鹿児島県と長崎県のお国自慢トークバトル。勝敗の行方は…?

上)川口塔子さん(左)は鹿児島出身。県の南方、奄美大島の特産品である大島紬の着物を装い、気合い十分。対する久永倫世さんは幼少の頃に長崎に住み、熱い長崎愛の持ち主だ</BR>下)鹿児島県と長崎県のお国自慢トークバトル。ジャッジマンの判定は引き分け上)川口塔子さん(左)は鹿児島出身。県の南方、奄美大島の特産品である大島紬の着物を装い、気合い十分。対する久永倫世さんは幼少の頃に長崎に住み、熱い長崎愛の持ち主だ
下)鹿児島県と長崎県のお国自慢トークバトル。ジャッジマンの判定は引き分け

熊本地震などにより、観光面での影響が懸念されている九州。移住事情はどうなんだろう? そこで取材に出かけてみたのが、東京で開催された「九州・沖縄合同移住フェア」。
九州7県に沖縄を加えた8県が合同で開催したもので、62の自治体・団体が参加し、計71の相談ブースが出展した。主催する認定NP0法人ふるさと回帰支援センターによると、来場者数は昨年の九州7県合同移住フェアが214名だったのに対し、今年は334名と増加。九州・沖縄への移住に関心がある人は増えているようだ。

今回はフェアの一環で3つのトークセッションが行なわれた。九州・沖縄の各地域ならではの移住のあり方を考えるヒントになりそうだと感じたので、その様子をお伝えしよう。

最初のトークセッションは、「鹿児島 vs 長崎 仁義なき戦い ―地域魅力斬りー」と題した両県のPR合戦。登壇したのはふるさと回帰支援センターの鹿児島県移住・交流相談員である川口塔子さんと、ながさき移住サポートセンターの移住相談員・久永倫世さん。
第1ラウンド「場所」では、鹿児島県は家族で楽しめる温泉をアピール。「鹿児島は家族湯発祥の地といわれ、家族風呂や貸し切り風呂の施設が充実。ドライブスルーの家族風呂もありますよ」と、川口さん。一方、長崎県は異国情緒。江戸時代、鎖国政策の日本で、唯一、海外(中国、オランダなど西洋)との交易が行なわれたという歴史があるのだ。

続く第2ラウンドは「モノ」。ご当地グルメ対決だ。鹿児島県は全国有数の畜産県で、黒豚をはじめ、上質の黒毛和牛や鶏肉を産出。黒毛和牛のライスバーガー、出水市特産の出水鶏を使ったチキンバーガーなど、ハンバーガーで気軽に味わうことができるのも鹿児島スタイルという。畜産の鹿児島県に対し、長崎県は水産県。漁獲量全国2位、魚類の種類は全国1位。新鮮な魚介類を東京よりもリーズナブルな価格で楽しめるそうだ。そんな漁業の県・長崎県では漁業で働く人材の需要は高く、今回のフェアには、漁業就業希望者を対象に研修などを行なう「ながさき漁業伝習所」もブースを出展していた。

第3ラウンドは「人」。まちづくりのキーパーソンについて語るコーナーで、鹿児島県は、指宿市で地元の素材を使った商品開発などの活動をする女性グループ「美塾 篤姫」を紹介。長崎県は、対馬市の新庄清孝さんの事例を披露。新庄さんは、イカとヒジキを使った対馬バーガーの店「KiYo」のオーナーで、地元の情報を発信するWebメディアを発行し、対馬を盛り上げているという。

このように軽快でなごやかなお国自慢トークバトル。聴衆の拍手の大きさで勝ち負けを決めるという演出も楽しく、勝敗はジャッジマン(ふるさと回帰支援センターの香川県の相談員!)による判定で、引き分け!

今、熊本県への移住は? 大分県と宮崎県の意外な「全国1位」は?

