マンションの植栽まわりで抱える課題とは?

前回の記事【【植栽とマンションの資産価値①】植栽を維持ではなく活用してコミュニティ形成を】で、マンションの植栽がマンション価値に少なからず影響し、コミュニティの形成にも影響を与えることと、それを設計する新しいサービスが注目され始めているのにふれた。今回は引き続き東邦レオ株式会社にマンションの植栽について主に具体的事例をもとに色々と聞いてみたことをお届けしたい。

川崎のマンションの事例

上:植栽リニューアル前のエントランス部分の植栽。植栽の傷みが目立つ。<br>
下:植栽リニューアル後のエントランス部分の植栽。多年草を主体として四季の花が楽しめるデザインに上:植栽リニューアル前のエントランス部分の植栽。植栽の傷みが目立つ。
下:植栽リニューアル後のエントランス部分の植栽。多年草を主体として四季の花が楽しめるデザインに

同社が約3年間で携わった数々のマンションのうち、大変だった事例が2つあるという。

まず1つ目が、川崎にあるとあるマンション。エントランスの前にある植栽が植えても植えても枯れるというケースだ。エントランス前の植栽が枯れていると、入居者や訪問者含めあまり良い印象を持たないと思う。さらに加え、その物件の中古マンション購入検討者でそうした枯れた植栽を見たらどう思うか?そう考えると、植栽がきちんと管理されていると資産価値形成につながるのも納得できる。

同マンションもそうした観点からか様々な企業に頼み、植栽を植え替えたようだ。しかし、何度やっても最後には枯れてしまい、そうした中で依頼を受けたという。原因だった土を入れ替え、また高木をこまめに切り木漏れ日が差し込むようにしたことで無事改善されたが、こうしたマンションサイドからの期待とプレッシャーの中で苦労したものの得たものもあるという。植栽を管理する側の会社もリスクを背負うという点だ。

「一般的な植栽管理業務では、植栽を植えてもし短い期間で枯れてしまっても、また見積もりをしてお金もらって、そういうやりとりだと思います。想定外に早く枯れてしまっても会社側のリスクは何もありません。こちらのマンションとのやりとりをきっかけに、該当期間何か植栽に異常があっても追加費用は出さずにフルメンテナンスをするといった保険込みのプランを通常のプランよりは高めですが新たに作りました。このことがあったおかげで、現場スタッフの意識も枯れたらまた提案をしてお金をもらうというものではなく、どうすれば長持ちするかなど意識が変わりましたね」と、東邦レオ株式会社Green×Town事業 統括責任者の吉田啓助氏。

こうした事でマンション側からの信頼を勝ち取り、現在では植栽以外の共用部に関することで色々と相談をもらっているという。

千葉にあるマンションの事例

上:団地のシンボルといえるメタセコイア並木<br>
下:剪定コストを抑えるため樹木を2分の1に減らした際の伐採イメージ写真。実際にしたこうした合成写真があることで、団地側は検討しやすくなったという。樹木の本数は減っているが植栽の景観は保たれている。光の度合で言えば、むしろ樹木からの木漏れ日が多くなりスッキリした印象を受ける上:団地のシンボルといえるメタセコイア並木
下:剪定コストを抑えるため樹木を2分の1に減らした際の伐採イメージ写真。実際にしたこうした合成写真があることで、団地側は検討しやすくなったという。樹木の本数は減っているが植栽の景観は保たれている。光の度合で言えば、むしろ樹木からの木漏れ日が多くなりスッキリした印象を受ける

同じくらいに大変だったというのが千葉にある団地。築20年以上の5階建ての分譲団地で、年々植栽管理費が増加。年間1000万円近くまで植栽管理費が増えたにも関わらず、植栽への住民側からのクレームは減るどころか年々増大していった。

団地には20mほどのメタセコイア並木が75本植わっており地域からもランドマーク的になっている。それ以外にも非常に多くの高木が植わっているが、1-2階に住む人は鬱蒼と生い茂る並木に対して日照の問題もありネガティブで切ってほしいと要望していた。しかし、3-5階の住民は景観が良いから切ってほしくないとの要望があり、総会ではいつも4:6で「切らない」という結論になっていた。

切らないという結論から剪定を抑えた年もあったが、翌年は反面かなり予算が増大してしまった。背景に階層の異なる住民同士の感情もある中、同社に依頼が舞い込んだ。高木をただ単に剪定すると30年間で2000万円はかかってしまう。そこでまずビジョンやコストについて作り直し、長期的な立案をした。予算を抑えるのと同時にそんなに景観が変わらないのなら、計画的に高木の本数を間引く。管理本数が減ったためその分花壇設置など他に予算をさき、元々あった予算や日照問題を解決していったという。

「あくまで主体はその団地に住む住民の方々です。私たちだけが頑張ればいいというものではありません。この団地にとってどういい緑を作っていけばいいのか、住民の方と交流することで引き出してお手伝いをするというスタンスです。ただ、なかなかそこをご理解いただくまでに時間がかかります」

マンションによっては緑を守る委員会などを作り、入居者が自分達で緑を守ってきたというところもある。そういう場合には今までのやりかたを否定されたと当初思う入居者の方もいるらしいが、何度も話し合う中でこうしたスタンスを理解してもらい、距離が縮まるようだ。

「コミュニティ」をキーワードにつながる植栽と防災

植栽のコンテンツをきっかけとして色々なものがつながりたいと抱負を語る吉田氏植栽のコンテンツをきっかけとして色々なものがつながりたいと抱負を語る吉田氏

一見、植栽と防災は程遠いように思えるが、「コミュニティ」をキーワードにするととても親和性のあるものに思える。マンションにおいて防災はとても重要だが、防災をテーマにしたイベントだと危機感を煽り続けることにもつながるので何度も開催すると集まりにくいと思う。

しかし、前回の【【植栽とマンションの資産価値①】植栽を維持ではなく活用してコミュニティ形成を】の記事で書いた草取り合戦やクリスマスリースづくりなどの植栽イベントで入居者同志のゆるいつながりができ、そこに防災の啓蒙ができたらどうか。緑というきっかけをもとに「コミュニティ」形成ができ、そして防災など様々なことにつながっていく。今回、第一弾として同社はCommunity Crossing Japan(コミュニティクロッシングジャパン(CCJ))と業務提携を行い、防災と緑による長期的なコミュニティづくりをパッケージ化してサービスを開始した。

吉田氏は今後、植栽管理から生まれたコミュニティを軸に様々な施策を考え中だという。そうして緑のコンテンツをきっかけとして色々なものがつながる中で、情報を発信するというのも重要と話す。

「古い団地だと若い人が呼べるような提案を求めています。植栽管理もそうですがその他にも改修工事などの面でもお手伝いして、バリューアップのサポートをしていきたいです。また、魅力を高めるだけでなく将来的にはもっと情報発信のところまでお手伝いをしたいですね」

実は吉田氏は植栽管理サービスを実施した築30年以上の団地に魅力を感じて、実際にその団地に住まい購入をした一人。管理組合の方々との交流や、住民開催イベントに参加して、入居者とふれあい「ここなら安心して暮らせる」と感じて購入したとのこと。

住まい探しの中で同じマンションや周辺住民とふれあうケースは稀なことだと思う。しかし、一生に一度か二度しかない住宅購入。本来はこうして住む場所の人と交流してから相性を確認した上で住んだほうがミスマッチングはないと思う。植栽をひとつのキーワードに資産価値維持という面でなく住まい探しさえも変わってくる時はくるのか?引き続き注目していきたい。

2015年 11月09日 11時05分