中野駅前の大きな変化に注目

中野駅周辺計画担当副参事 石井大輔氏中野駅周辺計画担当副参事 石井大輔氏

住みたい街ランキングでも毎年上位にある「中野」。中野というと学生街あるいはサブカルチャーの街という印象があるが、実は“変化”が起きているのはご存じだろうか?数年ぶりに中野駅に降り立ってみると改札の向きも変わり、中野サンプラザ側(駅から北西方面)への立体歩道橋も出来ている。

「人の流れが違う!」
と、中野駅改札を出てまず思った。

以前から学生が多い街ではあったが、平日の昼間にあまり見かけなかった学生やサラリーマン層をよく見かける…。“中野に何があったのか?”

中野駅前の“変化の訳”を探るべく、中野区都市政策推進室 中野駅周辺まちづくり分野 中野駅周辺計画担当副参事 石井大輔氏に中野の街づくりについての概要と現状についてお聞きしてみた。

「新しい中野」の街づくり概要

まずは街づくりの概要について簡単におさらいをしたい。
中野の変化は平成13年から始まった。当時、中野駅から北西部一帯にあった警察大学校が移転。
その跡地について当初は、清掃工場を作るという計画が持ち上がっていたが、需要見通し等から新たな清掃工場の建設中止が特別区区長会により決定された。このため隣接する杉並区や東京都とともに跡地の土地利用を見直し、中野区部分では現在の形である大学やオフィスビル、公園などを配置し、“にぎわいのある街”にしようという案になったという。

今回、その警察大学校が移転した中野4丁目は「中野四季の都市(まち)」という名称で呼ばれている。ここには早稲田大学、帝京平成大学、明治大学の3大学が集結した。ちょうど早稲田大学は今年の春に国際コミュニティプラザが開設したばかりだが、他2大学については既に開校している。また、複合型オフィスビルである中野セントラルパークには飲料メーカーのキリンがグループの本社を移転、栗田工業も同じく本社を移した。このほか、三菱東京UFJ銀行の一部門も移転するなど、学生だけでなくビジネスマンの街に生まれ変わりつつある。

「四季の都市ができたことで日中2万人近くの人口が増えました。学生やオフィスワーカーが増えたことで、昔からある中野5丁目(中野ブロードウェイや商店街)の方ももっとにぎやかになりました。最近では駅南側の個性的な飲食店も人気のようです。中野が東京の新たなエネルギーを生み出す活動拠点になってほしいですね」(石井氏談)

中野駅周辺のマンション建設も進み、住民も増えた(出典:中野区統計書、人口増減率より)中野駅周辺のマンション建設も進み、住民も増えた(出典:中野区統計書、人口増減率より)

中野に緑の公園を

中野四季の森公園。建物は左から中野セントラルパーク、明治大学、帝京平成大学中野四季の森公園。建物は左から中野セントラルパーク、明治大学、帝京平成大学

企業や大学の誘致も大事な要素だが、もう1つ今回の街づくりの特徴が「中野四季の森公園」だ。
公園自体は約1.5ヘクタールの広さがあり、市民の憩い場のほか、隣接する中野セントラルパークとあわせて様々なイベントが行われているという。公園が出来たからといって珍しくないのでは?という方もいるかもしれない。実は中野区は公園が少なく、1人当たりの公園面積は1.33m2で、23区中22位という結果だった。(※東京都都市公園等区市町村別面積・人口割比率表(平成25年4月1日現在)から抜粋)

人口密度も豊島区に次いで1平方キロメートルあたり20,189人と、かなり密集している。中野四季の森公園自体は1.5ヘクタールだが、周辺建物のまわりも含めると、この一帯の空地は3ヘクタールぐらいあるとのことだ。広域避難場所にも指定されており、憩の場としての反面、中野の防災拠点としても今後重要な役割を担ってくると思う。

中野の街づくりのメインスポットともいえる四季の都市は、現在ほぼ8割がたの開発は終わっているという状況。まだ一部残っている区有地などの計画・開発は引き続き行われているものの、中野四季の森公園を中心に主要な建物建設は完了した形だ。

これからの再開発デザイン

「中野駅周辺まちづくりのご案内(日本語版)」から抜粋「中野駅周辺まちづくりのご案内(日本語版)」から抜粋

今回の街づくりは、警察大学校跡地の中野4丁目を中心に始まったが、今回を契機にそれ以外の場所でも行われるという。大きく変わろうとしているのが「中野駅」。既に完了している第一期整備では、改札の向きを変えるとともに北口駅前を歩行者広場に改修し、四季の都市への行き来がしやすいよう東西連絡路を設けた。

