循環型まちづくりの集大成「オガールタウン 日詰二十一区」に建てられる紫波型エコハウス

古来この地方の家屋建築に見られたL字型の「曲り家」。新たにエネルギー効率化技術を融合させた「現代の曲り家」である紫波型エコハウスサポートセンター古来この地方の家屋建築に見られたL字型の「曲り家」。新たにエネルギー効率化技術を融合させた「現代の曲り家」である紫波型エコハウスサポートセンター

前回は、注目を集める「地方創生モデル」として、紫波町のまちづくりをお伝えした。

今回は、その紫波町が掲げる「循環型まちづくり」をベースにつくられている「オガールタウン日詰二十一区」の紫波型エコハウスを取り上げたい。

「オガールタウン 日詰二十一区」は、紫波町がこれまで取り組んできた循環型街づくりの集大成として、紫波の文化が溶け込み、人と人との交流が生まれ、資源と経済が循環する街を目指している。
オガールタウンの特徴は、2つ。ひとつは、良好な景観と住環境を備えた魅力ある街づくりに必要な指針・基準を「オガールタウン景観協定」として定めたこと。もうひとつは、景観協定に準じ、紫波町の風土が育んだ物や技術や人の暮らしをエコロジーの考え方に則した住宅の指針として「紫波型エコハウス基準」を定めていることだ。

紫波で実現する「これからの住宅」紫波型エコハウスを、実際にその基準で建てられた紫波型エコハウスサポートセンターに宿泊し、取材してきた。

町内から集めた木質チップを燃料とした地域熱供給サービス

町から集められた木質チップは、1.5tほど一日2回運ばれている。エネルギーステーションでは、オガール地区のオガールベース、役場庁舎、オガールタウンの熱供給を担う町から集められた木質チップは、1.5tほど一日2回運ばれている。エネルギーステーションでは、オガール地区のオガールベース、役場庁舎、オガールタウンの熱供給を担う

オガールタウンには、地域一帯に熱を供給するための配管が敷設されている。この配管を通じて、町内から集めた木質チップを燃料にエネルギーステーション(木質チップボイラーなどの設備)でつくった70℃~75℃の熱水を住宅に届けることができる。この熱水と住宅の水道や暖房回路を熱交換させ、暖房や給湯を住宅に供給する。この仕組みは、紫波グリーンエネルギー株式会社が運営している。

オガールタウンの住宅は一般的な電気会社とこの仕組みをもつエネルギーステーションを利用するかを選択できる。まだまだ、コスト的に電気会社との比較で光熱費に大きな差があるわけではないが、
・将来的な灯油代や電気代の値上げによる影響
・住まいで火を焚かない安全性
に加え
・今まで石油代やガス代として外に流れていたお金が町内に残って循環し、町内経済を活性化する
という意味では、紫波町の「紫波町循環型まちづくり条例」に則した取り組みである。

積極的に利用してもらおうと、紫波型エコハウスの建築時やエネルギーステーション利用の際に交付され、また紫波の森林から間伐材を運び出すともらえるエコbeeクーポン券(1ポイント1円として使用可)を使って給湯・暖房代に充てられるなどさらなる利用の促進にも努力を続けている。

地元事業者で構成される、紫波型エコハウス建設協同組合

紫波型エコハウスを手掛けた地元工務店の方々。左から丸藤工務店の藤原さん、箱崎工務店の箱崎さん、藤建ハウスの佐藤さん紫波型エコハウスを手掛けた地元工務店の方々。左から丸藤工務店の藤原さん、箱崎工務店の箱崎さん、藤建ハウスの佐藤さん

では、実際のエコハウスの住宅性能としてのスペックはどうであろうか?
「紫波型エコハウス基準」の分譲条件は、以下
1)年間暖房負荷48kWh/m2以下
2)相当隙間面積0.8cm2/m2以下
3)構造材における町産木材の利用率80%以上
である。その年間暖房負荷は、一般的な性能の住宅のエネルギー消費量に比べ1/2~1/3の消費量で設計されている。

