「学生のしごと」と侮れない、クオリティの高さ

賃貸物件の空間プロデュースを女子大生が提案するという、株式会社東都と駒沢女子大学の産学連携プロジェクト。狭さや築年数がデメリットとなっていた単身者用物件2戸のプランを手掛けることが『コマジョリノベ』最初の試みだ。

空室率が高くなりがちな物件を、女子大生にも人気の部屋に蘇らせるべく空間プロデュースに取り組んだ駒沢女子大学 住空間デザイン学科(現「空間造形学科」を4月より名称変更)の学生たち。後編となる今回は、講評会を勝ち抜き、自身のデザイン案が実際に採用された女子大生2名にインタビューをさせてもらった。※プロジェクトの概要を紹介した前編はコチラから。

設備の変更などは行えない環境でありながら、ありがちな1K、1Roomの空間に確固としたテーマを表現しているのはお見事。しかも、実用性をきちんと押さえている点をみても、決して「学生のしごと」と侮ることはできない。

それぞれのコンセプトとアイデアの数々を、完成した部屋の様子と合わせ紹介していこう。

株式会社東都の横山支社長(左)、駒沢女子大学の森山さん(左から2番目)、</br>同学 佐藤准教授(右から2番目)、同学 立川さん(右)。株式会社東都の横山支社長(左)、駒沢女子大学の森山さん(左から2番目)、
同学 佐藤准教授(右から2番目)、同学 立川さん(右)。

35作品中講評会を勝ち抜いた優秀作品!左右非対称に壁紙を変えるなど、ありそうでないアイデアが満載

全体的に女性らしい柔らかな雰囲気。造作のキャビネットは床から浮かせてあり、その下から間接照明の柔らかな光のリズムが作られる。全体的に女性らしい柔らかな雰囲気。造作のキャビネットは床から浮かせてあり、その下から間接照明の柔らかな光のリズムが作られる。

「物件A」の18.42m2の1Kに採用されたのは、駒沢女子大学 住空間デザイン学科 2年の森山加奈子さんの作品「Comfortable(カンファタブル)」だ。そのコンセプトどおり、女子学生が“落ち着ける”柔らかな空間として部屋全体が演出されている。

まず、目に飛び込んでくるのは、左右非対称に色を変えたユニークな壁紙の使い方だ。
「壁紙の大部分は若い女性をイメージしたピンクの壁紙を使っているのですが、アクセントとしてベッド横の壁などには、ペパーミントの壁紙を使っています。1Kの狭い空間ですが、このように壁紙を空間によって使い分けることで、寝るときとそのほかの食事をしたりといった生活シーンをうまく分けられるのが狙いです」(森山さん)。

また、造作の壁面収納にも小技が利いている。キャビネットを床にくっつけてしまうのではなく、床から少し浮かせて設置し、空いた隙間に照明を入れている。「女性らしい明るい印象を作ると同時に、間接照明による光のリズムを考慮した結果」だという。

そのほか、細部まで気を配っているのも女性ならでは。ちょっとしたことだがカーテンレールにもこだわり、レールが見えないよう目隠しがされているほか、テーブルやベッドも圧迫感を出さないように高さの低いものが選ばれている。「無機質な素材が部屋の雰囲気を壊さないように」という思いと「狭い空間を少しでも広く見せたい」という工夫の表れだ。

株式会社東都 神奈川支社 支社長 横山英一氏は、細部まで気配りの利いたこの作品のデザイン性と実用性の高さを次のように評価する。
「壁紙を1面のみ変えることはよく行っていることですが、左右非対称に色を変えることは、私たち企業ではなかなか出てこないアイデア。しかもペパーミントを選ぶというのは私たちの発想にはありません。今回は実際に弊社で扱っている壁紙見本の中から製品№まで指定してもらっているのですが、一見喧嘩しそうなピンクとペパーミントの組み合わせも非常にマッチしていました。制限があった環境でしたが、アイデア次第でここまでデザイン性と実用性を高めてくれたことは驚きました」。

狭さに負けず、部屋の中に「Cafe空間」を演出。圧迫感を出さない収納スペース作りにも果敢に挑戦

狭いながらも収納を確保。段違いの壁面棚にもグリーンをあしらい、カフェの雰囲気を醸し出す。狭いながらも収納を確保。段違いの壁面棚にもグリーンをあしらい、カフェの雰囲気を醸し出す。

