「オガール」を手掛けた岡崎正信氏によるエコハウス

岩手県紫波町「オガールプロジェクト」は様々な画期的な取り組みを行い、成果を出し続けている場所である。
以前、LIFULL HOME'S PRESSでも取り上げた(【岩手県紫波町 オガールプロジェクト ①】この"公民連携モデル"の何がすごいのか?)が、補助金に頼らない公民連携モデルは、お題目だけでなく行政の責任のある関与と町民の自主性を引き出した。
開発当初から目標に掲げられた3つのポイント、①農村と都市が共生するまち ②若者、高齢者、すべての人が希望を持ち、安心して暮らせるまち ③人にも地球にもやさしいまち は、2015年に国連から提唱されたSDGsの考え方にあてはまる。

施設に隣接する住宅地「オガールタウン」もまた画期的であった。
エコ住宅が分譲条件である紫波モデルは、1)年間暖房負荷48kWh/m2以下、2)相当すき間面積(C値)0.8cm2/m2以下、3)構造材における紫波町産木材の利用率80%以上というものだ。その年間暖房負荷は、一般的な性能の住宅のエネルギー消費量に比べて、1/2~1/3の消費量で設計されている。かつて、“日本一高い雪捨て場”といわれたこの地にできた住宅分譲地は、全57区画すべてが契約済となっている。

さて、そんな「オガールプロジェクト」の推進人物の一人がオガールプラザ(株)とオガールベース(株)の代表取締役 岡崎正信氏だ。岡崎氏は紫波町の出身であり、前出の会社の代表であるとともに地元で父親が営んでいた岡崎建設(株)も引き継いでいる。

今回、岡崎建設が紫波モデル(【岩手県紫波町 オガールプロジェクト ②】オガールタウン、紫波型エコハウスの実力)の性能を上回るエコハウスを建てたという。岡崎氏の自宅も兼ねるモデルハウスを見学してきた。

岩手県紫波郡紫波町。オガールタウンの端にある、エコハウスらしい外観のモデルハウス岩手県紫波郡紫波町。オガールタウンの端にある、エコハウスらしい外観のモデルハウス

性能と格好よさが共存するモデルハウス

まずは、オガールタウンの一角にあるモデルハウスに案内してもらった。
外観は、ドイツやスイスのパッシブハウスに見られる、エコハウスらしい姿。外観カラーは、正面はブリックレッド、窓枠と玄関ドアのカームブラックが全体のポイントになっており、なんともスタイリッシュで品のある佇まいだ。

「あくまでエコハウスらしく、しかもカッコいい外観にしたかった」と、モデルハウスを企画した岡崎氏はいう。
「オガールタウンの紫波モデルは、性能基準を設けたうえで、各地元の工務店に造ってもらっている。断熱性能はしっかり備えているものの、けれど外観に関しては規定のものがないんです。オガールタウン内で建てられている家は外観設計がそれぞれです。けれど、今回はエコハウスのよさが出る家づくりを外観でも出したいと思ってこだわりながら企画・設計をしました」

中に入ると1階は、オープンキッチンを備えた37m2の土間。今年は暖冬とはいえ12月の東北・岩手の冬、さすがに土間は寒いのではないか?と思うが、まったく冷気を感じない。部屋の中が、ちょうど心地よい温度になっているのだ。オープンキッチンでは、友人や会社の仲間たちとパーティなどを行っているそう。

つづいて2階へ上がると、コンパクトにまとめられたプライベートのダイニングキッチン、ステップフロアのリビング、建具で仕切られた書斎スペースとウォーキングクローゼット、シャワールーム、サウナ、トイレの水回りのほか、寝室がレイアウトされている。1階の土間から2階の各部屋はほぼオープンでドアはない。

こちらも、1階の土間スペースと同様にたった1台のエアコンでまわしているのだが、空気も快適で室温も心地よい。訪れたときは、朝からエアコンを停止している状態。それでも、室内の温度計は20度をさしていた。

左上)1階の土間部分にあるオープンキッチン</br>
左下)1階のオープンキッチンでは料理人を呼んでパーティをすることもあるという</br>
中央)土間から2階に上がるアイアンの手摺の階段</br>
右上)2階の空間。ステップフロア上はリビングスペース。内装もフローリング材やタイルの目地の太さにまでこだわった</br>
右下)2階のプライベートキッチンとダイニング左上)1階の土間部分にあるオープンキッチン
左下)1階のオープンキッチンでは料理人を呼んでパーティをすることもあるという
中央)土間から2階に上がるアイアンの手摺の階段
右上)2階の空間。ステップフロア上はリビングスペース。内装もフローリング材やタイルの目地の太さにまでこだわった
右下)2階のプライベートキッチンとダイニング

エコハウスの本当の良さを引き出す設計とデザイン

さて、どういった設計に基づいて、このエコハウスの快適さが実現されているのかというと、断熱のスペックは、外壁300mm、屋根400mmの断熱材を使い、年間暖房負荷38KWh/m2という、オガールタウンの紫波モデルよりもさらに高スペックにつくられている。

