移住後の定着率を上昇させるべく尽力する、沖縄県の本気の試み!

沖縄県、石垣市、久米島町合同の移住相談会。沖縄県、石垣市、久米島町合同の移住相談会。"おきなわ移住の輪"と銘打ち、各自治体が協力して移住対応に力を入れている

沖縄県が平成26年3月に公表した「沖縄県人口増加計画」によると、沖縄県の人口は、現在増加傾向にあるものの、平成37年前後に人口増のピークを迎え、それ以降は減少することが見込まれている。
また同計画には、「本県の人口増減が本土の景気の状況に左右されていることや、出身の島での就労の場が少ないため、島外に進学・就職した若者が戻ってこないことなどから、雇用機会の拡大を図る必要がある」といった課題にも言及している。
そうした地方の人口減少に対する『地方創生』事業の一つとして総務省管轄の「地域おこし協力隊」がある。人口減少や高齢化の進行が著しい地域等に一定期間移住し、地域おこしの支援や農林水産業に従事している住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組みである。

現実問題として、沖縄へ移住したにもかかわらず結果的に定住できない人がいる中、「本当に沖縄への移住を成功させるためにはどのような点に注意をすればよいのか」を知るべく、東京・有楽町にある「NPO法人ふるさと回帰支援センター」で開催された「沖縄移住・ 定住相談会(島暮らし編)」に参加し取材を行った。

離島での生活は都市感覚とは異なるという認識を!

沖縄県は、本島のほかに石垣島、宮古島、久米島といった高校や病院のある島をはじめ、比較的規模が小さい竹富島や西表島など、大小49の有人島で構成されている。このうち9の島は、本島と島の間に架けられた橋によって行き来ができるが、その他39の島々は沖縄本島と陸路で繋がっていない"離島"である。
移住先として離島を選ぶ場合、交通の便や医療施設、教育施設などの有無を把握したうえで、"移住する目的"と照らし合わせて選択することが重要なのは言うまでもない。
今回の説明会の主催である沖縄県企画部 地域・離島課の又吉信さん曰く、
「離島への移住の場合、何度か現地を訪ね、訪ねる度に少しずつ長期化してその土地に知り合いを作り、馴染んでから住み替えるのが良いと思います。大都市で住み替える自由な感覚で、いきなり移り住んでしまうことは、移住成功を逃す原因の一つです」と語る。
県が実際に沖縄の離島暮らしを断念した方々の声を集めると、「親切にしてもらえなかった」、「地元住民と合わなかった」という受け身な意見が圧倒的に多いという。これは、旅行などで体験したその土地の人々との交流や美しい自然への憧れと、実際に住民として地元の人々と暮らしを共にした際の現実、美しくも単調な風景に囲まれただけの暮らしが「理想とかけ離れていた」ということのようだ。

日本で一番長い宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋が2015年1月に完成。<BR />この橋のおかげで伊良部島は不安定だった海上交通から解放された日本で一番長い宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋が2015年1月に完成。
この橋のおかげで伊良部島は不安定だった海上交通から解放された

"うちなーんちゅ"の心意気や特性を理解することの大切さ

今回の取材に対応くださった沖縄県企画部 地域・離島課の又吉さん今回の取材に対応くださった沖縄県企画部 地域・離島課の又吉さん

"理想とかけ離れていたこと"に問題があるのではなく「かけ離れているのが当たり前、自分たちはビジターではない」という認識を持てなかったことに問題があるように思われるが、当事者はそう思わないようだ。「親切にしてもらえなかったから帰る」なのである。もちろんそれだけではないだろうが、残念な結果だ。筆者としては、帰るところのない、もともとその地に暮らす地元の人々は、そんな光景はをどう感じるのだろうか?来ては帰るを目の当たりにするのは忍びない気分なのではないか?と気になる。その点についても又吉さんに伺ってみた。
「沖縄に先祖代々から暮らしている彼ら"うちなーんちゅ"は、人柄が温かく、『知り合いたい、仲良くしたい』という気持ちが根底にあります。しかし、外部からの訪問者に対し、まずは彼らなりのスタイルで様子を見て、時の経過が緩やかな沖縄ならではのテンポで見守っています。移住者には「これまでのリズムと少し違う」ということを理解いただき、自分たちが思う以上に時間を掛けて馴染んでほしいと思います。そして、新しい土地の風土に溶け込もうという意気込みも必要だと思います。移住後、地元住民との交流が予想以上に多いと感じるかもしれませんが、密度の濃い地域社会の親睦が伝統的に存在するエリアなのだ、ということを理解したうえで、ゆっくり移住・定住を成功させて欲しいです」とそのコツを指南して下さった。

一般的に、旅先で観光客に対して観光業の方が「おもてなしの心」で接してくれるのは、相手が商売人だからこそ。しかし、同じ土地に暮らす住民同士となれば話は別、プライベートな時間も共有することになるのだから観光客の立場だった時に感じた印象とは異なって然るべき。移住する場合、不慣れな地で日常生活を送る必要があるわけで、都会暮らしと比較したら「不便で、自然に囲まれた生活」が待っている。どの社会においても、古くから続いている共同体に単身で溶け込むことは、一朝一夕にできることではなく、徐々に馴染むという時の経過も必要なのが世の常ではないだろうか。

