梅雨から秋の長雨まで。長期に渡る多足類問題

今年も6月中旬の沖縄地方を皮切りに、筆者の住む東海地方でも先日梅雨が明け、南から順次夏がスタートし始めている。
我々、害虫対策業を営むもののもとに入るお問合せで、梅雨に入る辺りから急激に増え、秋の長雨まで続くのは「ムカデ」や「ヤスデ」などの多足類に関するもの。世の中に虫嫌いな人は少なくないが、見た目が特徴的なこれらに対しては特に強い嫌悪感を抱く人も多い。
実際に敷地内や住まいに侵入したらどんな害があるのか、はたまた害はないのか。
虫の特徴や自分でできる対策、プロの技をお伝えし、虫による不快感や不安感の軽減に繋げて頂ければと思う。

意外と知らない?ムカデやヤスデ、ゲジゲジの違いとは

蜈蚣(ムカデ)、馬陸(ヤスデ)、蚰蜒(ゲジ)…。画数からして多いこれらの虫を、日本では総じて「多足類」と呼んでいる。
それぞれの名前は知っていても、実物を見たことがない、違いがわからないという人もいるのではないだろうか。住み育った環境や、そもそも関心や困りごとがなければ「足が多くて気味悪い虫」と一括りにされるのではないかと考えるのは、決して都会育ちではない筆者も、マンション生活が長いためかこの仕事に就くまではそれらの違いがよくわかっていなかったからだ。
しかし、一括りにするには全くもって似て非なるものであるため、それぞれの生態について少し触れよう。

【ムカデ】
日本国内だけでも100種類以上
肉食
夜行性
顎に毒腺を持ち、強い毒をもっているものも
アナフィラキシーショックを発症することもある
薬剤の効きが悪い
身体が平たい
1つの体節から1対の足が出ている

【ヤスデ】
落ち葉などの腐植物質、キノコなどの菌類を食べる
特有の不快臭を放つ
ムカデと異なり噛まれたりする被害はないが、見た目や集団で生息する様が不快なことから不快害虫とされる
身体が円柱型 長いダンゴムシのようなイメージ
1つの体節から2対の足が出ているのでムカデより足が多い

【ゲジ】
ゲジゲジと呼ばれることが多い
夜行性
ムカデの仲間だが、ムカデのように噛むことはない
クモなどの虫を食べる益虫であるが、見た目から不快害虫とされている
長い足と触覚が特徴的

発生には外部環境が大きく影響。
こちらは新築物件のヤスデ相談現場。発生には外部環境が大きく影響。 こちらは新築物件のヤスデ相談現場。

今年はムカデの当たり年!? 増加している相談・施工件数

弊社は小さな小さな会社だが、そんな弊社にも、今年はヤスデやムカデの相談や施工依頼が多く寄せられている。
岐阜県でムカデ対策に力を注いでいる企業があるため、今年の傾向を伺ってみた。
インタビューにご協力頂いたのは有限会社サンアイの代表取締役 今瀬芳尚氏。
「問合せ件数の増加等に関して、業界全体や他地域のことはわかりませんが、弊社で言えば、前年比1.5倍の問合せが現状続いてます。また、施工件数も現段階で前年比1.5倍の推移です」
やはり、今年に相談件数が増加しているのは、弊社に限ったことではなさそうだ。

では、なぜ増えているのだろうか。
相手は生き物。やはり、気候などが影響しているのだろうか。
であるならば、ムカデやヤスデが増えたり、遭遇したりする可能性があるのは、どんな気候の年で、どういった対策の心積もりをしておけばよいのだろう。

「気候の変化は関係あると思いますね。ムカデは地表面に近くの腐木等で冬眠することが多いのですが、比較的暖かな冬であったため、冬の強い冷え込みによって水道管が破裂することも少なかったでしょうし、凍死が少なくなったのではないかと考えられます」

