都市部ではメリットの大きい多層階建物

「Vieuno PRO」実例第1号の「株式会社はせがわ酒店」の外観。これまでの3階建てから5階建てにリニューアル。約21坪の敷地ながら、延床面積約80坪を実現し、店舗、倉庫、事務所のスペースを確保した「Vieuno PRO」実例第1号の「株式会社はせがわ酒店」の外観。これまでの3階建てから5階建てにリニューアル。約21坪の敷地ながら、延床面積約80坪を実現し、店舗、倉庫、事務所のスペースを確保した

パナホームではここ数年、多層階住宅の「Vieuno(ビューノ)」ブランドに力を入れているが、さらに柱・梁などを強化し、店舗や事務所など事業用建物に特化した「Vieuno PRO(ビューノ・プロ)」ブランドをこの春から展開している。2015年11月13日にその「Vieuno PRO」の初事例となる麻布十番「はせがわ酒店」が記者向けに公開された。

敷地に制限のある都市部では、多層階を選択できることはメリットが大きい。しかし、単純に多層階と言っても、上層階に事業用のフロアを持ってくることは様々なノウハウが必要になってくる。例えば、店舗などではショーケースや在庫品のバックヤードとして重量物に耐えられる強固な床を実現しなければならない。

パナホームでは、独自の技術により、こうした事業用建物の多層階を実現している。「Vieuno PRO」では、どのようにして狭小地を活かすことができるのか? 「はせがわ酒店」の事例をもとにご紹介しよう。

縦横15cmモジュール+足場の不要な工法で敷地を最大限に活用

「はせがわ酒店」と隣家の隙間はほとんどない。足場を組まずに建て替えができる「Vieuno PRO」の工法は、敷地にゆとりのない都市部では建て替え時の魅力の1つだろう「はせがわ酒店」と隣家の隙間はほとんどない。足場を組まずに建て替えができる「Vieuno PRO」の工法は、敷地にゆとりのない都市部では建て替え時の魅力の1つだろう

「はせがわ酒店」は、亀戸店や東京駅グランスタ店など都内に7店舗を展開し、全国各地の酒造を訪ね歩きながら吟味した銘柄を揃える酒店だ。一般顧客はもちろん、飲食業関連のプロからも一目を置かれる存在。

今回店舗を新たにしたのは、富裕層の顧客が多い「麻布十番店」。3階建ての店舗から「Vieuno PRO」を採用し、これまでなかった倉庫を含む5階建てに一新している。敷地面積は約21坪ながら、延床面積約80坪を確保し、1-2階を店舗、3階を倉庫、そして4-5階を事務所として利用している。

株式会社はせがわ酒店 代表取締役社長 長谷川浩一氏によると、「建て替えにあたり、多層階を構想して大手メーカーをあたったが、敷地を最大限に活かせる提案をしてくれたのがパナホームだった」という。

店舗の外観を見ていただけると分かるが、左右の建物との間隔がほとんどない状態。「はせがわ酒店」の場合は、隣接した建物オーナーの協力が得られ、足場を組むことができたが、都市部の限られた敷地では足場を組むことが難しいケースも多いという。

通常、外壁を完成させるにはすき間を埋めるためのシーリング作業を外から行わなければならないため、足場が必須となる。パナホームではこれらの作業を内部から行える独自工法を生み出し、足場を組まずに施工できるため、その分スペースを有効活用できるという仕組みだ。

さらに「Vieuno PRO」が工業化住宅最小の縦横15cmモジュールというのも、細かな建物寸法を調整できるため、変形敷地などでもスペースを最大限に有効活用できる。

1トン以上の冷蔵庫を支える強固な床

「はせがわ酒店」2Fの店舗。冷蔵庫が複数台置かれ、通常の住宅よりも強固な床が必要になる「はせがわ酒店」2Fの店舗。冷蔵庫が複数台置かれ、通常の住宅よりも強固な床が必要になる

また、同店舗では3階を倉庫として利用しているが、これも「Vieuno PRO」が建物用途に応じた厳しい荷重条件に耐えうる「デッキ+コンクリート床」を提供できるからだという。

3階にある貯蔵用の冷蔵庫だけで1トン以上という大きな負荷に耐えられるよう、同店舗では工場化住宅トップレベルの強度を持つ柱と梁を採用。その上で通常のALC床に比べ、1.6倍の積載荷重が可能になる「デッキ+コンクリート」床を採用している。

「これまでの店舗では倉庫を持てず、市川の倉庫からピストン輸送をしている状態でした。そのため、商品の欠品を出さないための苦労がありました。現在ではそうした問題もクリアになり、商品自体も以前に比べ1.5倍ほどの品揃えを確保しています」(長谷川氏)

