再生可能エネルギーの先進技術を発信するフォーラムが開催された

さまざまな再生可能エネルギーについて、メーカーや自治体、研究機関、大学の研究室などが出展した「第11回再生可能エネルギー世界展示会」。その一環で、「風力エネルギー分野」「政策・統合概念分野」など11分野のフォーラムが開催されたさまざまな再生可能エネルギーについて、メーカーや自治体、研究機関、大学の研究室などが出展した「第11回再生可能エネルギー世界展示会」。その一環で、「風力エネルギー分野」「政策・統合概念分野」など11分野のフォーラムが開催された

横浜市のパシフィコ横浜で開催された「第11回再生可能エネルギー世界展示会」。その一環で先進技術や学術研究の発表を行なうさまざまなフォーラムが行われた。

11分野のフォーラムが実施されたなかで、「~環境・エネルギー・健康と快適性~『環境建築』」と題した講演会に取材に出向いた。

エネルギー資源の少ない日本では、太陽光や太陽熱、風力、バイオマス、地熱など自然の力を使った再生可能エネルギーの開発・実用化が急務になっている。2015年7月には「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」、いわゆる「建築物省エネ法」が制定された。
そうしたなか、この講演会がテーマとする環境建築は快適な居住環境を作るために省エネや再生可能エネルギー創出の技術を取り入れることに加え、二酸化炭素(CO2)排出量の削減をめざすというもの。建築物は建設工事、人が居住しての運用、老朽化などによる解体、廃棄という長期的サイクルのなかで膨大なCO2を排出している。再生可能エネルギーの活用により、建築物のCO2削減に取り組んでいくことは国の施策にもなっているのだ。

この講演会では建築設計事務所やハウスメーカー、建材メーカーなどで環境建築に携わる専門家、学識経験者などが登壇し、それぞれの取り組みが語られた。

この記事では登壇したハウスメーカー2社の講演内容について、レポートしたい。

「府中ソーラータウン」のLCCM住宅とは?

まず紹介するのは相羽建設(東京都東村山市)の講演である。テーマは、東京都が推し進める「長寿命環境配慮住宅モデル事業」の事業者として手がけた「ソーラータウン府中」。2012年5月に着工し、同年9月より販売開始。2015年2月には全棟完売となっている。

この「長寿命環境配慮住宅モデル事業」とは、都有地を活用し、世代を超えて長く住み続けることができ、環境への影響にも配慮した分譲住宅を供給することが目的の事業。前述のように住宅には建設、運用、解体、廃棄というライフサイクルがあるが、そのライフサイクルの中で排出するCO2の50%以上を削減するという高いハードルが課された。

「ソーラータウン府中」は木造軸組工法の分譲住宅で全16戸。すべての住宅に太陽熱と太陽光エネルギーを利用し、暖房・発電・給湯・換気、4つの機能を果たす新しいOMソーラー「クワトロソーラー」を全戸に搭載している。OMソーラーシステムは、冬は太陽の熱で暖めた空気を床下コンクリートに蓄熱して家全体を暖めるため、各部屋の温度差が少なく快適に過ごせる。春から秋にかけては、太陽熱をお湯採りに使うことができる。
全16棟の住宅地は、敷地内の住戸が整然と並ぶのではなく、少しずつずらして配置し、敷地内に共有地となる園路をつくった。園路は地域のコミュニティを育む場となり、夏場に北側の公園を合わせてクールスポットとなり、広場に設置された雨水貯水タンクは災害時の生活用水として利用することができる。

世界的にみて、日本の住宅寿命は短く、30年程度で建て替えられている。この住宅寿命の短さは少子化や核家族化による世帯人数の減少、ライフスタイルの変化などが要因ではあるが、住宅の建て替えは、大量のごみやCO2の排出につながる。住宅の寿命が延びれば、それを軽減できる。住宅の建設・運用・解体・廃棄までの長期的視点で、トータルのCO2収支がマイナスとなる住宅。これが「総CO2排出量をマイナスにする住まい」LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅ということで、先進エコ住宅として国が広めようとしているものだ。

