2020年1月に設立された「くらしとテクノロジーの融合」による未来志向のまちづくりを目指すプライム ライフ テクノロジーズ 株式会社

本来は、東京五輪の年になるはずであった2020年。新型コロナウイルスにより、世界そして日本は一変した。

在宅テレワークが進む中、働き方も変化し、住まい・まちの選び方も変わりつつあるといわれている。令和に入り「自分らしい暮らし方・住まい方」が重視される方向にあったが、それが新型コロナウイルスの影響を受けて、さらに進みつつあるようだ。
コロナだけでなく、少子化、高齢化、地球温暖化、エネルギー問題など、社会や環境がより厳しい局面をむかえる中、安心・安全であり、命を守るという観点からも、まちや住まいの役割はますます重要視されていくと思われる。

【NEXT 日本の住まい】は、「日本の未来の住まいはどのように変化をし、住まいに携わる企業の使命はどういったものなのか」を住宅に関わる業界のリーディングカンパニートップにインタビューを行い、考えていくという企画である。インタビュアーを務めるのは不動産ポータルサイトLIFULL HOME'Sを運営し、「あらゆるLIFEを、FULLに。」がコーポレートメッセージの株式会社LIFULL 井上 高志 代表取締役社長。

今回は、2020年1月にグループ会社にパナソニック ホームズ株式会社、トヨタホーム株式会社、ミサワホーム株式会社、パナソニック建設エンジニアリング株式会社、株式会社松村組を擁し、「くらしとテクノロジーの融合」による未来志向のまちづくりを目指す会社として設立されたプライム ライフ テクノロジーズ株式会社(本社:東京都港区)代表取締役社長 北野 亮 氏に設立の背景とまちづくり・住まいづくりへの思いを伺った。

写真右)プライムライフテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 北野 亮氏</br>写真左)株式会社 LIFULL 代表取締役社長 井上 高志氏写真右)プライムライフテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 北野 亮氏
写真左)株式会社 LIFULL 代表取締役社長 井上 高志氏

力あるグループ企業が集まった新会社設立の背景とは

<b>北野 亮:</b>プライム ライフ テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長。1978年松下電工株式会社(現パナソニック)入社。住宅設備・建材事業中心にキャリアを歩み、2012年にパナソニックのエコソリューションズ社専務、17年に社長に就任。2020年1月、パナソニック ホームズ、トヨタホーム、ミサワホームなどの持ち株会社であるプライム ライフ テクノロジーズの発足に伴い現職北野 亮:プライム ライフ テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長。1978年松下電工株式会社(現パナソニック)入社。住宅設備・建材事業中心にキャリアを歩み、2012年にパナソニックのエコソリューションズ社専務、17年に社長に就任。2020年1月、パナソニック ホームズ、トヨタホーム、ミサワホームなどの持ち株会社であるプライム ライフ テクノロジーズの発足に伴い現職

井上氏:2020年1月に会社が立ち上がってから、もうすぐ1周年をむかえられます(※インタビューは2020年12月)。おめでとうございます。
また私は、お話を伺うのを大変楽しみにしておりました。住宅産業の中で、御社のグループ企業はそれぞれが歴史もあり今までも業界で大きな影響を与えられています。今回あえて、力のある各企業さまが枠を超えて、新しくまちづくりの会社としてプライム ライフ テクノロジーズ(※以下、PLT)を立ち上げられたのか、ぜひお話をお聞きできればと思います。

北野氏:我々のグループ会社は、今までお客様に上質な住まいを提供するということを個社で行ってきました。その中でも2社は、モビリティ技術を革新するトヨタグループ擁するトヨタホームと、家電の世界でIoTやAIなど暮らしを革新するパナソニックグループ擁するパナソニック ホームズです。
いずれも親会社がまた違う業態で世の中に影響を大きく与える中、住宅事業の経営としては課題がありました。メーカーの経営と、住まい・まちづくりの経営の、特に時間軸の違いです。親会社の持つ企業の技術やノウハウを生かしていきながら、傘下にいるのではなく、より自律的な形の会社を新たな構図で目指していかなければいけないと考えていました。
ちょうど同じ課題を感じていた各社と“住宅の事を一緒に考えよう”というコミュニケーションから始まり、数年前から議論を重ねてきました。機が熟したということで、2020年1月の会社設立となったのです。

井上氏:「より良い暮らしをすぐれたテクノロジーで叶える」という、まさに「プライム ライフ テクノロジーズ」という社名に思いを込められたのですね。

北野氏:この社名は、会社設立前に各社のメンバーが集まっていろいろ議論をし、そういった思いをこめてつくりました。が、実はこの名前にはもうひとつのかくれた仕掛けがあって、PはパナソニックのP、TはトヨタのT、それをL・LIFE(暮らし)でつなぐという、そういう意味もあるんです。