中野区役所に取材に行く際この連絡路を通ったがとても歩きやすく、以前まで中野サンプラザ方向に行くときには少々面倒に感じたものの、ここまで歩きやすさ、そして人の動線が変わるのかと感じた。

現在まだ第一段階が終わったところで、今後第二期、第三期の整備を予定しているという。第二期整備は、線路上空に西口改札と南北をつなぐ歩行者用通路を新設するほか、南側には駅前広場を新設する計画だ。また、現段階ではJRと協議中だというが、その上の駅ビルも検討しているという。
中野には丸井本社や中野ブロードウェイ、そして四季の都市にできた中野セントラルパークなどがあるが、最新の大型商業施設は他と比べると少ない印象がある。そのため、駅上にできたとしたら、確かに隣の駅は新宿だが外に出かける必要がなく、中野だけで事が済んでしまう環境になるだろう。

第二期が駅機能の向上に関することならば、第三期に関しては交通結節機能の向上だ。南北通路の北側には新北口駅前広場を新設し、現在の南口駅前広場は拡張整備を実施。現在、暫定であちこちにあるバス停を新北口駅前広場に一つにまとめ、一般車、タクシーについても広場内にそれぞれまとめる形だ。また、地下には自転車と自動車の駐車場を設ける。地上は車、地下は駐車場、そして駅上は歩行者という動線を確保する。一方、南口駅前広場は、公社住宅の建替えなど周辺の再開発とあわせて拡張し、バリアフリー動線も計画しているという。

中野駅以外にも、南西にある中野三丁目は文化的なにぎわいと暮らしの調和、中野二丁目は新たな業務・商業の集積と生活コミュニティの核、中野五丁目は安心して楽しめるにぎわい空間をテーマにそれぞれ街づくりを行っていく計画だ。

「駅を中心に東西南北を結ぶ動線ができることでお互い行きやすくなり、回遊性を高めることにもつながります。中野にはそれぞれ個性的なところがあるので、楽しんでいただきたいなと思います」

中野の課題点

H25の人口別のグラフ。25~29歳が一番多い。(出典:中野区統計書、年齢5歳階級別人口より)H25の人口別のグラフ。25~29歳が一番多い。(出典:中野区統計書、年齢5歳階級別人口より)

中野区の住まい環境について改めてみてみたい。

もともと学生の街ということもあり、中野区の住民層をみると20~30代の層が多く、少子高齢化が叫ばれる昨今の中では比較的若年層が多い。中野区における一世帯当たりの人員は、1.7人(豊島区も同数)。23区中、渋谷区、新宿区に次いで少なく、区部の平均1.95人を下回っており、シングル層が多くファミリータイプの物件が少ないというのが中野区の特徴だ。(※東京都「統計年鑑」の世帯人員から)

地価公示を見ると、国土交通省土地総合ライブラリーからの中野区における地価公示(住宅地)の平均変動率は、平成26年1月時点で中野駅周辺は2.3%上昇しているとのデータがある。東京都(23区)の変動率1.8%と比べても高い結果のことから、人気が伺える。

こうしたデータを見ても中野区は街として人気がある一方、幅広い年齢層に対応する住まいづくりの開発にはやや遅れている印象がある。街中や駅を見ても、バリアフリーやユニバーサルデザインなど、実際のところ十分に対応ができていない。こうした事に関しては中野駅の整備をはじめ、今後のまちづくりの中で対応していくとのことだった。

国際化への対応関しても、課題がある。大学のことについては先ほどふれたが、早稲田の国際コミュニティプラザや、明大の国際日本学部など、四季の都市は「国際的」な街のスポットになっているが、中野の街自体はそれに対応できていないところがある。

「四季の都市(まち)の大学には留学生が多く、外資系の企業もあります。最近ではアニメやマンガのグッズを買いに来る外国人観光客もよく目にしますし、今後も中野を訪れる外国人は増えていくと思います。国際化やグローバル化に向けたまちづくりが課題となっています。まずはできるところからと思い、英語バージョンのまちづくり案内を作ってみました。」

2020年のオリンピックイヤーに向けて、東京の湾岸エリアが元気のいい印象があったが、東京の西側もまだまだあつい。今後、中野の街はどうなっていくのか?最後に石井氏に中野の街のアピールポイントについて尋ねてみた。

「中野駅を中心に半径500m範囲の中に、色々な機能があるので、楽しくそして便利な街だと思います。今までのアンケートを見ても交通の利便性が上にあり人気がありましたが、今では街そのものの集積機能が高まり、変わらない街の魅力に新しい街の魅力が加わりました。街自体の利便性と多様性、これが中野のアピールポイントだと思います」

四季の都市については一旦開発が落ち着いたが、中野駅を中心とした開発はまだ始まったばかりだ。中野駅の今後に期待したい。

2014年 05月04日 10時22分