また、空気の快適性を生み出す仕掛けは、設計上のポイントがあるという。
「できるだけ、1台のエアコンの熱が無駄なく空気が循環するように、部屋内を区切らずオープンな設計にしています。この空間の開放感もエコハウスの良さです。エコハウスで、ひとつ気をつけなくてはいけないのが湿気なのですが、このモデルハウスでは、部屋の両側にドイツ製の換気システムを導入し24時間空気をまわすことで、湿気もコントロールし、快適性を高める効果を得ています」

1階にフリースタイルに使えるキッチンを備えた土間、2階はオープンなリビングダイニングと寝室、というこのモデルハウスだけみると、子どものいるファミリー層には難しいのではないか?と思うのだが、岡崎氏は
「たしかに、このモデルハウスの81m2の吹き抜けワンルームプランは、独特な商品ではあります。自分なりのカッコよさをエコハウスらしく生かしたいという設計ですが、断熱の良さとエネルギー効率を考えると、エアコンひとつでまわしたいというのがあります。
このモデルはあくまでも一例。エコハウスならではのエネルギー効率が生きる間取り設計をしつつ、それぞれの家族の住まい方にあった提案ができるといいと思っています。
岡崎建設のチームには暮らし方を提案できるプランナーがいますが、例えば1階の土間をリビングにしたり、2階は緩やかに区切った子ども部屋やキッチンにパントリーを作ることも可能です」という。

2階のオープンな空間にあるステップフロアのリビング。奥にはゆるやかに仕切ったワークスペースがある2階のオープンな空間にあるステップフロアのリビング。奥にはゆるやかに仕切ったワークスペースがある

適正な利益を得て ビジネスになる販売モデル

岡崎 正信氏:岡崎建設株式会社 専務取締役。株式会社オガール 代表取締役。「ただただ幸せな暮らしを追求したらエコ住宅にたどり着きました。お客様には自分も住みたいと思う唯一無二の住宅を提案いたします」という岡崎 正信氏:岡崎建設株式会社 専務取締役。株式会社オガール 代表取締役。「ただただ幸せな暮らしを追求したらエコ住宅にたどり着きました。お客様には自分も住みたいと思う唯一無二の住宅を提案いたします」という

気になるこの住宅の価格だが、エアコンや換気システムを含め、約坪58万円前後(施工費のみ。企画設計料は含まず)だという。
このデザインと高スペックの断熱性能を備えるエコハウスであれば、欲しい人が数多くいると思うが、岡崎氏は「大量に売りさばくつもりはない」という。

「今の不動産と建築業は、家を売る人が家をつくる人より多いという世界になっています。つくる現場の人件費が高騰し、しかも人手が足りないことから、どんどんブラックになっている。そういった環境で、よい住宅はつくれない。住宅づくりはノルマになってはいけない、と思うんです。

一方で、今後の少子化を考えると工務店はこれから仕事が増えていくわけではない。しかし、戦略的に戦えば勝ち目はあると思います。つくるものを増やすのではなく、少しの棟数でも、適正な利益を得てきちんとビジネスになる住宅づくりが必要です。工務店の生き残り策として、戦略的なダウンサイジングを見据え、数軒でも利益が出るモデルをつくるべきだと考えています」

岡崎建設では「このエコハウスを年間4棟程度手がけられれば」と、考えているという。

断熱性能の良い家は「クセになる」

岡崎建設ではこのモデルを一気に広めて大量につくる予定はないというが、一方で多くの工務店にはぜひマネをしてほしいという。

「エコハウス…というと、一種冷静さを欠いた環境問題解決のような取り組みか、と誤解されることもあるようです。しかし、現実、一度断熱性能の高い家に住むと他の家には住めない。オガールタウン内には、OGAL NEST(オガールネスト)という賃貸物件があります。そこに住んだ方が仕事の関係で引っ越したところ、断熱の快適さを痛感したという話があります。断熱はクセになるんです。
数値が語る以上に、住む人が単純に心地よい、日常的な体感ストレスがない住まい…そういった住まいをぜひ多くのユーザーに知ってほしい。その目的からも、購入を考えているユーザーのみならず、工務店もぜひ見に来てほしいと思います。共感してくれる工務店さんには、この高性能で快適な住まいをぜひ広げてほしいですね。住む人だけでなく、住まいをつくる人も誇れる住宅が、幸せな住宅なんだと思います」

外観にも性能にもこだわったこのモデルハウスで「工務店に“マネをしたい”といわせたい」という岡崎氏。ユーザーからの究極の発注は「“このモデルハウスをこのままつくってください”という言葉を引き出すこと」だという。

このいろいろな想いと技術が詰まった“大人格好いいエコハウス”。百聞は一見に如かず、機会があればぜひ訪れて実際に体感していただきたい。

■取材協力:
岡崎建設株式会社 http://okazaki-const.jp/

室内の灯りが温かみを与える夜の外観。こだわりぬいたエコハウスは、性能だけでなくデザインも秀逸だ室内の灯りが温かみを与える夜の外観。こだわりぬいたエコハウスは、性能だけでなくデザインも秀逸だ

2020年 03月05日 11時05分