昨今、資材価格や人件費の上昇を背景に、リフォームに必要な資金は増加傾向にある。この資金負担の軽減に有効なのが、国や地方自治体が用意している補助金や減税などの支援制度だ。
しかし、2024年度(令和6年度)にリフォームを実施した世帯のうち、リフォーム促進税制(所得税)の適用を「受けた」または「受ける予定である」と回答した世帯はわずか4.3%にすぎず、利用は低水準にとどまっている。この利用率の低さは、制度自体の認知不足と、計算ルールや申請手続きの難解さゆえだろう。
そこで本稿では、「リフォーム促進税制」について、その概要から、控除額の計算方法、そして手続きの注意点までを解説する。制度の仕組みや適用要件を理解し、リフォームの資金計画に役立てていただければ幸いだ。
補助金については、別記事(どう変わる?「住宅省エネ2026キャンペーン」4つのリフォーム補助金の概要と2025年からの変更点)を参照いただきたい。
リフォーム促進税制とは
リフォーム促進税制とは、自身が居住する住宅に一定の改修工事を行った場合に、所得税の控除や固定資産税の軽減を受けられる制度である。住宅ローン減税と異なり、ローンの利用有無を問わず税制優遇を受けられる点が特徴だ。
対象となる6つの改修工事メニュー
リフォーム促進税制が対象とするリフォームは、以下の6つの性能向上工事である。
●耐震リフォーム
旧耐震基準(1981年5月31日以前建築)の住宅を現行の耐震基準に適合させる工事。
●バリアフリーリフォーム
通路の拡幅、手すりの取付け、段差の解消など、安全性に配慮した工事。
●省エネリフォーム
窓の断熱工事(必須)や、床・壁の断熱、太陽光発電や高効率給湯器の設置など。
●同居対応リフォーム(三世代同居)
調理室、浴室、便所、玄関を増設し、いずれか2以上の室を複数にする工事。
●長期優良住宅化リフォーム
耐久性を向上させ、増改築による長期優良住宅の認定を取得する工事(耐震または省エネ改修と併施)。
●子育て対応リフォーム
子どもの事故防止対策、対面式キッチンへの交換、開口部の防犯対策や防音対策、間取り変更など。
「所得税」の税額控除と主な要件
所得税の控除は、改修工事を完了した年の所得税額から一度だけ直接控除される。所得税の納税額が控除額より低い場合は、自身が実際に納めた税額以上に還付されることはない。
●控除率
対象工事ごとに国が定めた「標準的な工事費用相当額」から補助金等を差し引いた額の10%。10%控除対象工事の限度額超過分やその他の一定の増改築等工事費用については5%が控除され、これらを合算した額(最大控除額は複数併用時等で130万円)が還付される。
●所得制限
合計所得金額が2,000万円以下であることが条件。(耐震リフォームで10%控除のみ受ける場合は、所得制限および自ら所有する要件は適用されない)
●床面積要件
改修工事後の床面積が40m2以上であること。ただし、その年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は50m2以上であること。
●入居要件
リフォームが完了した日から6ヶ月以内に入居している必要がある。(耐震リフォームは除く)
「固定資産税」の減額措置と主な要件
一定の要件を満たすリフォームを行った場合、工事完了年の翌年分、その家屋に係る固定資産税の減額措置を受けることができる。なお、6つの工事メニューのうち、「同居対応リフォーム」と「子育て対応リフォーム」については固定資産税の減額措置の対象外となる。
●減額割合
工事の種類に応じて、家屋の固定資産税額が以下のように軽減される。
・耐震:2分の1を減額
・バリアフリー:3分の1を減額
・省エネ:3分の1を減額
・長期優良住宅化:3分の2を減額
●軽減対象床面積の上限
家屋面積のうち、耐震・省エネ・長期優良住宅化は120m2相当分まで、バリアフリーは100m2相当分までが減額の対象となる。
●家屋の床面積要件
改修工事後の家屋の床面積が40m2以上240m2以下であること。
●所有と所有者の要件
バリアフリーリフォーム、省エネリフォームは、賃貸住宅ではないことが適用要件となる。
バリアフリーリフォームのみ、減税適用を受ける人(居住者)が、65歳以上、要介護・要支援認定者、障がい者のいずれか、またはそれらに該当する親族と同居している必要があり、築10年以上の家屋である必要がある。
省エネリフォーム、耐震リフォームは、家屋の築年数(省エネは2014年4月1日以前から所在する家屋、耐震は1982年1月1日以前から所在する家屋)の条件を満たす必要がある。
店舗等併用住宅の場合は、床面積の2分の1以上が居住用であること等の要件を満たす必要がある。
控除額は、実際の工事費用ではなく「標準的な工事費用相当額」で計算する
控除額の算出方法
所得税の控除額は、見積書や請求書に書かれた実際の工事費用からそのまま計算するのではなく、国土交通大臣がリフォーム工事の内容(箇所数や施工面積等)ごとに一律に定めた「標準的な工事費用相当額」から算出することになる。例えば、子育て対応リフォームにおける「対面式キッチンへの交換」であれば1ヶ所につき147万7,200円といった形で、細部まで定額ベースで標準費用が設定されている。実際の施工費用がこれより高額であっても、逆に安価であっても、計算上はこの定められた標準額が適用されるルールとなっている。
補助金と併用する場合の控除額