府中ソーラータウンの住宅は、木造ドミノ住宅というもので、内部に構造壁を設置しないため間取り変更が容易に行えること、設備配管の変更や更新も容易に行える工夫をしている。これにより、将来の家族構成やライフスタイルの変化に柔軟に対応し、リノベーションしやすい、結果的に改修の際のエネルギー消費を抑えるものとなっている。

相羽建設の常務取締役・迎川利夫氏。「ソーラータウン府中の事例紹介」と題してその取り組みについて語った相羽建設の常務取締役・迎川利夫氏。「ソーラータウン府中の事例紹介」と題してその取り組みについて語った

住む人の省エネに関する情報リテラシーを高めることも重要

ソーラータウン府中は、東京都府中市美好町2丁目に位置する全16戸の分譲住宅(敷地面積約2150m2)。先導的なエコ住宅を、一般的な価格で実現したこともポイント。当時の東京都に建つ住宅の一般的な価格が71万5000円(坪単価)に対し、それより低い坪69万5000円でつくった。シンプルな基礎形状にするなど設計の合理化や、施工でも合理化などの工夫を行なった結果だという</BR>設計は野沢正光建築工房。提案協力は武蔵野美術大学建築学科長尾スタジオ3年生(2012年度当時) ソーラータウン府中は、東京都府中市美好町2丁目に位置する全16戸の分譲住宅(敷地面積約2150m2)。先導的なエコ住宅を、一般的な価格で実現したこともポイント。当時の東京都に建つ住宅の一般的な価格が71万5000円(坪単価)に対し、それより低い坪69万5000円でつくった。シンプルな基礎形状にするなど設計の合理化や、施工でも合理化などの工夫を行なった結果だという
設計は野沢正光建築工房。提案協力は武蔵野美術大学建築学科長尾スタジオ3年生(2012年度当時)

東京都はこの府中ソーラータウンの環境・省エネ性能を、首都大学東京(須永研究室)に調査委託。実際に府中ソーラータウンの住宅で暮らす人のエネルギー消費量について、相羽建設、野沢正光建築工房、OMソーラーの協力を得て2年半にわたって調査・検証を行なった。

調査の結果、光熱費を関東の一般的な住宅と比較したところ、1ヶ月あたり、府中ソーラータウンの住宅は平均で約30%少ないという。エネルギー消費量は約50%減(太陽光発電の自家消費分は含まない)。また、CO2排出量は約75%削減され、「長寿命環境配慮住宅モデル事業」が目標とする50%減を大幅にクリア。これは国が2050年達成目標に挙げている、住宅のCO2を80%削減するという目標にも迫る数字という。

しかしながら、個別にみると府中ソーラータウン内でも差があるという。たとえば電気、ガス、灯油の平均使用量は、少ない家庭では月に1000MJ(メガジュール)以下だが、多い家庭では月に2500MJにもなるというのだ。同じ場所、同じ仕様の家に住んでいても、生活サイクルの違いや省エネに対する情報リテラシーの差がエネルギー消費量となって表れるのだ。
「私たちも住民の方々を対象に、省エネに関する勉強会を開いていますが、こういう会に熱心に参加してくれる人や私たちが提案していることを実践している人はエネルギー消費を押さえられているように思います。しかし、関心の薄い方は消費量が高い。興味深いと思いました」と、登壇した相羽建設常務取締役・迎川利夫氏は語った。

パナホームでは2018年までに戸建全商品のZEH化をめざす

パナホームの戸建事業企画部・商品企画グループチーフマネージャーの奥田弘之氏。「明日の日本に住む。ずっと安心で快適な住宅と街づくり」と題して講演を行なった

パナホームの戸建事業企画部・商品企画グループチーフマネージャーの奥田弘之氏。「明日の日本に住む。ずっと安心で快適な住宅と街づくり」と題して講演を行なった

さて、次に講演内容を紹介するのは総合ハウスメーカーのパナホーム。同社の戸建事業企画部・商品企画グループチーフマネージャーの奥田弘之氏が登壇。日本での家づくりで継続して取り組んでいく必要のある課題として、地震が多い、住宅寿命が短い、エネルギー自給率が低いことを挙げ、それに対する同社の取り組みが語られた。