紫波育ちの木でエネルギーをできるだけ使わない家を建てるというこの取り組みは、さらに地元の事業者・職人を採用することで地域経済活性への貢献も狙っている。現在、オガールタウンでの住居は3世帯。今回、その紫波型エコハウスを建てた地元工務店の方々にもお話を伺った。
お話を伺ったのは、丸藤工務店の藤原さん、箱崎工務店の箱崎さん、藤建ハウスの佐藤さん。
「もともと、北国で雪深い地域ではあるため、断熱性能にはもちろん無関心ではありませんでした。ただ、今回の紫波型エコハウスの基準をクリアするものを建てると、例えばグラスウールなど屋根に30cm、壁に20cmの断熱材を使用することになる。そこまでの断熱性能の家は建てたことがありません。また、町産材を80%以上使うことなど、勉強会もしましたし、頭ではわかっていても、実際は“建ててみなければ、わからない”といったところでした」と藤原さんはいう。

「実際、施工中は壁の厚みを見て、“こんなに断熱性を高める必要があるのか”と思っていました。が、ある日の夜"今日は寒いなあ"と思い、ふとまだ入居前の完成住宅まで車で訪れて中に入ってみたんです。暖房もしていないのに、その暖かさ、家の中の温度差のなさに正直驚きました。なかなか、今までの住宅との性能の差を数値で言われてもわからない…実感してみなくては、わからないものです」と佐藤さん。

「私達が、数値で言われても実感がなかったように、建てる前の方々に説明するのは難しいです。ただ、このサポートセンターなど家が建ってみると体験してもらうことができる。また、紫波型エコハウスに住んでいる人に住み心地を語ってもらうことができる。紫波型エコハウスの良さが伝わるのはこれからだな、と思っています」と箱崎さんは語る。

紫波型エコハウスの施工主の実感

現在、オガールタウンでは、紫波型エコハウスサポートセンター以外にすでに4棟の家が施工されている。今回は、すでにオガールタウンで暮らしている鈴木さん、荻内さん、小田島さんの3世帯にお話を伺うことが出来た。

3家族の方々がオガールタウンを選んだのはそれぞれ“以前住んでいたところが都市計画にあたり、新しい場所をさがさなくてはならなかった”“近くに息子夫婦が住んでいた”などの理由である。
「駅前で、商業施設もあり、場所は申し分なかった。ただ、最初は景観協定や紫波型エコハウスの基準など、なかなか大変だな、と感じていました」と施工時にはその基準などが厳しいなと感じていたという。

3家族とも紫波型エコハウスの実力を感じ始めたのは住み始めてからであった。
「いままでは、冬、暖房を切って寝ていると顔が寒かったり、トイレに起きるのがおっくうだったりしました。けれど今の家に住んでからは、薄着で寝ていても快適です。」と鈴木さん。
「外が寒いのを忘れてコート無しで外出しようとしたりして、玄関を出て寒かったことを思い出します」と荻内さんも笑う。
「息子夫婦が泊まりに来ても、“こんなに家中が暖かいんだ”とびっくりしています。家の性能を数値で説明されたときはよくわからなかったけど、ああ、こういうことなんだと思います」と小田島さんも語ってくれた。
それぞれの家がまだ、引っ越して3か月くらいではあるが、前の家と比べると光熱費も6割くらいにおさえられているという。「それも、前の家は夜は暖房を切って寒いのを我慢して…という生活でした。エコハウスは暖房を切っても室温が保たれているので、本当に寒いのを我慢しなくてすんでいます。まだ、冬しか経験していませんがこれから夏をむかえて冷房をかけたとき、どうなるか楽しみです」と語ってくれた。

実際に2月末、紫波型エコハウスサポートセンターに宿泊してみたが、どの空間も扉がないワンルームでありながら上下左右室温の差がなく、朝まで快適にすごすことが出来た。町産材を使ったフローリングは裸足で歩いても冷たくなく、トリプルガラスの高断熱サッシは窓近くも寒さを感じず、日が差すとその陽の光で部屋が暖まるほどであった。

オガールタウンのまちづくり・住宅づくりにも、隅々まで「紫波町の循環型のまちづくり」が生きている。こういった取り組みを先んじて行っているまちが、100年後の未来に向けての「豊かな暮らし」のモデルとして波及してほしいと思った。

オガールタウンで最初の紫波型エコハウスにお住いの鈴木さん、小田島さん、荻内さん。</br>「エコハウスの実力は住んでみないとわからない…私たちの実感を伝えていければとおもっています」</br>と語ってくれたオガールタウンで最初の紫波型エコハウスにお住いの鈴木さん、小田島さん、荻内さん。
「エコハウスの実力は住んでみないとわからない…私たちの実感を伝えていければとおもっています」
と語ってくれた

2015年 05月15日 11時06分