2019年4月、東京大学空間情報科学研究センター内に不動産情報科学研究部門が誕生

2019年4月、東京大学空間情報科学研究センター内に不動産情報科学研究部門が誕生した(※写真はイメージ PIXTA提供)2019年4月、東京大学空間情報科学研究センター内に不動産情報科学研究部門が誕生した(※写真はイメージ PIXTA提供)

2019年4月に、東京大学空間情報科学研究センター内に、不動産情報科学研究部門が誕生した。
これから、LIFULL HOME'S PRESSにおいて、東大不動産情報科学研究室として、さまざまな研究成果と情報をお届けしたい。

まずは「不動産」×「情報」×「研究」によって何が生み出されるのかについて。

ここで、「不動産」とは何かということを考えてみよう。
不動産とは、私たち家計にとっては、必ず消費をしなければならない。どのような家計でも大なり小なりの「家」に住んでいる。これを「住宅サービスを消費する」という。

家計は、住宅サービスを消費することによって、「効用」=「幸せ」を享受できるわけだ。企業は、不動産は生産要素として利用する。企業は、人的資本・不動産などの資本や土地を投入して、財やサービスを生産するわけだ。一国の生活水準は、生産性によって決まると考えられている。生産性の高い国は、平均寿命も長く、識字率も高く、乳児の死亡率も低くなる。
一方で、生産性の低い貧しい国では平均寿命も短く、子どもの労働参加率が高いために識字率も低く、そして、乳児の死亡率も高くなっている。

以上のことからも理解できるように、不動産は、私たちの幸せに、直接・間接に大きく影響を与えていることがわかる。「家計と不動産」、「企業と不動産」との間にミスマッチがあれば、家計の効用が低下し、企業の生産性は低下してしまうわけだ。

「不動産」と「情報」と「研究」

「不動産」と「情報」と「研究」で、私たちの幸福に深く・広く関わる不動産の「真理」を明らかにしていきたい「不動産」と「情報」と「研究」で、私たちの幸福に深く・広く関わる不動産の「真理」を明らかにしていきたい

続いて、情報について考えてみよう。
「情報」とは、大辞林によると、「事物・出来事などの内容・様子」と定義されているが、Wikipediaをみると、「informationem(=心・精神に形を与える)」と出ている。
さらに、「情報という概念は、生命、心、知識、意味、パターン、知覚、知識表現、教育、通信、コミュニケーション、制御、等々の概念と密接に関連している」と書かれている。

情報とは、多くの方が漠然と意識している定義を大きく超えるものであり、心や精神、そして生命や知識に至るまで、私たちの生き方に深く、そして広範囲にかかわるものとなる。
以上のように整理してみると、「不動産」×「情報」は、私たちの生命や幸福に強く影響を与えることを理解していただけるものと思う。

ここに研究が加わる。「研究」とは、「真理」を明らかにしていく行為である。「不動産情報科学研究」部門は、私たちの幸福に深く・広く関わる不動産とそれに起因する私たちの心や精神・生命に関わる真理を追究するための部門ということになる。

東大不動産情報科学研究部門の研究活動とは

ここで、私たちの研究部門の研究活動を紹介しよう。
今、日本は、人口減少と高齢化に直面する中で、都市または不動産に目を向けると、私たちの生活、幸福を脅かす多くの課題が出てきている。具体的には、地方都市のみならず、大都市部においても空地・空き家が増加し、その不動産の所有者すら特定ができないといった問題が指摘されている。

1980年代後半にハーバード大学のマンキューら(1989)が指摘したように、人口減少や高齢化といった社会構造の変化が、不動産価格を暴落させるという仮説(Asset meltdown hypothesis)は多くの地域で現実味を帯びるようになってきたと言ってもいい。
しかし、不動産市場を取り巻く課題が露呈してきているものの、わが国においては、米国・英国をはじめとする欧州主要国のみならず、隣国である中国などと比較してもマイクロデータに基づいた説得的な実証分析は極めて少ない状況にある。

その最も大きな理由としては、取引の状況・取引価格・不動産(建物)利用に関するマイクロデータの整備が著しく遅れるとともに、研究利用が限定されてきたためであると考える。

本研究室では、産学が連携して不動産に関わる取引・取引価格・不動産利用に関わるマイクロデータとマイクロジオデータ・モバイルデータ・その他の民間企業が中心となって構築されてきたデータを網羅的に整備し、不動産市場・都市の実態をリアルタイムに把握できる統計指標の開発を進めることで、わが国の不動産市場を世界最高水準の透明度をもった市場へと進化させることを目標としている。

さらに国際的な共同研究体制を整えることで、国際競争力を持った研究を推進するとともに、各種研究会を通じて、次世代の不動産研究を担う研究者・専門家を育成していく。

研究室では、下記のような複数の研究会を主宰するとともに、今まで入手が困難であったビッグデータを発掘・入手し、研究を進めていく。
https://shmzlab.jp/main/study-group/

LIFULL HOME'S PRESSでは、その研究成果を随時発信していきたい。

日本においては、米国・英国をはじめとする欧州主要国のみならず、隣国である中国などと比較してもマイクロデータに基づいた説得的な実証分析は、不動産の分野で極めて少ない状況にある日本においては、米国・英国をはじめとする欧州主要国のみならず、隣国である中国などと比較してもマイクロデータに基づいた説得的な実証分析は、不動産の分野で極めて少ない状況にある

2020年 01月20日 11時05分