緑の豊富な宅地開発を認定。緑の連鎖で街の価値向上を図る

つくばエクスプレス開業に作られた住宅地では緑の多い環境作りが心がけられているつくばエクスプレス開業に作られた住宅地では緑の多い環境作りが心がけられている

つくばエクスプレス開業で市内の各駅周辺を中心に宅地開発が相次いでいる。それを緑の回復、育成につなげようというのが流山グリーンチェーン戦略。簡単に言えば、認定制度を作ることで、事業者に緑の豊富な物件を作るように働きかけようというもの。売る側としては、緑の豊かさを市に認定してもらうことで消費者に環境に配慮した物件であることがアピールできるようになるわけで、行政側にもデベロッパー側にもメリットがある仕組みである。

具体的には道路に接した部分に輻射熱を遮る植込みを設けて木陰を作る高木を植える、敷地境界には通風を妨げないような植え込みを配する、敷地内を積極的に緑化する、省エネ型設備機器の設置など7つのポイントがあり、3段階で認定されることになっている。このポイントの中には、単に共用部分、敷地内に緑を確保するだけでなく、断熱性能の確保や住戸内のパブリックスペース(リビング等)に2カ所以上の窓を設置して、風通しを良くすることも盛り込まれており、冷暖房コストの縮減になることから、住む人にもうれしい制度でもある。

2013年3月末までに173件、戸数にして3050戸、緑化面積は41898平米に及んでおり、「2年前にインターンに来た千葉大学の学生による調査ではグリーンチェーンに認定されたマンションの値下がり率は認定されていない物件よりも少なかったという統計結果が出ました。今後、これをテーマにした論文が出てくることを期待しています」(井崎義治流山市長)とのこと。緑の多さが住まいの価値を左右することが立証されることに期待したい。

このほか、緑に関して公的な土地に植樹をしたり、周辺に緑の少ない学校などに防災林、防火林となるような植樹を行ったりなどといった事業が行われている。増改築、建替えで不要になった樹木を市役所が仲介して、欲しい人に渡すグリーンバンクも面白い試みだと思う。

自分たちの街をきれいにしたい、市民活動も活発

ハンギングバスケットのコンテスト風景。季節ごとにテーマが異なり、見ているだけでも楽しいハンギングバスケットのコンテスト風景。季節ごとにテーマが異なり、見ているだけでも楽しい

緑、自然を守り、大事にする市民活動も多く行われている。たとえば、千葉県最初のオープンガーデン組織が結成されたのも流山市。これは丹精込めた我が家の庭を一定期間公開するもので、毎年5月に公開され、多くのガーデニング好きが集っている。中心となっているのは東西江戸川台地区、南流山地区、三輪野山・加・平和台など。オープンガーデンが行われている地域ではお隣の庭を見て発奮、我が家もきれいにしようと思う人が増えるそうで、グリーンチェーン同様、緑の連鎖が起きる。また、きれいな庭を楽しもうと街を歩く人が増えると、その目は防犯にも役立つ。ガーデニングには実用的なメリットもあるというわけだ。

ガーデニングで言えば、おおたかの森ショッピングセンターが行っているハンギングバスケットのコンテストも恒例化しつつある。街中の腕自慢たちが飾る花々は訪れる人を歓迎しているようでもあり、こうしたことが街のイメージを良くすることに寄与しているようにも思う。

市民活動ではゴーヤカーテンの普及を目的としたながれやまゴーヤクラブもユニーク。もともとは市内の自治会で温暖化防止、夏を涼しく過ごすための知恵として始まったものが、市内全域に広がり、その結果平成22年には「ストップ温暖化「一村一品」大作戦」なる環境省の事業の全国大会で環境大臣優秀賞を受賞するまでになったとか。テレビその他の取材も多く、地元では有名。この他にも蛍を育てている団体や里山の自然を守る活動をしている団体など、自然、環境に関しては多くの人達が自主的な活動をしている。こうした住民たちの努力も緑と自然のある街づくりに大きな役割を果たしているわけだ。

農地も緑の一部。地産地消を実現、新鮮で多品種な野菜が手に入る

一般に都市近郊の農業では多品種少量生産が行われていることが多い一般に都市近郊の農業では多品種少量生産が行われていることが多い

緑、自然は、見る、体験するだけではなく、食べるものでもある。最近、よく耳にするようになった地産地消の食生活は豊かな自然があってこそ成り立つ。実際、流山市でもこの頃、野菜の直売所が増えているとは、南柏駅に近い名都借(なづかり)にある自然農園レインボーファミリーの笠原秀樹さん。「流山は消費地に近いということで、直売所や朝市など消費者に直接販売する機会も増えてきています。中にはスーパーではめったに見かけないような珍しい野菜も手頃な値段で入ることもあります。農家の中には単品目の生産の他に、こういった場所に出す野菜を作るため、様々な野菜を作る例も増えています」。身近で多品種の新鮮な野菜が手に入るのは、住む人にとってはうれしい話だ。

だが、将来には不安もある。「流山市には雑木林や農地も多く、いずれも流山の緑を構成する大きな要素ですが、農地は農地法の規定があり、そうそう簡単に宅地化できないものの、雑木林は相続の時に宅地開発されるケースも多い。古くから住んでいる人の中には緑が減ったと感じる方もいらっしゃるようです」。

流山に限らず、農家でも高齢化は進んでおり、後継者がいないケースも増えている。となると、今は雑木林や農地も含め、緑の豊かな流山の風景が変わってしまう可能性もある。緑を残すために農業の継承は必要不可欠と考えると、農地を農地として利用していく方法を考えていく必要があるだろう。農業に関しては農地法や課税の問題など、自治体の手に余る問題ではあるが、行政にはなんとか維持していく手立てを考えていただきたいものだ。

農家主催、地元を知るミニツアーで生活を楽しく、面白く

身近にある緑のひとつとして農地、雑木林にも目を向けたいものだ身近にある緑のひとつとして農地、雑木林にも目を向けたいものだ

もうひとつ、ここで面白い話を聞いた。それはこの農園で始められている地域活性化のためのイベントである。その道のプロである地元のお店や農家を訪ね歩く旅、題してJIMO旅。主催する笠原純子さんは「農業は土地があってできる仕事ですから、この土地、街が大事です。であれば、ここをもっと楽しくしたい。流山には畑があり、商店街があり、住宅があり、それぞれがすごく近くにあるのに、農地と住宅の間に交流はありません。新しくこの街に住む人は商店街を利用しないし、わざわざ収穫体験をしに遠くまで出かける。でも、地元にそういう場所があることを知り、交流できれば、この街はもっと楽しく、面白い場になるのではないかと思うのです」と語る。

流山市の緑や自然に惹かれて引っ越してきた人でも、多くの場合、見ているのは駅とその周辺にある商業施設、さらにその先にある通勤、通学先である都会ばかりで、住宅地の外側に広がる雑木林や農地は視野に入らない。しかし、その存在を知り、見ることができれば、毎日の暮らしはもっと豊かなものになるはず。せっかく、自然の豊富なこの街に暮らすのであれば、そうした視点は大事だろうと思う。

ちなみに笠原さんは地元の商店街などにも参加を呼びかけているそうで、農家同様、商店街も地域に根ざした仕事である。一緒に街の楽しさを伝えるアクションが起きれば、もっとこの街に住みたいと思う人も増えるはずだ。

2014年 04月09日 10時03分