ライフスタイルの多様化で増加する「地方移住」。一方で「地方移住失敗」の例も

2016年2月26日に公表された2015年国勢調査の人口速報値によると、1920年の調査開始以来初めて、ついに日本の人口は減少局面に入った。2015年10月1日時点で、日本の総人口(外国人を含む)は1億2,711万47人であり、5年前に比べて94万7,305人と0.7%減少した。

特に地方においては、大幅な人口減少と高齢化により、今後とも厳しい状況が見込まれている。
「地方創生」「東京一極集中是正」などをキーワードとして、政府も様々な取り組みを行っているし、一方で、ライフスタイルの変化によるゆとりや豊かさ志向もあり、Uターン・Iターン・Jターンなど「都市から地方への移住・交流」の動きが高まっているのも事実のようだ。地方への移住・交流の促進は地方自治体の取り組みとして確実に拡がりつつある。移住者を応援する支援制度も「住まい」「子育て」「仕事」「移住・体験」「健康・医療」とそれぞれの自治体によって工夫をし、移住者の受け入れ促進を行っている。

「田舎暮らしに憧れている」「やっぱり自然の中で暮らしたい」……とは思っていても、実際移住をしてみるとうまくいかない例もあるようだ。移住地方の中でも特に人気が高く、年間3万3,000人以上の転入者が存在し、移住者は2万5,000人を超える沖縄県。沖縄移住センターが行った調査の中での移住失敗事例によると、以下のような現実が見えてきた。
1) 沖縄人から頭を下げて受け入れてくると思っていた
2) 自分の計画は完璧だ!と思い込んでいた
3) 沖縄に行ってから仕事の情報を集めようと考えていた
4) 沖縄を楽園だと考えていた
5) 十分な計画をしなかった
6) 沖縄に行けばその後は何とかなると考えていた
7) 移住してからが本当のスタートという意味を理解していなかった
8) 理想が先走りになっていた
9) 最後は誰かが助けてくれる(何とかなるさと考えている)
10) サイトでの情報に頼りすぎている(自分の目で見てない情報を鵜呑みにしていた)
11) 情報を得るのは簡単だし、その情報があるから移住は簡単と考えていた
12) 本土での引越しと同じ感覚で沖縄に移住した
13) 仕事が見つからなかった時の事を考えていなかった(ハローワークなら何かは見つかると考えていた)
14) とりあえず安宿生活をし賃貸契約さえ済ませれば何とかなると考えていた(部屋さえあれば仕事は見つかると考えていた)
15) サイトの情報だけで沖縄を知ったと思い込んでいた
16) 数回、沖縄に旅行しただけなのに沖縄の全てが完璧(楽園)と感じていた
17) 沖縄の海に魅せられて癒されているだけという事に気づいていなかった
18) 癒される海に見慣れてしまった時の事を考えていなかった
19) サイトなどのコミュニティーで気軽に移住をしている話題を見て簡単に移住できると思っていた

失敗した理由は様々だが、理想が先走り準備を十分にせず、“現実を見据えなかった”がための例が多いようだ。

しっかりした移住準備には何が必要なのだろうか?地方移住のために何を検討し、何を準備すべきかを見ていこう。

美しい空と海…移住先として人気の沖縄美しい空と海…移住先として人気の沖縄

移住準備の前に確認したいのは「目的」と「合意」

「何故、地方に移住したいのか」……まずはなんといっても、目的と気持ちの確かさを確認する事が大切。今の暮らしよりも充実する具体的なことがなければ、移住をすることの意義が薄れてしまう。環境が大きく変化する中、漠然と“のんびりしたいから”といったことだけでは、成立しないのが実際のようだ。
また、家族やパートナーがいる人は理解と合意がかかせない。意見が対立しても“勝手にするからいい”といったことでは、離婚や家族の断絶につながりかねない。一緒に移住するのであれば協力を、離れて暮らすにしてもそれぞれどういったコミュニケーションで乗り越えていくのかをじっくり話し合う機会が必要になる。

移住先については、希望する暮らし方に合わせて条件をリストアップして決めたい。海や山などの環境だけでなく、医療施設や教育施設は整っているか、ライフラインに問題はないかを確認しよう。すべての条件が整うということは、めったにないのかもしれないが、譲れない条件はきちんと決めて、それ以外の不便は暮らしの中でどうカバーしていくのか考えたい。移住候補の自治体のサイトを調べれば、生活に関するほとんどの情報があるはずだから、譲れない条件のそろった地域を探すと良いだろう。

