払われていないことが分かった途端、催促の電話が始まる

入金がないのが分かった途端から、催促の電話が始まり、書面、訪問と様々な手で催促が続けられる入金がないのが分かった途端から、催促の電話が始まり、書面、訪問と様々な手で催促が続けられる

賃貸では部屋探し時はもちろん、暮らし始めてからも不動産会社とお付き合いするケースは多々想定される。そんな時に気持ちよく対処してもらい、楽しい暮らしを送るためには、不動産会社の仕事や役割、どんなことをしてもらえるのかなどを知っておくと何かと便利。これは日夜様々なトラブルに対処してきた不動産会社の裏話に耳を傾け、より良い暮らしのためのノウハウを学ぶ連載の第9回目。今回はもし、家賃が払えなくなりそうと分かった時にはどうすれば良いかを教えてもらう。

さて、最初に家賃が払えなくなりそうだと分かっていながら何もせずに逃げ隠れしてしまった場合にどんなことが起きるかを見ておこう。これが最悪のパターンである。

家賃が払われていないことが分かった途端、不動産会社は催促の電話を始める。不動産会社、大家さんにとって家賃滞納は空室と並ぶ一大事である。そのため、即行動がどの会社でも基本なのだ。「弊社の振込み期日は毎月28日。振込みが確認できるのはその3営業日後で、そこで振り込まれていないと分かったら、担当者はすぐに電話をかけ始めます」(ハウスメイトパートナーズ東東京支店元支店長・谷尚子さん)。

その電話は本人が出て、家賃をどう支払うかを明言、実際に支払われるまで続き、時には日に何度もかけることも。留守番電話にもならない、出ようとしない人にはすぐに手紙での催促も行われる。すでに何度か、家賃支払いが遅れたことがある人の場合には担当者がすぐ訪問して対面で支払いを促すこともあるという。

なぜ、そこまで厳しくするかと言えば家賃は家計のうちでも大きな存在。たまたま、うっかり忘れて翌月に2カ月分払うことを考えれば、それがどれだけ負担になるかは想像できよう。溜めるとどんどん払えなくなってしまうのだ。そうならないよう、早め、早めに催促するのは入居者のためでもあるわけだ。

それでも電話に出ず、連絡が取れないままで2カ月が経過すると、明け渡し訴訟の準備が始まる。「払えない人に裁判で支払い督促をしても、手続き中に次の月の家賃支払日が来てしまい、滞納額が増えていってしまう可能性があるので、最初から明渡しを求める訴訟になるのが一般的。明渡し訴訟なら強制執行で退去してもらえますから」と谷さん。3,000軒の管理をしている中では年に何回かは訴訟にまで至ることもあるそうで、多い年には5~6件に及ぶことも。ただ、実際には内容証明が届き、弁護士が出てきた時点で、これはまずいと任意で退去するという例が多いそうだ。

逃げ隠れの果てに強制執行となると、社会的に立ち直れなくなることも

住む場所がなくなることは、物理的に生活が成り立たなくなるだけではなく、社会的にも難しくなるということ。住む場所という傘があるうちに、次の手を打とう住む場所がなくなることは、物理的に生活が成り立たなくなるだけではなく、社会的にも難しくなるということ。住む場所という傘があるうちに、次の手を打とう

それでも逃げ隠れしている場合には訴訟になる。口頭弁論の期日に出廷するように連絡が来るが、それを無視、出廷しないでいると滞納した本人には関係なく裁判は進み、訴えた側が求める通り、部屋を明け渡すべしという結論が出てしまうのが一般的。事案によってかかる日数は変わるものの、それほど延々と逃げてはいられないのが実際のところだ。

そして、結論が出てしまい、それでも明渡しに応じないとなると強制執行が行われる。強制執行では事前に執行官から任意履行、つまり自分から出て行くことを催告されるが、それも拒んでいると、いよいよ執行になる。明渡し断行期日は事前の催告時に合わせて通告されており、当日は執行官、運送会社がやってきて入居者を室内から出し、荷物を搬出する。強制執行に居合わせたことのある谷さんによると「屈強な男の人が何人もやってきて、退去を拒む入居者を着の身着のままで引きずり出すという感じでした。荷物は全部、引き出しの中のものまでビニール袋にごっそり移されて、全部トラックで持って行かれていました」。

こうした形で退去となると当然、住む場所がなくなるわけだが、そうなると働きたくとも働けず、年金や保険などに加入、受け取るなどができなくなる可能性が出てくる。「失業して家賃が払えなくなり、周囲から生活保護受給を勧められたものの、何かアルバイトをされているようで、それができなくなるのは困ると、生活保護申請をせず、任意で退去、ホームレスになった人がいらっしゃいました。ところが、公園で暮らし始めて少しして、そのアルバイトを首になったとのこと。住所がない人には仕事は頼めないということだったようです」。

考えてみれば、日本ではほぼすべての書類に住所を書く必要がある。それが書けないとなったら、社会的に信用されなくなる可能性があるのだ。どこかに住んでいられる間は住所などあるのが当たり前と思っているだろうが、実は住所があってこそ、様々なことが可能になる。「家賃が払えない」を住所不定に進展させないようにしないと、のちのち、大きなつけを支払わなくてはいけなくなる場合があるのだ。

滞納になる前に大家さん、不動産会社に相談を

では、家賃が払えないかもしれないと思ったら、何をすれば良いのか。「素直にその状況を大家さん、不動産会社に相談してください」と谷さん。「滞納が始まり、一度逃げてしまったら、それ以降、その人は悪者になり、助けてくれる人はいなくなります。でも、たとえば『派遣先を首になってしまい、来月の家賃が払えないかもしれません。今、仕事は探しています』と事前に相談されていたら、次の仕事先が見つかるまで少し待ちましょう、その分は分割払いにしましょうなどと手の打ちようがあります。

