2005年、つくばエクスプレスの開業に合わせてスタートした沿線開発

地球温暖化の影響によると思われる異常気象や、エネルギー問題・・・わたしたちを取り巻く住環境は、わたしたちの子どもの頃とは“何か”が確実に変わってきている、と感じている方も多いことだろう。

そうした環境保全や省エネ対策を“街を挙げて”解決しようと、行政と大学そして民間企業と市民が一丸となって次世代型の街づくりをおこなっている『総合特区』がある。

千葉県柏市の北部に位置する『柏の葉キャンパス』だ。

2005年8月、JR常磐線の混雑緩和を目的として、東京都心・秋葉原と茨城県・つくば市を結ぶ『つくばエクスプレス(通称TX)』が開業した。その開業に伴って、TX沿線の大規模な開発が進められることになったのだが、中でも注目されたのが広大な自然が残る『柏の葉キャンパス』一帯のエリア開発だった。

▲美しい街づくりが印象的なつくばエクスプレス『柏の葉キャンパス』駅西口。<br />駅前には大型商業ビルの『ららぽーと柏の葉』をはじめ、<br />東京大学・千葉大学の柏キャンパス、国立がんセンターなどの国の研究施設等があり、<br />駅に近接して新築分譲マンションや一戸建て住宅が建ち並ぶ▲美しい街づくりが印象的なつくばエクスプレス『柏の葉キャンパス』駅西口。
駅前には大型商業ビルの『ららぽーと柏の葉』をはじめ、
東京大学・千葉大学の柏キャンパス、国立がんセンターなどの国の研究施設等があり、
駅に近接して新築分譲マンションや一戸建て住宅が建ち並ぶ

行政・市民と企業・国立大・・・日本初の『公民学連携』を実現!

▲柏市役所『環境未来都市総合特区』の担当リーダー・石名坂賢一さん。次世代型の街づくりモデルを推進するリーダーとして、中央省庁や地方官庁、大学等で多数講演を務める▲柏市役所『環境未来都市総合特区』の担当リーダー・石名坂賢一さん。次世代型の街づくりモデルを推進するリーダーとして、中央省庁や地方官庁、大学等で多数講演を務める

「現在の『柏の葉キャンパス』の一帯は地盤が強固だったため、江戸時代には徳川幕府の馬の調教場があり、戦時中は旧陸軍の飛行場が建設された場所でした。戦後、飛行場は米軍の管轄下となり、隣接して三井不動産の『柏ゴルフ倶楽部』などがあったのですが、1978年に米軍から土地が返還されたあと“じゃぁ、ここにどんな街を作ったら良いのだろうか?”という話し合いになったことから、新しい街づくりがスタートしたのです」と語るのは、柏市役所企画部の石名坂さん。

通常、戦後日本に返還された土地というのは、国・地元行政・民間の三者へ均等に土地が配分されるのが通例だそうだが、『柏の葉キャンパス』ではこの三分割法を利用して“国立大学と千葉県・柏市と民間企業とが連携すれば、何か新しいことができるのではないか?”と考えた。

「地方都市の駅前開発というのは、県と市が担うケースが多いのですが、大量の税金を投入したところでやれることは限られてしまいます。ならば、国立大学の知見と、民間企業の資金力、そしてわたしたち地元行政の調整力をもって“過去に例のないような新しい街を作ってみよう”ということになったんです」(石名坂さん談)。

こうして日本初の『公民学連携の都市づくり』がスタートした。

約100年前の法律にがんじがらめになっている日本の街づくり

▲美しく手入れされたガーデニングと洒落たウッドデッキが印象的な『UDCK』。UDC(アーバンデザインセンター)というのは、街ごとのエリアマネジメントをおこなう地域拠点として欧米各地で1980年代からスタートした施設で、世界の先進都市へ広がりを見せている。現在、UDCKには市や県の職員・大学の教授や学生・市民・参画する企業の担当者らが定期的に集まり、ひとつのテーブルを取り囲んで白熱した議論をおこなっている▲美しく手入れされたガーデニングと洒落たウッドデッキが印象的な『UDCK』。UDC(アーバンデザインセンター)というのは、街ごとのエリアマネジメントをおこなう地域拠点として欧米各地で1980年代からスタートした施設で、世界の先進都市へ広がりを見せている。現在、UDCKには市や県の職員・大学の教授や学生・市民・参画する企業の担当者らが定期的に集まり、ひとつのテーブルを取り囲んで白熱した議論をおこなっている

