2014年10月から電力会社が「新規買い取り」を事実上中止した理由は

発電機設置スペースとして大注目され、余った電気を売る事で経済的にもお得と注目されたが、電力会社の新規買取請求が中止されてしまう結果となった発電機設置スペースとして大注目され、余った電気を売る事で経済的にもお得と注目されたが、電力会社の新規買取請求が中止されてしまう結果となった

ニュースなどで報道されているからご存知の方も多いと思うが、北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力5社は、太陽光エネルギーの新規の受け入れ(=買い取り)制限を発表し、中国電力も今後事業者からの買い取り要請が増え続けた場合、受け入れ制限をする可能性があるという。

2012年7月に太陽光エネルギーを含む「再生エネルギー固定価格買い取り制度」=Feed-in Tariff(フィードインタリフ制度 通称:FIT)が導入されたが、わずか2年余りで制度設計の根本的修正を余儀なくされた状況だ。
経済産業省もこの事態を受けてFITの「抜本的見直し」開始を表明している。

FITが導入されてからというもの、住宅の屋根は発電機設置スペースとして大注目され、住宅メーカー各社もソーラー住宅を「自分で作った電気は自分で使い、余った電気は固定価格で買い取ってくれるから経済的にも大変お得、その上環境にも優しい」と宣伝して、大いに新規の受注を獲得したものだが、太陽光発電の買い取り請求(請求ベースで稼働ベースではない)が上記電力5社で7000万kW弱にまで達してしまったため、このままでは持たないと、5社が足並みをそろえて買い取りの新規請求について「お断り」することになったということだ。
7000万kWがどれくらいの電力量かというと、何と原発70基分に相当するというから、如何に膨大な量が買い取られることになるのかはイメージできるだろう。

買い取り金額は受益者負担として、
既に企業や家計の電気代に上乗せされている

では、このままでは何で制度がもたないのかというと、FITでは再生可能エネルギーでつくった電気を電力会社が割高な価格で全量、かつ20年間買い取ることを義務づけているからだ。
請求ベースで稼働率はまだ15%程度とは言え、電力5社で合計7000万kW弱という電力量は、現在(2014年4月以降)の買い取り額である住宅用37円/kWh、非住宅用32円/kWhで計算すると、ざっと2兆7000億円に達する。消費税を1%引き上げた際の税収が約2兆円と言われているから、消費税率1.35%分に相当する額だ。

しかも買い取りの原資は「受益者負担」の原則を適用して企業や家計が支払う電気代に上乗せされている。現状では標準家庭(夫婦+子供2人)で約2700円と言われているが、買い取り請求された電力が今後順調に稼働すれば、この上乗せ金額は当然のことながら上昇していき、数年で1万円超に達する計算になる。

その上、再生可能エネルギーを全量買い取るには大規模な設備投資も必要だ。買い取り額が引き下げられたら、設備に投下した資金の回収は長期化を余儀なくされるか、回収が困難になることは誰の目にも明らかだ。

そもそもFIT開始時点では住宅用は42円/kWh、非住宅用40円/kWhと現在よりも高く設定されていた。これは再生可能エネルギーの普及・拡大を促進するため「施行後3年間は例外的に利潤を高める」との政策的判断があったことによる。
これだけの高値で買い取ってくれる保証を国がしたのだから、太陽光発電所や太陽光パネルの設置ブームが起きたのも自然の流れで、メガソーラー事業にソフトバンクやゴールドマン・サックス、IBM、住友商事、オリックスなどが相次ぎ参入を表明したのも、リスクがほぼゼロで大きな利益を得るビジネスチャンスが到来したことの証左とみることができる。

「太陽光バブル」はなぜ弾けたのか?

既に電力の全量買取制度は廃止されているヨーロッパ既に電力の全量買取制度は廃止されているヨーロッパ

再生可能エネルギーの活用において先行していたヨーロッパでは、既に電力の全量買い取り制度は「廃止」されている。それでは制度がもたないことがわかっていたからだと指摘する声もある。

それでも日本がこれまでFITを維持しようと懸命に模索してきたのは、一にも二にも原発ショックに寄るところが大きい。東日本大震災によって福島第一原発がメルトダウンしたという事実は、原子力に対する不信感を大きく増長し、原発廃止の大規模デモが連日行われたことは記憶に新しい。
原発のクリーンで安価なエネルギーというイメージは、危険で管理不能な暴走エネルギーに変わり、自然エネルギーである太陽光、風力、地熱発電が急激にクローズアップされたことが原発廃止&自然エネルギー拡大の機運を高めることになった。ただし、クリーンエネルギー利用推進を良しとしても、これほどのコストが発生することを国が周知していたら、状況は異なっていたのではないかと思われる。

