全国7校目のスーパーエコスクール・瑞浪北中学校

消費電力を実質ゼロにするスーパーエコスクール実証事業に参加し、新築・開校の学校では全国初となったスーパーエコスクール瑞浪市立瑞浪北中学校消費電力を実質ゼロにするスーパーエコスクール実証事業に参加し、新築・開校の学校では全国初となったスーパーエコスクール瑞浪市立瑞浪北中学校

2019年4月8日。
岐阜県瑞浪市の北部に開校した瑞浪北中学校では入学式・始業式が行われ、約350人の生徒たちが希望に満ちた顔で真新しい門をくぐった。

瑞浪北中学校は、瑞浪市内公立中学校の統合再編に伴って、瑞陵・日吉・釜戸の3中学校を統合して誕生した新築中学校。そして、新築校では全国初開校の「スーパーエコスクール」だ。

スーパーエコスクールとは、省エネを徹底して消費電力を抑え、創エネ・蓄エネの技術やさまざまな工夫でエネルギー消費を実質ゼロにする学校のこと。
全国的に公立学校施設の老朽化が進む中、環境負荷を減らし、環境教育の推進や環境保全への取組みが求められることから、文部科学省は「スーパーエコスクール実証事業」を実施。同校はこの実証事業で認証された7校目となった。

国内でも有数の“暑い地域”とされる岐阜県東濃西部地域で、同校がどのような施設であり、どのように今後の環境教育を進めていくのかを紹介したい。

少子化による統合とスーパーエコスクール実証事業。タイミングも合って環境配慮の中学校に

丘陵地にある同校は、豊かな山並みを背にし、南向きの山の斜面に沿うように低層の校舎が3棟に分かれて建つ。
各棟は自然の地形に沿ってずらして配置され、校舎からは山並みと市街地の風景がよく見える。現地を訪ねて、日々学び舎からの心地よい景色を胸に刻める生徒たちを羨ましく思った。

元々は5校の市立中学校があった瑞浪市。少子化が進む中で学校統合の流れとなり、2011年に瑞浪北中学校への3校統合が決まった。
時期を同じくして国が始めたのが、2012年度からの3ヶ年事業であるスーパーエコスクール実証。その基本計画に入る頃だったことから、統合・新設する瑞浪北中学校をスーパーエコスクールにしようとの機運が瑞浪市で高まったそうだ。

「まさにタイミングが合ったのでしょうね。文部科学省へ企画提案書を提出した同月に採択決定し、その翌月には契約締結や、現地調査・資料調査が始まり…と速やかに進んでいきました」(瑞浪市教育委員会・伊東範明さん)

こうして、瑞浪北中学校は新築のスーパーエコスクールとして造られる運びとなったという。

校舎の中央にレイアウトされた階段を挟んで、図書・パソコン利用や多目的学習ができるオープンスペース「ラーニングコモンズ」と、ガラス窓から互いの様子が見られる職員室があって開放的な印象。階段を上りきった先の3階には、登り窯のような形をした階段室があり、そこから学校内の空気を外に排出している校舎の中央にレイアウトされた階段を挟んで、図書・パソコン利用や多目的学習ができるオープンスペース「ラーニングコモンズ」と、ガラス窓から互いの様子が見られる職員室があって開放的な印象。階段を上りきった先の3階には、登り窯のような形をした階段室があり、そこから学校内の空気を外に排出している

太陽熱や地中熱の活用、風力発電、自然換気、地元材多用…工夫がいっぱい

スーパーエコスクールとして新築された同校には、"学校のゼロエネルギー化”を実現するため、環境配慮の工夫が多彩に盛り込まれている。

まず重きを置いて考えられたのは「気象」。
気温や風向きを調べたところ、敷地内には、山すそに沿った西から東への風がよく吹くそう。そこで、校舎を平行に置かず、中庭に沿って開いたような配置とし、自然の風が校内に行き渡る“風を導く配置計画”とした。
また、山の斜面に燦々と降り注ぐ太陽光を活かすために、校舎の大きな屋根には最大120kW発電可能という太陽光発電パネルを搭載。さらに、年間を通じて温度が安定した地中熱も活用するため、校舎の地下には『クールヒートトレンチ』という空気の道を作ってダクトで教室まで繋げることで、夏は空気を冷やし、冬は温めてから校舎内に取り入れることを可能に。他にも、風力発電装置や屋上緑化、室内に自然光を取り込む『ライトシェルフ』などを設置。もちろん、地元の恵みでもある豊かな緑も存分に生かされ、市内の植生に合わせた多くの高木なども環境にやさしく役立っている。

この土地特有の風を積極的に建物に取り込む工夫など「気候風土の活用」をはじめ、同校では、市内で焼かれたタイルや市産および県産スギ・ヒノキの採用、地元の木質ペレットによるバイオマス暖房・タイル廃材を利用したクールアイランド舗装といった地産エネルギーも活用。加えて、市内に残る登り窯(陶器を焼く窯)の仕組みに倣った校舎の排熱や、敷地から出土したクジラの化石をモチーフにした形の体育館など…瑞浪市の歴史や原風景にインスパイアされた学校づくりも"瑞浪市ならでは”の環境整備手法だろう。