「くまモン県・おんせん県・サーファー県の“リアル”!」で登壇した熊本県担当相談員の池田真麻さん(左)、大分県担当相談員・伊藤彩子さん(中央)、宮崎県担当相談員・多保田景子さん(右)。池田さんは、「熊本県が誇れる全国1位」として八代産のイグサをアピール。最近は中国産の安価なイグサで作った畳が流通しているが、「ぜひ熊本県産のイグサで作った畳を使ってください!」と話した「くまモン県・おんせん県・サーファー県の“リアル”!」で登壇した熊本県担当相談員の池田真麻さん(左)、大分県担当相談員・伊藤彩子さん(中央)、宮崎県担当相談員・多保田景子さん(右)。池田さんは、「熊本県が誇れる全国1位」として八代産のイグサをアピール。最近は中国産の安価なイグサで作った畳が流通しているが、「ぜひ熊本県産のイグサで作った畳を使ってください!」と話した

次に行なわれたトークセッションは、「くまモン県・おんせん県・サーファー県の“リアル”!」と題し、熊本県・大分県・宮崎県をクローズアップ。登壇した3人は全員がふるさと回帰支援センターの各県専属移住相談員で、各県の「これぞ誇れる全国1位」や移住事例が語られた。

熊本県を語るのは、熊本県和水町出身の相談員・池田真麻さん。「4月に熊本地震が起き、移住はどうなのかと思われる方も多いでしょう。実際、地震の被害が大きかった地域もあります。が、被害をあまり受けなかった地域もあり、移住者の受け入れに積極的な市町村もあります」と挨拶があった。そんな池田さんが選んだ「これぞ誇れる全国1位」は豊富な水資源、トマト、スイカ、献血率、そしてイグサの5点。イグサは日本の住宅に欠かせない畳の材料。国産の9割近くのシェアを占めているのは熊本県八代産だという。

では、大分県の「誇れる全国1位」は? 大分市出身の移住コンシェルジュ・伊藤彩子さんが挙げたのは、カボス、乾しいたけ、ホオズキ、留学生率、地熱発電の自給率。留学生率というのは、大学院や大学など高等教育機関で学ぶ学生総数のうち、外国からの留学生が占める割合で、都道府県別では大分県が1位という。意外なデータだが、別府にある立命館アジア太平洋大学の学生の約半数が外国人留学生であることが大きいのだそうだ。また地熱発電の自給率が全国1位なのは、大分県が「おんせん県」であることを考えると腑に落ちる。「温泉の源泉量、湧出量ともに全国1位。大地のパワーがすごいんです」と、伊藤さん。県南西部にある九重町には、国内最大級の八丁原地熱発電所がある。

そして、宮崎県の「誇れる全国1位」。宮崎県日南市出身の相談員・多保田景子さんは、日向夏(夏みかんの一種)、宮崎牛、キャビア、医療機器、ひなた指数を挙げた。宮崎県でキャビアとは驚くが、県の水産試験場がシロチョウザメの完全養殖に成功して以降、キャビアの生産地となっている。また、医療機器を挙げたのは、宮崎県内には血管用カテーテルなどの医療機器製造企業が多数集まっており、日本の医療機器産業の拠点になっているからだという。ひなた指数とは聞き慣れない言葉だが、宮崎県独自の指数と知った。九州南東部に位置して温暖な気候ゆえに年間の平均気温は全国3位、年間快晴日数は全国2位、日照時間全国3位。これらを他の都道府県のデータと総合的に比較しての全国1位とのことだ。

宮崎県へのサーファー移住。キーワードは多様な生き方

宮崎県は、サーフィンの聖地とあってサーファーの移住者も多い。「彼らは、早朝海に入り、日中は仕事、夕方には再びサーフィンというライフスタイルをとっています。そのため、時間にゆとりのある農業や起業を希望するサーファーもいます。多様な生き方を求めて、移住先に宮崎を選ぶ方が多いようです」と、多保田さん。移住者の事例として、日向市に移住してゲストハウスを営みながらサーフィンと子育てを楽しむ男性のケースが紹介された。

