だ
(写真下)女子寮を改築して作られたシェアハウスも2016年に「365BASE」へコンセプトを統一。地中海アウトドアをテーマにリビングをリニューアルした

20~30代の社会人を中心に支持を集め、ほぼ満室状態が続く「365BASE」だが、以前はホテルの運営会社の社員寮として使われていた。古橋さんの祖母が男子寮と女子寮の2棟を貸し出していたが、数年前に男子寮の契約が終了。古橋さんが物件を譲り受けた時には入居者ゼロ、借金も完済されていない状態だった。「とにかく設備が古く人気のない3点式のユニットバスでしたから、これをどう払拭すれば入居者が集まるのかに頭を悩ませました」と古橋さんは話す。
浜松市の賃貸市場をリサーチした結果、古橋さんがターゲットにしたのが「実家暮らしの社会人」だ。そして、当時関心が高まりつつあるシェアハウスに着目、浜松では珍しいシェアハウス型の賃貸住宅にしようと決断する。そして、空室リスクが高い1階中央付近の部屋を共有スペースにし、広いリビングや大きな浴室を設けることで、物件全体の賃料アップを目指すことにした。

募集を開始して4カ月で、入居者はたったの3人。「入居者からは『全然シェアハウスじゃないですよね』と冗談交じりに言われたこともありました」と苦笑する古橋さん。ところがその後、入居者の友人を招いてパーティーを開いたことがきっかけで火が付き、わずか半年で全22戸がすべて埋まった。そしてこの成功を足がかりに、それまで女子寮だった物件を「365BASE」としてリノベーション。以前男子寮だったシェアハウスも「365BASE」にコンセプトを統一し、2016年に「地中海型アウトドア」をイメージした物件へと一新した。

これからも常識にとらわれない発想で、「ワクワクする住まい」を

365LIFE(株式会社スズヒロ)の代表取締役・古橋啓稔さん365LIFE(株式会社スズヒロ)の代表取締役・古橋啓稔さん

古橋さんは、かつてユニクロを展開するファーストリテイリングで勤務し、商品企画などを担当。中国への転勤話が持ち上がった際、柳井さんが発した「あえて逆を進みましょう」という言葉に触発され、「グローバルではなくローカルなビジネスを手掛けてみたい」と退職。そして地元・浜松市で不動産業に飛び込んだ異色の経歴の持ち主だ。
不動産会社での修業期間を経て2015年に独立。「365BASE」を立ち上げるにあたり、自社の強みを分析した時には、「何の強みもない」と感じたという古橋さんだが、「今考えてみると、常識がない、固定概念がないことが強みだったのかもしれないですね」と振り返る。
賃貸物件といえば、立地、間取り、家賃などで判断されるのが一般的だ。だが、古橋さんは「これ以外にも潜在的なニーズはあるのではないか」と考えた。そして導き出したのが「ワクワクする住まい」であり、その結果、斬新なコンセプトの「365BASE」が誕生した。
「住まい手にとって、一生の思い出に残る賃貸を作っていきたい」と抱負を語る古橋さん。現在は「365BASE」の運営管理に留まらず、「LIFESTYE検索」などで部屋探しができる不動産紹介サイト「365LIFE」や、不動産のリノベーション事業なども展開。業界の固定概念に縛られない柔軟な発想で、これからも賃貸物件に新たな価値を吹き込んでくれそうだ。

■取材協力
365BASE outdoor life apartment hamamatsu
http://www.365base.jp/

2016年 12月05日 11時06分