各社の力と顧客をつなぐミッション・ビジョン・バリュー・コーポレートメッセージと中期経営計画

<b>井上 高志:</b>株式会社 LIFULL 代表取締役社長。1997年株式会社ネクスト(現LIFULL)を設立。インターネットを活用した不動産情報インフラの構築を目指して、不動産・住宅情報サイト「HOME'S(現:LIFULL HOME'S)」を立ち上げ、日本最大級のサイトに育て上げる。現在は、国内外併せて約20社のグループ会社、世界63ヶ国にサービス展開している井上 高志:株式会社 LIFULL 代表取締役社長。1997年株式会社ネクスト(現LIFULL)を設立。インターネットを活用した不動産情報インフラの構築を目指して、不動産・住宅情報サイト「HOME'S(現:LIFULL HOME'S)」を立ち上げ、日本最大級のサイトに育て上げる。現在は、国内外併せて約20社のグループ会社、世界63ヶ国にサービス展開している

井上氏:先にお聞きした課題を背景に、グループ企業をまとめられた新しい会社として、どういったメッセージを発信されていくのでしょうか?御社の経営理念をお聞きできればと思います。

北野氏:まず私たちは、ミッション・ビジョン・バリュー、そしてコーポレートメッセージをつくりました。これは、会社設立前にグループ企業の若手8名が集まって、グループ5社の生い立ちから調べていき、自分のたちの思考と行動に起こすための羅針盤として議論を重ね、精緻につくりあげてくれたものです。
ミッションは「想像を超えたくらしを未来を切り拓くテクノロジーで実現する」というもの。ここにトヨタやパナソニックの技術を生かしていきます。また、ビジョンは「いつでも どこにいても 人と社会がつながる まちをつくります」。そしてバリュー(価値観)は、「ONE heart 学びあう 高めあう 先をいく 時代をつくる 前を向く 挑み続ける」というものです。最後に、お客様への約束事として「くらしの“あたりまえ”をかえていく」というコーポレートメッセージを掲げています。
これに、私たち企業の在り様があらわされています。

井上氏:テクノロジーや各企業のノウハウの活用と社員の方々が挑戦していくことで、くらしの“あたりまえ”をかえていくということですね。このミッション・ビジョンを実現されるための、今後の経営計画についてはいかがでしょうか。

北野氏:この姿を実現していくため、直近の中期計画としてフェーズ1・フェーズ2・フェーズ3に分けて実行していこうと考えています。現在、我々企業のコアはあくまでも新築請負です。それも国内需要であり、それが2/3を占めている。人口減もありますが、こちらはシュリンクすることが見えています。
まずフェーズ1では、偏ったポートフォリオを変えていくため、現在の新築請負でしっかり収益をあげつつ、先行的な仕込みをしながらストック事業を拡大し、経営の骨格をつくりたいと考えています。フェーズ2では建設を、フェーズ3でまちづくりと海外展開を目指していきます。

井上氏:なるほど、そこで各グループ企業の強みを生かしていくということですね。

北野氏:その通りです。グループで取り組めることが我々の大きな強みだと思います。
まちづくりを5つのレイヤーとして考えると「設備デバイス」「モビリティ」「住宅・建設」「ランドスケープ」そして、最後に住民へのサービスを含めた「タウンサービス」がありますが、PLTはこれらをすべてカバーできる稀有な会社だと思っております。特に「タウンサービス」は今後、PLTの中で先行して取り組んでいくことになりますが、いままでのように売って終わりでない、育てていく「まちづくり」を行っていくことが大切となります。

「あたりまえをかえていく」仕組みと取組み

井上氏:グループ企業のノウハウ活用や社員の方々のシナジーが生み出される、現場での仕組みや取組みがありましたら教えていただけるでしょうか?

