EU諸国が日本より早いスピードでEVが普及し始めているわけ

電気を売るのではなく自宅で消費してしまえば良いという考え方電気を売るのではなく自宅で消費してしまえば良いという考え方

2009年に始まった電⼒の余剰電力買取制度(2012年からは固定価格買取制度)があと2年で最初に始めた人から順に終了する。
2009年に始めた人は、なんと1kWhを48円もの高価格にて10年間買い取ってもらうことができた。この劇的な恩恵に預かったのが45万件(180万kW)あると言われている。まだ、予想ではあるが、この超高額買取単価が一気に11円程度まで下がると言われているのだ。

各家庭の余剰電力売電量は年間2240kWh程度になるので、単価が一気に37円下がると単純に年間の収入が37円/kWh×2240kWh=82,880円も下がってしまうことになる。これはそれまで、恩恵に預かっていたところから一気に下がるわけだから経済的には相当痛いと思われる。
しかし、これをある程度回避する方法がある。この電気を売るのではなく自宅で消費してしまえばよいのである。自宅で消費する電気は平均的に28円/kWhくらい支払っている。よって、これを全て自宅で使い切ってしまえば、単価の差額20円/kWh×2240kWh=44,800円のマイナスで済む計算になる。
「それって安く売るくらいだったら電気を贅沢に使っちゃえってこと?」と思われる人もいるかもしれないが、そうではない。エンジンの自動車から電気自動車に乗り換えればよいのである。
例えば、日産LEAFだが、実燃費で6km/kWhくらい走ると言われている。ということは2240kWhの余剰電力全てをLEAFに充電するとしたら、13440km走行することが可能である。
普通の家庭であればこれだけでも年間のガソリン代を全て賄うこともできるのではないだろうか?

車をEVにすれば、余剰電力を蓄積できる

2017年5月現在のレギュラーガソリン価格は125円/ℓ程度。
仮に実燃費が13km/Lの車に乗っているとすると、13440km走るには1034ℓのガソリンが必要だ。そしてその価格は、129,250円である。

下表のように表にまとめると明らかだが、何も手を打たなければ2019年からそれまでに比べて単純に82,880円も損することになる。ところが電気自動車(以下EV)に乗り換える費用を無視して試算するとものすごい結果が出てくる。実際には無理があるが、余剰電力を全量EVに回すことができれば、むしろFIT終了前よりも21,730円余分に稼ぎだすことができる計算になる。EVに乗り換えない場合との差額は104,610円にもなるのだ。このような事情から既に固定価格買取期間が終わっているEU諸国では日本よりずっと早いスピードでEVが普及し始めているわけだ。 

日本では車1台は家にほとんど置きっぱなしの家庭が多いのも実情である。その車をEVとすれば余剰電力100%は無理でも、結構な比率を電気自動車に蓄積できるのではないかと考えている。簡単に試算してみると年間余剰電力2240kWh÷365日=6.14kWh/日くらいの発電量になる。現行のLEAFの電池容量は30kWhなので6.14kWh/日で割ると4.89日でフル充電になるという計算ができる。これは年間13000kmくらい乗る平均的な週末ドライバーで、奥さんが普段買い物だけに利用するようなパターンにピッタリだという計算結果となる。計算によるあまりにもドンピシャな結果に、実は私が一番驚いた。

何も手を打たなければ2019年からそれまでに比べて単純に82,880円も差額が出る何も手を打たなければ2019年からそれまでに比べて単純に82,880円も差額が出る

災害時のシェルターとして働ける住宅のエネルギー源

もちろん電気自動車は現時点では安くはない。現在、一番安いグレードでもLEAFだと約280万円、そこに補助金が23万円出るので実質的には257万円する(30kWh車だと320万-28万=292万円)。
とはいえ、上述のように年間104610円得すること、更に乗用車の平均使用年数8.4年を考えると878,724円分更にハンデをあげてこそフェアな勝負となる。ここまで検討すれば、実質的に170万円の車を購入するのと変わらないという結果となる。

さらにもう2つ重要なことを知っていなくてはならない。
1つはこのような金額的なことではなく、災害時のシェルターとして働くということだ。阪神大震災、東日本大震災、熊本大地震と続いたわけだが、更に今後、東南海地震、東京直下型地震がほぼ確実にやってくると言われている。その際、各々が生き延びるためには30kWhもの電源は非常に役に立つ。今現在の一般家庭の平均電気使用量は14kWhなので、完全に通常どおりの生活をしても丸2日分の電気を蓄えておくことが可能である。節約しながらの生活であれば、1週間でも全然問題ないと考えている。太陽光発電も併設している場合、耐震等級3、夏の日射に配慮した高断熱高気密住宅とセットで考えておけば、いかなる季節にどのような大災害に見舞われたとしても、家族とご近所さんくらいは、枕を高くして眠ることができるだろう。これはお金には変えられないことだし、非常食同様、個人個人が準備しておくしかないことである。

