古き良きものをセンス良く活かすインテリアが世界中でトレンドに

祖母の代から大切にしてきたレース素材のアイテムや人形、手芸作品などが手元に残っていて、でも傷んでしまった…そんな時近所に修理をしてくれる器用な人がいたら大切なものをさらに長持ちさせることが出来る…。英国出身のデザイナー、レイチェル・アシュエル氏の母親の仕事は、そんな女子たちの大切なものの「リメイク」を手掛けること。「子供のころ眠りにつくときの子守歌は、カタコトとなるミシンの音だった」とブログ上で自身が語る通り、朽ちたものたちが母の手で息吹を吹き返し、美しくきれいに仕上がって戻っていくのを間近に見ていたことが、彼女のイマジネーションのベースだという。

2016年、急成長のトレンドである「シャビーシック」とは、デザイナー、レイチェル・アシュエル(Rachel Ashwell)氏が提唱し始めたスタイル。
使い込まれて傷が付いたり、ペンキが剥がれかけているような古いけど味があるアンティーク家具と、上品な花柄やフリルのファブリックなどをミックスさせた、クラシックでガーリーなイメージのインテリアの事(抽出:キナリノHP)で、大人かわいらしい雰囲気を愛する「かつて少女だった大人」たちに圧倒的な支持を得ている。

古きよきものを大切にしながら自分らしいスタイルを作っていくことがシャビーシックのベースにあるようだ古きよきものを大切にしながら自分らしいスタイルを作っていくことがシャビーシックのベースにあるようだ

そのルーツを探るべくRACHEL ASHWELL SHABBY CHIC Couture 1号店を訪ねた

少女が母になり祖母になっても、その暮らす空間に幼いころ愛でていたものを取り入れたいという願望はあるはず。しかし幼いころ好きだったものを取り込むと、チープな空間になると予測がつくゆえ、そこはグッと抑えて大人テイストのインテリア、を選ぶというのが本音ではないだろうか。
しかし、レイチェル氏が展開するシャビーシックなアイテムは、かわいらしくも洗練されているため、センス良く高級感溢れるテイストに仕上がるのが特徴。大人かわいい雰囲気でありながらゴージャスさも持ち合わせていることがセレブたちに人気のようだ。
ビバリーヒルズ近郊のカラバサス地区にジェシカ・シンプソンが住まいを手に入れた際、レイチェル・アシュエル氏がインテリアデザインを手掛けた。現在は売買されてジェニファー・ローレンスが購入して住んでいる。

彼女の事業はグローバルに展開されており、サンタモニカ、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロンドン、テキサスに続いて東京は世界6店舗目である。今回、1989年にサンタモニカに誕生したRACHEL ASHWELL SHABBY CHIC Couture(レイチェル アシュウェル シャビーシック クチュール)の1号店を、彼女のルーツを探るべく訪ねてみた。
店舗はパシフィックコーストハイウェイがサンタモニカのパリセイズ・ビーチ・ロードに入って海岸線を進み、低層のレジテンスが並んだモンタナ・アベニューの角を曲がり0.7マイルほど進んだ先、サンタモニカらしい雰囲気のいい一角にある。日当たりの良い店内にはヴィンテージ家具やソファ、ベッド、クッション、リネン類やタオル類のほか、カーテンや照明、カトラリーやグラス、食器などのテーブルウェアを扱っている。家具の棚には彼女の著書がいくつも並んでおり、事例を示しながら商品を提供するスタイルも人気の理由だ。
ロサンゼルスでは庭や室内に仏像を多く見かけるのだが、こちらの店舗も例外なく仏像が絵画として掲げられており、ピンクと水色のテーマカラーで独特に描かれたそれは、この店にマッチした仕上がりになっていた。

空間はシャンデリアや小物の使い方が見事で、レイチェル・アシュエル氏が直接手掛けることもあってか、日本でよく見かける均一なディスプレイとは違った、独特の雰囲気を感じることが出来た。サンタモニカを訪ねることがあったら足を運んでみてはいかがか。
(1013 Montana Avenue, Santa Monica, CA 90403 (310) 394-1975 Monday - Saturday 10 – 6 Sunday 12 - 5)

レイチェル・アシュエル シャビーシックのサンタモニカの店内。独特のテイストでまとめられたファブリックスや食器などが並ぶレイチェル・アシュエル シャビーシックのサンタモニカの店内。独特のテイストでまとめられたファブリックスや食器などが並ぶ

センス良く高級感溢れるテイストに仕上がるのが特徴

店舗近くにある撮影スタジオを訪ねたが、英国出身の彼女らしく、バラ園のあるガーデン併設のスタジオとなっており、馬小屋を改築した建物内部にも彼女らしさが充分に表現できる空間である。
スタジオ、プール、バラ園、白いパラソル。雨の少ないサンタモニカの気候によく似合う。
実際に暮らす空間の中にある、リネン類のしまい方、小物の並べ方や色遣いは数多く出版されている著書のとおりなのだが、ブルーテイストとピンクテイストの使い分けや、その両方をつなげるベージュや薄いグレイの床や壁の色彩づかいがとても美しい。
自分が好ましいと思えるものを、徹底的に愛でて使い込んだうえで紹介するその手法は、本来の人が人に何かを伝える大切なルール、よいものがリレーする基本だと思える。

「シャビーシック」という独特のスタイルを考案し、そのお手本を示しながら、息の長い持続性ある商品展開を産業化した「女性ならでは」の経済との関わり方が素敵だ。
さらに自邸を拝見する機会を得てついて行ったのだが、住まいそのすべてがお手本になっており、圧巻だった。住宅産業にもクリエイトな創造性が必須であることを無言で示し、自宅向けのインテリアという、割と経済とかけ離れた感じのするカテゴリにおいて供給の流れをインダストリー化し、世界展開を実現した彼女の事業は、ダイバーシティな社会のお手本と思われる。他国で見た誰かが作った魅力的なものを、ただ運んできて売れるだろう、後は買う人が自分でどうにかすればいい、という輸入業のやり方とは一線を画す。
手塩に掛けた愛の溢れるモノづくりのリレー。それこそが「シャビーシック」なのではないか。

シャビーシックとよく合う英国風のバラ園。この脇にはプールが広がり奥には馬小屋を改造した素敵な空間が広がるシャビーシックとよく合う英国風のバラ園。この脇にはプールが広がり奥には馬小屋を改造した素敵な空間が広がる

2016年 11月27日 11時00分