新たな産業「海洋深層水」で活性化している久米島

画像は沖縄県久米島町役場 企画財政課 島ぐらしコンシェルジュの石坂達さん画像は沖縄県久米島町役場 企画財政課 島ぐらしコンシェルジュの石坂達さん

親元など住民票登録をしている別の住まいがありながら「一時的な就労、アルバイトをしながらマンスリーマンションなど別の場所に暮らす住まいかた」と「住民票を移した上で正規雇用を得て"定住"する住まいかた」がある。今回沖縄県が迎え入れているのは後者の"定住型"である。

久米島における定住型雇用の、新たな産業として注目されているのが「海洋深層水」だという。海洋深層水とは、深度200mより深い海に分布する海水である。久米島は、この海洋深層水の採水場として日本最大規模の取水量を誇る。水産物養殖研究や、冷熱を利用したほうれん草の地中冷却栽培、化粧品への活用、飲料水としての特産物化などの産業が育成されており、その規模としては年間20億円超を売り上げるまでになっている。
久米島町 企画財政課の石坂達さんによると、離島ではあるが久米島町の場合、比較的安定した就業に就ける可能性があるとのこと。久米島町では「久米島 島ぐらしガイド」というサイトを運営しており、ここをチェックすると久米島の最新事情がわかる。その中に最新の求人や住宅情報も確認できる仕組みになっている。石坂さん曰く、「沖縄の場合、空室でも先祖の仏壇がまだそこにある、などといった理由から(空室であっても)貸し出さない家屋も多いのですが、久米島町の賃貸借契約が結べる民間アパートなどの空き情報を公開し、久米島出身者のIターン、Uターンを含め、移住者の誘致に力を入れています」。

久米島以外の島における雇用の例として、石垣島が挙げられる。今回の相談会の会場では、石垣市が募集している保育士の求人情報が書かれたチラシが配布されていた。募集広告を介して給与や業務形態をリアルに知ることができ、 応募後、採用されれば渡航に必要な費用の一部を市が一律に助成してくれると記載されている。移住者にとって魅力的な取組みである。当日、石垣市には相談者が多く、取材の間その列が切れることがなく、職員の方に話を伺うことが最後までできなかった。相談会の人気の度合いがこの点からも窺い知れる。

県をあげて沖縄を体験するためのツアーを企画

最後に今一度、「沖縄県企画部 地域・離島課の又吉さんに、沖縄の離島への移住を成功させるポイントを教えてもらった。
「最初、数日の滞在で複数回訪れ足を運んで、それからウィークリーマンションを利用して滞在、アルバイトなどが見つかったらマンスリーマンションなどに暮らして地元の人と徐々に知り合い、コミュニケーションを取れるようになってから移住する、というステップを踏むのが理想です。少しいて気に入ったからいきなり移住、ということではなく、長期的な計画で移住を実現することが成功のカギです。このお試し期間の経験を通して地元の人との交流をするなど、実際に住んでみたら、と仮定した目線で体験し、覚悟をしっかり固めて、移住を決断すると良い」だそう。

石垣島、宮古島、久米島には高校と病院があるため、沖縄の島の中でも生活がしやすい。一方、竹富島や西表島など小さな島は、公共施設が限られるものの、アーティストやIT関連などのほか職業を有している事業家が滞在するには適した環境。県主体で与那国島や南大東島などの離島へも海底光ケーブルが敷設され、場所にとらわれないジャンルのワーキングスタイルの人が滞在しやすくなっているが、こちらも事前調査がとても重要。しっかりリサーチしたうえで住み替えを検討するとよい。
ピンポイントで素晴らしいと思うことがあっても、何か自分に適しないと感じることがあるのなら、リゾートホテルや民宿などを利用し都度滞在する、いわゆる「旅」のスタイルに留めるべき。自分たちの故郷を沖縄に、という決断が出来れば、その先の未来は素晴らしいものになる可能性が高い。誰かが素晴らしくしてくれるのではなく、自分たち家族で素晴らしい未来を切り開くという意味ではあるが、ぜひチャレンジしてほしいと思う。

今年の11月から来年の1月頃にかけて、沖縄県では「移住希望者のためのリアルな離島暮らし体験」ができる移住体験ツアーを企画している。
2泊3日のツアー中、実際の島暮らしをその地に暮らす方に手引きされながら行政支援で体験できるのは、移住希望者にとっては大変良い機会ではないだろうか?
次回は2016年11月から2017年1月にかけて離島での移住体験ツアーを企画しているとのことなので、詳しくは「沖縄移住の輪」のホームページを確認してほしい。

行政が本気で支援し始めた移住・定住。今のところまだ移住者の定着率は高くないが、目的を定めて沖縄の良さを把握したうえで、第二の故郷として沖縄に根付いた暮らしを営んでほしいと願う、沖縄県行政の方々の想いが温かく相談者に伝わっている、と取材を通して感じた。
今回の活気あふれる相談者で盛り上がった会場の雰囲気からは、今後、「冷静に定住をすすめていく移住者」が増える予感がした。

沖縄移住の輪
http://okinawa-iju.jp/
久米島 島ぐらしガイド
http://www.shimagurashi.net/

石坂さんは「島をあげて移住を支援していますので、来島する際は事前に声をかけてください」と語る石坂さんは「島をあげて移住を支援していますので、来島する際は事前に声をかけてください」と語る

2016年 09月28日 11時06分