戸建て住宅の耐震性能ということでは、「繰り返し発生する地震にも強く、かつ地震による変形が小さい家」というのが理想。
「これは地震による補修費軽減というお客様にとってのメリットがあるとともに、補修工事が小さな規模に抑えられることになるので、工事にかかるエネルギー消費を抑えることにもつながります。もちろん、お客様の安心安全が第一。当社では、地震エネルギーが阪神・淡路大震災の4.3倍、東日本大震災の1.8倍という規模での実大振動実験を行なっています」と、検証動画も交えながら、奥田氏は大地震に対する取り組みを紹介してくれた。

日本政府は、「2020年までにネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH =ゼッチ)を標準的な住宅にする」と目標を掲げている。ZEHとは「住宅の解体・設備の省エネ性能向上、再生可能エネルギーの活用等により、年間での一次エネルギーの消費量が正味(ネット)でゼロまたは概ねゼロとなる住宅」のこと。具体的には太陽光発電などでエネルギーをつくる「創エネ」と、蓄電池に貯める「蓄エネ」、エネルギーの状態を見えるようにする「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」などを組み合わせて活用し、その住宅によって年間に創生されるエネルギー量が、その住宅の年間消費エネルギーと同等か上回る、ということ。
政府は、2020年までに省エネ基準をすべての新築住宅に義務づける方針を掲げている。また2030年には新築住宅の平均でネット・ゼロ・エネルギーをめざしている。つまり住宅を取得するなら、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスが当たり前になる時代がもうすぐそこまできているということになる。

パナホームでは、国の住宅政策(2020年)を受けて、2年前倒しの2018年までに戸建全商品のZEH化をめざす取り組みを始めている。
太陽光発電と蓄電システム、スマートHEMSの活用のほか、高性能断熱材を、天井や外壁に加え基礎の内側にまで採用し住宅全体の断熱効果を高めることや、年間を通して温度変化の少ない地熱を活用してベース空間(床下)の空気を、各部屋に直接給気することによる省エネ効果などもアピールした。同社の試算では、約20年前の家と比べると、年間光熱費で約43万円も節約できるケースもあるという。
エアコンの温度やIHクッキングヒーターの火力など対応機器の省エネ化も掲げたのは系列企業に家電メーカーがあるパナホームならではである。

スマートシティ計画が進行中

そして、再生可能エネルギー活用の事例として、「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」を紹介。神奈川県藤沢市のパナソニック藤沢工場跡地(約19ha)を利用したスマートシティ計画だ。パナソニックはじめ、パナホームを含む先進的な取り組みを進めるパートナー企業18社と藤沢市の官民一体で実現をめざす環境配慮型の街づくりが進められている。
戸建住宅すべてに太陽光発電システムと蓄電池による「創蓄連携システム」を採用し、CO2排出量±0(ゼロ)を実現するとともに、停電時でも電力供給を可能にするとしている。さらに、街全体でエネルギー情報を管理し、CO2排出の抑制を推進。この街に集う人々の声を活かしたタウンマネジメントにもつとめる。最終的には1000世帯が暮らす街として完成予定という。

ここまでハウスメーカー2社の取り組みをレポートしたが、この講演会では「二子玉川の街づくりについて」をテーマに東京急行電鉄・都市創造本部の都甲義教氏が基調講演を行なったほか、建築家の大野二郎氏(太陽エネルギーデザイン研究会会長)、日本設計の執行役員で環境・設備設計群長の柳井崇氏、LIXILのR&D本部先端技術研究所主任研究員・石井久史氏が登壇。また、「環境建築と国際貢献」のアプローチから首都大学東京・都市環境科学研究科准教授の一ノ瀬雅之氏、岐阜県立森林文化アカデミー准教授の廣田桂子氏が研究発表を行なった。

この講演会の入場者は建築・設計関係者や建築を学ぶ学生がほとんどだったようだ。やや専門的な内容だったが、一般ユーザーにとっても、これからの日本の住まいや街づくりを考えるうえで興味深い内容だったと思う。

☆取材協力
特定非営利活動法人再生可能エネルギー協議会(第4分科会)
http://www.renewableenergy.jp

パナホームなどパナソニックグループが計画を進める、「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」について解説する奥田氏パナホームなどパナソニックグループが計画を進める、「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」について解説する奥田氏

2016年 09月06日 11時00分