『無印良品のリノベーション』を体感できる国内初の単独店舗

東京・港区北青山。華やかなショップが軒を連ねる『表参道』交差点からほど近いエリアに、2018年12月、『無印良品のリノベーション』の国内初の単独店舗がオープンした。

スタイリッシュで機能的な生活雑貨ブランドというイメージが強い『無印良品』だが、実は2004年から木造一戸建て住宅の開発を行っており、累計2500棟の販売実績を持つ住宅メーカーでもある。その家づくり事業を担う株式会社MUJI HOUSEでは、2015年からリノベーション部門を開設。首都圏一都三県で集合住宅のリノベーションを請け負ってきたが、近年の中古マンション市場におけるリノベニーズの高まりを受け、満を持しての単独店舗出店となった。

あの『無印良品』が提案するリノベーションにはどのようなこだわりがあるのか?『無印良品のリノベーション青山店』店長の豊田輝人さんに聞いた。

▲『表参道』駅出口から徒歩1分、青山通りから一歩奥へ入った静かなエリアに佇む『無印良品のリノベーション青山店』。巨大なガラスウォールが目を惹くモダンな建物の3階部分がショールームになっている▲『表参道』駅出口から徒歩1分、青山通りから一歩奥へ入った静かなエリアに佇む『無印良品のリノベーション青山店』。巨大なガラスウォールが目を惹くモダンな建物の3階部分がショールームになっている

顧客は「無印良品の世界観が好き」という30~40代の一次取得者層が中心

▲入社以来14年間“MUJIの家づくり一筋”で戸建て住宅の商品開発やリノベーション事業の展開に携わってきたという店長の青山輝人さん(株式会社MUJI HOUSE/一級建築士)。ここ青山店では13名のスタッフを率いてリノベ事業の統括を行っている。「無印良品の家事業は、インターネットを通じてお客様とのコミュニケーションを図る無印良品のウェブサイトに“無印良品の家が欲しい”というご要望をいただいて誕生しました。2015年からスタートしたリノベーション事業の施工実績は約80件。築20年程度の中古マンションのリノベーションが中心となっています」▲入社以来14年間“MUJIの家づくり一筋”で戸建て住宅の商品開発やリノベーション事業の展開に携わってきたという店長の青山輝人さん(株式会社MUJI HOUSE/一級建築士)。ここ青山店では13名のスタッフを率いてリノベ事業の統括を行っている。「無印良品の家事業は、インターネットを通じてお客様とのコミュニケーションを図る無印良品のウェブサイトに“無印良品の家が欲しい”というご要望をいただいて誕生しました。2015年からスタートしたリノベーション事業の施工実績は約80件。築20年程度の中古マンションのリノベーションが中心となっています」

「もともと『無印良品のリノベーション』は有楽町店(2018年12月移転閉店)の一角で販売を行っていました。3年前の事業スタート当初は認知度が低かったのですが、少しずつその存在が知られるようになり、最近では3~4ヶ月お待ちいただくほど好評で良い感触を得ることができました。

有楽町店の閉店をきっかけに単独店舗の立ち上げが決まり、青山店が誕生することになったのですが、ここ『青山』は1983年に無印良品の直営1号店が開業した場所。その“無印良品スタートの地”に初の単独店舗をオープンできたことは、私共リノベーションスタッフとしても感慨深いものがあります」(以下、「」内は豊田店長談)。

近年の新築分譲マンションの価格高騰も、リノベーション事業の追い風になっていると語る豊田店長。青山店ではショールーム機能だけでなく、初心者向けのセミナーを定期的に行い、リノベーションの基礎知識から中古マンションの選び方、資金相談までトータルでアドバイスを行っている。提携する不動産仲介会社を通じて、希望の物件探しについてもサポートしているというのだから、そのサービスは実に手厚い。

「私共のリノベーションに関心を示してくださっているのは、主に30代~40代。初めてマンションを買う一次取得者で、“無印良品のあのナチュラルな世界観が好き”というお客様が中心となっています。住宅リテラシーの高い方が多く、“他の会社の提案は写真映えする豪華絢爛な仕様が多いけど、自分たちにはそこまでは必要ない。シンプルに、自分らしく、自由に暮らしたい”という志向が共通していて、まさに『無印良品』の顧客層のイメージと合致しています。

リノベーションの対象はマンションに限定しており、いわゆるクロスの張替えや水まわりの交換といった部分リフォームは行いません。フルリノベーションによって従来の間取りの概念を取り払い、空間を暮らしの原点=ゼロの状態に戻します。一度空間をゼロにすると、暮らし方に合った住まいを自由に編集できるようになりますから、結果的に中古マンションの新たな価値を見出すことにつながると考えています。それが、『無印良品』が提案するリノベーション『MUJI INFILL 0(ムジ インフィル ゼロ)』のコンセプトです」

