年々買取額が下がる「固定価格買取制度」は2019年から順次期間満了を迎える

ソーラーエネルギーの買取価格は年々下落しているソーラーエネルギーの買取価格は年々下落している

ソーラーエネルギーの買取制度が立ち行かなくなる可能性について2015年に記事(新規買い取り、事実上中止?どうなる、ソーラー住宅を取り巻く「環境」)で指摘してから約5年になる。しかし、その後も太陽光エネルギーの新規買い取りは様々な施策によって(専ら買い取る原資としての賦課金徴収額の大幅増額による)なんとか継続し、現在に至っている。

ただし買取価格は年々下落しており、制度発足当時の2009年に48円/kWhだった住宅用太陽光エネルギー買取額は、2017年には28円/kWhとなり、以降も2円ずつ下げられて2019年の買取額は24円/kWhと2009年の半額の水準となった。この金額は、現在一般家庭が購入している電力の価格とほぼ同額であるから高いとの指摘もあるが、多分に政策的な買取制度でもあり、太陽光発電ほか再生可能エネルギーの自給率を高めるためには必要な施策とされている。

電力会社が購入するためのコストは「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」=電気を使用している全世帯から毎月徴収される「税金」によって賄われている。しかし、この「税金」も2014年当時には標準家庭(夫婦+子ども2人)で年間約2,700円だったのが2018年には約9,000円と3倍超に跳ね上がっており、国民の負担感は年々確実に強まっている。2019年の賦課金が2018年よりさらに上がることも確実だ。

これだけの負担を強いても再生可能エネルギーを普及させようとする背景には、原子力発電への国民の根強い不信感、および地球温暖化を促進してしまう化石エネルギーの利用減を目指すという意向が働いている。また資源小国である日本にとって、抜本的にエネルギー政策を転換することで海外からの原油輸入に頼る状況を改善しエネルギー自給率を向上したいとの思惑がある。

買取期間満了後はどうなるか

再生可能エネルギーの固定価格買取制度=FIT(Feed-in Tariff制度)は余剰電力買取制度として2009年11月にスタートし、再生可能エネルギーの買取価格を法律で定めるための助成制度としては2012年7月に現行制度になった(2017年4月に一部改定)。

制度の発足当初から出力が10kWh以下の家庭用太陽光発電機での買取期間は10年と定められており、2009年11月から「売電」を開始した世帯の契約は2019年11月以降順次期間満了を迎えるため、契約終了後にはどのようなスキームが導入されるのかが太陽光発電機を取り付けている世帯の関心事になっている(現在の契約内容および契約状況は通知で確認可能)。

10年を過ぎると電力会社に買取義務はなくなるから、選択肢としては
1)自分の家庭ですべての電力を消費する
2)再度電力会社と買取契約を結ぶ
ということになるが、電力会社がどのような対応をするのかまだ決まっておらず、10年経過目前でも状況は不透明なままだ。

実際のところ各電力会社は、個別の契約によって買取を実施する可能性について検討をしているものの、期間満了後は大きく減額して買い取ることになりそうだ。自家消費で余った電力は一時的に買い手が不在となれば無駄にならないように無償で引き取ることが想定され、新たな契約によって売電は成立するものの、国策による電力の買取義務という「重荷」から解放された電力会社が家庭の余剰電力を高値で買い取る可能性は極めて低いと考えるべきだろう。

現在、火力発電や原子力発電などの電源別コストで一番安いものは10円/kWh程度とされており、電力会社が採算の取れるベースで買い取るということになると、6~8円/kWh程度で買い取ってくれるのではないかとの憶測が広がっている(それでもこれまでの固定価格42円/kWhからは1/7~1/6の買取価格になってしまう)。

また「新電力」と言われている発電所をほとんど持たない(全く発電施設を持たない会社もある)電力会社は余剰電力を取りまとめて販売する機会が得られることから、やはり6~8円/kWh程度で買い取る可能性が示唆されているようだ。

これに関連して水戸に本社をおく新電力会社のスマートテックは、2018年6月に東北、東京、中部、関西、中国、九州(各エリア1000棟限定)で固定価格買取制度が終了する10kWh、通常8円/kWh のところキャンペーン価格10円/kWhで買い取ることを公表している。

また、同じく新電力大手の昭和シェル石油も、先日同社の電力プランと契約することを条件に買取価格を8.5円/kWh(九州エリアは7.5円/kWh)に設定すると公表した。
いち早く仕入れ価格を公表することで電力を確保し、シェアを拡大したい各新電力会社の思惑が早くも見え隠れする状況となっている。

電力買取サービス「スマートFIT」電力買取サービス「スマートFIT」

経済産業省が2019年問題について「基本的な考え方」を示すが・・・

このような状況に対して、電力行政を担う経済産業省はFITの期間満了について以下のような考え方を示し、
1)電気自動車や蓄電池と組み合わせるなどして「自家消費」すること
 =自家消費型のライフスタイルへの転換を図る契機
2)小売電気事業者やアグリゲーター(※需要家の電力需要を束ねて効率的にエネルギーマネジメントサービスを提供するマーケター、ブローカー、地方公共団体、非営利団体などのこと)に対し、相対・自由契約で余剰電力を売電すること
 =新たな供給力と需要を獲得するビジネスチャンス
だとして、基本的にFIT制度からの「自立に向けた市場環境を醸成」することが必要だとしている。

