1951年、日本初の公立近代美術館として開館した「神奈川県立近代美術館 鎌倉館」をリニューアル

2019年春、旧神奈川県立近代美術館 鎌倉館(以下:鎌倉館)をリニューアルした施設、「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」(以下:鎌倉文華館)がオープンすることとなった。鎌倉文華館は、様々な展示やイベントなどを通して、鎌倉ほか日本の歴史や文化を紹介する発信拠点として活用される予定だ。

まず、2016年3月に閉館した旧鎌倉館について簡単に紹介しよう。
旧鎌倉館は1951年11月、鎌倉市の中心、鶴岡八幡宮の境内に日本初の公立近代美術館として開館。戦後間もない物資が足りない時期に、作品を発信する場が欲しいという芸術家たちの声が当時の神奈川県知事だった内山岩太郎に届き、復興への希望の象徴として建築された。そのような歴史ある美術館だったが、2016年3月、建物の老朽化および神奈川県と鶴岡八幡宮が結んだ賃借契約の満了に伴い、惜しまれながら閉館となった。

旧鎌倉館が多くの人を惹きつけた理由。それは、戦後日本のモダニズム建築を代表する傑作だったことと同時に、神殿タイプの厳めしい美術館ではなく、訪れた人が構えずにカジュアルに楽しむことができる美術館だったからだろう。

周囲の環境に溶け込み、静かに佇む旧鎌倉館(2016年1月撮影)。平家池にせり出すように建つ軽快な姿は、まるで池の上に浮かんでいるよう周囲の環境に溶け込み、静かに佇む旧鎌倉館(2016年1月撮影)。平家池にせり出すように建つ軽快な姿は、まるで池の上に浮かんでいるよう

戦後日本のモダニズム建築を代表する傑作だった旧鎌倉館

参道側から見た鎌倉文華館の外観イメージ。市民はもちろん、鎌倉を訪れる国内外の多くの人々に愛される施設となるだろう参道側から見た鎌倉文華館の外観イメージ。市民はもちろん、鎌倉を訪れる国内外の多くの人々に愛される施設となるだろう

旧鎌倉館の設計は、モダニズム建築の巨匠、ル・コルビュジエに師事し、1937年のパリ万博日本館の設計で建築部門グランプリを受賞した坂倉準三が担当。氏の戦後初の作品で、戦後日本のモダニズム建築を代表する傑作とされている。近代建築の保存に取り組む国際組織「DOCOMOMO(ドコモモ)」が、「日本の近代建築20選」に選出したことからも、高い評価を受けていることがうかがえる。

モダニズム建築の代表格である旧鎌倉館には、随所に日本的な要素が採り入れられていた。例えば1階の壁に使われた大谷石。その土地にあり、かつ新しい素材を使うという発想は、ル・コルビュジエやイサム・ノグチ、フランク・ロイド・ライトらに共通する考え方という。また内と外の空間の行き来を考えた設計は、石造りのヨーロッパの建物とは異なる日本的な発想だ。桂離宮のような、日本の伝統的な建築における建物と庭園との密接な関係も取り入れられており、西洋の文化と和のテイストが融合しているのも特徴といえる。

2016年3月に惜しまれながら閉館となった旧鎌倉館だが、歴史的・文化的価値の高さから活用を求める声が多かったことから、旧鎌倉館を所有する鶴岡八幡宮は検討を続け、鎌倉文華館としてオープンさせることとなったのである。

旧鎌倉館がどのように継承され生まれ変わるのかを、期待して待ちたい

2019年春オープン予定の鎌倉文華館。「新たな交流と文化を育み、発信する」「鶴岡八幡宮、鎌倉についての理解を深める活動を行う」「参拝を深める空間を創出する」の3つを基本理念と位置付け、ガイダンス展示や企画展示、文化イベントやセミナー・講座、こども向け活動、展示テーマや資料等に関する調査研究、資料や作品等の収集・保存などを行っていく予定。旧鎌倉館の建物としての価値を保存しながら、どのような発信をしていくのかが楽しみなところだ。同時にエレベーターの新設、耐震改修などを行い、より安全に利用しやすい施設へと生まれ変わる。

「鎌倉の古く、かつ新しい文化拠点として、鎌倉を訪れる国内外からの多くの人々、また市民の方々にとって、鶴岡八幡宮で過ごす時間が人生をより豊かに、美しいものにするものとなるよう、多様な事業活動を行っていく」という鎌倉文華館。

多くの人に愛された旧鎌倉館がどのように継承され、生まれ変わり、活用されるのか。開館を楽しみに待ちたいと思う。

1951年に完成した旧鎌倉館の意匠がほぼそのままにオープン予定の鎌倉文華館。</br>エレベーターも新設され、より訪れやすい施設となる1951年に完成した旧鎌倉館の意匠がほぼそのままにオープン予定の鎌倉文華館。
エレベーターも新設され、より訪れやすい施設となる

2018年 05月09日 11時05分