一度フルスケルトンの状態に戻してから空間提案を行う『MUJI INFILL 0』

『MUJI INFILL 0』がフルリノベーションを原則としている理由は、中古マンションの温熱性能の向上を重視しているからだ。

「マンションというのは“一戸建てよりも温熱性能が高い”というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、実際にお客様にヒアリングしてみると、室内の暑さ・寒さで不満を感じている方がとても多いのです。今でこそ、新築分譲マンションは断熱構造に力を入れて設計されていますが、20年ほど前の中古マンションとなると適切な断熱構造になっていなかったり、断熱材が省かれているケースも見られます。

一度空間をゼロ、つまりすべて壊してフルスケルトンの状態に戻せば、そうした構造面の課題や水漏れ・雨漏れなどの不安点も確認できます。躯体の身体検査を隅々まで行い、どの部分をどうやって改善するか?というところから住空間づくりを行っていきます」

表面上のリフォームを行えば一時的に住み心地は向上するかもしれないが、それだけでは真の住まい価値の向上とは言えない。建物の健康状態を確認し建物への安心感を得た上で、“この場所でどのように暮らしていくか?”を提案するのが、無印良品流のリノベーションというわけだ。

「実は日本の中古マンションにおける一番の課題は窓。昔の日本の窓性能は決して高いとは言えず、多くの中古マンションでは、夏の外気や冬の冷気がそのまま室内へ伝わってしまうため冷暖房効率が悪くなったりするのですが、住戸の窓というのはマンションの共用部にあたるので勝手に取り替えることはできません。そのため、ほぼすべての物件で内側にインナーサッシを提案し、二重窓にすることを推奨しています。

インナーサッシは複層ガラスですから、外の窓とあわせると合計3枚。これによって温熱性能だけでなく遮音性能を高めることも可能です。この点に関しては、やはり私共の住宅開発の経験が大きく影響していますね。強い構造と高い温熱性能は『無印良品の家』が最も力を注いでいる部分ですから、リノベーションにもそのこだわりを採り入れています」

▲ショールームではLDKと洗面・バスルームを使って『MUJI INFILL 0』のリノベーション後の住空間を再現。家具や収納も含めて空間全体に無印良品の世界観が表現されているため“MUJIファン”にとってはたまらないスペースだ。「今は新築物件の価格が高いので、中古物件のおしゃれリノベ-ションは、若い世代のお客様にとって救世主的な存在になっているようです」と豊田店長▲ショールームではLDKと洗面・バスルームを使って『MUJI INFILL 0』のリノベーション後の住空間を再現。家具や収納も含めて空間全体に無印良品の世界観が表現されているため“MUJIファン”にとってはたまらないスペースだ。「今は新築物件の価格が高いので、中古物件のおしゃれリノベ-ションは、若い世代のお客様にとって救世主的な存在になっているようです」と豊田店長

収納家具を使って可変性を高める『一室空間』の提案

ところで、『無印良品のリノベーション』といえば、記憶に新しいのはURとのコラボレーションによる団地再生プロジェクトだ。築40年を超えた団地で若者向けのスタイリッシュなリノベ提案を行い、コンパクトながらも収納力のあるキッチンや、デザイン性・耐久性を高めた麻製畳など、新しい住宅部材の開発にも積極的に取り組んできた実績がある。

「URさんとの団地再生プロジェクトは2012年からスタートしましたが、その活動がご好評を頂いた点は私共にとっても大きな自信につながりました。最近の若いユーザーの間では“広い住まいは要らない。もっとコンパクトに暮らしたい”というニーズが増えています。マンション価格の高騰がひとつの要因かと思いますが、これまで“4人暮らしなら70平米が目安”とされていたところを、60平米ぐらいの広さにして“購入コストを抑えたい”と考えている人がとても多いのです。

空間に制約があるぶん、暮らし方の工夫も多彩に広がっています。例えば、リビングの隣に寝室を設ける場合、“ベッドは置かずに寝るときだけ布団を出してきて、普段はリビング空間を広く使えばいい”という昔ながらの団地の和室のような暮らし方を望まれる方もけっこういらっしゃいますから、団地再生プロジェクトに携わった経験が参考になるケースも多々あります」

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若者世代に広がる住まいのコンパクト化ニーズを受けて、無印良品ならではの強みを発揮しているのが『一室空間』の提案だ。