もともと今回の建て替えは、東日本大震災時に商品が棚から落ち、耐震性に不安を持ったことがきっかけだったというが、耐震性はもちろんのこと「Vieuno PRO」では都市の交通振動を緩和する「TMD制振装置」(または「AMD制震装置」)を標準装備。建物の揺れと逆方向におもりを揺らすことで建物の揺れを日常生活に支障のないレベルに低減することも可能にしている。

視線は遮り、光・風を取り込む独自開発の「シェードスクリーン」

外観に至っては、デザイン性と機能を兼ね備えた「シェードスクリーン」が採用されている。これは、視線は遮るものの、光と風を通すように「Vieuno PRO」で店舗デザインとして開発されたものだ。外からみると当然ながら建物の内部はほとんど見えないにも関わらず、内部に入ってみると想像以上に明るい空間になっている。

「麻布十番という土地柄もあり、外観には気をつかっています。以前は、木の格子を使った店舗で雰囲気は良かったものの、清掃ができなくて不便さを感じていました。今回のシェードスクリーンは夜間にライトアップされた時のシルエットなども美しく、それでいながら可動式のため掃除も行き届くので満足しています」(長谷川氏)

さらに、パナホームでは、外観の景観を台無しにするエアコン用の冷媒管を屋内配管とする新システムを採用している。敷地を最大限に利用する場合、多層階の場合は屋上にエアコン室外機を設置することが多いが、その際、冷媒管を外壁に這わせる必要があり見栄えがよくない。同社では特許を取得した冷媒管引込みBOXにより屋内配管が可能になるため、すっきりとした外観が実現できる。オーナーの希望に沿ったきめ細やかな対応と言えるだろう。

外からの視線を遮るシェードスクリーンながら、室内は明るく、内側からは外の風景もよく見える(写真左上)。シェードスクリーンはデザイン上も外観のアクセントになっていて、特に夜景でライトアップされたシルエットが美しい(写真右)。(写真左下)が屋上に設置されたエアコン室外機と冷媒管引込みBOX(シルバーの小型BOX)だ外からの視線を遮るシェードスクリーンながら、室内は明るく、内側からは外の風景もよく見える(写真左上)。シェードスクリーンはデザイン上も外観のアクセントになっていて、特に夜景でライトアップされたシルエットが美しい(写真右)。(写真左下)が屋上に設置されたエアコン室外機と冷媒管引込みBOX(シルバーの小型BOX)だ

工期も短く、経営面でもメリットあり

「はせがわ酒店」見学会の様子。中央が代表取締役社長 長谷川浩一氏。このビルでは7階も可能であったというが、5階以上は法律上外階段を設置しなければならず、1フロアの広さを考慮して5階建てに決定したという。「狭い敷地を最大限に活用してもらって満足」と高い評価だった「はせがわ酒店」見学会の様子。中央が代表取締役社長 長谷川浩一氏。このビルでは7階も可能であったというが、5階以上は法律上外階段を設置しなければならず、1フロアの広さを考慮して5階建てに決定したという。「狭い敷地を最大限に活用してもらって満足」と高い評価だった

店舗などの建て替えの際には、経営面に直結する問題として工期の短さも重要になるが、「はせがわ酒店」の実例では、店舗内装(1カ月)を含む約6カ月でリニューアルオープンにこぎつけている。これは、社長の長谷川氏も「想定より2カ月は早い感覚」と評価をしていた。

「はせがわ酒店」では、今回あくまでも全スペースを自社で活用しているが、もちろん賃貸フロアとして提供することで家賃収入の想定した建て替えも考えられるだろう。4月にオープンした5階建ての多層階の営業拠点となる「ビューノプラザ浅草」は、実際に一般オーナーの建て替え物件を利用したものだという。1階をビューノプラザ、2階をモデルルーム、そして3階を賃貸住宅に。4・5階がオーナーの住居という構成だ。

「Vieuno PRO」も建築費の坪単価は約78万円(2015年4月24日 「Vieuno PROプレスリリース」より)からと、一般的な同社の住宅に比べても高めにはなるが、その分店舗や事務居からの賃貸収入が得られればメリットは多い。「Vieuno PRO」であれば、工業化住宅メーカーでは5階までという多層階を最大7階まで可能にし、さらに上層階に店舗や事務所を持ってこられるなど自由度も高い。

多層階で通常の住居スペースを増やし賃料収入を得るのであれば、これまでの「Vieuno」ブランド。店舗・事務所を考えての多層階なら「Vieuno PRO」。都市部で建て替えを考えている人にとっては、立地によって効率的な敷地利用を考える選択肢が増えたのではないだろうか。

2015年 12月22日 11時06分