参考までにだが、最新型のプリウスはこのような考え方から100Vのコンセントを一つ標準装備している。言わずもがな、国内で最も売れている車だけに、次に来る大災害ではプリウスがあることによって救われる方が相当数出てくることは確実である。ガソリンが満タンであれば、電気自動車でなくとも相当の救いになることは確実なのだ。

車は、災害時のシェルターとして働くという側面も考えられる車は、災害時のシェルターとして働くという側面も考えられる

クリーンな電気、そうでない電気

最後にもうひとつ、CO2排出量についてである。
現行の日本の基準では一次エネルギー換算する際に「1kWh=9.76MJとする」と2003年に省エネ法で全国一律に定められている。これで計算すると現行プリウスとLEAFのCO2排出量はほとんど同じになってしまう。
しかしながら、実際には電力会社ごとに1kWhの電気を発電する際に発生するCO2排出量は大きく異なる。下がその表だ。

この表を見れば東京電力、中部電力、九州電力は非常にクリーンな電気であることが分かる。これは都会の電力会社は需要が大きいため、効率が良いガスコンバインドサイクル発電の比率が高いことが最大の原因である。
逆に北海道電力、中国電力、四国電力、沖縄電力はあまり良くないということも分かる。これらの電力会社はガスコンバインドサイクル発電の比率が低く、かつ石炭比率が高いことが原因だ。特にこういったエリアに関しては新電力であるLooopでんきのような会社に乗り換えると電気代も安くなる上、さらにCO2排出量も一気に半分くらいに減らせる。
エネチェンジというサイトがおすすめだが、北海道電力のエリアで検索をかけると、Looopでんきが一番コスト削減効果が大きいという結果が出てきた。中国電力エリアでも1位、四国電力エリアでは5位だった。安くて、かつクリーンな電気であるLooopでんきは要注目の電力会社であるといえるだろう。(但し沖縄電力のみエリア対象外)

電力会社ごとの1kWhの電気を発電する際に発生するCO2排出量電力会社ごとの1kWhの電気を発電する際に発生するCO2排出量

最も積極的にEVを進めた方が良い地域とは?

ここでガソリン自動車とのCO2排出量の比較をしてみる。ガソリンのCO2排出量は2.322kgCO2/Lである。これを元にプリウスの実燃費を26km/L、LEAFの実燃費を6km/kWhとしてそれぞれ1万km走った場合の各電力会社別でCO2排出量を比較したのが下図となる。
この表の結果が言いたいところは、CO2の観点から見た場合、一般的に都会エリアはLEAFの方が省CO2であり、地方はプリウスの方が省CO2であるということだ。
最後に出力制御ルールということについて説明しておきたい。5月のゴールデンウィークに一番良く起こるのだが、太陽光発電量が1年で最も多いのに、企業が休みで気候も良いので消費電力は非常に少なくなる。その結果、需要よりも供給量が増えてしまうので太陽光の買取に制限をかける制度だ。そういう制限が全くない最も有利な電力会社が「対象外」360時間という上限付きで制約がかかる可能性があるのが「360時間ルール」、場合によっては上限なく制限がかかる可能性がある最も不利な電力会社が「指定ルール」としている。対象外になっている電力会社は人口が多い地域なので、簡単には太陽光が余るところまでは行きにくい地域だ。逆に指定ルールという地域は人口がそれほど多くない上に、太陽光発電が大量に設置されているエリアが多い。こういうエリアこそ、EVが増えると「電気余り」が減るので非常にEVの必要性が高いと言える。

そこでCO2排出量の観点と、電気余りの両方の視点からEVの必要性を地域ごとに割り出してみた。
この結果から言えることは、九州電力のエリアは最も積極的にEVを進めた方が良いということになる。次回に書こうと思うのだが、九州エリアは温暖地が多いことから、ヒートポンプの実効効率も沖縄に次いでいい結果が出る地域である。そう考えると、九州エリアは全エリアの中で電化による省エネ、省CO2、省コスト効果が最も大きい地域であることが見えてくる。

このように、本当に効率的な省エネを実現するためには各業者のカタログや営業トークではない、細やかに地域まで分類した上での検証が必要だと考えている。

CO2の観点から見た場合、一般的に都会エリアはLEAFの方が省CO2であり、地方はプリウスの方が省CO2であるCO2の観点から見た場合、一般的に都会エリアはLEAFの方が省CO2であり、地方はプリウスの方が省CO2である

2017年 08月28日 11時03分