「大きな壁を取り除き、水まわり以外の空間をすべてつなげる『一室空間』は、無印良品の家の一戸建て住宅と同じコンセプトです。空間の連続性をもたせた『一室空間』であれば、家族の動線も憩いの場所も、必要に応じて『無印良品』の収納家具で仕切ることができます。つまり、ライフステージの変化に合わせて、自分で自由に間取り変更できる…まさに家具や小物類のラインナップが充実している“無印ならでは”の空間提案となっています。

『一室空間』の場合は、壁面が少なくなるためどうしても住まいの温熱性能が課題となりますが、その点『MUJI INFILL 0』であればそもそもの住宅性能が高められ、部屋を細かく区切らなくても暖かく涼しい空間が実現します。コンパクトなスペースながらも、充分豊かな暮らしを満喫していただけるはずです」

▲キッチンや洗面台の下の収納スペースも『扉』はあえて設置せずオープンに。『無印良品』のシステム収納を使って自分好みにカスタマイズできる。住む人にとっては暮らしやすく、『無印良品』にとっても新規顧客の獲得につながるため、双方由しの構図だ▲キッチンや洗面台の下の収納スペースも『扉』はあえて設置せずオープンに。『無印良品』のシステム収納を使って自分好みにカスタマイズできる。住む人にとっては暮らしやすく、『無印良品』にとっても新規顧客の獲得につながるため、双方由しの構図だ

これから求められるのは、この先の人生を考えた長期目線のリノベーション

こうして豊田店長の話を聞いていると、ついつい気になるのは『予算』についてだが、フルリノベーションとしてはかなりコストが抑えられている点も、施工実績を伸ばしている理由のひとつのようだ。一般的な中古マンションのフルリノベーションの平均単価は1平米あたり15万円程度。しかし、『MUJI INFILL 0』のベーシックプランでは、70平米あたり800万円(1平米あたり11~12万円)を単価目安としている。

「もちろん、仕様をグレードアップしたり、間仕切りを作るなどのご要望を採り入れていくと、70平米あたり900万円~1000万円になるケースもありますが、お客様からは概ね“想定していたよりも予算を抑えることができた”との感想をいただいております。何より“無印良品ブランドへの安心感があるから選んだ”と言っていただける瞬間は嬉しいものです。

日本の空き家問題は非常に深刻ですから、既存住宅をいかに有効活用していくかを考えることは住宅業界にとって大切なこと。特に、中古マンションのリノベーションに関しては、今後もユーザーの関心が高まっていくことは明らかですから、そのリノベーションを行うときに、表面的な工事を実施して“ちょっとキレイに使いやすくする”のではなく、“ずっと長く快適に使えるものを残していくこと”を私共は目指しています。

作って、壊して、また作る、ではなく、古い住まいにどうやって新しい魅力を与えていくか…リノベーションを通じて日本の住まいの価値観が変わっていくと良いですね」

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首都圏の中古マンションの在庫数は約4万5000件(2018年データ/東日本不動産流通機構)。この数字は年々増加傾向にある。“売れ残り”の中古マンションが増えるということは、マンション市場全体の価格相場にも影響を及ぼしかねないため、マンション業界にとっても「いかに中古物件の価値を高めていくか?」は重要な課題だ。

今回『無印良品のリノベーション青山店』を取材して、「見た目ではなく、見えない部分から根本的に中古マンションの居住性を変えていく」というフルリノベーションを、あの『無印良品』が提案し、幅広い世代へ向けて発信していくこと自体に大きな意義があるように感じられた。

現時点では施工エリアが一都三県に限られているが、今後のさらなるエリア展開も期待したい。

■取材協力/無印良品のリノベーション
https://www.muji.net/renovation/

▲『無印良品のリノベーション青山店』では毎月セミナーを開催(予約制・無料)。「お客様には、リノベーション直後の暮らしではなく、10年後・20年後の暮らしを考えながら空間づくりを検討しましょうとお伝えしています。リノベや中古マンションに対して不安に思っていらっしゃる方、マンション購入初心者の方にもぜひご参加いただきたいですね」と豊田店長▲『無印良品のリノベーション青山店』では毎月セミナーを開催(予約制・無料)。「お客様には、リノベーション直後の暮らしではなく、10年後・20年後の暮らしを考えながら空間づくりを検討しましょうとお伝えしています。リノベや中古マンションに対して不安に思っていらっしゃる方、マンション購入初心者の方にもぜひご参加いただきたいですね」と豊田店長

2019年 02月07日 11時05分