補助金と減税を併用する場合、受給した補助金の金額を標準的な工事費用から差し引いた残りの額に対して10%の控除率が掛けられることとなる。さらに、所得税控除を受けるには、標準的な工事費用相当額から補助金等を差し引いた額が50万円(耐震リフォームを除く)を超えていることが要件となる。この金額をクリアしていないと、そもそも所得税の控除を受けられないため注意が必要である。
※ 固定資産税の減額要件となる工事費用(50万円超、省エネは60万円超)については、実際の工事費用から補助金等を差し引いた金額で判定する
申請には「増改築等工事証明書」の発行が必須
固定資産税の軽減申告は工事完了後3ヶ月以内
所得税の確定申告はリフォームを終えて入居した翌年の確定申告期間(通常2月中旬〜3月中旬)に行うが、固定資産税の軽減手続きは工事完了後3ヶ月以内に、家屋が所在する市区町村等へ申告しなければならないと定められている。
「増改築等工事証明書」の発行が必須
所得税の控除や、固定資産税の減額を申請する際には、法律に定められた基準を満たす工事が行われたことを示す増改築等工事証明書を提出しなければならない。
この証明書は施主や一般的な施工会社が自由に作成できるものではなく、必ず以下のいずれかの有資格者や機関に発行を依頼する必要がある点に注意が必要だ。
・建築士事務所登録をしている事務所に属する建築士
・指定確認検査機関
・登録住宅性能評価機関
・住宅瑕疵担保責任保険法人
証明書の発行には、工事請負契約書や設計図書、リフォーム前後の施工状況がわかる写真、受領した補助金の交付決定通知書などが必要となる。場合によっては、工事着工前と完了後の現地調査が必要になることもあるため、工事請負契約を結ぶ前の段階で「減税制度を利用したい」という意思を事業者に伝え、証明書発行に協力してもらえるかを確認しておくことが望ましい。
なお、国土交通省のホームページでは、実施した工事に関する事項や補助金額を入力すれば、自動で標準的な工事費用相当額が算出され、そのまま証明書として利用できる表計算ツールが公開されている。
リフォーム促進税制をはじめとした、リフォームに関連した補助金・減税については、国土交通省によるサイトも併せて参考にしていただきたい。
【関連ページ】
・リフォームをお考えの消費者の方(国土交通省)
・住まいをより良く 補助金・税制・融資について(国土交通省)
事業者に求められる役割
近年、「先進的窓リノベ事業」などの補助金制度の拡充が、リフォーム市場を牽引している。大手建材メーカーYKKAPの発表によると、同補助制度が2023年に開始されてから3年間で、同社の内窓出荷セット数は2.5倍に急増したという。
同様に消費者メリットの大きいリフォーム促進税制も、リフォームビジネスを拡大する材料になるはずだ。しかし、実務上、補助金と減税制度の取り扱いには大きな差異が存在する。
補助金は多くの場合、リフォーム事業者が申請手続きを代行し、見積額からの値引きや現金還元の形を取るため、消費者が費用負担の軽減をその場で実感しやすいが、リフォーム促進税制などの減税措置は、施主本人が入居の翌年に確定申告等の手続きを行う必要があり、手元資金がその場で浮くわけではない。また、事業者にとっても、その複雑な計算ロジックを営業段階で分かりやすく説明することは簡単ではないだろう。さらには「増改築等工事証明書」の作成・手配の手間もかかる。
しかし、事業者が一歩踏み込んでその障壁を解消するサポートを提供できれば、それはリフォームビジネスをさらに大きく拡大させる武器に昇華させることができるはずだ。国交省が公開している簡易計算ツールやシミュレーター等を用いて、補助金とリフォーム促進税制を組み合わせた提案をしたり、「増改築等工事証明書」の手配を「責任を持ってサポートする」と明言したりすることで、消費者が「利用できる税制優遇を利用しない」という状況は大いに減らせるだろう。
国は、2026年度からの新たな住生活基本計画において、主な取り組みの一つに「既存住宅を最大限に活用する持続的な住宅市場を支えるあらゆる主体の連携・協働の推進」を掲げている。消費者の「知らなかった」による機会損失を防ぐためにも、業界のプレーヤーには、リフォーム促進税制を適切に案内し、消費者の利用を積極的にサポートする役割が求められている。
よくある質問
Q. 賃貸住宅は対象?
A. 基本的に賃貸住宅は対象としていない。賃貸住宅も対象となるのは、耐震改修、または耐震改修を併せて行う長期優良化改修のみ。
Q. 外構工事は対象?
A. テラス、ウッドデッキ、フェンスなどの工事は、原則として対象外。ただし、玄関内の段差解消に伴う屋外へのスロープ設置など、 住宅内のリフォームと「必然性がある」ような付随して行う工事は含められる場合がある。
Q. 壁のクロスの張り替えは対象?
A. 原則として、単体工事であれば対象外。ただし、壁の断熱改修や、間仕切り壁の解体、新設に伴って、必然的かつ付随的に行った、クロスの張り替えは一体工事として費用に含められる場合がある。
Q. 標準的な工事費用相当額とは何?
A. 改修工事項目に応じて「単位あたり金額」に「単位」を乗じた額をいう。標準的な工事費用額は、材料、設備等の本体の価格と、それを設置したり、既存の設備を解体・撤去する費用も含めて設定されている。増改築等工事証明書を所得税控除のために発行するときで、リフォーム促進税制の各メニューを申請したいときには、実際にかかった費用ではなく、標準的な工事費用額を用いる。
国土交通省のサイトには、その他にもよくある質問が掲載されている。併せて参考にしていただきたい。
【関連ページ】
よくあるご質問(リフォーム促進税制、住宅ローン減税(増改築)、増改築等工事証明書、住宅耐震改修証明書)(国土交通省)









