副都心「新宿」という街

日本の経済成長をささえてきた新宿。今後の変化は?日本の経済成長をささえてきた新宿。今後の変化は?

みなさんは新宿にどんな印象をもっているだろうか?
昭和39年(1964年)の東京オリンピックの後、高度経済成長以降、新宿は大きく発展の時代を迎えた。都市の景観を一新する副都心開発や新宿駅周辺の開発、東口のビル建設ラッシュなど…今日、私たちがイメージするビジネスと娯楽の街「新宿」へと変貌する。

また、新宿駅はJR東日本、京王電鉄、小田急電鉄、東京メトロ、東京都交通局の5社局が乗り入れ、一日平均乗降者数は約326万人(※2011年)と、ギネス世界記録に認定されている。周辺には東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅、西武新宿線「西武新宿」駅、都営大江戸線「都庁前」駅もある。

総務省統計局が行う国勢調査の人口統計では、通勤・通学先(従業地・通学地)で集計した統計も作られており、それを昼間人口と呼ぶ。新宿区は、多くの企業の本社もおかれ、早稲田大学をはじめ工学院大学、東京医科大学など12大学14キャンパスもあり、ビジネスマンと学生が多い印象だ。実際に平成17年の調査では昼間人口は77万人で東京都の第3位となっている。

東京の副都心のひとつとして、多くの人々が行き交う「新宿」…。
変化を続ける都市として、新宿区の状況を聞きに新宿区都市計画部地域整備課に取材に伺った。

いびつに進む人口減少と都市の問題

下図は、総務省統計局が行っている国勢調査からの日本の人口ピラミッドの図である。
2010年現在、明らかな高齢化社会の様相を呈している。日本の人口減は既に始まっており、とりわけ年少人口(0〜14歳人口)と生産年齢人口(15〜64歳人口)が減少し、老年人口(65歳以上人口)が大幅に増えるため年齢別人口構成がこれまでとは大きく変化する。東京都の人口は2015年までは増加(約1334万人)してそこから減少すると予測されており、2010年(約1315万人)から2040年(1230万人)の30年間では85万人強およそ6.5%減ると予想されている。

以前もHOME'S PRESSで取り上げたように、人口減少だけでなく、生産年齢人口が減り高齢者が増えることで社会の課題は増大していく。「少子高齢化の観点」からの街選び、住宅選びは今後深刻さを増していくだろう。

2010年 日本の人口ピラミッド (総務省統計局の資料より)2010年 日本の人口ピラミッド (総務省統計局の資料より)

人口と世帯…「住む街としての新宿」の一面

それでは、今回取り上げる新宿区はどうなっているのだろうか?昼間人口が多いことは先に述べたが、定住人口がどう変化しているのかを見てみたい。

1965年以降、新宿区の定住人口は減少が続き、1995年には279,048人まで落ち込んだ。しかし、その後1997年からは再び微増傾向となり、2005年10月の国勢調査では305,716人となり、その後も増加を続け、平成26年12月1日現在では328,162人となっている。新宿区の人口は増えているのだ。

人口ピラミッドを見てみよう。20歳以下の人口は小さくツリーの幹のようになっているが、日本の人口ピラミッドと比較すると比較的生産年齢人口が多いのがわかる。住民基本台帳人口による年齢3区分別人口比率でも15~64歳の生産年齢人口は234,676人、比率71.5%と高いのがわかる。高齢化の流れは顕著にはなってきているが、比較的若い年齢層が多い。

多くの大学、企業が集まる中、若者の転入が増えてきたことがこの人口ピラミッドに現れている。ただし、夫婦・子供世帯については少なく、15歳以下の人口が少ないという結果が見える。また、古くからの地域では高齢化が進んでいることは新宿も例外でなく、世帯構造では若者・高齢者の単独世帯が増えてきている、というのが現状のようだ。

新宿区における人口ピラミッドの変化(2010年国勢調査 新宿区新宿自治創造研究所資料より)新宿区における人口ピラミッドの変化(2010年国勢調査 新宿区新宿自治創造研究所資料より)

続く新宿区の市街地再開発事業

新宿区は、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図ることを目的として市街地再開発事業を進めてきた。都市が進化を続け、近代的なビルが建ち並ぶ中、一方で区内には低層の木造建築物が密集し、道路も狭く接道状況も不良、公園も不足するなど、都市基盤施設の整備が遅れていることからことから防災・居住環境で課題を抱える地区も多くあった。

都市機能の改善を図る再開発事業は、昭和56年12月に事業化された「西新宿六丁目中央地区」を始めとし、これまで計13地区が完了しており、計4地区が事業中となっている。現在再開発事業が進んでいる「西新宿五丁目中央北地区」では、日本最大階数60階建ての高層マンションも計画され、新たな住街区が生まれている。住街区では、公園や広場を整備し積極的な緑化をし、区画道路や歩道整備で地域の災害時の避難経路や避難空間の確保も図っている。


新宿区都市計画部地域整備課 課長の依田さんは、
「再開発は、災害に強い、人が行き交う、ヒートアイランド対策などの緑化、子育てがしやすい、高齢者にやさしいなど、ハードだけでなくソフトの面でも充実した"街づくり"が目的です。基本的には東京都や新宿区の上位計画等に基づき、地域の再開発組合が行うのですが、みなさん街に思い入れがある方々が多いため、新たな街づくりには積極的ですね。新たな再開発地域にはファミリー向けのマンションも建つ計画となっています。新宿区がファミリーにも住みやすい街づくりができることで、今まで少なかった15歳以下のお子様も増えてくるのではないでしょうか」と語る。

新宿区がもつ「多様性」の魅力

「新宿は多様性のある街です。それぞれがもつ魅力が今後も増していくような街づくりを区民とともに行いたい」と新宿区都市計画部地域整備課課長 依田さん「新宿は多様性のある街です。それぞれがもつ魅力が今後も増していくような街づくりを区民とともに行いたい」と新宿区都市計画部地域整備課課長 依田さん

「新宿区は多様性…という意味で魅力ある街だと思っています。また、それぞれの時代を映し出し、パワフルに変化を続けてきた地域でもあります。今後、日本や東京が国際化していく中で、"どんな街づくりをしていくのか"を区民とともに考えていきたいと思っています。また、子育てがしやすく、高齢者が安心・安全に暮らせる…そんな街の人々の成長を見守れる街づくりでありたいですね」と依田さん。

新宿区の再開発事業はいつ終わるのでしょう?と尋ねると
「いや、街づくりという意味では終わらないんですよ。新宿区は、今までと同じように変化をつづけていくのでしょうね」と語ってくれた。

今後、日本が直面する少子高齢・人口減少の波は新宿区も例外ではない。地方の街づくり、コミュニティーの設計は、待ったなしに深刻である。
日本全体から見ると昼間人口の多さや定住人口の増加、生産年齢人口比率の高い新宿区は逆に「都市に住む」ことの豊かさを反映していくことで、どういった街づくりを続けるのか興味深い。様々な人の手でより「人が暮らす」ことに真摯に答えを出し、都市と暮らしの関係が良い方向に向かうことを期待したい。

2014年 12月24日 11時09分