『柏の葉キャンパス』における公民学連携の『公』とは柏市と千葉県を指し、『民』はこの街に暮らす市民や土地を所有していた三井不動産をはじめとする企業、そして『学』は新たな研究拠点としてこの街にキャンパスを設けた東京大学と千葉大学のことを指す。

“公民学連携”という言葉でひとつにまとめてしまえば実に簡単で明確な構想のように感じられるが、それぞれが得意分野を持ち寄って街づくりを始めるには、研究会の立ち上げやシンポジウムの開催など、連携を強めるための下準備が欠かせなかったという。

そこで、連携のための拠点として“駅前の一等地”とも言える場所に2006年に設置されたのが『柏の葉アーバンデザインセンター~UDCK~』だ。ここでは新しい街づくりの実現に向けて、公民学それぞれの担当者がビジョンや課題を持ち寄り、解決していくための“会議”がたびたび開催された。

「しかし、わたしたちの前に大きく立ちはだかったのは『法律の壁』でした。

例えば“駅前の道路を、ヨーロッパの街並みのような美しい石畳にしたい”と思えば、道路法によって阻まれる。“道路を隔てた建物間で電力の融通をできるようにしたい”と思えば、電気事業法によって阻まれる・・・。日本の街づくりというのは、いまだに『100年近く前に作られた法律』によってがんじがらめに規制されているため、結局その法律の下でどこも似たような街になってしまうんです。

では、そんなルールに縛られない新しい街づくりは、どうやったら実現できるのか?
『総合特区』に指定されるしか、策がありませんでした」(石名坂さん談)

2011年、“自律した都市経営”をテーマに総合特区に指定!

▲つくばエクスプレス『柏の葉キャンパス』駅前では、2014年春の開業に向けて『ゲートスクエア』の建設が進められている。『ゲートスクエア』内には、海外からこの地を訪れた研究者らが快適に滞在できる『国際交流住宅』をはじめ、ホールやカンファレンスルームも開設される予定。豊かな自然に囲まれた地方都市が、世界有数の次世代型国際都市へと変化を遂げつつある▲つくばエクスプレス『柏の葉キャンパス』駅前では、2014年春の開業に向けて『ゲートスクエア』の建設が進められている。『ゲートスクエア』内には、海外からこの地を訪れた研究者らが快適に滞在できる『国際交流住宅』をはじめ、ホールやカンファレンスルームも開設される予定。豊かな自然に囲まれた地方都市が、世界有数の次世代型国際都市へと変化を遂げつつある

担当者による熱心なプレゼンテーションの結果、『柏の葉キャンパス』は、2011年12月に『地域活性化総合特区』と『環境未来都市』にダブル指定された。

『地域活性化総合特区』とは、地域の活性化に向けた先進的な取り組みに対し、国が規制緩和や税制優遇等で総合的に支援するエリアのこと。

『環境未来都市』とは、環境問題や超高齢化に対応し、世界に誇るモデルとなりうる先進的な取り組みに対して国が財政支援をおこなう都市のこと。

現在国内には内閣官房から認定を受けた合計48の総合特区があるが、この二つが同時に指定されたのは『柏の葉キャンパス』が初の事例だという。

次回のレポートでは、総合特区となった『柏の葉キャンパス』が“自律した都市経営”を目指して独自に取り組んでいる次世代型の街づくりと、電力の地産地消・マルチ交通システム・トータルヘルスケア等のエリアマネジメントの具体的事例についてご紹介しよう。

2013年 12月04日 08時50分