リセールバリューは1999年から公表開始

不動産はどこにいつ使ったかということが、その先の価格推移=資産価値の変化に大きな影響を与える不動産はどこにいつ使ったかということが、その先の価格推移=資産価値の変化に大きな影響を与える

東京カンテイ市場調査部が「マンションのリセールバリュー」についてデータを分析し、知見を公表し始めたのは今から15年前の1999年のことである。
公表当時は、住宅は一生で一度の大きな買い物だから永く暮らしていける居住性が最も大切だとか、居住年数に応じて減価償却していくのだからリセールバリューを考慮する必要は低いと言われたものだが、筆者は住宅を100%「住まい」として見るのではなく、「資産」としても考えておく必要性を感じて、敢えて「売ったらいくらになるかを買う前に考えておこう」という考え方を訴求し始めた。
不動産はどこにいつ買ったかということが、その先の価格推移=資産価値の変化に大きな影響を与えるのは言うまでもない。

日本人は~自戒を込めて申し上げれば~入口、つまり不動産購入時の資金計画および販売されている価格に対しては大変慎重に検討するのに対して、出口のお金には案外無頓着という金銭感覚の持ち主が多い。将来のことはわからないから考えても仕方がないという一種の割り切りなのだと推測しているが、確かに不確定要素が多いものの「温故知新」という言葉もある通り、過去の実績や経験値などを基に将来をある程度イメージすることは可能だ。しかも現在ではありがたいことに様々な情報がデータ化され、定量的な分析に耐えるデータベースが構築されている。

つまり「温故知新」は定量化できるのである。

リセールバリューの決定要因は4つ

では「マンションのリセールバリュー」は何で決まるのだろうか。
結論から申し上げると、
①「広域立地」:都心か郊外かという大まかな立地の違いで、人口と事業集積性の多寡との関係が強い。都心ではなくても横浜や吉祥寺など一定の規模で人口と事業集積性が高まっている地域も広域立地に優位性がある。(60%)
②「狭域立地」:駅前・駅周辺か駅から離れた場所かという特定地域での立地条件である。駅に近すぎても繁華性が高くて住むのに適さないという見方もあるが、一般に駅に近いほど交通と生活の利便性は高まる。(30%)
③「物件スペック」:住居の専有面積や間取り、階数などマンションとしての住み心地の良し悪しを示す。(5%)
④「個別要因」:マンションおよび住戸の設備や仕様、ルーフバルコニーや専用庭など特筆すべき条件の有無を示す。(5%)
の4つの条件がリセールバリューの決定要因で、各項目の最後に記したのがそのウエイトである。

ウエイトはあくまでも経験則に基づくものだが、①および②の立地条件が90%で、つまり資産価値は9割がた立地で決まると考えていただいて間違いはない。不動産とは“動かすことのできない資産”である。購入後に如何ともし難い条件である立地のウエイトが高くなるのは当然のことだ。
ただし、立地条件で“良いエリア”を選択しても、そのエリアで最も資産性の良くない物件や住戸を選択してしまっては意味がないので③ないし④も疎かにできない。数千万円の買い物だから、残りの1割で数百万円変わると思えば吟味する必要は大いにあるだろう。

「住まい」として気に入った物件の「価値」を必ずチェックするという姿勢

こうしてリセールバリューという言葉を分解すると、都心物件の資産価値における優位性は明らかだ。
都心や事業集積地にあって駅にも近いマンションの価格が高いのは、こうした理由がある。資産価値を考慮すれば、価値相応の価格で販売されているから高いのだということになる。反対に、郊外の物件でバス15分、バス停から徒歩3分などと言う交通条件の物件は、例え価格が安価であっても資産価値についてのリスクが高いということがわかる。
また、マンションにはタワーであるとか大規模であるとか、広い住戸であるとか様々な「属性」も備わっている。マンションは属性のかたまりと言っても良いくらいだ。したがってこういう属性の違いによっても資産価値は左右されるということも記憶に留めておきたい。

このように考えを進めていくと、“都心立地で駅にも近いタワーマンションの最上階を買わないと資産価値は維持できない”などと思われそうだが、実はそうではない。冒頭申し上げた通り、マンションは購入者の大切な「資産」だが、一方で家族が生活の場とする「住まい」である。
つまり“自分と家族が「住まい」として気に入った=住みたい物件の「資産」価値を判断する”という順番で考えるべきことなのである。頭金や毎月の適正と思われる住宅ローン返済額から購入可能な物件の価格を把握し、購入可能な物件の資産価値を必ずチェックしてから購入するという買い方と言えばご理解いただけるだろうか。

結論:資産価値を見ずに買ってはいけない。資産価値だけで買ってもいけない。

最近、資産価値という言葉が一人歩きし始めて「売るつもりはないけど資産価値は高い方が良いと言うから、この物件を購入しました」という方が増えていると聞く。
確かに資産価値は低いより高いほうが良いし、売らないまでも事業資金を借り入れるためにマンションを担保とする場合もあるから、その点でも資産価値は不労所得的な要素があることは否定できない。ただし、リセールバリューの考え方は、将来のライフステージの変化に備えるという意味合いが大きいので、物件の真価を見抜くための“他者の眼”を持っていただきたいというのが偽らざるところだ。それは自分が気に入った物件を、他の人も良いと思ってくれるだろうかという感覚である。
その感覚が理解できれば、リセールバリュー入門編は卒業である。

2013年 12月09日 10時38分