30年以内に70%の確率で発生する大地震への備えを

「南関東における今後30年以内のマグニチュード7クラスの大地震発生率は70%」。地震調査研究推進本部ではこう予測している。また、内閣府の中央防災会議によると、仮に都心南部直下地震(マグニチュード7.3)が発生すれば、その被害想定は、全壊・焼失家屋が最大61万棟、死者が約2万3,000人となっている。

賃貸マンションのオーナーは、このようなデータを知ると自身の建物の耐震性が気になるのではないだろうか。社団法人 高層住宅管理業協会の資料によると、阪神・淡路大震災では1981年5月31日以前に建築確認を受けた、いわゆる旧耐震基準マンションの被災状況が特に大きかった。たとえば新耐震基準(1982年~)のマンションのなかで大破(建て替えが必要な被害)したものの割合はわずか0.32%だったが、旧耐震基準(~1981年)のマンションでは10.79%もあった。このことからも旧耐震基準で建てられたマンションの耐震改修は急務といえるだろう。

とはいえ、賃貸マンションオーナーの中には、「どこから手をつければいいのか分からない」「誰に相談すればいいのか分からない」という人も多いはずだ。そこでマンション耐震改修の手順と相談窓口、助成制度などを紹介しよう。

阪神・淡路大震災のマンション被害においては、1981年以前築の建物の被害が、それ以降築よりも圧倒的に多かった</br>(社団法人 高層住宅管理業協会の資料をもとに作成)阪神・淡路大震災のマンション被害においては、1981年以前築の建物の被害が、それ以降築よりも圧倒的に多かった
(社団法人 高層住宅管理業協会の資料をもとに作成)

賃貸マンション耐震改修の流れ

まず、耐震性が心配されるマンションの条件を確認しておこう。建築基準法の耐震基準は1981年に改正され、同年5月31日以前に建築確認を受けた建物は、耐震性が十分でない可能性がある。その中でも特に形状が不整形だったり、1階部分が駐車場(ピロティ形式)など構造上のバランスが悪い建物は要注意だ。

もし、耐震性に不安があるのならば、耐震診断そして耐震改修工事を行うべきだろう。その一般的な流れは以下のとおりだ。

1.地元自治体へ相談
各区市町村などの自治体には、耐震診断や改修工事に関する相談窓口があるはずだ。まずはそこへ相談するのがスタートとなる。ほかにも複数の関係団体が相談窓口を設けているので、そこへ相談してもいい。
<関係団体の相談窓口>
http://www.mansion-tokyo.jp/taishinka/02dantai-madoguchi.html

2.耐震アドバイザーの派遣
自治体へ相談すると多くの場合、耐震アドバイザーを紹介される。耐震アドバイザーとは、耐震改修に関する専門知識を持つ第三者で、改修の進め方のアドバイスをしたり、情報提供などを行うといった相談にのってくれる人だ。場合によっては耐震診断を行うこともあり得る。このサービスは有料となるが、自治体によっては後述する助成制度がある。

3.耐震簡易診断
耐震診断には、簡易診断と詳細診断の2段階がある。前者では現地での目視調査、図面確認などを行い、詳細診断の必要性の有無を判断する。

4.耐震詳細診断
簡易診断で耐震性の不足が疑われれば詳細診断を受けることになる。詳細診断には第1次、第2次、第3次の3種類の診断方法があり、数が大きくなるほどより精密な計算を要する。この診断はすべて行うものではなく、建物の状況に応じていずれかを選択する。なお、耐震診断の費用の目安は500円/m2~2,000円/m2といったところだ。

5.診断結果を確認
耐震性能は診断によって数値化される。これはIs値(構造耐震指標)というもので、値が大きいほど耐震性は高くなる。耐震改修工事をすべきか否かという判断基準はIs値0.6未満だ。

Is値0.3未満
地震の振動および衝撃に対して倒壊または崩壊する危険性が高い。

Is値0.3以上0.6未満
地震の振動および衝撃に対して倒壊または崩壊する危険性がある。

Is値0.6以上
地震の振動および衝撃に対して倒壊または崩壊する危険性が低い。

6.耐震改修工事を計画
Is値が0.6未満であれば耐震改修工事の検討をお勧めする。耐震改修の方法は下の図のように複数ある。どれを選択するのかは専門家と相談しなければ判断できないはずだ。アドバイザーなどの助言を受けて、工事会社へ見積もりを依頼し、費用対効果の高い工事を選択すればいいだろう。工事費用は、建物の状態や方法、規模などによって大きく異なる。目安としては15,000円/m2~50,000/m2円程度だ。

7.工事開始
見積書の内容に納得できれば工事を依頼して開始となる。

耐震改修の方法は複数ある。専門家とよく相談し、費用対効果の高いものを選びたい</br>(出典:『賃貸マンション耐震化のすすめ』(東京都都市整備局))耐震改修の方法は複数ある。専門家とよく相談し、費用対効果の高いものを選びたい
(出典:『賃貸マンション耐震化のすすめ』(東京都都市整備局))

耐震改修に対する各種助成制度

前述のように自治体によっては、マンションの耐震改修工事に対する各種助成制度がある。たとえば東京都では、1981年以前の旧耐震基準で建てられたマンションの耐震改修に関する助成制度を行う区市町村に対して補助を実施している。そのおもな内容は次のようになっている。

「対象建築物」
・耐火建築物または準耐火建築物のマンション
・地上3階建て以上
・1981年5月31日以前に建築確認を受けている

「補助の対象」
・マンションの耐震アドバイザーの派遣費用の一部
・マンションの耐震診断費用の一部
(現地調査、設計図書検討、構造躯体診断、建築設備診断、耐震性能評価、耐震診断報告作成等)
・マンションの耐震改修費用の一部
(耐震改修計画作成、耐震改修設計、耐震改修工事)

なお、分譲マンションのみを対象とし、賃貸マンションは対象としていない自治体もあるので、くわしくは各窓口へ問い合わせてほしい。

固定資産税・都市計画税の減免も

自治体によっては、耐震改修に対する助成だけでなく税金の減免も行っている。東京都の場合は、23区内の耐震改修工事を行った住宅(マンション含む)を対象に、固定資産税と都市計画税の減免を行っている。こちらは分譲、賃貸を問わない。おもな内容は次のようになっている。

「対象」
1981年1月1日以前からある家屋で、平成20年1月2日から平成32年3月31日までの間に耐震化のための改修を行った住宅。

「減免される期間・税額」
改修完了日の翌年度(1月1日完了の場合はその年度)1年度分(※)について住宅1戸あたり120m2の床面積相当分まで全額減免。
※住宅が通行障害既存耐震不適格建築物に該当する場合は2年度分。

手続きなどくわしくは東京都主税局のサイトなどで確認してほしい。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/info/taishin.html

できるだけ多くの利益を生み出したい賃貸マンション経営にとって、耐震改修工事は手痛い出費かもしれない。しかし、前述のような助成制度もある。そして何より入居者の命を守ることになる。また、改修済みという事実は空室対策にもつながるだろう。特に1981年以前築のオーナーは、まずは地元の自治体に相談することからはじめてはいかがだろうか。

■参考
賃貸マンションの耐震化のすすめ(東京都都市整備局)
http://www.mansion-tokyo.jp/taishinka/04chintai.html

関東に限らず日本各地における大地震の発生確率は高い。財産、そして何より人命を守るために耐震改修工事をぜひ検討したい関東に限らず日本各地における大地震の発生確率は高い。財産、そして何より人命を守るために耐震改修工事をぜひ検討したい

2018年 12月12日 11時05分