パソコン作業による不快な症状は、電磁波が原因だった?!

株式会社四方継の高橋代表。自身も電磁波測定士であり、10年ほど電磁波対策に取り組んできた株式会社四方継の高橋代表。自身も電磁波測定士であり、10年ほど電磁波対策に取り組んできた

長時間のパソコン作業により、肩こりや目の疲れ、頭痛などに悩まされている人はどのくらいいるのだろうか。筆者もそれらの症状に悩まされるうちの1人であったが、仕事上パソコンから離れることは難しく、しょうがないこと、と諦めていた。
しかし、パソコンにアースを接続したところ、スタッフの肩こりやドライアイが軽減した、という記事をある工務店のサイトで目にした。肩こりから解放されるなら試してみたい!と記事を読み進めると、これらの症状は電磁波が原因だった、という。

「電磁波」と聞くと、なんとなく身体へ害がありそうと感じている人も少なくないのではないだろうか。しかし、目に見えないものなだけあって、具体的な対策をどうとったらいいのかわからないという人が大半だろう。しかし、最近では電磁波過敏症という症状に悩まされている人が増えていると聞く。私たちは知らず知らずのうちに電磁波による影響を受けているのかもしれない。

電磁波とは、自然界にも存在しているもので太陽光線もその一種であるが、Wi-Fiやスマートフォン、電子レンジが発するマイクロ波(高周波)、電気配線や家電製品から発する低周波などさまざまな種類がある。
電気を利用した便利な暮らしのなかで生まれた副産物が「電磁波」だ。これらを暮らしの中で全て排除することはもはや難しいが、理解して、適切な対策をとることはできるのではないだろうか。

詳しくお話を聞くべく、記事を掲載していた工務店である株式会社四方継の高橋代表を尋ねた。

暮らしを取り巻く低周波の電磁波とは

「テレビや冷蔵庫の後ろの壁にホコリが溜まって真っ黒になっているのを見たことがあると思います。これも電磁波の影響で、電気が壁に帯電して静電気を起こし、空気中のホコリを吸い寄せている状態です。長い時間電磁波を浴びると同じようなことが人の身体にも起こるのです」(高橋さん)
電化製品と同じように、私たちの身体もまた脳からの微弱な電気信号によって動いている。そのまわりを強い人工的な電気がずっと帯電していると考えると、身体が混乱してしまうのではないか、と想像することができる。

電磁波はゆっくりと身体に影響を及ぼすため、人の健康との因果関係が立証されているわけではない。しかし、スウェーデンやドイツなどの国では、電磁波は人体に影響があるものとして、基準や規制が設けられている。スマートフォンの子どもの使用制限をしている国もあるが、日本ではそういった基準がほとんど無いのが現状だ。

Wi-Fiや電子レンジなどのマイクロ波を除くと、家庭のなかで発生している電磁波はほとんど「低周波」である。辛い身体の症状も低周波の電磁波対策をすることによって多くの場合軽減される可能性があるという。

低周波の電磁波は、「電場」と「磁場」の2種類に分けられる。
簡単にいうと、「電場」は電圧がかかると(家電製品をコンセントに接続した時点で)発生し、どんなものにでも伝播し帯電する。静電気がそれである。
「磁場」は、電流が流れると(家電製品のスイッチを入れると)発生し、身体の細胞レベルまで到達するといわれている。
それぞれ、電圧や電流の大きさに比例し、電場はアースを接続することで、磁場は一定の距離をとることで対策することができる。

電化製品から電場と磁場が発生する仕組み(画像提供:プレマ株式会社)電化製品から電場と磁場が発生する仕組み(画像提供:プレマ株式会社)

日本の家はとくに電磁波の影響を受けている?!

話を聞いていく中で、家庭内における電磁波の影響は、海外に比べて日本がとくに大きい、ということが見えてきた。

コンセントの「アースの有無」がその1つの要因となっている。
アースとは、漏電や感電防止のために電気を地中へ逃す線のことをいう。洗濯機や電子レンジなどについている緑の線というとわかるだろうか。これをコンセントのアース端子に接続することで、万が一電気が漏れてしまった場合、アース線をつたって電気を地中に逃し感電を防ぐ役割をしている。しかし、この「アース」が、製品が発する電場をも抑制してくれる、ということはあまり知られていないだろう。

日本はコンセントに100Vの電圧が流れているのに対し、世界では200V以上が主流である。高い電圧が流れているため、アース付きコンセントというのが主流となっている。海外旅行へ行った際に3つ口のコンセントを多く目にすると思うが、その1つが「アース」なのだ。
一方、日本はほとんどのコンセントにアース端子がついておらず、製品にもアース線がないことが多い。アースに接続していないことで、電場を抑制することができず、家庭内に放出され、いたるところに伝播し帯電してしまっている。

さらにもう1つの要因は、日本の住宅の「電気配線の量」である。便利さの追求から、年々住宅内のコンセントや照明の数は増えつづけている。結果として、目には見えないが一軒あたり1kmほどの膨大な量の配線が天井や壁、床下など家中に張り巡らされ、家自体が電磁波を発生してしまっている。
これが日本の住まいの現状だ。

左上:筆者宅のアース端子付コンセント、さまざまなタイプがある 右上:屋内配線の様子 下:住宅の電気配線の変遷の様子(32年でコンセントや照明器具の数は3倍に 画像提供:株式会社四方継)
左上:筆者宅のアース端子付コンセント、さまざまなタイプがある 右上:屋内配線の様子 下:住宅の電気配線の変遷の様子(32年でコンセントや照明器具の数は3倍に 画像提供:株式会社四方継)

