不動産業界の抱える問題解消のため、共有プラットフォームDBの構築を目指す

奥から全保連株式会社 中村大輔氏、株式会社ゼンリン 高木和之氏、株式会社ネットプロテクションズ 高木大輔氏、株式会社LIFULL松坂維大氏、株式会社NTTデータ先端技術 セウェカリ・シタル氏奥から全保連株式会社 中村大輔氏、株式会社ゼンリン 高木和之氏、株式会社ネットプロテクションズ 高木大輔氏、株式会社LIFULL松坂維大氏、株式会社NTTデータ先端技術 セウェカリ・シタル氏

物件探しをしているとき、良いと思った物件について問合せると、すでに入居が決まっており、別の物件を紹介されたという経験はないだろうか。あるいは、不動産ポータルサイトなどに同じ物件の情報がいくつも表示され、どの情報が正しいのかよくわからないということも少なくない。不動産業界においては、1つの不動産に関する情報が、仲介会社や管理会社、インフラ会社などにバラバラに保有されているため、こうした問題が起こりやすい状況にある。

2018年7月30日、このような不動産業界が抱える問題を解消すべく、ブロックチェーン技術を活用して構築した共有プラットフォームの商用化に向けた共同検討を行っている6社により、「不動産情報コンソーシアム(仮称)」の説明会が開かれた。登壇者は、全保連株式会社 中村大輔氏、株式会社ゼンリン 高木和之氏、株式会社ネットプロテクションズ 高木大輔氏、株式会社LIFULL松坂維大氏、株式会社NTTデータ先端技術 セウェカリ・シタル氏、そしてモデレーターを務めたNTTデータ経営研究所 桜井駿氏だ。

現状、不動産業界の抱える大きな課題として、先述のように情報がバラバラに保有されていることが挙げられる。そのうえ、各社が持っている情報はそれぞれ異なっているため、データの正確性が担保されない、業務が非効率になるなどの問題につながり、一般ユーザーばかりか不動産業界のプレーヤー各社にとっても不利益となっている。

こうした問題の解消を目指し、株式会社LIFULLが2017年にブロックチェーンを活用した不動産情報共有・利用実証実験を開始。そこにNTTデータ経営研究所とNTTデータ先端技術が加わり、本格的な仕組みの構築が始まった。2017年12月にはシステムのプロトタイプを開発。2018年4月より全保連、ゼンリン、ネットプロテクションズの3社を加えた共同検討が開始され、議論が進んでいる。今後、さらに参画会社を募って「不動産情報コンソーシアム(仮称)」を設立し、2019年以降の商用化を目指していく予定だ。

そもそもブロックチェーンとは、暗号通貨などに活用されている技術で、大きな特長として、すべての更新履歴が残されること、データの改ざんやコピーが難しいことなどが挙げられる。
現在の構想では、このブロックチェーン技術を用いた異業種横断型の共有データベース(DB)を構築し、物件ごとにIDを付与して情報を一元化、そこに各社がデータを追記していく形を想定している。プロトタイプの画面では、物件の情報や、誰が更新したかも含めた更新履歴を情報管理画面で一覧できるようになっていた。

異業種が集まることで生まれる価値

今回の取組みで重要なポイントの1つは、異業種間の情報共有だ。すでに参加している各社も、そのメリットを重視している。
集まった6社は、事業内容も保有している情報も全く異なる。全保連は物件入居時に必要な保証人の代わりとなる家賃債務保証事業を行っており、加入時の審査に関わる情報などを持っている。地図情報を取り扱うゼンリンは、物件ごとに独自IDを付与して管理し、与信取引サービスを扱うネットプロテクションズは、与信審査やサービスの利用状況に関する情報を所有。そしてLIFULLは不動産ポータルサイトを運営しているため、豊富な物件情報を持つ。各社がそれぞれ持っているこれらのデータを共有し、一元管理する仕組みがあれば、物件情報の正確性が増すだけでなく、データの相互活用ということも考えられる。

例えば、ある部屋の入居状況がわからないという場合、ネットプロテクションズのサービス利用状況を共有することで、入居中かどうかを判断することができる。その情報は、建物が現存しているということも意味し、ゼンリンの地図情報の更新や、空き家状況の把握にも役立つ。もしここにインフラ会社が参入すれば、電気や水道などの利用状況からより正確な状況を反映することができるかもしれない。データの種類が増えるほど、活用の幅は広がっていきそうだ。

しかし、良いことばかりではない。すでにプロトタイプが開発されているとはいえ、商用化に向けてはデータの標準化ルールやセキュリティ、DB構築への貢献度に応じた使用料の配分など、まだ議論すべき課題が山積している。また、今後コンソーシアムに参画する企業が増え、新たなアイデアがもたらされれば、システムの与件が変わってくる可能性すらある。
ブロックチェーン技術の活用という面でも注目を集めるこの取組みだが、「ブロックチェーンは何でもできる魔法の棒ではない」と技術面を担当するNTTデータ先端技術のセウェカリ・シタル氏が語ったように、ブロックチェーンはあくまで技術のひとつと考えており、必要があればほかの技術も視野に入れるなど、状況の変化には柔軟に対応していくつもりのようだ。

共有プラットフォームDBの概念図。分散管理型のブロックチェーンは公的プラットフォームの構築に向いている 提供:不動産情報コンソーシアム(仮称)事務局共有プラットフォームDBの概念図。分散管理型のブロックチェーンは公的プラットフォームの構築に向いている 提供:不動産情報コンソーシアム(仮称)事務局

異業種連携の輪を広げ、より中立で公正な仕組みの構築へ

不動産関係者だけでなく金融機関やインフラ関係の参加者も多く、注目度の高さがうかがえた不動産関係者だけでなく金融機関やインフラ関係の参加者も多く、注目度の高さがうかがえた

説明会の後半にはパネルディスカッションが行われ、各社が共有DBの実現やコンソーシアム設立にかける期待を語った。

LIFULLの松坂氏は、「現在、各不動産会社が入力している情報には重複している部分が多く、入力作業が無駄になってしまっている。そのうえ1社あたりが扱う情報量は増加する一方で、いずれ扱いきれなくなる」と話した。業務効率化の観点からも、情報をシェアすることが重要になると考えているそうだ。
また、ネットプロテクションズの高木氏は、「住所を正確に書かなかったり書き間違えたりしたことで与信審査が通らず、不利益を被ってしまうユーザーがいる。データを共有することでより正確な情報が手に入れば、そうしたユーザーにもサービスを届けられるようになるのでは」と期待を寄せる。
さらに全保連の中村氏が「今まではユーザーの入居時しか接点がなかったが、退去のタイミングが推測できればコンタクトの機会が増える」と話したように、データの活用により新たなビジネスチャンスが生まれることも考えられる。
DBの構築による正しい不動産情報の共有を目指し、そして異業種が集まることによるシナジー効果を期待して、多くの企業への参画が呼び掛けられた。

ブロックチェーンという先端技術を活用することもあり、注目を集めるこの取組み。商用化が実現すれば、一般ユーザーにとっても、正確な不動産情報が探しやすくなったり、暮らしに関連するサービスが受けやすくなったりというメリットがあるかもしれない。どのようなプレーヤーが参画するのか、そしてどのように変化していくのか、今後の動向を注視していきたい。

2018年 08月28日 11時05分