侵入窃盗の認知件数は年々減少、住居への侵入盗は増えている地域も

現在、日本国内において年間86,000軒以上の侵入窃盗の被害が報告されている。そのうちの6割が住居に対する侵入窃盗で、1日当たり約126件(※1)、約11.4分に1件のペースで被害が発生している。防犯意識の高まりと共に、これら侵入窃盗の認知件数は年々減少傾向にはあるが、足立区では平成29年3月末の段階で、住居などへの侵入窃盗が前年同期比2倍以上となりニュースになった。

住居への侵入窃盗には、空き巣、忍込み、居空きの3種類があり、空き巣とは不在時に侵入し金品を盗むこと、忍込みとは夜間の就寝時に侵入し金品を盗むこと、居空きとは在宅中でありながら昼寝や食事などをしているすきに侵入し金品を盗むことを言う。

侵入窃盗の中でも多いのが空き巣で、全体の約3分の1(※2)を占め、被害例として現金、預金通帳、貴金属、カードなどの他、パスポートやパソコンなど個人情報が一緒に盗まれるケースもある。何より怖いのは"空き巣"と言えども鉢合わせてしまったら居直られる可能性もあり、そうなると命にも危険が及んでしまいかねないことだ。

今回は筆者が実際に立ち合ってきた空き巣被害者たちの経験談から、犯罪から命と財産を守るための住まいの防犯対策についてご紹介しよう。
(※1~2:データで見る侵入犯罪の脅威/警察庁平成27年データより)

侵入窃盗の発生場所は住宅が6割を占め、全体の約3分の1が空き巣の被害となっている<br>
(警察庁による「住まいる防犯110番」を参照して作成)侵入窃盗の発生場所は住宅が6割を占め、全体の約3分の1が空き巣の被害となっている
(警察庁による「住まいる防犯110番」を参照して作成)

空き巣に入られて傷つく人々、金品だけではない心の被害

空き巣の被害は金品だけにとどまらない。被害者のどうしようもないといった諦めの表情が強く印象に残った空き巣の被害は金品だけにとどまらない。被害者のどうしようもないといった諦めの表情が強く印象に残った

筆者は長年、住宅リフォームの現場に携わってきたが、中には心が痛む場面に出あうこともある。例えば火事の後の復旧や解体、夜逃げの後の片付け、そして空き巣など犯罪被害に遭った後のリフォームだ。

空き巣の被害は金品だけにとどまらない。横浜市の木造一戸建てに暮らすAさんは、面格子が付いているからと安心して開けてあった洗面所の窓から、面格子を外されて侵入された。被害は現金の他、亡くなったご主人の形見の品である大事な指輪と、その後2人で少しずつ買い足してきた思い出の時計やアクセサリー類で、ひとつ残らず根こそぎ盗られてしまい、悔しくて悲しくていられないと涙ながらに語っていた。

もちろん、金品だけで済んでまだよかったと言えばそうなのだが、いくら保険に入っていても大事な思い出の品を失ってしまったショックは大きく、命があっただけマシなのよねと諦めた顔で何度もつぶやいていた。

その後、開口部の点検をしたところ、簡単に外れる面格子が他にも数か所あることがわかり、それらを頑強なタイプに交換するリフォームと、もしもを考えて玄関ドアと勝手口の鍵の交換リフォームを行った。

舌を巻くほどの空き巣のテクニック、数日間被害に気付かないケースも

こんな小さなランマ窓から侵入したケースも。一回入られてしまうと、心のバランスを崩してしまうほどの恐怖にさいなまれてしまうこともあるこんな小さなランマ窓から侵入したケースも。一回入られてしまうと、心のバランスを崩してしまうほどの恐怖にさいなまれてしまうこともある

空き巣が家の中を探すテクニックは舌を巻くほどで、ぬか漬けの容器の底に隠してあった通帳や、仏壇の裏側に入れてあった現金も、あっという間に盗まれてしまったケースもある。こちらも一戸建て住宅だったのだが、侵入方法はガラス破りで、和室の掃き出し窓のガラスを小さく切り、手を入れてクレセント鍵を開けて侵入された。

