端午の節句の意味

5月5日といえば端午の節句。カレンダーには「こどもの日」と書かれているが、こいのぼりや武者人形が飾られる「男の子の節句」という印象が強いのではなかろうか。
「端」は「初めの」の意味で、「端午」は月初めの午の日を表す言葉だ。時代が下ると「端五」とも書き表されるようになり、数字が重なる五月五日に祝い事や厄払いの行事をするようになったと言われている。中国では、後漢(25年~220年)に記された『風俗通義』に、端午にちまきを食べる風習が既に記録されており、日本に輸入されたのは奈良時代と考えられている。

平安時代の日本における端午の節句は、貴族たちが薬玉を贈りあったり、菖蒲を髪に飾ったりして、厄払いと健康を祈る行事だったとされるが、鎌倉時代に武士が台頭すると、「菖蒲」が「尚武(しょうぶ)」に通じる事や、先のとがった菖蒲の葉っぱが刀剣の形と似ていることから、男児の成長と出世を祈る日になった。

しかし、鎌倉時代以前は、端午の節句と言えば、女性のお祭りという印象が強かったといわれる。それはいったいなぜなのだろう。

田植えは最大の娯楽であり重要イベント

田楽では早乙女たちが田植えをする田楽では早乙女たちが田植えをする

稲作の国日本において、1年を通してもっとも重要なイベントは、春の田植えと秋の収穫であった。実際、村や地域に昔から伝わるお祭りの中でも、春祭り(御田植祭)と秋祭り(収穫祭)がもっともにぎやかなことが多い。そして、祭りの次第をよく見ると、春の田植え祭では神様をお迎えする所作があり、秋の収穫祭ではお見送りする所作があることに気づくかもしれない。古来日本では、春になると山から神様が田圃へ降りてきて、収穫までの間、田を守ってくださると考えられていたのだ。

平安時代になると、重労働の田植えが少しでも楽になるよう、楽しく遊びながら作業をおこなう「田遊び」「田楽」が発生した。田植は田の神を迎える神事でもあったため、田楽は豊作を祈る意味もある。
貴族たちの多くが田楽に熱中し、ここから能や狂言などの芸術も生まれているが、この神事において重要な役割を果たすのが、神迎えをする早乙女たちだ。彼女たちは田植えを前に家に籠って穢れ祓いをし、身を清めた。これを「五月忌み」と呼ぶが、日本の端午の節句は、この「五月忌み」と、中国から輸入された端午の風習が、習合したものだと言われている。だから端午の節句には、早乙女以外の人々も、魔が嫌うとされる菖蒲を軒先に吊るして屋内を清浄に保ち、ちまきを食べて心身の健康を祈るようになったのだ。
それでは菖蒲が邪気を払うとされた理由はなんだろう。

菖蒲の効能とは?

菖蒲は厄除けになると考えられてきた菖蒲は厄除けになると考えられてきた

日本では、田の神は蛇の姿で現れることが多い。春から秋は田に下り冬は山に帰るとされる田の神と、田によく現れて冬は冬眠する蛇が関連づけられたのだろう。
古事記には、三輪のオオモノヌシが蛇の姿となり、人間の女性を妻とする話しもある。しかし、「日本民話の会」の著作『決定版 日本の民話事典』(講談社α文庫)によれば、本来人間の娘が蛇の子どもを宿す話しには、蛇を田の神とする信仰を残していたが、時代が下るにつれ、人間が蛇を退治する話しに変わってくるという。現代に語り継がれる菖蒲湯の由来となる逸話は、蛇に魅入られ、蛇の子を宿してしまった少女が、菖蒲を浮かべた風呂に入り、お腹の子どもを殺したとするものが多い。神迎えをすべき乙女が神の子の出産を拒否するのは不思議だが、物語が人々の口を介して伝えられる途中のどこかで、「蛇=田の神」の概念が抜け落ちてしまったのかもしれない。

菖蒲は漢方薬にも使われる薬草だが、香りが強いことから厄除けとされてきた。そして田植えの時期に葉が成長することから、端午の節句と関連づけられたのだろう。

端午の節句の祝い方

昭和以降のこいのぼりは黒赤青の三色がポピュラー昭和以降のこいのぼりは黒赤青の三色がポピュラー

現代では、端午の節句には、こいのぼりや鎧兜、武者人形などが飾られ、ちまきと柏餅を食べ、夜は菖蒲湯に入るのが一般的だ。
こいのぼり、鎧兜、武者人形が飾られるようになったのは江戸時代のことで、武家や裕福な商家などで始まったと言われる。武者人形は、桃太郎や金太郎など昔語りに登場する勇者や、武蔵坊弁慶など実在したとされる武士を模したものが多い。
こいのぼりは鯉が滝を登って龍になるとする『後漢書』の故事にちなんだ立身出世の縁起物で、当初は黒鯉のみだったが、明治時代には緋鯉が対になり、昭和時代には子どもを表す青鯉も加わった。こいのぼりや武者人形の飾り方に決まりはなく、時期も特に決められていない。端午の節句の前後期間だけ飾る家庭もあれば、一年中飾っている家庭もある。

ちまきを食べる風習は中国で始まったが、柏餅を食べるようになったのは江戸時代とされている。柏は落葉樹だが、春に新芽が出るまで葉が落ちないので、家系を途切れさせない縁起物とされ、武家社会では大切にされたのだ。
菖蒲湯は、菖蒲をそのままお湯に入れてもいいが、10~15センチ程度の長さに刻み、網などに入れて湯船に入れると、一層香りが立つ。地域によっては、菖蒲を鉢巻のように頭に巻く風習も伝わっている。

祝日法2条では、5月5日「こどもの日」を、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ための日と定義づけられている。五月飾りはひな飾りのように決まった形式がないので、各家庭それぞれのやり方で、家族の健康と幸せを祈ってはいかがだろうか。

2015年 04月19日 11時15分