初心者にも作りやすいのにかっこいいのは建築家デザインだから
このところ、女性でも我が家に手を入れたり、DIYをする人が増えている。話を聞く度、自分でもやってみたいと思っていたものの、組み立て式の誰にでも作れるはずのPCデスクをがたがたに組み立てた経験のある身としては、なかなか手を出せない。そんなある日、見かけたのが、MaKeT(マケット)。建築家の谷尻誠さんが手掛けている家具のDIYキットだ。
これは谷尻さんが自宅に家具をと考えた時に自分の部屋に置きたいと思うものがなく、自作した経験から生まれた商品。「ものを作る楽しさ、満足感、自分で作ったものへの愛着を味わってもらいたいという商品で、誰もが挑戦しやすいように、扱いやすい木材の組み合わせで極力シンプルな工程でつくれるように設計されています」(販売を手掛けるCROSS BORDERSの橋口千夏子さん)。
ラインナップはベンチやスツール、テーブル、シェルフにハンガーラックなど、新築の家に合うような品々。木材5本を組むだけでできているハンガーラックのように、シンプルだけれどデザインがあり、置くだけで絵になる。しかも、ベンチやスツールで4,000円代からと価格も手頃だ。
素材はSPF材(北米産マツ科・モミ科等の針葉樹)が中心。「手に入りやすく、材質的に軽くて柔らかいため、加工しやすいこの素材を使っています。桜や柘植などもっと硬くて質の良い素材を使うこともできますが、それだけのお金を出すなら買ったほうが良いと思う人もいらっしゃるはず。このキットはそれよりも作る楽しみにフォーカス、これで始めて手作りする人が増えてくれることを意図しています」。
ひと手間かければ、自分仕様、オリジナルな家具に
キットは木材とネジ、作り方の解説書がセットになっており、自宅に届く。DIYのためにホームセンターなどでは木材カットのサービスがあるが、それを持って帰るのが面倒だったという谷尻さんの体験に基づいたものだ。
木肌を活かしてそのままで使っても良いが、好みに合わせてペイントするのも楽しい。「他の組み立て式家具は誰が作っても同じものができるという安心感はありますが、自分でアレンジする余地はありません。でも、マケットなら自分の好みの色、質感のペイントを施すだけで、その人らしい品にできます。形がシンプルなのでベンチを収納に使うなど、使い方も自由になるのも楽しいと思いますね」。
サイトにはカスタマイズ事例も掲載されているが、ちょっとした工夫でオリジナルになるのがよく分かる。ちなみに橋口さんが自分でも試してみたいと思っているのはベンチソファに手作りクッションという使い方なのだとか。
「最近は様々な厚さ、硬さのスポンジが売られているのでそれを使い、好きな布でカバーを作ればオリジナルソファになるなあと。このやり方なら既成のソファ地以外の布でもいいので、ベッドカバーやカーテンとお揃いにしたり、季節によって変えたりと、インテリアで気軽に遊べます」。家具プラスアルファの楽しみ方というわけだ。
キットに加えて鉛筆、消しゴム、定規、錐に電動ドライバーを用意

さて、ここまで聞いたら、やって見ざるを得まい。選んだのは一人用のベンチ。作業の簡単さで言えば、もっと小さいiPhone用のスピーカーがあるが、これは木工用ボンドだけで作れるため、作業をした感が少ない。そこで橋口さんに手伝っていただくことを前提にベンチに。
キットにプラスして用意したいのは鉛筆、消しゴムに定規、錐、電動ドライバー。室内で作業をするなら養生用のブルーシートあるいは新聞紙も必要だ。大半はどこの家にもある、もしくは容易に準備できるものだが、ひとつ、ハードルになるのが電動ドライバー。「ネジを打つために必要で、手頃な品なら5,000円から8,000円くらい。作業の楽さを考えるともっと軽くてパワーのあるインパクトドライバーがお勧めですが、こちらは1万数千円。郊外だとホームセンターで工具の貸し出しがあることもあります」。
大工仕事と聞くと軍手も必要じゃないかと思うが、「回転する電動工具を利用する場合、ぶかぶかした軍手を使っていると巻き込まれる可能性もあるので注意が必要です」。使うのであれば、皮手袋やグリップ手袋など、滑らないタイプの品を使用しよう。
作業は床に養生をした上で、届いた木材に鉛筆でネジを打つ場所をマーク、そこに錐で穴を開けるところから始まる。錐で穴を開けて置けばネジが固定され、ねじを打つ作業がやりやすくなるのだ。やってみた印象だと、ここできちんと深めに穴を開けておくと良いようだ。
最大のハードルは電動ドライバー。だが、完成時の快感はたまらない
と、ここまでは一人で全く問題ないのだが、次の電動ドライバー使用になると一人では難しい。釘を片手で固定、もう一方の手で電動ドライバーを使うのだが、となると木材が固定できない。ある程度形が出来上がってくるとなんとかなるのだが、そこまでが大変。きちんと作りたいなら二人で作業することを勧めたい。
また、初めての電動ドライバーはかなりスリリング。まっすぐ上から力を込めればネジは素直にまっすぐ入るが、最初は怖くて腰が引け、それがネジを斜めにする。できれば事前に試してみてから作業にかかることを勧めたい。近所に材木屋さんがあれば捨てる端材などがもらえると思う。
だが、この作業、できるようになるとかなり快感。ネジがピタッとまっすぐ入り、形になり始めるとやった!と思うし、最後に完成したものに座った気分はなんとも言えない。私でも家具が作れたのである。これなら、台所に棚くらい吊れるかもしれないと妄想が膨らむ。
もうひとつ、やってみて分かったのは意外にやり直しがきくということ。大工仕事(というほどでもないというツッコミは無し)は一度穴を開けたら失敗は許されないものと思っていたのだが、今回、足にぐらつきがあったため、ネジを打ち直した。ひと手間余分になったが、その結果、ピシッと安定。やり直せるなら、もっと気軽にやってみてもいいなと思った。なにか、家の中に自分メイドの品を置きたいと思っているなら試す価値ありだと思う。
MaKeT(マケット)
https://maket.cc/
2014年 11月26日 11時10分