三島市にある旧園舎を利用したシェアハウス

源頼朝が源氏再興を祈願した場所と言われる三嶋大社源頼朝が源氏再興を祈願した場所と言われる三嶋大社

三島市は、静岡県の東部、伊豆半島の中北端に位置している。人口は111,587人、世帯数は48,454世帯となっている(2016年4月30日現在)。同市にある三嶋大社は、源頼朝が源氏再興を祈願したエピソードが残されており古くから参拝者が訪れ、まちは神社の門前町として栄えてきた。

品川まで新幹線を利用すれば37分ということもあり(※「ひかり」号利用の場合)、通勤圏としても考えられることから、市では移住・定住を考える人の積極的なサポートを行っている。また、日本大学(国際関係学部)・短期大学部(三島校舎)や総合研究大学院大学、放送大学(静岡学習センター)などもあり、学生が住むまちでもある。どのまちでもそうだが、活気あるまちづくりのため、就労世代・若者の流入は、三島市も力を入れている。

若者の暮らし方についていえば、ライフスタイルの多様化などにより"こだわりを持って住みたい"と思う層が増えてきた。いままでのように"人と同じが良い"というような画一的な住まいを望む傾向は薄れ、設備や住まいの新しさにもこだわらない。逆に古い物件を気にせず、カスタマイズしたり、自分でDIYを行うことを楽しいと感じているようだ。また、"シェア"をすることへの抵抗もない層が増加しており、カーシェアやシェアハウス・シェアオフィスなどの利用も増えている。

そんな中、2016年3月に三島市に幼稚園の旧園舎を利用した若者向けシェアハウスが誕生した。"懐かしくて、新しい"というコンセプトを謳うシェアハウス、「classroom(クラスルーム)」を取材してきた。

“コミュニケーションを生み出し、暮らしを豊かに過ごせる住まい”として選択したシェアハウスでの活用

昭和53年に建てられた鉄骨RC造、築38年の桜ヶ丘幼稚園の旧園舎…この物件を買取り、シェアハウスとして蘇らせたのは、地元の建設会社である加和太建設株式会社だ。
加和太建設株式会社不動産部の鈴木健太郎さんに、お話を伺った。

「三島市でも桜の時期には多くの人が訪れる場所に、その名の通り桜ヶ丘幼稚園はありました。この園舎が老朽化と高台というアクセスもあり移転をすることになったのですが、なにか建物を活用できないかとオーナーからの相談を受け、私たちの会社が買取り、活用を検討することになったのです。

社内で検討するにあたり、三島市の地域にとって何か生まれ、活性化できる場所を…という想いがありました。弊社では、三嶋大社の前に"大社の杜みしま"という複合商業施設の建設、運営を行っています。コンセプトは"ユニークで楽しさのある元気なショップと様々なコミュニティ活動が繰り広げられる場所"です。そういった施設を運営していることもあり、今回の旧園舎の活用についてもインキュベーターの拠点としてのシェアオフィスにしようか、などの検討もありました。が、まずは若者を対象にした“コミュニケーションを生み出し、暮らしを豊かに過ごせる住まい”を考えてみたい…ということで、三島ではまだまだ物件例の少ないシェアハウスに活用することに決めたのです」という。

左上/今回お話を伺った加和太建設の鈴木さん 右上/加和太建設が運営する「大社の杜みしま」</br>右下/classroomの玄関。“下駄箱”調の靴箱が置かれている。今も園児たちの声がきこえそう</br> 左下/classroomの外観。白い外観に赤いポストが映える左上/今回お話を伺った加和太建設の鈴木さん 右上/加和太建設が運営する「大社の杜みしま」
右下/classroomの玄関。“下駄箱”調の靴箱が置かれている。今も園児たちの声がきこえそう
 左下/classroomの外観。白い外観に赤いポストが映える

“懐かしくて、新しい”コンセプトが生きた設計

上質な暮らしのためのコミュニケーションが生み出せる場所にしたい…という想いがあり、建物の企画・デザインには以前から同社が注目していたSUPPOSE DESIGN OFFICE(サポーズデザインオフィス) に設計を依頼した。