普段開け閉めしない窓だったこと、また家の中を全く荒らさないでピンポイントに金品だけを盗んでいったため、住人は被害に数日間気付くことができず、久しぶりに障子を開けたらガラスに穴が開いていて、慌てて調べたら現金や宝石類が盗まれていることがわかった。足がつきやすい通帳やカード類には手を付けていなかったのも発見を遅らせた原因となった。

こちらは、いつ入られたかもよくわからない状況で、こんな状態のまま暮らしていたのかと思うと改めて恐怖が襲い、急いでガラスの修理と鍵を増設。そしてホームセキュリティシステムを導入したのだが、それでも恐怖感は消えず。夜寝ていても枕元に誰かが立っているような気がして、飛び起きることもあるとのことで、もっと鍵を増やしたほうがいいのではないかという相談を何回か受けた。

その後、ご自分でも自身の不調に気づき、心療内科へ通うなどして何とか落ち付いたとのことだったが、結局数年後にはセキュリティが万全と言われるマンションへ引っ越していった。

他にも、こんな小さな窓から人が入れるのかというようなランマ窓から侵入されたケースや、かなり強引な手口では雑居ビルの玄関ドアをバールでこじ開けられたケースもある。実は筆者の実家もガラス破りで空き巣に侵入され、現金が少々と大切にしていた思い出の品が盗られてしまい、犯人は捕まったがお金も品物も戻ることは無かった。

どのケースでも金品の被害はもちろんなのだが、被害にあった人々の心の被害はとても大きく、長期間にわたって恐怖に苦しむ人が少なくない。はたから見ると大したことがないように見える金額であったとしても、空き巣に入られた恐ろしさと悲しみは想像以上に大きいと、現場に立ち合うたびに実感させられている。

防犯対策は入られる前にやる、一戸建ては窓、マンションは玄関

空き巣後のリフォームを手掛けてきて感じる被害者たちの共通点は、まさか自分自身が被害に遭うとは思ってもいなかったという点だ。普段平和に暮らしている毎日、自分を含め、まさかこんな恐怖が自分の身に降りかかってくるとはなかなか想像できないものだ。

今まで手掛けた防犯リフォームも、残念ながら被害に遭ってから、もしくは近隣の被害を目の当たりにしてやっと着手するというケースが少なくない。しかしまさかはいつでも起きる可能性がある。防犯対策で一番大切なことは、被害にあってからあわててやるのではなく、入られる前にやっておくこと、ごく当たり前のことなのだが、これに尽きる。

ではどこから対策すればいいか。まずは、住宅対象の侵入窃盗の発生状況を確認しておこう。住宅対象侵入窃盗の侵入口は、6割が窓から、4割が玄関などの出入り口からとなっている。

また空き巣の侵入手段は、一戸建ての場合はガラス破りが60.9%と圧倒的に多く、次いで無締り(鍵の掛け忘れ)の玄関や窓からの侵入が30.1%、施錠開けと呼ばれるいわゆるピッキングなどの特殊工具による開錠は3.6%にとどまっている。マンションの場合は、ガラス破りが21.4%、無締りが44.8%、施錠開けは31.7%となっている。ちなみに夜間の就寝時に侵入する忍込み、在宅中に侵入してくる居空きの侵入手段も、圧倒的に無締りが多くなっている。

つまり最初にやるべき防犯対策は、玄関や窓の鍵のかけ忘れを無くすことであり、これなら費用を掛けずに今日からすぐ始めることができる。日ごろから防犯意識を持ち、開口部はこまめに鍵を掛けることを習慣化することが肝心だろう。

更に一戸建ては窓ガラスを中心に、マンションはピッキング対策を中心に防犯対策を行っておけば、安全性が格段に高まる。次回は窓や玄関ドアの具体的な対策方法や、空き巣に抑制効果を発揮する住宅設備などをご紹介しよう。

住宅の侵入口の約6割が窓。施錠開けとはピッキング、ドア錠破りとは工具でスキマを破壊する手口。<br>
(警視庁による「平成28年中の住宅対象侵入窃盗の発生状況」を参照して作成)住宅の侵入口の約6割が窓。施錠開けとはピッキング、ドア錠破りとは工具でスキマを破壊する手口。
(警視庁による「平成28年中の住宅対象侵入窃盗の発生状況」を参照して作成)

2017年 06月23日 11時05分