大分県への移住事例として、伊藤さんが語ったのは、30代のAさん夫婦のケースだ。農業をやりたいという希望があり、移住先を探すために、昨年秋に東京のふるさと回帰支援センターへ相談に訪れたAさん夫婦。群馬、岡山、高知、鹿児島など8県を検討し、2016年1月に大分県豊後大野市へ移住した。決め手になったのは、豊後大野の「インキュベーションファーム」という、新規就農者のためのサポート制度。技術研修や資金補助などを行なう制度で、その制度を利用して現在Aさん夫婦は技術習得に励んでいるという。

熊本県への移住事例では、Nさん夫婦のケースが語られた。「昨年6月に東京で開催された九州7県合同移住相談会に来られた若いご夫婦です。『子どもが生まれたら自然に恵まれたところで育児をしたい』というご希望でした。熊本県と宮崎県に興味をもたれ、私たち相談員がお手伝いし、実際に両県の市町村を2週間かけて回っていただいたんです。そして最終的に選ばれたのが熊本県五木村でした。豊かな自然と村の人たちが温かく接してくれたことに心を打たれたそうです」と、池田さん。Nさん夫婦の移住地探しの旅では、宮崎県の相談員として多保田さんも関わったといい、このように異なる県の相談員同士が連携プレイで移住希望者をサポートするケースは珍しくないのだそうだ。

(上)市町村の相談ブース。来場者の中には小さな子ども連れのファミリーも多くみられた</BR>下左)鹿児島県の相談ブースでは県内4拠点をインターネット通話でつなぎ、鹿児島県からのライブ中継</BR>下右)熊本県の相談ブース。県の相談ブースの隣では、地域おこし協力隊によるミニセミナーが行なわれた(上)市町村の相談ブース。来場者の中には小さな子ども連れのファミリーも多くみられた
下左)鹿児島県の相談ブースでは県内4拠点をインターネット通話でつなぎ、鹿児島県からのライブ中継
下右)熊本県の相談ブース。県の相談ブースの隣では、地域おこし協力隊によるミニセミナーが行なわれた

福岡県、佐賀県、沖縄県への移住。就職のサポート体制は?

トークセッション「住んでみたい! 福岡・佐賀・沖縄の暮らしのハナシ」の様子。写真左から宮里健さん(沖縄県)、田中芳和さん(佐賀県)、園田大輔さん(福岡県)

トークセッション「住んでみたい! 福岡・佐賀・沖縄の暮らしのハナシ」の様子。写真左から宮里健さん(沖縄県)、田中芳和さん(佐賀県)、園田大輔さん(福岡県)

さて、3つ目のトークセッションは、「住んでみたい! 福岡・佐賀・沖縄の暮らしのハナシ」と題し、各県の移住担当者が登壇。このフェアの来場者は、小さな子ども連れのファミリーや単身の若者の姿が目立った。そこで気になるのは、移住先での仕事である。福岡県、佐賀県、沖縄県の仕事事情や移住者への就職サポート体制はどうなのだろう?

まず福岡県である。2つの政令指定都市(福岡市、北九州市)と中核市(久留米市)を擁するだけに、鉄鋼業、自動車、半導体、商業、農業までさまざまな産業が盛んで、「地域によっては起業のサポートや就農のサポ―ト制度も整えています。県としても就職支援センターを設け、年代別の支援を行なっています」と、福岡県県企画・地域振興部の園田大輔さん。

その福岡県の西側に隣接するのが佐賀県。
「佐賀県は『子育てし大県"さが”』のキャッチフレーズで、子育て支援に力を入れています。移住者も子育て中の方が多く、就職支援には注力しています。佐賀県内の企業のほか、佐賀に住んでお隣の福岡県の企業で働くという生活スタイルも提案しています。佐賀から博多までは特急電車で約40分なんです」と、佐賀県さが創生推進課の田中芳和さんは語る。

