大阪樟蔭女子大学×正木商事のコラボで学生向け物件をリノベーション

手作りのファブリックパネルを囲んで。左から:正木商事の畑山士郎さん、阿部有紀子さんと大阪樟蔭女子大学の学生さん手作りのファブリックパネルを囲んで。左から:正木商事の畑山士郎さん、阿部有紀子さんと大阪樟蔭女子大学の学生さん

大学のキャンパスを飛び出して現場へ-。

産学連携の取り組みが注目されるなか、住宅業界と大学のプロジェクトが様々なところで進んでいる。
これまでにも京都女子大学×洛西NT団地8住戸の改修工事や、駒沢女子大学×株式会社東都が管理する単身用物件のリデザインなどユーザーの視点に立った「使えるリノベーション」が話題となった。

デザインを専攻する学生が、実際の市場に流通している住まいを手掛けることは実践的な力が身につくことにつながる。また、学生のアイディアを取り入れる住宅業界側は、今の若者のニーズやアイディアに触れられる部分で、双方メリットは大きい。

今回は、大阪樟蔭女子大学インテリアデザイン学科と賃貸不動産会社の正木商事株式会社(本社:奈良県奈良市)との連携で奈良初となった学生単身向けリノベーション物件の取り組みに迫りたい。

「今、住みたい部屋」をコンセプトに各チームがプレゼン!

大阪樟蔭女子大学インテリアデザイン学科 左:東万莉子さん 中央:高松裕美子さん 右:池島千南美さんがプロジェクト『+color』を発表!大阪樟蔭女子大学インテリアデザイン学科 左:東万莉子さん 中央:高松裕美子さん 右:池島千南美さんがプロジェクト『+color』を発表!

大阪樟蔭女子大学と正木商事のコラボレーションのきっかけは何だったんだろうか?

きっかけは、同大学デザイン学科の卒業生である阿部有紀子さんがインターンシップにより正木商事で職業体験したことから始まる。その後、正木商事に入社した阿部さんと同社の専務取締役・畑山士郎さんが、学生向けの物件を持っているオーナーに「学生のアイディアでリノベーションした物件は?」と働きかけ、母校の大学への提案で実を結んだ。

今回のリノベーションは、女子大生が内装のプランニングから実際の施工の一部にまで携わり、学生目線で「自分たちが住みたい部屋」を追求。このプロジェクトに関わりたいと手を挙げた10名の学生がくじ引きで4チームに分かれ、『今、住みたい部屋』をコンセプトにそれぞれの部屋を発表した。
投票と審査で選ばれたのが、プロジェクト名『+color』の東万莉子さん、高松裕美子、池島千南美さんのチームだ。学び舎におじゃますると、提案内容をまとめたパワーポイントでプレゼンテーションの様子を再現してくれた。

テーマは、青い壁で爽やかさを感じる“北欧カジュアルスタイル”で、コンセプトは「爽やかさ」「開放感」「落ち着き」。なぜそのテーマを選んだのかを聞くと、エコロジーやスローライフが注目されはじめ、北欧スタイルはデザインに過度な装飾がなく日本人の感覚とマッチしていること、北欧家具もナチュラル素材で長年使うほどに良さがでてくることなどを理由に挙げた。

実際の物件を見学してみて、「玄関を入ってすぐに、想像していたよりも狭いなと感じた」「思ったより古く、バルコニーに鳩がいたりして驚いた(笑)」といった感想をもったという。
玄関すぐの戸棚には、正方形の鏡を縦にブロックで貼り付け、姿見になるように扉の片面にセルフビルドで付け、開放感を演出。広さが限られるワンルームを有効に使うために、ラダーラックの壁面収納をつけたり、照明の方向を変えられる4つのスポットライトがついた照明をポイントでつけた。バルコニーには目隠しの目的と鳩よけのために、デザインを邪魔しない目立ちにくい色のネットを。アクセントとなる壁は、入居者がどう家具を設置するのかをイメージし、一部の面にポイントとなる色を塗ることに3人で決めたという。壁に塗る色は奥行きがあり、広く見せる視覚効果のある青を何十種類もある色目のなかから選び、天井やその他の壁面は白で統一した。