これは買う立場の電力会社と、売る立場の個別世帯との情報格差や専門知識、制度変更への対応の違いについて理解せずに示した「考え方」であり、10年間賦課金を活用して電力を購入し支援したのだから、そのあとは自由競争だと市場原理の世界に放り投げるようなものだ。各世帯が電力会社と粘り強く交渉し、買取価格を1円でも高く設定する努力ができるというのだろうか。またその交渉を個別に各電力会社が受け入れるとでもいうのだろうか。甚だナンセンスな考え方としか言いようがない。

理想としては経産省の指摘通り、売るほうも買うほうも納得のいく価格で安価に安全に再生可能エネルギーを活用できる市場を形成できれば良いのだが、それこそ10年間賦課金という名の「税金」を使ってまで維持していた買取制度が自由競争化でも同様に成立すると考えるのにはかなりの無理があると言わなければならない。

ちなみに、この「2019年問題」を悪用して「期間満了後は一切売電ができなくなる」「売電より、蓄電池と組み合わせて自家消費するほうが得になる」などと吹聴し、蓄電池やエコキュートを高額で売りつける商法が早くも発生しており、苦情も寄せられているという。太陽光パネルが設置してある住宅を直接訪問するので防ぎようがない状況であり、さらに言えばこのような不安を煽る商法にたやすく取り込まれてしまう一般世帯の消費者が、電力会社と対等に売電の交渉ができるとは思えない。

「2019年問題」について資源エネルギー庁が専用サイトを開設

資源エネルギー庁の専用サイト資源エネルギー庁の専用サイト

このような期間満了に伴う制度変更について説明するべく、資源エネルギー庁が専用サイトを開設した。

これによると、大手電力会社の電力買取メニューの発表時期を公表したり、FAQを設置して不安を払拭するよう努めたりと、2019年問題に対処するために情報を積極的に公開しており、先述の蓄電池・エコキュートなどを売りつける商法についても注意喚起が為されているが、期間満了後の買取価格がいくらになるか、いつから買取が始まるのかなどユーザーが最も知りたいであろう情報が公開されておらず、契約の切り替えなどについても具体的な言及がない。資源エネルギー庁によると、2019年(11月と12月のみ)に期間満了する契約は約53万件とされており、今後の的確な情報提供が急務である。

なお、買取期間満了後に何もしないで放置していると、現在の買取者が東京電力エナジーパートナー・北陸電力(小売)・関西電力(小売)の場合、および離島の場合は新しい単価で、同じ会社が継続して買取を実施する予定だが、それ以外の買取者については、買取者が一時的・例外的に不在となるケースでは一般送配電事業者が無償で引き受けることになる(これをゼロ買取と呼んでいる)。なので、今後各電力会社から発表される買取メニューから希望に合うプランを選択し、事前に契約する必要がある。エリアによっても対応が異なることに留意されたい。

2019年問題に対応するには

詰まるところ、当初の10年間と同じ条件で電力会社が買い取ってくれることはないので、これまで発生していた余剰電力を今後どのように活用するべきかを、方針だけでも今から決めておくことが必要になる。

選択肢としては、前述の通り
1)自分の家庭ですべての電力を消費する
2)安価になっても再度電力会社と買取契約を結ぶ(条件次第で異なる電力会社に買い取ってもらうことも考える)の2つしかない。
つまり売らない場合にどうするか、使い切れなかった電力はどうするかということを考えておく必要があるということだ。

売らない場合は、無償で電力会社に送電するか、蓄電池を購入して必要な時に使用するという方法がある。また住宅のオール電化および電気自動車への買い替えなどによって電力消費を高め、ガスおよびガソリンからエネルギー源の切り替えを通じてトータルの光熱費を抑えるという方法も考えられる。

このうち、蓄電池および蓄電池にもなる電気自動車の購入は、依然としてイニシャルコストが高いため予算に応じて検討するものとなるが、無償で電力会社に送電する場合は条件を比較検討して送電先を選択する必要がある。家庭用蓄電池は最も容量の少ないものでも50万円前後で高額のものは200万円以上するし、電気自動車は1人乗りのコミューターで100万円弱、普通乗用車となると300万円~1,000万円超の価格帯で販売されている。

反対に、売る場合はたとえ1円であっても売るという割り切りがあれば難しいことはないので、これまで発生したコストと回収したコストを計算した上で判断すればよいということになる。

再生可能エネルギーの2019年問題とは、現時点で何も具体的なことが決まっていないということが「問題」なのではないかと思えてくる。重要なのは「買取期間終了後にも様々な選択肢がある」ということを認識し、拙速に行動しないことだ。「0円契約になってしまう」とか「現在の買取会社は契約を更新しない」などの流言にまどわされることなく、資源エネルギー庁の専用サイトの更新情報をこまめに確認して情報収集に努めたい。

太陽光発電の買取は今後どうなっていくのか。適切に情報を入れて判断したい太陽光発電の買取は今後どうなっていくのか。適切に情報を入れて判断したい

2019年 06月03日 11時00分