北野氏:「くらしの“あたりまえ”をかえていく」のですから、単にグループ企業が集まっただけでなく、それぞれの力を結集することが大切です。
経営は、個社最適でなくグループ最適で論議をする体制として、グループの住宅3社の社長はPLTの執行役員を兼ねています。従業員へのメッセージとしては、それぞれの層で「あたりまえをかえてほしい」ということです。さきほどまちづくりを形成するそれぞれのレイヤーがグループでカバーされているとお話しましたが、それぞれのレイヤーを自分事として考え、変えていくことで新しい価値を提供することができると考えています。
取組みの具体例としては、事業のポートフォリオを変えるテーマが現在10ほどあり、プロジェクトワーキングを立ち上げています。こちらもグループ個社に偏るのではなく、プロジェクトリーダーはテーマごとに強みをもっている各社に分け、テーマごとに最適人材を集めて体制を整え、取組みと成果・プロセス・進捗も確認するなど競争させています。また、マネしてほしい取組みや成功事例を共有するための「ワンハートチャレンジ ベストノレッジ・チャレンジ」なども行っています。

井上氏:なるほど、経営・社員ともにグループを横断して活性化できるようにクリエイトされているんですね。トヨタ・パナソニックとの連携はいかがでしょうか?

北野氏:トヨタ・パナソニックの技術を取り入れられるということは、われわれの大きな武器となります。寄りかかるのではなく、適正な協力フィーを払ってお互いのノウハウを活用しながらまちづくり・住まいづくりに生かしていきたい。PLTが行うまちづくりの中では、トヨタ、パナソニックの技術も生きた「暮らしのショーケース」になればと思っています。

プライム ライフ テクノロジーズグループの街づくり第1弾となる大型分譲地「MIYOSHI MIRAITO」プライム ライフ テクノロジーズグループの街づくり第1弾となる大型分譲地「MIYOSHI MIRAITO」

モビリティ技術・IoT・AI技術……テクノロジーは大きな手段となる
しかし、あくまでも「まちづくりの主役は人」

井上氏:PLTグループの「くらしとテクノロジーの融合」による未来志向のまちづくりについての考えをお聞かせください。

北野氏:IoTやAIの導入によって、設備が壊れる前に対処する先回りのフローができたり、人手が限られる中、少ない労力で最大のホスピタリティを提供するということについては、技術の力が必要でしょう。私たちの最初のまちづくりである愛知県みよし市の「MIYOSHI MIRAITO(ミヨシミライト)」では、EVで住宅の電気を賄う仕組みを取り入れていますが、災害が頻繁に起きるようになった中、技術力を駆使してのレジリエンス機能を備えるまちづくりも社会課題の解決のひとつです。この「クルマde給電」の仕組みは今後、トヨタと住宅3社で普及させていく予定です。また、住まい方をウォッチし、データを分析することで、住まい手自身が気づいていない快適さやより深い提案・サービスを提供できるようになると思います。
ただし、まちづくりにおいて、テクノロジーを取り入れる際に忘れてはならないことがふたつあると私は考えています。まず、ひとつは「技術はあくまで手段で目的ではない」ということ。そして、ふたつめは「技術を進化させる際に、最後は人と人とのつながりを大切にする」ということです。
お客様の困りごとを解決していくのは最後は人です。住まいづくりもまちづくりも建てて終わり、引き渡して終わり、ではなく今までゴールとしてとらえていたものをスタートとしてとらえる。しっかり顧客満足度を上げていくことで、小さな修繕から大きな改修、さらに不動産仲介まで横断的に顧客へサービスできるようになる。考え方を変えなければ、私たちの目指す「あたりまえをかえる」世界は実現できないと考えています。

井上氏:2020年はコロナによって働き方・住まい方などに多くの変化が生まれました。北野社長が考える今後の暮らしや住まいの幸福はどういったものであるのかお聞きできるでしょうか。

北野氏:私は、コロナによって何が一番変わったのかというと住まい手の多様性が広がったと思います。今年は「ニューノーマル」という言葉が飛び交いましたが、そういった「ポストコロナ」や「ウィズコロナ」という言葉で今後の社会を定義づけるよりも、多様化した価値観を尊重して、一人一人の幸せに如何にして対応するのかを考えることが重要だと思います。
ひとつキーワードになると思うのは、衣食住ならぬ「医職住」だと思いますね。ここの垣根をどう融合していくかがまちづくりや幸せな暮らしのポイントになってくると考えます。

井上氏:最後に北野社長から、今後についてお聞かせください。

北野氏:私たちの会社はまちづくりと住まいづくりの会社です。これからは、社会課題イコール事業課題としてとらえていかなくてはならないと考えています。
かたい頭で考えるのではなく「あたりまえをかえていく」のですから、そこに暮らす人たちとお仕着せではない幸せな暮らしをつくっていく、そのためのコンテンツをグループの力を結集してつくっていきたいと考えています。

井上氏:大変、貴重なお話ありがとうございました。

品川グランドセントラルタワー プライムライフテクノロジーズ本社にて(2020年12月8日)品川グランドセントラルタワー プライムライフテクノロジーズ本社にて(2020年12月8日)

2021年 01月12日 11時00分