瑞浪北中学校では学校全体に環境配慮手法が取り入れられている。生徒は周囲の環境を観察し、さまざまな工夫をしながら学校生活を送ることで、環境への理解を深めていくのだろう瑞浪北中学校では学校全体に環境配慮手法が取り入れられている。生徒は周囲の環境を観察し、さまざまな工夫をしながら学校生活を送ることで、環境への理解を深めていくのだろう

与えられた環境に加えて、生徒自身が省エネ環境をつくるためのアクションを起こす

上/タッチパネル式のエコモニターを普通教室と「ラーニングコモンズ」に設置。環境情報が得られる設備によって、“生徒の工夫”を誘発する仕組みづくりも特徴</br>下/普通教室は各棟の最上階にあって南北両面から光が注ぐ。勾配屋根には木造の梁がそのまま見え、木のぬくもりを感じる上/タッチパネル式のエコモニターを普通教室と「ラーニングコモンズ」に設置。環境情報が得られる設備によって、“生徒の工夫”を誘発する仕組みづくりも特徴
下/普通教室は各棟の最上階にあって南北両面から光が注ぐ。勾配屋根には木造の梁がそのまま見え、木のぬくもりを感じる

そして、同校では最先端の設備で環境教育を推進している。
普通教室にはタッチパネル式のエコモニターを導入し、教室ごとに照明や空調機器を操作できるほか、外部と教室の温湿度や電力消費量などの環境情報が得られるようになっている。生徒たちは消費電力や自然エネルギーの発電状況をモニターで把握しながら、節電の工夫を考え、省エネ意識を高めることができるのだ。このエコモニターは、学習と生活の中心となるオープンスペース「ラーニングコモンズ」にも設置。学校全体の環境に関する情報が得られ、環境学習の拠点にもなっている。

廊下の壁の一部がくり抜かれて、断熱材あり・なしでの違いを体感できたり、床の一部がスケルトンになっていて『クールヒートトレンチ』による空気の流れを見ることができたり、地中と教室を結ぶダクトの中を覗けたり、教室のロッカーも空気の道になっていて手をかざすと風が吹き出ていたり…五感で環境を考えられる機会が日常的にあることも魅力だ。

「瑞浪北中学校では、一般の中学校のエネルギー使用量の約半分を『省エネ』によって削減し、残り半分の消費と同程度を太陽光発電などによる『創エネ』でつくり出し、消費エネルギー実質ゼロを目指します。
その結果が来年にはデータとして出ますので、省エネ・創エネ・蓄エネを組み合わせたモデルケースとしての提案もできるのではないでしょうか。
また、公立学校施設のエアコン設置が急がれる中、本市の小中学校では同校が初のクーラー導入となります。今夏を越えた後のデータも、順次設置を進めるための参考になると思います」(瑞浪市教育委員会・伊東範明さん)

今年度の一年間で、消費エネルギーがどんな数字を出すのだろう?スーパーエコスクールの実力に期待が高まる。

地域にも開かれ、愛されながら新たな伝統を築く

加筆すると、環境配慮に限らず地域に根差した学校であることも特徴だ。

地元の材料や“瑞浪らしさ”を積極的に活かした地域色の豊かさだけではなく、特筆すべきは「学校施設の一部が、地域の誰もが利用できるよう開放されている」こと。
体育館と武道場、音楽室、会議室は放課後、希望者に開放され多目的に利用できるため、地域交流の拠点としての機能も持ち合わせている。地域住民向けの専用玄関まで設けられているのも印象的だった。
開校前には主に地元住民が対象の事前内覧会も開催。大勢が学校に足を運び、「学校じゃないみたい!」「木がいっぱいで気持ち良い!」「恵まれた環境で勉学に励んでほしい」などの声を挙げていたそうだ。一日で約800人が内覧したと聞くから、その数も地域の大きな期待感を物語っている。

このように、地域と学校という関係性においてもモデル校になりそうな瑞浪北中学校。

環境と地域を大切にするスーパーエコスクールで、生徒は喜びと誇りを胸に充実した学校生活を送り、地元に愛される中学校として新たな伝統を築いてゆくのだろう。

地域に開放されている一つが、高窓から自然光がたっぷり入る明るい体育館。音楽室や会議室も地域の誰もが利用できる同校では、その出入口となる「地域玄関」を設け、生徒と地域の交流が深まる学校づくりがなされている
地域に開放されている一つが、高窓から自然光がたっぷり入る明るい体育館。音楽室や会議室も地域の誰もが利用できる同校では、その出入口となる「地域玄関」を設け、生徒と地域の交流が深まる学校づくりがなされている

2019年 05月30日 11時05分