なるほど。
無事に越冬できたかどうかが、その年の梅雨明けのムカデやヤスデ発生率に影響するということか。

また、今瀬氏はこうも推測する。
「良し悪しは別として、街路樹等の消毒減少・生息環境圏での農薬使用の減少も影響してるのではないかと考えます」

確かに、ムカデやヤスデに限らず害虫駆除の相談数、相談対象の生物の種類は10年前と比べ増えているように筆者も感じている。

知っておきたい「セルフ対策方法」

出来れば室内で出会いたくない多足類。ムカデなどのエサになったり、棲み家となってしまわないように日頃から気を配ることがまず自分でできる対策となる出来れば室内で出会いたくない多足類。ムカデなどのエサになったり、棲み家となってしまわないように日頃から気を配ることがまず自分でできる対策となる

とは言え、やはり虫とは「共存」より「住み分け」を望む人が大半であろう。
自分でできる対策方法は次の通り。

【ムカデ対策】

■夜間、建物窓から洩れる光源に飛翔昆虫が飛来し落下すると、落下昆虫を捕食するために、屋外からムカデが侵入してくる。
そのため、遮光カーテンを取付、光が漏れなくすることも予防として効果的。
■建物侵入のきっかけとなる基礎換気口に、目の細かいステンレスネットを取付ける。
■建物外周にムカデが潜み易い環境を作らない(プランターの直置き・野積みブッロク・腐木)

【ヤスデ対策】

■除草作業をした場合は野積み状態を避け、ごみとして適切に処分を行い、広範囲に腐葉土層を作らない。
■鉄分を好むヤスデが居るので、外回りにサビを誘発させる金属類を放置しない。
■基礎を徘徊し建物外壁へと移動するので、管理(薬剤散布)しやすいように、建物外周の整理整頓に努める。

【ゲジ対策】

■ゴキブリを捕食するため、ゴキブリが生息しないような生活環境(清掃・整理・整頓)に努める。

「エサ」や「棲み家」となりそうなものをこまめに取り除くことが、日頃の生活でまず取ることのできる対策方法と言えそうだ。

プロの勧める対策とは

ムカデ返し取付け例ムカデ返し取付け例

敷地内をこまめに掃除しても周辺環境までは自分たちでは変えることができない。また、自分で対策をとってみたものの、思うような効果が得られないこともあるだろう。
そうした時、プロの技にはどんなものがあるのだろうか。今瀬氏に伺った。

「基礎沿いへの薬剤処理で効果が得られないというお宅も残念ながらあります。薬剤処理が出来ない環境下もあるので、そうしたお宅には「ムカデ返し機器」の設置が有効だと思います」とのこと。
「ムカデ返し機器」とは、ムカデが登って室内に侵入することを防ぐためのもの。建物外周に取り付けられる。 特徴は下記の通り。


■工期が短い
一般的な家屋なら1日で取り付け工事から薬剤の設置まで完了する

■薬剤使用量を減らすことができる
器具に薬剤を入れカバーをするため、庭や建物外周に薬剤を大量に使用することがない

■メンテナンスが容易
雨降りの度に薬剤散布をする必要がなく、薬剤充填は1年に1度ほど

■初期投資がかかる
建物の大きさや状況によって異なりはするが、一般住宅への設置は約15万から20万前後。

もちろん、これで侵入が完全になくなるという保証はないし、建物状況によっては取り付け不可の場合もあるが、実際に弊社でも取り入れており有効な対策方法だと感じている。

これから茹だるような暑い夏がやってくるのだろうが、ムカデやヤスデ、ゲジ問題は長雨が終わるまでもうしばらく続きそうだ。
しかし、そもそも先述の通り建材や街路樹、田畑での薬剤使用量の減少が「害虫」の増加傾向に影響しているのだとすれば、「身体に優しい住環境」と「虫との共存」は致し方ないセットなのだ、とある程度受け入れていかねばならないのかもしれない。



【取材協力】 有限会社サンアイ 代表取締役 今瀬芳尚氏 http://www.j-sanai.jp/

2016年 08月06日 11時00分