「サポーズデザインオフィスさんは、BOOK AND BED TOKYO (ブックアンドベッドトーキョー)などユニークなアイディアをもっていらっしゃるとともに、ONOMICHI U2(尾道ユーツー)など遊休不動産の活用により、地域のコミュニティを活性化させる設計もされていました。今回、ぜひに…という当社の想いもあり、シェアハウスの設計をサポーズデザインオフィスさんにお願いすることにしました」(鈴木さん)。

幼稚園であった建物の暖かな雰囲気はそのまま残し、個人を愉しむ空間とシェアする仲間との楽しい暮らしができるシェアハウスとなった。シェアハウスの名前は「classroom(クラスルーム)」と名付けられた。

建物を見ると各箇所に幼稚園だったことの名残りを感じさせる雰囲気が見られる。広い玄関には当時の幼稚園の下駄箱のようなシュークロゼットが置かれ、キッチンや洗面所の扉にはチョークで書ける黒板材が使われている。また、床の一部は当時のままが残されており、園児たちがぶつからず駆けまわるための白い曲線が残っている。

一方で建物のロケーションを活かした共用部分も贅沢である。2階に設けられた共有のリビングスペースは大きな窓から庭の桜の木越しに三島のまちが見渡せる。“好きな本を持ち寄って欲しい”ということで、ソファー後ろには、大きなブックスペースが設けられた。広々としたテラスには丸太のような木のスツールが置かれ、手すりではなくカウンターのようになっているため、夏の夜などビールを片手に仲間と楽しめそうだ。キッチンはアイランド型で横に長く、仲間と何人もで料理を楽しむこともできる。

左上/庭の木々を見下ろせるテラス 右上/広々としたアイランドキッチン</br>左下/リビングは大きな窓で明るい空間が拡がる。後ろは大きな本棚</br>右下/建物から少し下がったところにある庭。線路に使われていたレールや枕木が埋め込まれている。</br>大きな木が2本植えられており、建物の窓から見える景色に緑を添えている左上/庭の木々を見下ろせるテラス 右上/広々としたアイランドキッチン
左下/リビングは大きな窓で明るい空間が拡がる。後ろは大きな本棚
右下/建物から少し下がったところにある庭。線路に使われていたレールや枕木が埋め込まれている。
大きな木が2本植えられており、建物の窓から見える景色に緑を添えている

入居者同士のコミュニケーションが醸成されてはじめて完成する「classroom(クラスルーム)」

建物だけではない。建物の下に拡がる庭も、季節ごとにハーブを育てたり、バーベキューをしたりと楽しめそうだ。

「弊社は、土木・建築も行っているため、取り換えられた線路のレールや枕木などがありました。それを庭に埋め込んでつかっています。“懐かしくて、新しい”というコンセプトにふさわしい庭となったと思います。これからも入居者のイベントや地域の方々とのイベントで、開かれていけばいいな、と思っています」(鈴木さん)

ちなみに部屋数は13室、賃料は1ヵ月49,000円~63,000円(※部屋タイプによって異なる)である。すでに入居されている方もいるが、まだ空き室はあるようだ。

「都心ではめずらしくないシェアハウスですが、三島ではまだまだそういった暮らし方が定着していないのかもしれません。建物の設計が非常に上質ですし、ゆったりととられた共用部分など、豊かな暮らしが送れるベースは整えられていると思います。あとは、入居した方々のコミュニケーションが醸成されてはじめて完成するのかな、と思っています」(鈴木さん)

地域の会社が、想いをもって施設を再活用したシェアハウス「classroom」。
暮らし方の多様化が進む中、選ばれる住まいも変化をしている。新しいから…でもなく、設備が充実しているから…でもなく、便利だから…でもなく、「自分らしく暮らす」「人とコミュニケーションをとりながら暮らす」ために、ふさわしい空間・環境としての住まいが望まれている。「classroom」のような住まいがどんな暮らしを紡ぎだしていくのか、楽しみである。

■取材協力/
「classroom(クラスルーム)」 http://sp.sumulabo.jp/classroom/
Facebookページ https://www.facebook.com/mishimaclassroom/

2016年 06月13日 11時06分