「プロジェクト名でもある、color(カラー)は色だけでなく個性を意味しています。3人の個性をプラスということから名付けました」と、高松さんが発表。『+color(プラスカラー)』のロゴは、洗面台の鏡に小さく記されている。

ローコストで一新!知恵を絞ってリノベーション

机上の学びと現場体験とでは、どれほどの違いがあるのだろうか?
同大学の学芸部インテリアデザイン学科 居住空間学研究室の教授 辻壽一先生にお話をうかがった。
「リノベーションは築年数がずいぶんと経っているものを手がけることが多く、いかにきれいにリノベーションしても家賃を大きく高くとれないのが一般的です。リノベーションする場合、リノベーションにかける投資金額と家賃収入で得られる回収金額のバランスを考え、コスト調整することも大事なことです」と辻先生。

リノベ費用は総額30万円。設備の取り換えなどを除くと、デザインなどで学生たちがかけられた金額は10~15万円ほどだったという。「本当は、北欧というテーマもあり、無垢の床材を貼りたかったんです。でも、思っていた以上に床材のコストが高くつくことがわかり、オーガニックの素材感に近くみえるようなフローリングを選んだ」という工夫もあった。

インテリアデザイン学科教授の豊嶋幸生先生も、「机上の想像で、コストも時間もかかるようなプランを出しても、実際の現場ではそんなプランは生きていかない。低予算、短納期のなかで試行錯誤することに今回のプロジェクトのひとつの意味があった。学生たちは、条件や縛りがある中でよくここまでまとめられたと思う」と感想を口にした。

『+color(プラスカラー)』チーム、学生のプレゼンテーション資料から。</br>
ポイントとなる北欧風のファブリックパネルは、学生の手作り『+color(プラスカラー)』チーム、学生のプレゼンテーション資料から。
ポイントとなる北欧風のファブリックパネルは、学生の手作り

想像から実践へ。産学連携で夢が広がる

企画からコスト管理、不動産会社へのプレゼンテーション、現場での施工体験と一連の仕事の流れを経験した『+color』の三人。4年もの間、空室になっていた学生向けの単身物件が女子大生の感性で生まれ変わった。近くには奈良女子大学があり、ターゲットのニーズともぴったりマッチする。

「これまでの授業でこなしている課題とは違って、納期やコスト面での工夫や学びがあり、実践でしか得られないことが大きかったのでは」と辻先生は高く評価する。

それぞれ、「住宅に関わる仕事に就きたい」「グラフィックデザインが好き。生活に役立つものを何か生み出したい」「壁塗りも釘打ちも楽しかった!今回のプロジェクトを通して、ものづくりが好きだということを改めて感じた。将来は舞台芸術に関わる仕事をしたい」と夢を語る。
学生たちの「多くの支えがあってとても貴重な体験をさせてもらった」という姿は、とてもイキイキして楽しそうだ。

インテリアデザイン学科OBである阿部有紀子さんは、卒業と同時に正木商事に就職。現在、JR奈良駅前店のルームアドバイザーとして当リノベ物件「メゾンアンテルナ奈良」をはじめとする賃貸物件を紹介し、住まいと人の縁をつないでいる。

今回の産学連携は、低予算でリノベーションができ、デザインを手がけたのは大学生。そのぶん、家賃も改装していないところと大差がないという大きな利点がある。新しい才能を育てる場になっただけでなく、オーナーにとっても入居者にとっても喜ばしいことに違いない。

取材協力
大阪樟蔭女子大学 インテリアデザイン学科 
賃貸のマサキ:http://www.chinmasa.com/

大阪樟蔭女子大学×正木商事のコラボ物件が誕生!大阪樟蔭女子大学×正木商事のコラボ物件が誕生!

2014年 11月05日 11時04分