移住先の選定は何度か足を運んで、現実を見極める

自分自身の目的、家族の合意、譲れない条件から導き出した「住みたい移住先」の目安がついたら、まずは実際に何度も足を運んでみることをおすすめしたい。

「観光で何度も行ったことあるから……」という人もいるかもしれないが、今度はぜひ“生活者の目線”でその土地を歩いてほしい。役場や派出所の場所、生活必需品を買い物する場所と値段、ガソリンスタンドなど具体的に生活に関わる施設だけでなく、その土地の風習・お祭り・冠婚葬祭のしきたりなどそのまちに溶け込むために必要な情報も入手したい。

できれば日帰りで見て歩くだけでなく、何泊かをしてみよう。季節によって暮らしぶりが大きく変わる地域もあるので(豪雪地域などは、冬に燃料費がかかる)季節ごとに訪れて確認することをおすすめする。各地方自治体で「おためし移住」や「田舎暮らし体験」などのツアーも実施しているので、参加してみるとよいだろう。また、地域によっては移住者支援のNPOや行政の窓口があるので、不安な事や質問があれば聞いてみるとよい。

できるだけ、移住先と定めたところに知り合いやサポートしてくれる人を見つけたい。移住前にその地方で行うコミュニティやイベントに意識して足を運んで参加することをおすすめする。まちづくりやボランティアなどの取り組みに参加するのもよいだろう。

移住先の仕事、そして暮らし続けられる資金計画を練る

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局監修:「地方移住ガイドブック いなか暮らしはじめませんか?」内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局監修:「地方移住ガイドブック いなか暮らしはじめませんか?」

働きながら移住先で生活することが前提の人は、移住を決める前に職を決めたい。都会での感覚で「行ったらなんとかなるだろう」と、安易に考えて失敗する人が多いようだ。リタイア後の移住なら無理に職を探す必要はないが、そうでないのなら、その地方の求人を見たり、役場に問い合せたりして、仕事と生活費を確保したい。

また、リタイア後の移住であってもどのくらいの生活費がかかるのかの試算はかかせない。都会ではかからなかったガソリン代や、環境が変わることによる冬場の暖房費、生活必需品も意外に都会より高い場合もある。家賃などが安いから……といって、他の生活費用を高をくくっていると大変なことになる。

移住の準備費用は、目安としては500万円くらいの貯蓄が必要だという(※内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局監修:「地方移住ガイドブック いなか暮らしはじめませんか?」より)建物の修繕費用や引っ越し費用なども予想以上にかかるケースもある。

自治体によっては、移住者や若い世代を呼び込むため、さまざまな補助を打ち出しているところも多い。特に子育てに関する助成金は、出産祝い金を支給している自治体が増えているし、子育てに必須なチャイルドシートやベビーカーの費用、学費、給食費のほか、ある程度成長するまでは、医療費を補助してくれる場合もある。自治体によって違うのでホームページなどで確かめたい。

いずれにせよ移住のための移転時にかかる費用、移住後の暮らしの家計簿をしっかり予測立てて計画を練るのが必要だ。

それでも「移住」によって、豊かに暮らせるメリットも大きい

地方で暮らすメリットの最大のものは、都会とは違う自然豊かな環境だろう。
空気や水の美しさ、季節ごとの自然の移り変わりなど魅力的はつきない。土地も広く、土も健康なので、畑を作って、毎日採れたての野菜を味わう生活も夢ではない。実際に「子供がのびのびと育っている」「人間らしい生活で、規則正しい生活ができる」「健康になった」といった環境面でのメリットが大きいようだ。
子供にとっても、虫や魚、木々や花と触れ合える生活は、自然のサイクルを学ぶ上でも大きいし、情緒を豊かにしてくれるに違いない。

東京一極集中の解消は、日本全体の問題になっている。また、ITが進歩した結果、「都会でなければチャンスがない」といったこともなくなりつつある。インターネットさえつながれば、様々な場所で仕事をする新しいワークスタイルである「ノマド」や、完全移住でなくても、別荘移住や往来移住など二地域居住などの方法もある。週末だけ田舎暮らし……といったライフスタイルも、もっと今後増えてくるだろう。

繰り返しになるが、何を目的として、どういった暮らしをしたいのかを考えることが、移住に限らず「住む場所」を選ぶ重要なポイントである。また、地域に豊かに暮らすためには、地域を理解し、地域の慣習や風土を尊重し、地域の人々とかかわることがかかせない。

生活の豊かさや暮らしやすさは、どの土地で暮らすにせよ「土地と地域を愛する」意識と行動によって変わる。移住を考えるのであれば、そういった姿勢が必要だということを念頭に置きたい。

特に地方への移住では、「子供がのびのびと育つ」「人間らしい生活ができる」「健康になった」</br>といった環境面でのメリットが大きいようだ特に地方への移住では、「子供がのびのびと育つ」「人間らしい生活ができる」「健康になった」
といった環境面でのメリットが大きいようだ

2016年 09月05日 11時05分