結果的に、震災後の議論の余地がない状況と、受益者負担で広く浅く利用料金が上乗せできる制度設計であることが、官民一体となった「太陽光バブル」の背景にあったと言えるだろう。そのバブルも新規買い取りの中断により、2年余りで弾けたことになる。

それでもFITを維持しようとする「努力」が続く

早速、東京都の舛添知事が、FITを全面的に見直す方針を打ち出したことについて「やめる方向で動かれると(再生可能エネルギーの比率を20%にするという)目標の達成は難しくなる」と述べて公約達成の大きなハードルになるとの認識を示している。
また、オリックスも今後3000億円投下する予定であった再生可能エネルギー施設開発(そのうち2200億円が太陽光発電所との計画)を見直し、地熱発電、バイオマス発電などに資金を振り向ける可能性を示唆している。このような例は枚挙に暇がない。

一方で、国も具体的な見直し案策定に動き始めた。
政府の有識者会議は、太陽光発電による電気の買い取り価格を半年ごとに引き下げることを政府に提案するとの報道が先日あった通り、これまで年1回見直していた価格を半年にして引き下げの機会を増やす方針を打ち出している。価格を決める基準も、現在の「発電業者全体の平均的な費用」から「最も安い業者の費用」にして、買い取り価格をより下げられるようにすると表明している。

このような制度変更は、再生可能エネルギー事業に参入した企業の収益を減らし、電力量の急激な増加を抑制しようとする意図が明らかだが、ヨーロッパで買い取りを廃止したような抜本的な変更ではなく、買い取り制度を維持するねらいも見受けられる。

確かに化石エネルギーや原子力ではなく、自然エネルギーを活用してクリーンで安全な電気を活用しようというのは誰しも首肯し得る「総論」だが、「各論」となるとコスト高の問題が大きく立ちはだかり、それを何とかソフトランディングさせようとする「努力」が今後も続けられそうだ。

「ソーラー住宅」の今後は…

このように状況を俯瞰してみると、東日本大震災後に大きく盛り上がった再生可能エネルギーによる電力供給の機運は、事業参加企業の急増による買い取り請求電力量の増大により、制度開始2年で「高コストで今後も利用価格上昇が懸念される自然エネルギー」の活用推進を続けるか、それとも「停止している原発を再稼働して安価な電力を供給」することによって生活コストと企業活動=生産コストの抑制に動くか、のオルタナティブな判断を迫られているように見える。

そのはざまで、住宅に設置されるソーラーパネルの生産や「ソーラー住宅」全般に対する関心もやや後退し始めている。ソーラー住宅とは、太陽光発電装置と充電器や配電設備などが設置された戸建および集合住宅の総称だが、そもそも太陽光によって発電した電力を有効活用し、余剰電力は(今後安くなるにせよ)電力会社に買い取ってもらえるというのは、生活コストの軽減という点でメリットは決して少なくない筈だ。
しかも、電気自動車やハイブリッド車の普及に伴ってマンション内の駐車場に充電器が設置されたり、非常時の緊急電源としても活用できるとなれば、そのメリットはさらに増大する。しかし電力の買い取りが今後「お断り」となれば、ソーラー住宅の経済的なメリットも損なわれることになる。

このようにソーラー住宅の仕組み自体は大変魅力的なものなのだが、結果的にその魅力を維持することができない制度設計で発進したことが、この国の電力行政と住宅行政に対する「大きな不幸」と言えるのだろう。

政府には制度設計の大胆な変更、もしくはゼロベースでの見直しが求められる。

太陽光によって発電した電力を使用し、余剰電力は電力会社に買ってもらう事で</br>生活コストを軽減することができるなど、メリットは決して少なくない。</br>今後、それらの魅力を維持できる制度設計の変更・見直しが期待される。太陽光によって発電した電力を使用し、余剰電力は電力会社に買ってもらう事で
生活コストを軽減することができるなど、メリットは決して少なくない。
今後、それらの魅力を維持できる制度設計の変更・見直しが期待される。

2014年 11月13日 11時07分