長期優良住宅化リフォーム推進事業の目的とは

既存住宅(中古住宅)において、劣化対策や耐震性、省エネルギー対策など、住宅の性能を一定の基準まで向上させるリフォーム工事費用に対し、国が補助金を交付する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」がスタートした既存住宅(中古住宅)において、劣化対策や耐震性、省エネルギー対策など、住宅の性能を一定の基準まで向上させるリフォーム工事費用に対し、国が補助金を交付する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」がスタートした

2013年度補正予算(2014年2月6日成立)によって、国土交通省の「長期優良住宅化リフォーム推進事業」がスタートした。これは既存住宅(中古住宅)において、劣化対策や耐震性、省エネルギー対策など、住宅の性能を一定の基準まで向上させるリフォーム工事費用に対し、国が補助金を交付するものだ。

その目的は、国土交通省の資料によれば「日本再興戦略中長期工程表における重要業績指標『中古住宅流通・リフォーム市場の規模を倍増』の早期達成に向け、リフォーム市場の拡大と、良質な中古住宅の流通を促進する」とされている。ちなみに、リフォーム市場規模については2010年の10兆円を、2020年までの10年間で20兆円へ倍増させる目標が掲げられている。

長期優良住宅化リフォーム推進事業は、少なくとも2015年度予算までの3年程度は実施する計画になっているようで、恒久的な措置ではなく、将来的な「既存住宅での長期優良住宅認定制度創設」に向けた試行運用といった位置付けだ。新築では2009年にスタートしている長期優良住宅の認定制度だが、既存住宅で認定制度を設けるのにはまだ準備不足なのだろう。

2013年度補正予算では長期優良住宅化リフォーム推進事業に20億円が計上され、2月7日から2月28日まで事業登録および公募が行われた。3月中旬をめどに採択事業が決定される予定となっており、これを活用したリフォーム工事の実施はこれからとなる。また、2014年度の当初予算案には31億円が設定されており、予算の成立を待って4月以降に新たな公募がされる見込みだ。

長期優良住宅化リフォーム推進事業のあらまし

補助の対象となる既存住宅リフォームの要件は、主に3つの柱から成っている。

1.一定の要件を満たすインスペクションを実施すること
2.住宅の性能を向上させるリフォーム工事であり、工事後に一定の水準を満たすこと
3.リフォーム履歴および維持保全計画を作成すること

まず、リフォーム工事の前に「現況検査チェックシート」によるインスペクションを実施し、住宅の劣化状況を調査することが求められる。インスペクションを実施するのは、2013年度補正予算分事業では対象住宅の設計を行うことのできる建築士なら誰でも可能となっているが、2014年度予算分では一定のインスペクション「検査技術者」に限定することが検討されているようだ。

工事後の住宅性能については、「S基準」と「A基準」の2つが設定されている。新築の長期優良住宅とおおむね同じ水準が「S基準」(一部代替基準あり)で、中古であることを考慮して新築よりもレベルを落とすものの一定の性能向上が見込まれるとしたのが「A基準」となる。

また、リフォーム工事の内容は「特定性能向上工事」と「その他の性能向上工事」に分けられる。特定性能向上工事では劣化対策と耐震性が必須項目で、いずれもA基準を満たすことが必要だ。ただし、リフォーム前において既に基準に適合していれば工事実施の有無は問われない。さらに、耐震性については確認済証または検査済証によって建築確認日が1981年6月1日以降であることが分かれば、A基準を満たしているものとみなされる。ちなみに、耐震診断の実施は求められていない。

補助の対象は、既存の一戸建て住宅および共同住宅(マンション)であり、事務所や店舗などは対象外だ。また、一戸建て住宅は55平方メートル以上(少なくとも1つの階の床面積が40平方メートル以上)、マンションは40平方メートル以上の場合が対象となる。

なお、評価基準の詳細については、リフォーム工事業者との打合せの際などに確認してほしい。

長期優良住宅化リフォーム推進事業の対象となる工事は一定のものにかぎられる長期優良住宅化リフォーム推進事業の対象となる工事は一定のものにかぎられる

補助金の上限は100万円、2014年度予算分では200万円の見込み

長期優良住宅化リフォーム推進事業における補助金の上限は、2013年度補正予算分において1戸あたり100万円となっている。ただし、「A基準を満たす特定性能向上工事(この工事費用が過半であること)」+「その他の性能向上工事」+「インスペクション費用、リフォーム履歴作成費用、維持保全計画作成費用」などの合計額の3分の1が限度だ。したがって、インスペクション費用なども含めて300万円を超えるリフォーム工事でなければ、100万円を下回る補助金となる。

また、2013年度補正予算分については、2014年9月末までに工事着手し、2015年1月末までに工事が完了することが必要となる。補助金を受取るためには、2015年1月末までに補助事業完了実績報告書を提出しなければならないのだ。さらに、耐震改修工事について自治体などによる耐震改修補助事業との併用はできないことになっている。

なお、2014年度予算分では、特定性能向上工事のすべてがS基準を満たす場合に、補助限度額を200万円へ引き上げる予定とされている。2014年度予算分についての工事期限など、詳細はまだ決まっていない。

長期優良住宅化リフォーム推進事業への登録(事業提案)や補助金の交付申請は、リフォーム工事施工業者(個別の会社、もしくは企業グループ)のほか、発注者(所有者またはマンションの管理組合)によることも制度上は可能となっている。買取再販を行う宅地建物取引業者による申請も可能だ。しかし、現実には申請の大半がリフォーム工事施工業者になるだろう。

その場合に、国から補助金を受取るのはリフォーム工事施工業者だが、必ず「注文者へ還元すること」とされている。したがって、事業採択を受けた業者に対して要件に合致するリフォーム工事を発注すれば、その分が個人へ回る仕組みだ。

長期優良住宅化リフォーム推進事業で住宅市場は活性化するのか

不動産仲介会社など中古住宅流通の現場でも、住宅履歴情報などの活用を積極的に考える姿勢が求められる不動産仲介会社など中古住宅流通の現場でも、住宅履歴情報などの活用を積極的に考える姿勢が求められる

前述したように、今回の長期優良住宅化リフォーム推進事業は将来的に認定制度を設けるための試行措置であり、現時点では既存住宅を長期優良住宅として認定、あるいはそれを証明する制度ではない。
また、通常の設備交換や内装リフォーム工事などは補助の対象外であり、補助を受けるためには、それなりに高額なリフォーム工事を伴うだろう。さらに、少なくとも現時点では一般消費者の認知度がかなり低いと考えられる。

事業採択を受けたリフォーム工事施工業者のセールスによって、工事注文者への認知が広まり、ある程度はリフォーム促進の効果も期待できるが、中古住宅流通市場の活性化にどれほど寄与できるかは不透明だ。
不動産仲介会社など中古住宅流通の現場でも、住宅履歴情報などの活用を積極的に考える姿勢が求められる。既存住宅売買瑕疵保険制度などと併せて一般への認知、普及を図ることも欠かせない。

さらに、耐震性については建築確認日が1981年6月1日以降であれば不問としたことも、中古住宅の購入者にとっては不安が残るはずだ。新耐震基準後に建てられた住宅でも耐震性の劣るものが少なからず存在することは周知の事実だろうが、自治体による耐震改修補助事業をはじめとして、中古住宅市場をめぐるさまざまな制度で、一律に「1981年6月1日以降は耐震性あり」とみなすことが多い。
その建前論から一歩踏み出さなければ、中古住宅市場の大幅な拡大は望めないだろう。

2014年 03月11日 09時58分