また、家賃が安いところに引っ越して何とかなるなら、滞納する前に引越しをする手もあります。滞納、強制執行などが行われたとなると、親や身内でも連帯保証人になってもらえなくなるかもしれませんし、保証会社の審査が通らなくなります。保証会社の中には明け渡し訴訟を起こされた人の情報を収集している例もあるからです。でも、それ以前なら引越しは可能です」。

大家さん、不動産会社さんに相談する時には早めに現状を伝え、自分がそれを打開するためにどうしているかを伝えるのが基本。「次の仕事を探している、2カ月療養すれば仕事に復帰できる、親に借りる算段をしているなど具体的に何をしているか、支払いの見込みはあるのかなど教えていただければ、それに合わせて互いにベストな手段を考えられます」。

一時的にお金を借りる手もある。たとえば、ハローワークインターネットサービスでは離職に伴って家賃を払えなくなった、住宅困窮者になってしまった場合の救済策について紹介をしているし、各自治体の福祉担当セクションや社会福祉協議会などでは一時的な出費を対象にした貸与を行ってもいる。逃げ隠れしている時間があったら、何か、利用できる制度がないかを調べてみるほうが良いわけだ。

また、そういう場所に相談、貸与を申請する場合には大家さんや管理会社に書類を用意してもらう必要があることも。最初に逃げてしまったら、協力してもらいにくくなる。言いにくいことだろうが、早めに相談しよう。

布団をかぶって寝ていても事態は解決しない

だが、実際には逃げ隠れするケースが多いそうで、電話に出ない、親からも連絡がつかない、会社にも行っていないとなると、不動産会社が保証人あるいは警察と一緒に鍵を開けに行くことも。滞納ではなく、倒れているのではないかと心配してのことだ。実際、それで倒れているのが見つかるケースもあり、滞納督促の早い会社だと病気になった時も早期発見されやすいともいえそう。だが、倒れているケースよりは「布団をかぶって寝ていることが多い」のだという。

「解雇された、仕事を辞めた、職場でいじめにあっているなど、精神的に参っていることが多く、また、家賃滞納が始まった人の部屋に行ってみるとポストが水道光熱費や税金、カード会社からの郵便物などで一杯になっていることもしばしば。それでもう何もかも嫌になって布団の中に逃げ込んでいるのだろうと思います。中には督促電話や訪問から逃げたいと電話線を抜き、ブレーカーを下げて完全に現実逃避している人もいました」。だが、何度も書くが、逃げていると事態はどんどん悪くなる。まずいなと思ったら、まだ、気力が残っているうちに相談、最悪の事態だけは避けるようにしたい。

大家さんの多くは、何がなんでも滞納は全額払ってもらいたいと思うより、払えないなら出て行って欲しいと思うという。滞納した側からすると払わなければ大変なことになるのではないかと思い、その怖さから逃げ隠れしているのだろうが、場合によっては分割払いにしてもらえたり、一部は免除してもらえることもあるそうだから、そこまで怖がる必要はない。

ちなみに大家さんが一番嫌がるのは荷物を放置したまま、本人が行方をくらます、いわゆる夜逃げ。「解約の意思表示、放置したモノは処分していいという許諾があれば良いのですが、それがなく、いなくなられるのは一番困ります。解約しますと言えば、交渉の余地はありますから、それをしないで逃げるのはやめてください」。

家賃は手取りの3分の1以下、生活費3か月分の貯蓄を心がけて

誰の身にも不測の事態は起こりうる。自立して暮らしていくためにはそのための備えも必要だ誰の身にも不測の事態は起こりうる。自立して暮らしていくためにはそのための備えも必要だ

そもそも家賃が払えなくなる事態に陥らないために心がけておきたいことがある。ひとつは家賃をできるだけ手取り収入の3分の1以下に抑えること。「特に初めて一人暮らしをする人は水道光熱費その他生活にかかる費用を考えずに予算をたてがちですが、意外にかかります。また、高い物件を借りたいからと税込で収入を書く人がいますが、後で困るのは自分。それでカツカツの生活になってしまうと、貯蓄ができず、何かあった時にはすぐ滞納せざるを得なくなってしまいます」。

新しく生活を始める際には家具、家電や生活用品などでまとまった金額が必要で、それが破綻の要因になることも。今どきはリサイクルショップ、ネットオークションなどで安く買うこともできる。生活の収支が分かってくるまでは無理をしないよう、心がけたい。

もうひとつは貯蓄。病気や怪我その他の事態は誰にでも起こりうる。その時に蓄えがあれば、すぐに破綻しなくても済む。目安は生活費の2~3か月分だ。「失業した場合でも失業保険が出るまでの3カ月程度を貯蓄でなんとかなるようにしておくこと。理想は再就職して次の給料が出るまで持つように貯めておくことですね」とCFPの資格も持つ谷さん。無理のない家賃の物件を借り、少しずつでも貯蓄しておけば不測の事態にも備えられるわけだ。

親として保証人を引き受ける場合には、ちゃんと払っていける家賃設定になっているのかを確認、責任が持てる範囲で引き受けることも大事だ。「賃貸契約の保証人は非常に責任の重い連帯保証人であることが多く、また、契約が更新されれば保証人の役割も更新されます。ですが、それを知らず、子どもが滞納した後になって、自分は知らない、無関係だと言う人が少なからずいらっしゃいます。法的な対応になった時にはそうした言葉は通用しません。ハンコを押す行為には責任が生じることを意識、子どもに注意を促すようにしていただきたいものです」。

ハローワークインターネットサービス
https://www.hellowork.go.jp/index.html

2015年 06月24日 11時07分