「2040年には896の消滅可能性都市が」というニュース。それは地方だけのこと?

2014年5月、日本創生会議が「消滅可能性都市」という考え方を打ち出し、「2040年の消滅可能性都市は896の自治体に及ぶ」と発表した。
挙げられた自治体名には、東京都豊島区や大阪市中央区・浪速区などの都心部が含まれていることも、世の中に大きなインパクトを与えた。

この「消滅可能性都市」というのは、具体的に言うと『20~39歳の女性の数が、2010年から2040年にかけて5割以下に減る自治体』のこと。子どもを産む世代が半減することで、未来の人口が減り、行政の維持が難しくなるであろうという試算をもとに選定されている。

東京・大阪と並ぶ3大都市圏である愛知県の場合、「消滅可能性都市」は7自治体のみ。ところが愛知県の人口も2015年にピークを迎え、その後減少に転じると予測されているのだとか!

このまま少子高齢化が加速すれば、当然だが人口は減り続ける。実際、この『人口減少問題』は、私たちの暮らしにどんな影響をもたらすのだろうか? 正直なところ、まだあまりピンと来ないもの。

そこで今回、愛知県が主催する「地域づくりシンポジウム」に参加し、日本の人口の現在・過去・未来を取材してきた。

▲愛知大学名古屋校舎(名古屋市中村区)で11月に開催された『地域づくりシンポジウム』。「人口構造の変化・人口減少に対応した地域づくりを考える」をテーマに、講演やパネルディスカッションが行われた▲愛知大学名古屋校舎(名古屋市中村区)で11月に開催された『地域づくりシンポジウム』。「人口構造の変化・人口減少に対応した地域づくりを考える」をテーマに、講演やパネルディスカッションが行われた

「人口減少」。これは、私たちが今まで経験したことのない事態

今回のシンポジウムでは、国立社会保障・人口問題研究所・所長の森田朗さんによる“人口構造の展望”にまつわる基調講演が行われた。

下のグラフを見ていただきたい。江戸時代以前の人口は約1200万人で、今の東京都よりも少なかった。その後、明治時代から爆発的に増加し、2010年のピークを機に、同じような急カーブでの減少が予測されている。

「1年の出生数は、団塊世代が約270万人でしたが、今は約105万人です。合計特殊出生率として、1人の女性が2.07人の子どもを出産すれば人口が維持できると試算されていますが、今後は1.35人ぐらいで推移するであろうと研究所では推測しています」

このような少子化により、2010年から2040年にかけての見通しでは、人口が増える都道府県は1つもなし。秋田県は、人口が2/3になる可能性が指摘されている。
一方、大都市圏の人口減少はゆるやかだが、高齢化がいち早く進むため、高齢者向けの施設やサービスが不足するといった課題などが迫ってくる。

「人口が減るというのは、私たちが初めて直面する事態です。『これまで何とかなってきたから大丈夫』という考えは限界に近く、人口面・財政面で大きな転機を迎えています。
人口減少は、出生率を上げるのが大きな解決策の一つです。例えば東京都は、住宅費や教育費などの負担が多く、出生率が全国最下位となっています。結婚や出産への障害を減らす環境づくりを進めること、そして大都市への一極集中を防ぐために、地域では東京や大都市にはない魅力のあるまちづくりをすることが、今後の課題だと考えています」

▲内閣府HPより(国土交通省「国土の長期展望」2011を元に作成、データ出展は総務省「国勢調査」、国土庁「日本列島における人口分布の長期的時系列分析、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)▲内閣府HPより(国土交通省「国土の長期展望」2011を元に作成、データ出展は総務省「国勢調査」、国土庁「日本列島における人口分布の長期的時系列分析、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)

「まちが一つの大家族」。住み続けたくなる理由は『ご近所づきあい』にあり!?

試行錯誤しながらつくる「男のレシピ研究会」や、世代を超えて野菜づくりを楽しむ「ふれあい農園」など、住民主導のイベントが多数(高浜南部まちづくり協議会)試行錯誤しながらつくる「男のレシピ研究会」や、世代を超えて野菜づくりを楽しむ「ふれあい農園」など、住民主導のイベントが多数(高浜南部まちづくり協議会)

人口減少は、とくに小さな自治体にとって避けられない問題となっている。
今回のシンポジウムでは、愛知県の中で「消滅可能性都市」に選ばれつつも、新たな一手を打ち出している「新城市」と、市町村合併がなされなかったことを機に、小学校区単位のアットホームなまちづくりを進める「高浜市」の実例が紹介された。

■新城市■ 予算や交付金の使い道は住民が決める「地域自治区制度」
■高浜市■ 「地方自治」の成功例として、全国から視察が多数

両市に共通しているのは、自治体が地域ごとに「権限と財源」を渡して自治を任せつつも、任せっきりではなく「一緒に取り組んでいる」ということ。
新城市では、各エリアに事務所を設けて市職員が常駐。住民から相談が寄せられたら役所の司令塔となり、担当課の垣根を越えて解決に努めている。また、高浜市では、さまざまな部署・世代のスタッフがチームとなり、特派員として各エリアの活動をサポート。どちらも役所では珍しい「ヨコ割体制」により、住民との距離がぐっと近づいている。

ただし…このような住民自治は年配の方が中心で、若い世代には敬遠されがちなのでは?
「若い世代の関心を高めるために有効なのは、子どもの時から地域の活動に触れること。
小学校の授業で、安全パトロール、清掃活動、各種イベントなどの地域での取り組みを紹介し、実際、子どもたちが地域活動に参加することで、自然に『まちが好き』『将来、自分の子どもにも同じ経験をさせたい』という啓蒙につながればと思っています」(高浜市企画部 木村さん)

昔は当たり前だった温もりあふれるご近所づきあいに、魅力創出のヒントが隠れていそうだ。

年金だけじゃない。「人口減少」がもたらす住環境の影響とは?

▲愛知県地域政策課では、2014年度中に「人口構造の変化・人口減少の対応」についての調査研究レポートをまとめ、県の状況を分かりやすく伝える予定(画像はイメージ)▲愛知県地域政策課では、2014年度中に「人口構造の変化・人口減少の対応」についての調査研究レポートをまとめ、県の状況を分かりやすく伝える予定(画像はイメージ)

愛知県地域政策課のコミュニティサイトでは、街づくりテーマに「人口減少問題」を掲げ、広く意見を募集している。今回のシンポジウムも認知活動の一環だ。

「愛知県はまだ人口流入があり、他県に比べれば元気な印象が強いと思いますが、近い将来、他県を上回る急速な高齢化が想定されています。まだ余裕があるうちに、人口減少問題について認識を持っていただければと思っています」

さて、人口減少による直接的な影響として一番気になるのは、「年金や介護などの福祉サービスがきちんと受けられるかどうか」なのだが、住環境にも影響はあるのだろうか?(人口密度が下がりかえって住みやすくなるかも、というのは甘い考えだろうか…?)

「首都圏でも空き家問題をよく耳にするようになりました。空き家が増えて老朽化が進めば、見た目はもちろん、防犯や防災面の悪化にもつながります。高齢者世帯も急速に増加していることから、愛知県でも人口構造の変化と人口減少に対応するまちづくりを真剣に考えていく必要があると思います」

人口減少という、人類の壮大な課題。個人で立ち向かうのがなかなか難しいが、まずは一人一人が興味を持つことが一つの突破口になるかもしれない。

2014年 12月02日 11時43分