減築の定義は床面積を減らすこと

ここ数年、減築が注目されている理由やその意義については、「今なぜ減築リフォームなのか、費用を掛けて家を小さくする意味」でご紹介した。今回は、具体的な減築のパターンとその効果、注意点をご紹介しよう。

まずは減築の定義から改めて確認しておく。国交省の国土交通政策研究所による「減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究」によると、減築とは「住宅について、建築面積の一部や階数を減らすなど、建築物の床面積を減らして(例えば2階建ての2階部分を除去)住宅のコンパクト化を図ること」と定めている。

つまり減築はあくまでも床面積を減らすことであり、最近のリフォーム事例でよく見られるような、間仕切り壁を取り払って部屋数を減らすものは含まれない。しかし2階の床を撤去して吹き抜けにする場合は、例え屋根や外壁の改修が伴わなくても床面積が減少するので減築に含まれることになる。

減築のモデルプラン。延床面積99.20m2から75.87m2へ、網掛けの部分が減築想定範囲を示す。2階の一部を減築することにより、1階屋上の南側に日照が確保されるテラスとして活用する例。国交省国土交通政策研究所「減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究」より参照減築のモデルプラン。延床面積99.20m2から75.87m2へ、網掛けの部分が減築想定範囲を示す。2階の一部を減築することにより、1階屋上の南側に日照が確保されるテラスとして活用する例。国交省国土交通政策研究所「減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究」より参照

減築6つのパターン

では次に、国土交通政策研究所により類型化された減築の6つのパターンとその効果を紹介しよう。想定している状況は木造一戸建て住宅で、1は元が平屋、2~6は2階建てである。

1:平屋の一部撤去
2:2階建ての1階・2階の一部の同時除去
3:2階建ての2階の一部の除去
4:2階建ての2階全部除去
5:2階建ての1階の一部の除去
6:2階建ての2階床の一部の除去

国交省の「減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究 」より参照国交省の「減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究 」より参照

減築6つのパターンとその効果、注意点

減築は床面積を減らすことであるので、どのパターンにしても共通して得られる効果が、建物の維持管理の負担の軽減、生活動線の短縮化による身体的な負担の軽減、そして光熱費や冷暖房費の削減である。

例えば、建物の維持管理という面においては、メンテナンスのための外壁塗装を行うにしても、家が小さければコストを抑えることができ、断熱や耐震などの性能向上を行う際にも工事範囲が小さくて済むので費用も安い。生活面においても、動線が短くなることで掃除など家事の手間が省け、家が小さくなれば光熱費も削減できる。

つまり減築してコンパクトな家にすれば、高性能で、維持費も安く、隅々まで目が行き届いた快適な住まいにしやすいということだ。

加えて1階部分を除去し建築面積を小さくする減築は、庭を広く取ることで採光や通風の確保ができるようになる。これは密集地の場合、近隣との距離を確保しやすくなるというメリットを生み出す。

2階を全部除去するパターンは、階段が無くなるので、家庭内事故を防ぎ安全性が高まるのはもちろん、ワンフロア―での生活動線はバリアフリー化がしやすく高齢者にとって暮らしやすい住まいとなる。また建物面においては、もともと平屋建てと2階建てでは基礎の作りや柱の太さなども異なるため、減築による荷重の軽減で、大幅な耐震性能の向上が期待できる。

耐震に関しては、2階を除去するケースではほとんどの場合、性能の向上が確認されているが、1階部分の除去の場合は、耐力壁を撤去したことで、性能が低下したケースがあるので注意が必要だ。耐力壁を移動させる場合は、改めて壁量や重心の確認が必要になるだろう。

減築の効果は、建物の維持管理負担の軽減、生活動線の短縮化による身体的な負担の軽減、光熱費や冷暖房費の削減がある減築の効果は、建物の維持管理負担の軽減、生活動線の短縮化による身体的な負担の軽減、光熱費や冷暖房費の削減がある

減築の根本的な問題点と今後の可能性

減築は建て替えや住み替えに比べ、住人にとって経済的な効果が高いと見込まれている。また減築によって空地が増えれば、地域の通風や採光の改善、避難経路の確保が容易になり、近隣の住環境を改善する効果もある。

このように減築には、住人だけでなく地域にとっても大いにメリットがあるのだが、やはりここで問題になるのが、お金を掛けて家を小さくすることに対する抵抗感であろう。

しかし減築に関するアンケートの結果を見ると、選択肢の一つとして考えてもいいと答えた人は、42%と意外と高い。検討の余地がありながら踏み切る人がそれほど多くないのは、やはり一般消費者の減築への理解不足が原因となっていると考えられる。

実際、興味があると答えた人の中で、減築に対する不安について多い回答は、面積が狭くなること、建て替えと比べて工事費用が安く済むかどうか、期待したような減築の効果が得られるかなど、費用対効果に関するものが上位を占めている。

現在、我が国は人口減少国家への道を歩み始めており、一世帯当たりの人員数も年々減る傾向にある。そのような状況において減築は快適な住環境を得るために有効な手段であり、今後必要性は徐々に高まっていくだろう。しかし現時点においてはまだ世間知が低く、事例も少ないため、消費者は正確な判断をするための必要な情報を持っているとは言い難い。当面は減築の有効性に対する認知を広げていくことが求められるだろう。

(画像上)減築に関する興味:関心層は約42%。減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究 より参照
<br>(画像下)興味と不安:「減築に対する興味」(SA)とQ13「 減築を行うことに対する不安」(MA)のクロス集計。国交省同資料より(画像上)減築に関する興味:関心層は約42%。減築による地域性を継承した住宅・住環境の整備に関する研究 より参照
(画像下)興味と不安:「減築に対する興味」(SA)とQ13「 減築を行うことに対する不安」(MA)のクロス集計。国交省同資料より

2016年 12月19日 11時06分