「物件B」に採用されたのは、同じく駒沢女子大学 住空間デザイン学科 2年の立川静香さんの作品「Cafe Girl」だ。「物件A」よりもさらに狭く16.02m2/1Roomといったデザインしにくい空間に、見事に女性が好きなCafeスペースを盛り込んでいるのが特長だ。

「女子大生の一人暮らしの場合、友達を家に呼ぶイメージがありました。友達を呼ぶなら招待しやすいように“Cafe”の空間が家の中に作れないか? というのがこの作品のコンセプトです。ただ、実際に物件を見てみると本当に狭かったです。Cafeといってももちろん生活スペースも作らなければならないので、どうやったら両立できるか本当に悩みました」(立川さん)。

そんな立川さんの工夫の末、この部屋には様々なアイデアが盛り込まれている。カフェ空間とベッドスペースをキャビネットでうまく切り分けているが、こちらはローキャビネットを採用。少しでも開放感を出せるようにと造作したキャビネットの後ろには背をつけていない。

一方で収納スペースも確保したいため、キャビネットの上部には天井作り付けの収納BOXを造作した。キャビネットを天井までつなげるのではなく、一旦切り離しているのは狭い空間に圧迫感を与えないための工夫だ。

狭さを克服するアイデアはこれだけではない。カフェスペースのテーブルも折りたたみ式。使わない時には壁面にピッタリとくっつけることができるため、空間の有効利用を可能にしている。

また壁面の棚もデザイン性と実用性を見事に兼ね備えている。
「収納が少ないので、キャビネットなどは最低限しかおけません。そのため壁面も無駄にしないように棚をつけています。カフェの雰囲気と両立させられるようグリーンをポイントにあしらい、さらに一直線ではなく段違いにしました。それをベッドスペースまでつなげることで区切られた空間に統一感を持たせています」(立川さん)。

「寝食のスペースをここまで分離しデザイン性を持たせた上で、収納スペースがないという物件のデメリットを解消している手腕は見事」と東都側でも高く評価をしている。

今後は「団地リノベ」などでもコラボプロジェクトを!?

2月に工事を終えた両物件。これから入居者を東都経由で募集する。これならば希望者もすぐに現れるだろう。物件のオーナーも今回のプロジェクトには期待度が高いという。

「築年数を経た物件でしたから家賃を下げることも検討されていました。しかし、今回のリノベーションで逆に家賃を上げることも検討できるようになりました。プロジェクトのコストは若干かかりましたが、全体のコスト感を考えればメリットの多いプランだったので、オーナーさんも期待されています」(横山氏)。

横山氏によれば、今回のコラボを皮切りに今後は「もう少し広めの部屋」、団地をまるまる一棟修繕する「団地リノベ」といった展開していきたいとしている。もちろんこうした提案に大学側も積極的だ。駒沢女子大学 人文学部 住空間デザイン学科 佐藤 勉 准教授は今後の展開を次のように話す。

「今回のリノベーションもただデザインをして終わりという形にはしたくありません。入居者にご協力いただいて住み心地を聞かせていただきたいと思っています。その声をまた次の課題時にフィードバックしていく。実習と社会学習のような形を繰り返し、学生たちのスキルを上げ、実際の空間プロデュースに生かしていきたいですね」。

学生の才能開花と個性豊かな賃貸ライフのために

ちなみに、プロジェクト物件はどちらも神奈川県川崎市にある。今回はモデルルームのようにベッドやソファーなども配置しているため、そのままの部屋を借りるにはまた相談が必要になるが、通常であればお家賃は4~5万円台になる予定だ。女子大生にとってはデザイン性に満足がいき、しかもお手頃家賃という嬉しい物件だろう。

築年数が経った単身者用の賃貸物件は、どうしても没個性のつまらない内装になりがちだ。しかし、こうしたテーマが感じられる部屋づくりができるとなれば、入居者にとってもオーナーにとっても喜ばしい限りだ。

しかもデザインを手掛けるのは大学生。新しい才能を育てる一面もあるとなれば、こうした産学連携プロジェクトがさらに増えてくることを願いたい。

2014年 02月04日 09時47分