そして沖縄県。沖縄県企画部の地域・離島課の宮里健さんはこう話す。
「観光業を中心に小売業、飲食業、福祉、介護など、第3次産業に従事している人が、就業者の8割を占め、求人が多いのもこうした分野です。ただ近年はIT関連の情報通信産業の雇用が増えてきています」。
ちなみにこの合同移住フェアでブースを出展していた竹富町(八重山地域)では、IT技術を活用して在宅で働ける環境づくりをめざし、技術習得のサポートと雇用拡大に取り組んでいるという。

住まい探しに苦労する地域もあるので、事前に現地で情報収集を

沖縄というと、南国のリゾート地のイメージがあり、その憧れだけで移住する人も多いというが、現実とのギャップに悩み、定住できないケースも少なくないと聞く。
「沖縄県の中での地域差が大きいのです」と、宮里さん。沖縄県は本島、本島周辺の島しょ部、宮古列島、八重山諸島からなり、本島と八重山諸島は400km以上離れている。本島でも中南部は市街地化がされていて交通渋滞もあるが、本島北部は山岳地帯が広がっている。宮古島や、八重山諸島の石垣島などリゾート化が進んでいる島もあれば、昔ながらの村落共同体のような地域社会が根強く残る島もある。「田舎にいけばいくほど、地域の人と密な付き合いが重要になってきます。それについていけず、都会に戻ってしまうケースが少なくないのです。そうした実情があることも踏まえて、移住を検討していただければと思います」と、宮里さんは言う。

住まい探しについても沖縄は地域差があるようだ。「沖縄本島の中南部では賃貸マンションなど物件は多いのですが、本島以外の島では住む場所の確保が難しいケースもあります。移住者向け住宅の整備に取り組む市町村もありますが、必ず現地へ行って情報収集することをおすすめします」と、宮里さんはアドバイスをしてくれた。

福岡県、佐賀県の住まい探しに関しても各登壇者から語られたので、PRポイントとともにお伝えしよう。

まず、福岡県の園田さん。
「高層マンションからアパート、庭付き一戸建までさまざまな住宅が揃っています。立地も繁華街から緑豊かな田園地帯まで選択の幅が広く、豊かな自然が残る郊外に住んで福岡市などの都心に通勤するという暮らし方も可能です。空き家バンクを運営している自治体や、体験移住施設を完備している自治体もあり、これらの情報はインターネットでチェックできます」。

そして佐賀県の田中さん。
「県内の各市町村では空き家バンクの制度があり、ホームページ上で物件情報を公開しています。また、今後は佐賀県出身で東京などで活躍中の建築デザイナーと組み、中古住宅のリノベーションをするという構想もあります。古民家に住みたい、中古住宅の中でも設備の整った家に住みたい等々、佐賀に移住してどんな暮らし方をしたいのか、個々の希望に合わせた住まいの提供に取り組んでいきたいです」。

これら3つのトークセッションはそれぞれ30分程度のものだったが、各県の特長など輪郭をつかむことができた。漠然とした移住希望しかない場合にも、こうしたトークイベントは移住計画を具体的なものにする助けになってくれると思った。

☆取材協力
認定NPO法人ふるさと回帰支援センター
http://www.furusatokaiki.net/

「九州でお待ちしています!」と、鹿児島県いちき串木野市の相談ブースで対応していた小林史和さん。市の特産・焼酎の老舗蔵元の前掛け姿で笑顔でポーズをとってくれた。小林さんは地域おこし協力隊のメンバーでもあるという

「九州でお待ちしています!」と、鹿児島県いちき串木野市の相談ブースで対応していた小林史和さん。市の特産・焼酎の老舗蔵元の前掛け姿で笑顔でポーズをとってくれた。小林さんは地域おこし協力隊のメンバーでもあるという

2016年 08月16日 11時05分