すぐにはじめられる電磁波対策

では、私たちはどうやって電磁波とつきあっていけばいいのだろうか。
今すぐにできる、家庭内での電磁波対策を聞いてみた。
「基本的には、距離をとることで電磁波の影響はほとんど回避することができます。家電にもよりますが、実際に測定していての実感としては60cmから70cmほど離れるといいでしょう。また、直接触れて使う製品は、アースをつなぐことで対策できます」(⾼橋さん)

電磁波は、目に見えないものであるが、電磁波測定器をつかえば数値として確認することができる。
日本電磁波協会では、住まいの電磁波の基準を以下のように定めている。
電場基準:25V/m以下
磁場基準:2.5mG以下


・アース線がついている家電製品にはアースを繋ぐ。(電子レンジ、洗濯機、ゲーム機など)
製品にアース線がついている場合でも、放ったらかしにしている方も多いのではないだろうか。漏電、電磁波から身を守るためにもぜひここからはじめてほしい。

・冷蔵庫は、アースを繋ぐことを推奨。(電場500V/mが発生)
常に電源が入っているため、強い磁場も発生している。アースをとった上で距離を保つようにしたい。

・パソコンには、アースをつなぐ。または、充電しながら操作をしない。(ノートパソコンの場合、電場700V/mが発生)
家電に対しては、距離を置くことである程度の電磁波を避けることができるが、常に触れた状態で使用するパソコンには、アースをつなぎたい。デスクトップにはアース線がついている。ノートパソコンには、アース線がついていないが、パソコンの金属部分をアース端子に繋ぐだけでいい。USB端子やイヤホンジャックからアースをとって、高橋さんの会社では対応しているそうだ。
また、ノートパソコンでアースをとれない場合の簡単な対策は、充電器を外すことだ。電磁波は交流に対して発生しているため、パソコンのバッテリーのみで操作する場合には電場は発生しなくなる。

・就寝時に充電しながら、携帯を枕元におかない。
無意識にやってしまっている人も多いのではないだろうか。就寝時は脳と身体を休めることが大切であるため、なるべく電磁波から身体を解放してあげたい。試しにどのくらいの電磁波が発生しているのか測定してもらった(写真参照)。

・電子レンジ使用中は1mほど距離を置く。
アースを接続することはもちろん、使用中はマイクロ波も発生しているため、電子レンジの前には立たないようにしたい。

その他、注意したい家電
・ホットカーペット
・電気コタツ

アースを繋ぐ、といっても、日本の住宅にはアース付きコンセントが多く普及しているわけではない。コンセントに機械をつけてアースをとることができる製品もある。
すぐにアース対策を取れない場合は、製品を使っていないときはコンセントを抜く、使用中は製品と距離を置く、という一手間だけで電磁波を回避することができる。
少しの手間と対策を講じるだけで、肩こりなどの身体の悩みが解決するかもしれない。

充電中のスマートフォンが発する電場は710V/m。基準値(日本電磁波協会)の28倍、充電器から外すと4V/mとなる。充電しながらの操作はなるべく避けたい充電中のスマートフォンが発する電場は710V/m。基準値(日本電磁波協会)の28倍、充電器から外すと4V/mとなる。充電しながらの操作はなるべく避けたい

新築やリフォームの際に検討したい、オールアース住宅とは

前にも述べたように、電磁波を発するのは電化製品だけではない。住宅内に張り巡らされる配線からも発生している。
それらの電場をカットする方法として、導電性シートを壁や床に施工するという方法をとっているのがオールアース住宅である。

高橋さんの会社では、標準仕様としてこのシートを施工しているそうだ。どういった場所に施工するか、聞いてみた。
「長く滞在する場所は施工しますね。床下配線のない1階の床は施工しません。電気設備はとくに天井にありますが、天井は距離が取れるので電磁波の影響はほとんど受けません。逆に2階の床下には、1階の天井配線があり、ほとんどの場合距離をとることができません。2階を寝室や子ども部屋とする場合は、シートを施工するようにしています。また、最低でも1部屋に1つアース端子付きコンセントを施工するようにしています」
オールアース住宅のHPには、実際にどのくらいのコストがかかるのか延べ床面積を入力するだけで概算がわかるようになっている。試しに100m2と入力したところ、¥563,000とでてきた。
膨大な建築費用の中でこの値段をかけるかどうかはそれぞれの判断であるが、この費用で電磁波の影響が避けられるのであれば決して高い費用ではない印象を受けた。

「前の家よりよく眠れる、といった声を聞いたりしますね」(高橋さん)
これらの工事は、新築やリフォーム時でないとできない。最近は、シックハウスの懸念から自然素材を選択する人も増えてきた。それだけアレルギー症状に悩む人が増えているということだろう。電磁波もまた、電磁波過敏症だけでなく、未だ研究途中ではあるが小児白血病や癌の発症率が増加する恐れがあると指摘する研究もされている。せっかくこだわりの家を建てたとしても目に見えないところで身体が脅かされてしまうというのはとても悲しい。

私たちが便利さを追求してきた結果、多くの電磁波が私たちの周りを取り巻くようになった。現状では、施主が建築時に電磁波対策を意識しないと、対策が取られないことがほとんどである。本当に心地のいい家づくりをする際には、こういった電磁波対策も検討してみてはどうだろう。


取材協力:株式会社四方継 https://sihoutugi.com/
参考:オールアース住宅 http://www.all-earth.jp/

左上:シート施工前の床の電場184V/m、基準値(日本電磁波協会)の7倍 右上:導電性シート施工の様子 下:オールアース住宅の仕組み(画像提供:株式会社四方継)左上:シート施工前の床の電場184V/m、基準値(日本電磁波協会)の7倍 右上:導電性シート施工の様子 下:オールアース住宅の仕組み(画像提供:株式会社四方継)

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